Last Updated on 2023年12月5日 by 安井悠真
ESG投資や気候変動対策への近年の動向を受け、企業のサステナビリティへの取り組みが判断材料として用いられるようになりました。
本記事では、第三者認証制度について「気候変動・CO2削減・環境」分野ごとに、それぞれの特徴・種類・認定方法を解説いたします。
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持続可能性における第三者認証とは?
企業や団体の持続可能性における取り組みを、専門性のある第三者機関が一定の基準に基づいて評価をします。そして、取り組みが機関の基準を満たしている場合に認証され、情報の信頼性が確保されます。企業や団体の取り組みは、ステークホルダーの判断材料や意思決定に用いられます。そのため、情報には信憑性がなくてはなりません。
しかし、情報の信憑性を企業自身や、ステークホルダーが評価することは困難です。そのため、自社での取り組みが信用に値するということを示すために、利害関係のない第三者視点の公平・公正な評価が必要です。
第三者認証を受けるメリット
認証を受けることで以下のメリットが期待できます。
・サステナビリティ情報の信憑性が一目で伝わる
・投資家/金融機関/消費者/取引先からの高い評価が得られる
・競合との差別化ができる
・自社の取り組みの強み/改善点が明確になる
第三者認証の動向
SBT認証企業数
ESG投資や脱炭素化の動きを受け、第三者認証を行う企業が急激に増加しています。
以下のグラフは第三者認証の1つである、SBT(温室効果ガス削減目標)の認定企業数を示しています。
2015年のパリ協定で世界共通の削減目標が定められてから、認定数が年々増加していることがわかります。
また、日本国内でも同様にSBT認定が進んできていることが分かります。
プライム市場の気候変動に関する情報開示が必須事項となり、サプライヤーへの温室効果ガス削減が求められるようになりました。そのため、SBT取得が中小企業へ広まっていることが理由の一つであると考えられます。

https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SBT_joukyou.pdf
CSRDで第三者認証が義務化
2023年1月にEUでCSRD(企業サステナビリティ報告指令)が発効されました。
CSRDでは新たに、各国の基準や要求等に基づいた第三者認証の取得が義務付けられてます。
CSRDは欧州の法案ですが、EU域内で以下の条件を満たしている場合にEU域外の企業も対象となります。
・一定の売上がある
・大規模 / 上場企業の子会社を有している
・一定の売上がある支店を有している
そのため、CSRDの対象となる日本企業も存在します。
このように第三者認証の必要性は益々増加しています。
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第三者認証制度の種類
第三者認証:気候変動分野
1, WMB宣言(温暖化対策推進目標)
【目的】
We Mean Businessの略称。ネットゼロ、エネルギー、都市、土地、産業、実現可能に(enablers)、回復力(resilience)の7つの領域における取り組みを広めること。
【特徴】
・国際認証
・国際機関/シンクタンク/NGO等が中心となり温暖化対策を促進しているプラットフォーム
・プラットフォームでの連携を通して取り組みを広めている
【参加方法】
企業は以下の取り組みを行う。
・SBT:科学に基づく排出削減⽬標 の採⽤
・Re100:100%再生可能エネルギー導入
・EP100:エネルギー⽣産性の2倍化へのコミット(エネルギー分野)
・EP100:エネルギー⽣産性の2倍化へのコミット(環境と産業の構築分野)
・EV100:電気⾃動⾞移⾏へのコミット
・100%ネットゼロ鉄鋼へのコミット
2, CBS認証(気候ボンド基準)
【目的】
Climate Bond Standardsの略称。低炭素で気候変動に強い経済への迅速な移行に必要なプロジェクトや資産への投資を促進する。そのためにグリーンボンドの環境に対する貢献度についての信頼性や透明性を確保すること。
【特徴】
・国際認証
・グリーンボンドとグリーンローンにおける認証
・CBIが定める14のセクター別の厳しい基準で判断される
【認定方法】
1, 気候ボンド基準委員会から承認された認証機関のレビューを受ける
2, レビュー結果をもとにCBS認証委員会から認証を受ける
3, 投資家向けにレポートを毎年度作成する
気候ボンド基準委員会から承認された認証機関一覧はこちら
3, Coolfood Meals認証
【目的】
食品提供者が気候への影響が少ないメニューを高い信憑性のもとに販売できること。また、消費者が外食時に気候変動に配慮したメニューを容易に選択できること。具体的には各メニューの生産から流通までのサプライチェーン全体を含め1食当たり二酸化炭素排出量を測定していることが保証される。
【特徴】
・国際認証
・認定されたメニューは「Cool Food Meals」バッジを付けることができる
・1食あたりの二酸化炭素排出量を25%削減することを推奨されている
・CO2だけでなく、栄養品質も基準を満たす必要がある
【認定方法】
1, 食材やレシピデータをCoolfoodに提出
2, Coolfoodによって農業のサプライチェーンや生産地が分析される
3, 温室効果ガス排出量の閾値を下回り、栄養基準を満たしている場合、認証を受けることできる
食品に関する事業を行っている企業は、Coolfood Mealsの取得により信頼性の高さを証明することができます。そのため、環境への優しさを基準にしている消費者に対してアピールができます。
特に海外ではヴィ―ガンの方も多いため、観光客や留学生などの判断基準になることが考えられます。
