Last Updated on 2023年9月22日 by Akiko Ando
近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)への関心の高まっており、「ESG格付け機関」の情報が投資家や資産運用機関が企業を判断する材料として使用されています。
本記事では、ESGレーティングとはなにか、企業と投資家によるESG格付け機関ランキング(ERMのESG格付け機関に関するレポートより)、ESG格付け機関の信用度の3点について解説いたします。
\ サステナビリティ対応の最新動向に追いつく/
日本企業に今求められる気候変動の最新動向対応を
わかりやすくまとめたセミナーを開催しております。
ESGレーティングとは、各企業の「環境・社会・ガバナンス」に関する
・取り組み状況
・情報開示の充実度
・ポジティブ/ネガティブな影響
などの観点から格付け機関が格付け、又はスコア付けをすることです。
つまりESGレーティングから「企業がどの程度ESGに取り組んでいるか」を見ることができます。どの情報をもとに、どの基準で判断するかは機関ごとに異なります。
ESGレーティングが取り入れられる理由
投資家や運用機関は、第三者目線から判断された情報をもとに企業のESG取り組み状況を相対的に比較することができます。企業自身による情報開示のみで判断するよりも信憑性を確保することができます。
また、ESG(環境・社会・ガバナンス)における情報は、数値で表すことのできない内容も多く、投資家や運用機関がいちから情報を収集・分析することは難しいです。そのため、ESG投資の拡大につれて、ESGレーティングのスコアが運用プロセスに取り入れられるケースが増えています。
ERM(Environmental Resourses Management)の調査によると、投資家の43%がESG評価機関を利用する理由を「ESG評価とデータを投資手法に組み込むため」と述べています。2018~2019年にはわずか12%であり、ここからも投資においてレーティングの結果を重視する動きが高まっていることがわかります。
\「 ガバナンス・リスク管理」対応どう進める?/
具体的な開示内容、開示プロセスなどガバナンス・リスク管理に関して
Q&A形式で資料にまとめて配布しております。
ERMによるESG格付け機関に関するレポート
1,ERMとは
本記事にて紹介するレポートを公開したERMについて紹介いたします。
ERMは世界39カ国に7,500人以上のトップクラスの専門家を擁するサステナビリティコンサルティング会社です。深い専門知識により、クライアントは環境、健康、安全、リスク、社会的な問題に対処できる体制を整えています。これを、ERMが現場や経営者レベルで目的を達成するための戦略的・技術的解決策を開発できる包括的なサービスモデルとしています。
また、世界の主要組織と提携し、サステナビリティ課題に対する革新的な解決策を創造しています。よって、将来の世代のための機会を維持しながら現在のニーズを満たす商機を引き出しています。
2,企業と投資家によるESG格付け機関ランキング
・Rates the RatersによるESG評価者の質・有用性に関する調査回答
本記事では「質」と「有用性」に分けた、
企業と投資家によるESG格付け機関ランキングの1位〜5位を紹介いたします。
【“質”における企業による回答】
1位:ISS-ESG
2位:CDP
3位:Sustainalytics
4位:EcoVadis
5位:S&P Global ESG
【“有用性”における企業による回答】
1位:CDP
2位:ISS-ESG
3位:Sustainalytics
4位:S&P Global ESG
5位:Bloomberg
【“質”における投資家による回答】
1位:CDP
2位:S&P Global ESG
3位:Sustainalytics
4位:MSCI
5位:ISS-ESG
【“有用性”における投資家による回答】
1位:CDP
2位:Sustainalytics
3位:MSCI
4位:S&P Global ESG
5位:ISS-ESG
・投資家と企業者の傾向
【投資家】
有用性においても品質においてもCDPを最も優れたESG格付け機関としてランク付けしています。一方でISS-ESGに対する信頼は企業に比べ厚くないことが分かります。
【企業】
有用性ではCDPが最も優れていると評価、
しかし品質ではISS-ESGが最も優れていると認識しています。
・各格付け機関について
上記の調査にてランクインした評価機関5つについて簡単に解説いたします
CDP (Carbon Disclosure Project)
