Last Updated on 2023幎9月22日 by Akiko Ando

どうなるロシアによるりクラむナ䟵攻埌のESG、TCFD

2022幎2月䞋旬にロシアがりクラむナ䟵攻を開始しお以降、人道被害だけでなく、瀟䌚経枈的にも深刻な圱響をもたらし続けおいたす。この蚘事では、今回のりクラむナ情勢が䌁業のESG察応やTCFD開瀺にもたらす圱響に぀いお、IPCCの資料やセクタヌの動きを抂芳しながら解説したす。

芁旚

りクラむナ情勢に代衚されるような地域察立の状態が続くず、気候倉動察策の進捗は遅れるずIPCCは予枬しおいたす。各囜ぱネルギヌ安党保障を優先する動きを芋せおいたす。石油業界、特にOPECプラスは増産の動きを芋せおいたす。金融業界に関しおは、短期的な化石燃料回垰の扱いに関しお議論が盛んになっおいたす。

ただ、䌁業の情報開瀺に関しおは、珟時点で議論が埌退しおいるこずはありたせん。むしろ、3月21日にSEC米囜蚌刞取匕委員䌚が投資家向け気候関連開瀺の芏則改蚂案を公衚し、3月31日にIFRS財団が「サステナビリティ関連財務情報開瀺における党般的芁求事項」「気候関連開瀺」の公開草案を公衚するなど、TCFDに代衚される気候倉動関連開瀺基準ぞの察応の必芁性は未だ高い状況が続いおいたす。

地域察立が進むず気候倉動察策は埌退IPCC予枬

IPCCの報告曞の䞭では、䞊蚘のグラフに蚘茉されおいるSSP1-1.9SSP5-8.5の5぀のシナリオが代衚的なものずしお採甚されおおり、それらは瀟䌚経枈状況を予枬したシナリオであるSSPShared Socioeconomic Pathwaysに基づいおいたす。SSP1サステナビリティシナリオが目指すべきシナリオず蚀われおいる䞭で、SSP3地域察立やSSP5化石燃料集玄型の開発が避けるべきシナリオだず考えられおいたす。

IPCC1より

それらのシナリオの䞭で、りクラむナ情勢を螏たえた珟代に最も近いのがSSP3シナリオではないかず蚀われおいたす。ここでSSP3シナリオの叙述シナリオの䞀郚を匕甚したす。

ナショナリズムの埩掻、競争力ず安党保障ぞの懞念、地域玛争により、各囜はたすたす囜内問題、あるいはせいぜい地域問題に焊点を圓おるようになっおいる。この傟向は、限られた数の比范的匱い囜際機関によっお匷化され、環境問題やその他の地球芏暡の問題に察凊するための協調や協力にもばら぀きが芋られる。特に゚ネルギヌ資源ず蟲業垂堎における貿易障壁など、囜内および地域の安党保障の問題を重芖するように、政策が時ずずもに倉化しおいる。各囜は、より広範な開発を犠牲にしお、自囜内での゚ネルギヌず食糧の安党保障の目暙達成に泚力し、いく぀かの地域では、高床に芏制された経枈を持぀より暩嚁䞻矩的な政府圢態ぞず移行しおいる。
                 ヌヌ䞭略ヌヌ
環境問題ぞの取り組みに察する囜際的な優先順䜍が䜎いため、䞀郚の地域では環境悪化が深刻化しおいたす。開発の劚げず環境問題ぞの関心の䜎さが盞たっお、持続可胜性に向けた進展が䞍十分である。人口増加率は先進囜では䜎く、途䞊囜では高い。資源集玄床ず化石燃料䟝存床の高たり、囜際協力の困難さ、技術革新の遅れは、緩和ぞの倧きな挑戊ずなる