第三者認証:CO2削減分野
1, SBT認証
【目的】
Science Based Targetsの略称。企業に向けて科学に基づいた削減目標の設定を促し、気候変動対策を推進すること。
【特徴】
・国際認証
・2℃目標又は1.5℃目標に整合する削減目標設定する
・CDPで高評価を得ることができる
・サプライチェーン全体での削減を行う
・2年以内にSBTに準拠した目標を設定することを宣言する「コミット」という制度がある
・中小企業版SBTも存在する
【認定方法】
1, Commitment Letterを事務所に提出(任意)
2, 設定した目標を申請書に記入し、事務局に提出
3, 事務局による目標の妥当性の審査
4, 最低5年おきに再計算し、目標値を設定する
SBT認証では世界が掲げている脱炭素化に向け、自社の削減目標設定を行います。そのため、大企業のサプライチェーンに含まれる中小企業なども開示も進んでおり、企業の気候変動対策において優先度が高いと言えます。SBT認証を行うことで、CDP(格付け)において得点を得ることができます。
2, カーボンオフセット第三者認証制度
【目的】
カーボンオフセットの取り組みに関する信頼性を確保する。また、主体的な取り組みや認知拡大、公正な市場形成を促進するために、排出削減・吸収プロジェクトを支援する。
【特徴】
・カーボンオフセットやカーボンニュートラルの取り組みで基準を満たすものを認証する
・自社製品などに認証ラベルを貼ることができる
・環境省の提示する基準に即した認証がされる(認証基準はこちら)
【認定方法】
1, 認証申請書を定められた認証機関に提出
2, 審査が通った場合、認証番号と認証ラベルが付与される
以下のように、各認証制度によって申請項目が分かれています。
第三者認証:環境分野
1, B corp認証
【目的】
企業自体のあり方を評価することで、環境や社会、従業員、顧客等のすべてのステークホルダーに対し、公益性の高さを保証すること。
【特徴】
・国際認証
・株主や運用機関だけでなく、公益に焦点を当てている
・主に企業が受ける認証だが、大学が認証された事例もある
・事業の透明性や説明責任において、厳しい基準で審査される
・「ガバナンス」「従業員」「環境」「顧客」「コミュニティ」が主な項目
【認証方法】
1, Web上で認証試験「B Impact Assessment」を受ける
* 200問中80点以上の取得が必要
2, 企業の罰金やクレームについての質問「Disclosure Questionnaire」に回答する
3, 定款文書を作成し、サインする
4, B Labからの電話レビューを受ける
5, 審査を通過できた場合、認証を受けることができる
6, 3年ごとに「B Impact Assessment」を受け、認証を更新する
7, 「B Impact Report」の提出と公開をする
B corp認証は海外では83ヵ国150以上の産業で5000以上の企業が取得しています。しかし、日本では26社しか認証を受けていません。
国際的な認証として注目されているため、認証取得によってステークホルダーからの支持を得ることが期待できます。
2, エコアクション21
【目的】
組織や事業者等が、効果的・継続的に環境へ配慮した取り組みを、積極性・主体性をもって行うための方法を定めること。
【特徴】
・内容や費用の面で、比較的中小企業も取り組みやすい
・CO2排出量/ 廃棄物排出量/ 水使用量の把握が必須
・省エネルギー/廃棄物の削減やリサイクル/節水/製品の環境性能の向上/サービス改善の実施が必須
【認定方法】
1, 審査の申し込み
2, 担当審査員通知
3, 必要書類の送付
4, 審査(書類審査と現地調査)
5, 審査員から地域事務局へ審査結果を報告
6, 地域事務局から中央事務局へ判定結果を報告
7, 中央事務局から事業者へ判定結果を通知
7, 認証・登録契約の締結/ 認証・登録料の納付
8, 認証・登録証の送付/ ロゴマーク使用承認
3, ISO認証
【目的】
製品やサービスに関して「世界中で同じ品質、同じレベルのものを提供できる」ことを目的とした国際認証機関。世界に通用する規格の制定を行うことで、国際取引をスムーズにすることを目指している。そのうちの1つに、環境を保護し、環境パフォーマンスを向上させるための環境マネジメントシステム規格「ISO 14001」がある。
【特徴】
・国際認証
・マネジメントシステム/リーダーシップ/環境目標と計画/支援体制などの構築が求められる
・紙/水/電気の節約のみにとどまってしまう場合がある
【認定方法】
1, 事前相談・見積り
2, 契約(審査登録申込書・審査登録契約書を提出)
3, 登録審査(文面審査)
4, 登録審査(実施状況の評価)
5, 登録可と判定された場合、登録書発行(3年間有効)
6, 登録後は定期的に審査を行い、登録の更新をする必要がある
まとめ
今回は企業の気候変動/CO2削減/環境分野において受けることのできる第三者認証について解説いたしました。サステナビリティに関する取り組みは、消費者の選択やESG投資にも影響します。そのため、第三者目線での公正・公平な判断がされる認証は情報の信頼獲得に繋がります。
参考
[1] J-SUS「第三者審査に関する情報-Q&A集」
[2] 環境省 「We Mean Businessについて」
[3] Coolfood「Coolfood Meals」
[4] 国土交通省「脱炭素化に関する既存の認証制度等」
[5] 日本品質保証機構「概要 | ISO 14001(環境) | ISO認証 | 日本品質保証機構(JQA)」
[6] 環境省「4, SBT参加企業」
[6] 環境省「SBTに参加する日本企業の認定数が更に増加」
[7] 国土交通省「脱炭素化に関する既存の認証制度等」
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