企業に気候変動、水セキュリティ、フォレストの3つに分けられた質問書を送付します。その回答をもとに8段階のCDPスコア(A~D⁻)を付けます。
ISS-ESG
環境、社会、ガバナンスの観点から企業の取り組みを格付け評価し、業界別で高い評価を受けた企業が「プライム」に認定されます。
Sustainalytics
ESGリスクを「総合的なリスク」「リスクの管理状況」「管理が可能にも関わらず管理できていないリスク」などの基準から算出。そして、ESG課題を「コーポレートガバナンス」「重要視するESG課題」「産業ならではの課題」の3点から評価します。
S&P Global ESG
各業界における重要度と関連性の高いESG要因に関する質問票により調査を行い、回答が得られない企業に対しては専門チームが公開情報を収集することによって評価されます。
MSCI(Morgan Stanley Capital International)
業種ごとにESGにおけるリスクマネジメントの程度を分析。算出した「キーイシュー・スコア」から、企業を7段階(AAA〜CCC)で格付けします。
・格付け機関ランキングの調査の背景と方法
【背景】
本調査はERMのサステナビリティ機関により開始されたRate the Ratersプログラムにより行われました。一連のレポートを通じ、企業、投資家、その他のステークホルダーがESG格付けを理解し、より多くの価値を引き出すのに役立つ視点を提供することを目的としています。
【対象】
1,400人以上の企業サステナビリティ専門家(20業界/6つの資産クラス/29カ国)/450人の投資と専門家
【アンケート配布経路】
Eメールリスト/ソーシャルメディア/専門家ネットワーク/2つの2022年格付けブログ出版物
【データ収集期間】
2022年9月21日~11月11日
3,ESG格付け機関の信用度について
ESG格付け機関の利用は増えており、調査対象企業の半数以上が6つ以上のESG格付け機関と提携しています。
しかし、ESG格付け機関への信頼に関する問題も提起されています。
以下のグラフはERMが企業と投資家に対し「ESG評価がESGパフォーマンスを正確に反映していると思うか」を調査した結果です。

投資家はESG評価を信頼し、判断の基準にしているケースが多い一方で、
企業からの信頼は低く、自社の取り組みが正確に評価されていないと感じているケースが多く見られます。
また、投資家が自社の指標、ESG指標、格付けを独自に開発するという顕著な傾向も明らかになりました。ESG評価者が信頼の維持のために修正すべき点として、
・格付け手法全体における一貫性と比較の向上
・手法の品質と開示の改善
の二点が、投資家と企業の両方の約半数が挙げられています。
まとめ
【ESGレーティングとは】
・環境/社会/ガバナンスに関する取り組み状況
・開示の充実度
・リスク
などの観点からスコア付けをします。それにより、企業がどの程度ESGに取り組んでいるかを可視化することができます。
企業/投資家によるESG格付け機関の評価】
CDPは投資家と企業の両方からの評価が高いという結果が得られました。
また、ISS-ESGは有用性の点からは企業者に評価されている一方で、投資家からの評価は5位という結果になりました。
【ESG格付け機関の信用度】
投資家からはESGの判断材料として高い信頼を得ています。
一方で、企業からは自社の取り組みを正確に反映していないという点から信頼が得られていません。
参考文献
[1]ERM 「New ERM report ranks ESG ratings agencies and urges action to maintain business and investor trust」
[2]JPX日本取引所グループ JPX企業情報「ESG評価機関等の紹介-MSCI」
[3]フィデリティ投信「ESGレーティング(格付け)とは? 」
[4]JPX日本取引所グループ JPX企業情報「ESG評価機関等の紹介-S&Pグローバル」
[5]JPX日本取引所グループ JPX企業情報「ESG評価機関等の紹介-Sustainalytics」
\ スコープ3算定式の理解を深める!/
スコープ3の算定方法や削減施策について、セミナー形式でも解説しています。

セミナー参加登録・お役立ち資料ダウンロード
- TCFD対応を始める前に、最終アウトプットを想定
- 投資家目線でより効果的な開示方法を理解
- 自社業界でどの企業を参考にするべきか知る
メールマガジン登録
担当者様が押さえるべき最新動向が分かるニュース記事や、
深く理解しておきたいトピックを解説するコラム記事を定期的にお届けします。