目次
  • 要旨
  • IPCCとは
  • これまでの評価報告書の流れ
  • 第一作業部会による最新の報告書に期待されること
要旨

2021年7月26日、IPCCの第6次評価報告書の第一次作業部会の総会が開幕しました。承認プロセスを経て同年8月9日に自然科学からの知見をまとめた報告書が公表されました。第二次作業部会以降の報告書の公表は来年2月以降になる見通しです。

IPCCとは

「気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)」は、人為起源による気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、1988 年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画 (UNEP)により設立された組織です。

まず、途上国先進国問わず各国政府の推薦などで選ばれた専門家が集結します。そして、これまでに発表された論文や観測・予測データをまとめ何度も査読を重ねた上で、6年から7年ごとに以下の4種類の報告書を公表します。第1作業部会がまとめる『気候変動ー自然科学的根拠』、第2作業部会がまとめる『気候変動ー影響・適応・脆弱性』、第三作業部会がまとめる『気候変動ー気候変動の緩和』、以上の3つをまとめた『統合報告書』です。以上の報告書は世界中の科学者の査読を通過した、環境分野において最も信頼のおける報告書として、国際交渉や各国の政策立案に大きな影響力を持ちます。

                           

(IPCCのHPを元に筆者作成)

これまでの評価報告書の流れ

1990年の第1次評価報告書に始まり、2014年の第5次評価報告書までが発表されています。次を重ねるごとに進展している例としては、温暖化の主因が人間の活動である可能性が徐々に上がり、第5次報告書では95%以上と結論付けられていることが挙げられます。この評価報告書が2015年のパリ協定の合意に寄与したのは間違いないでしょう。実は例外的に2018年度に『1.5℃特別報告書』が公表されており、1850~1900年のレベルからの気温上昇をできれば1.5℃に、難しくても2℃に抑える必要があることを科学的に提起しています。これが近年のSBTやTCFD、脱炭素の国際潮流を後押ししているのです。

第一作業部会による最新の報告書に期待されること

もちろんこれまで蓄積してきた気温や海面上昇、極域のデータから、現時点で最も確からしい気候変動の進捗状況を知ることができます。それに加え、今回は新たに気候変動下での天候と異常気象という章が追加されているため、頻度は低いものの大きな損害を与える事象に対する科学的知見も集約されています。2021年7月だけでもカナダのヒートドーム、ドイツの鉄砲水など、異常気象が生活を脅かす例が報告されていることもあり、人々の注目度は高まっています。この報告書で注目すべき点に関しては、次の記事で取り上げます。


引用・参考文献
Climate change: Researchers begin discussions on vital report
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)
IPCC第5次評価報告書 特設ページ
IPCC「1.5℃特別報告書」の概要
気候変動の国連IPCC、作業部会が開幕…熱波・干ばつの予測など報告書承認へ
IPCC
IPCC組織の概要


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当社は「気候変動時代に求められる情報を提供することで社会に貢献する」を企業理念に掲げています。

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