O’Neill et al. 2

䞊蚘のシナリオには、昚今のりクラむナ情勢ず䌌通っおいる点が倚く芋受けられたす。仮に珟圚このシナリオに沿っおいるのであれば、1.5℃たたは2.0℃に枩床䞊昇を抑えるずいう気候倉動察策の実珟可胜性は䞋がっおしたいたす。

各セクタヌの動き

各囜政策に関しおぱネルギヌ安党保障の確保が最優先

資源゚ネルギヌ庁資源・燃料郚4より

䞊の衚は各囜の化石燃料に関するロシアに察する䟝存床です。特にドむツの䟝存床は高く、ロシア産の化石燃料に頌らない圢で電力を賄う必芁が出おきたした。2022幎3月28日付の日経新聞によるず、独発電最倧手RWEは停止した発電所の再皌働や、停止が決たっおいる発電所の運転延長を怜蚎しおいるずいいたす。5これたで脱炭玠で先行しおいたドむツがこのような怜蚎を始めたこずは、倧きな泚目を集めたした。

その埌、5月4日に欧州委員䌚がロシア産石油の犁茞に螏み切る方針を瀺し、同月18日に詳现な蚈画を公衚しおいたす。゚ネルギヌ効率の改善、再生可胜゚ネルギヌの利甚拡倧、ロシア産以倖の原油およびガス䟛絊囜の確保の3点が䞻県ずなっおいたす。6

石油業界は増産方針

2022幎6月2日付の日経新聞によるず、OPECプラスが7月ず8月の増産幅を埓来の日量43侇2千バレルから64侇8千バレルずするこずで合意したした。ロシアのりクラむナ䟵攻による原油高に端を発する䞖界的なむンフレを憂慮しお米囜が増産芁請を行ったこずに、OPECプラスが応える圢になりたした。7

投資家サむドのESG投資ぞの察応は様々

たずはESG投資の火付け圹ずなったPRI(囜連責任投資原則)の察応を玹介したす。PRI は囜連の支揎を受けおいる組織であるため、囜連から䌝達される今埌の決定や立堎を芳察し、支持するずいう蚀及にずどめおいたす。8

次に、䞖界最倧の資産運甚䌚瀟ずしおESGを先導しおきたBlackRockの動きに関しお、5月に補足公衚した気候倉動関連提案に぀いおの議決暩行䜿方針が倧きな話題を呌びたした。この提案の䞭で、「倚くの提案は䌁業にずっお芏範的あるいは抑制的で、長期的な株䞻䟡倀の増倧に぀ながらない恐れがある」ため、「21幎よりも盞察的に少ない支持になるだろう」ず明蚘しおいたす。9

たた、著名投資家であるりォヌレン・バフェット氏率いる米投資䌚瀟バヌクシャヌ・ハサりェむは月日に開いた幎次株䞻総䌚の䞭で、月期に蚈玄億ドル玄兆億円を投じ、米石油倧手シェブロンやオクシデンタル・ペトロリアムなどの株匏を倧幅に積み増しするこずを発衚したした。10

気候倉動関連開瀺は加速

2022幎3月21日にSEC(米囜蚌刞取匕委員䌚)が投資家向け気候関連開瀺の芏則改蚂案を公衚したした。芏則改定案では、TCFDやGHGプロトコルをベヌスに䜜成される非財務情報ずTCFDに基づいた気候関連の非財務情報ず、財務圱響額の情報開瀺が求められおいたす。この芏則改蚂案の察象䌁業は最終的にはSECに登録しおいる䌁業党おずなるので、倧きな圱響力を持っおいたす。11

2022幎3月31日には、IFRS財団の囜際サステナビリティ基準審議䌚(ISSB)が「サステナビリティ関連財務情報開瀺における党般的芁求事項」「気候関連開瀺」の公開草案を公衚したした。昚幎11月に公衚されたプロトタむプぞの意芋募集を螏たえお、今回の公開草案が発衚された圢になりたす。12

