Last Updated on 2024年2月26日 by Yuma Yasui

気候変動対策の重要性が日々高まる中で、様々なイニシアチブへ注目が集まっています。本記事では、その中でも認定取得企業が急増しているScience-Based-Targets (以下、SBT)の概要について解説いたします。

関連記事:SBT認定とは?押さえておくべき認定のコツや必須基準を解説

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SBT概要

SBTiとは

SBTとは「Science Based Targets」(科学と整合した削減目標)の略称です。世界の平均気温の上昇を1.5度未満に抑えるために、科学的な知見と整合した削減目標をSBTイニシアチブ(以下SBTi)が作成しています。

2014年9月に4つの国際団体(CDP、WRI、WWF、UNGC)が運営主体となりSBTiを設立しました。このSBTiが企業に対して削減目標の設定を求めていて、企業が設定した目標が基準に整合しているかを検証しています。

世界の平均気温の上昇を1.5度未満に抑えるため、企業に対して科学的な知見と整合した削減目標を設定するよう求めるイニシアチブです。

2014年9月に4つの国際団体(CDP、WRI、WWF、UNGC)が運営主体となりSBTiを設立しました。この“SBTi”の事務局が認めた目標値のことを “SBT”といいます。

※1.5度目標とは?

「1.5度目標」とは産業革命時期を基準とした2100年までの気温上昇を1.5度に抑える目標です。パリ協定において設定され、その後のCOP26においても合意されました。

1.5度目標についての近時の動向については「国際エネルギー機関(IEA)が1.5°Cに気温上昇を抑えるための、新しい脱炭素ロードマップを発表」をご覧ください。

SBTの取得状況

SBTの取得企業数は世界全体で急激に伸びており、2023年12月時点でSBT認定を取得した企業数は累計4,000社に達しています。中でも日本企業の増加は著しく、2023年9月時点で601社が認定を取得しています。[1]

[2]環境省(2023)「SBT(Science Based Targets)について」より引用

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SBT取得のメリット

SBTを取得するメリットの一つとして、投資家と顧客双方に対する自社の魅力向上に繋がることが挙げられます。

投資家への魅力

SBTは気候変動に対する先進的な取り組みを行っていることを示します。SBTiがコミットした企業の役員に行った調査によれば、52%が投資家の信頼性向上につながったと回答しました。[3]

また、SBTの取得はCDPやWBCSD削減貢献量等の投資家が注視するイニシアチブでの評価向上にもつながります。

具体的な例としては、下記の通りです。

  • CDPにおいては、「リーダーシップ」、「マネジメント」、「認識」、「情報開示」での得点向上につながります。[4]
  • WBCSDの削減貢献量ガイダンスにおいては、SBTを取得することで、削減貢献量主張の前提となる「自社の適格性」要件を充足します。[5]

顧客への魅力

SBTの取得は顧客企業にとっても大きな魅力となります。SBTを取得するということは、自社気候変動に対するレジリエンスを示すことに繋がるからです。

更にScope3削減を設定している企業の中には、「サプライヤーの一定割合にSBT目標を設定させる」ことを自社SBT目標に含めている企業もあります。[6] 2023年9月以降サプライヤーにSBT申請を要求する大企業が増加している傾向にあります。

※「サプライヤーにSBT目標を設定させる」ことを目標に含めている企業例

大和ハウス工業、第一三共、ナブテスコ、大日本印刷、イオン、武田薬品工業、国際航業、ロッテ、ソニーグループ等。

SBTの種類

SBTには、様々な種類があります。ここでは、主要なものをご紹介します。

時間軸別

SBTでは、Near-term目標のみの設定とNet-Zero目標の設定の二つの選択肢があります。

Near-term目標は申請時から5~10年後を目標年とした削減目標を指します。一方で、Net-Zero目標はNear-term目標に加えて2050年までに自社サプライチェーン排出量をネットゼロにする目標も併せて設定する必要があります。

それぞれの目標区分の詳細については、下記コラムをご参照ください。
ネットゼロ:SBT ネットゼロとは?概要や取得事例をわかりやすく解説 

産業別SBT

SBTiは一部の産業に属する企業について、個別のガイダンスを作成しています。該当するセクターは、各ガイダンスに準拠した開示をしなければなりません。ガイダンスが存在する産業は下図の通りです。

Science-Based Targets “Sector Guidance” に基づきリクロマ作成。[7]

中小企業向けSBT

SBTiは中小企業(SME)向けに、簡略化された手順で取得できるSBTを用意しています。

2024年1月から該当要件が変更され、5つの必須要件と追加4項目中2項目に該当することが必要になりました。

Science-Based Targets “SBTi Announces Updated SME Definition and Fees”に基づきリクロマ作成[8]

SBTの申請手順

SBTの取得は①コミットメント②削減目標の設定と申請書の提出③SBTi事務局の質問対応の3段階のプロセスを経る必要があります。それぞれの概要についてご説明いたします。

①コミットメント

SBT認定の申請をする前に、「コミットメント」をする必要があります。コミットメントとは24か月以内にSBT目標を設定することの宣言を指します。ホームページからのフォーム提出とコミットメントレターの提出を行うと「committed(コミットメント済み)」とSBTiのホームページに表示されます。

②削減目標の設定と申請書の提出

SBTの要求水準に基づき削減目標を設定し、事務局による審査に必要となる質問に回答する形で「申請書」を作成します。提出後は審査日程の予約を専用サイトから行い、審査開始となります。ただし2023年12月現在では予約が4ヵ月先まで埋まっており、取得企業が増加傾向であることを踏まえると今後はより混雑することが想定されます。そのためSBT取得はお早めに進めることを推奨しております。

③SBTi事務局の質問対応

審査日になると、SBT事務局から追加での質問が送られてきます。最短(30日)での審査完了のためには、この質問に2日以内に回答する必要があります。

取得後

SBT取得後は、削減の進捗状況について毎年CDP回答や自社サステナビリティ開示資料等において開示することが求められています。

またM&Aによる組織バウンダリーの重大な変化等が起きた場合には、目標の再設定を行う必要があります。詳しくはNear-term/Net-Zeroの記事をご覧ください。

まとめ

この記事では、SBT目標とその種類の概要をご紹介いたしました。

SBT取得企業が急速に増加し、事務局も基準を充実させている中で、今後の動向もより注視していく必要があるでしょう。

参考文献

[1]Science Based Targets (2023) “SBTi Monitoring Report
[2]環境省(2023)「SBT(Science Based Targets)について
[3]Galvin Dexter(2018) “Six business benefits of setting Science Based Targets
[4]前掲注(2)
[5]World Business Council for Sustainable Development (2023) “Guidance on Avoided Emissions: Helping business drive innovations and scale solutions toward Net Zero
[6]前掲注(2)
[7]Science Based Targets(2023)“Sector Guidance”(2023年11月29日時点)
[8]Science Based Targets(2023)”SBTi Announces Updated SME Definition and Fees

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Author

  • Hiroto Hasegawa

    大学では気候変動の経済学を専攻し、リクロマ株式会社には創業初期よりコンサルタントとして参画。 情報開示支援を中心に温室効果ガスの排出の算定や高度なシナリオ分析の業務を担う。