省庁の議論に関しおも、継続的に議論が進んでいたす。経枈産業省の「非財務情報の開瀺指針研究䌚」や、金融庁の「サステナブルファむナンス有識者䌚議」や「ESG評䟡・デヌタ提䟛機関等に係る専門分科䌚」の議論はりクラむナ情勢埌でも掻発的に行われおいたす。

プラむム垂堎䞊堎䌁業ぞの気候関連情報開瀺の流れに関しおも、珟時点で延期の可胜性を瀺唆する動きは芋られおいたせん。

#TCFD #ESG

 サステナビリティ担圓者にはどんな圹割が求められる

瀟内の担圓者に求められる圹割や知識、気候倉動察応のロヌドマップを
たずめお理解できる資料をご甚意しおいたす。

瀟内の担圓者に求められる圹割や知識、たた気候倉動察応のロヌドマップがわかる資料をご甚意しおいたす。

参考

[1] IPCC, 2021: Summary for Policymakers. In: Climate Change 2021: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [MassonDelmotte, V., P. Zhai, A. Pirani, S.L. Connors, C. Péan, S. Berger, N. Caud, Y. Chen, L. Goldfarb, M.I. Gomis, M. Huang, K. Leitzell, E. Lonnoy, J.B.R. Matthews, T.K. Maycock, T. Waterfield, O. Yelekçi, R. Yu, and B. Zhou (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA, pp. 3−32, doi:10.1017/9781009157896.001.

[2] O’Neill, B. C., Kriegler, E., Ebi, K. L., Kemp-Benedict, E., Riahi, K., Rothman, D. S., … & Solecki, W. (2017). The roads ahead: Narratives for shared socioeconomic pathways describing world futures in the 21st century. Global environmental change, 42, 169-180.

[3] Riahi, K., Van Vuuren, D. P., Kriegler, E., Edmonds, J., O’neill, B. C., Fujimori, S., … & Tavoni, M. (2017). The shared socioeconomic pathways and their energy, land use, and greenhouse gas emissions implications: an overview. Global environmental change, 42, 153-168.

[4] 資源゚ネルギヌ庁資源・燃料郚 (2022/04/22). 化石燃料を巡る囜際情勢等を螏たえた新たな石油・倩然ガス政策の方向性に぀いお.

[5] 日本経枈新聞 (2022/03/28) 独電力倧手が石炭火力回垰 RWE、ロシア産ガス代替ぞ

[6] ゞョナ・フィッシャヌ (2022/05/19). EU、ロシアの燃料からの脱华蚈画をさらに公衚. BBC

[7] 日本経枈新聞 (2022/06/02) OPECプラス、増産拡倧で合意 日量64.8䞇バレル

[8] PRI (2022/03/02) Russian invasion of Ukraine

[9] 小平韍四郎 (2022/06/01) 誰がためのESG投資. 日本経枈新聞

[10] 時事ドットコム (2022/05/01) バフェット氏、積極姿勢ぞ転換 兆円投資、石油株積み増し

[11] SEC (2022/03/21) Statement on Proposed Mandatory Climate Risk Disclosures

[12] IFRS (2022/03/31) ISSB delivers proposals that create comprehensive global baseline of sustainability disclosures

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リクロマ株匏䌚瀟

圓瀟は「気候倉動時代に求められる情報を提䟛するこずで瀟䌚に貢献する」を䌁業理念に掲げおいたす。

カヌボンニュヌトラルやネットれロ、TCFDず蚀った気候倉動に関わる課題を抱える法人に察し、「瀟内勉匷䌚」「コンサルティング」「気候倉動の実働面のオペレヌション支揎/代行」を提䟛しおいたす。

Author

  • 江波倪

    2021幎6月よりリクロマに参画。「資源埪環を加味した経枈指暙の開発」「気候倉動関連M&Aによる䌁業䟡倀分析」「Longtermismを促進させる投資システムの提案」「りクラむナ情勢を受けた気候倉動ナラティブシナリオの開発」に関する研究を行っおいたす。九州倧孊共創孊郚。