目次
  • 要旨
  • お断り
  • どの物質が温暖化に寄与しているか
  • 参考URL
要旨

2021年8月9日に公開されたIPCC第6次評価報告書の第一次作業部会担当部分に関して複数回に分けてポイントを説明していきます。今回は、これまでの温暖化に寄与してきた物質について解説しています。今回の報告書では、温暖化を促進する物質として二酸化炭素やメタン、抑制する物質としては二酸化硫黄などが上げられています。

お断り

AR6:第6次評価報告書のこと

WG1:第一作業部会のこと。自然科学的根拠の部分を担当する作業部会に当たります。

SPM:政策決定者向け要約のこと

AR6_WG1_SPM:簡単のために用いた筆者による造語。「第6次評価報告書_第一作業部会_政策決定者向け要約」という意味で、今回公表された報告書を指します。”Climate Change 2021 The Physical Science Basis Summary for Policymakers” と同義です。

どの物質が温暖化に寄与しているのか?

IPCC『Climate Change 2021 The Physical Science Basis Summary for Policymakers』を元に筆者作成

AR6では上記のグラフのように、各物質が現時点での温暖化にどれほど寄与しているかをまとめています。

二酸化炭素が最も寄与しているものの、メタンもそれに追随しています。温室効果ガスの温暖化寄与度を導き出すには、「排出量」と「光線の吸収しやすさ」と「大気滞留時間」を主に考える必要があります。「光線の吸収しやすさ」とは、可視光線や赤外線をどれくらい吸収できるかどうかを示します。これが高いほど温暖化に寄与することとなります。「大気滞留時間」とは、どれくらい大気中に存在することが可能か、いわば寿命のようなものです。これが長いほど後戻りができない影響をもたらします。「排出量」の観点では100倍CO2の方が多いです。これに対して、「光線の吸収しやすさ」はメタンの方が数十倍~数百倍程度高いと言われています。最後に「大気滞留時間」に関しては、メタンは12.4年といわれているものの、CO2は海洋・陸とも頻繁に影響し合っているので具体的な数値は出ていません。これらが複雑に絡み合って、上のようなグラフとなっているのです。

温室効果ガスが軒並み温暖化に寄与している中、二酸化硫黄など寒冷化を進める物質もあります。これらはエアロゾルという形態をとって寒冷化に寄与しています。エアロゾルとは、気体中に浮遊する微小な液体/固体の粒子と周囲の気体の混合体のことを指します。これらの物質は大気汚染物質として扱われることが多いです。しかし、主に次の2通りの方法で寒冷化に寄与しています。一つ目は直接効果といい、エアロゾル本体が光線を反射/吸収することで温暖化/寒冷化に寄与するものです。もう一つが間接効果といい、エアロゾルが雲核となり、できた雲が光線を反射/吸収することで温暖化/寒冷化に寄与するものです。

エアロゾルを増やすことで温暖化は抑制できるものの、大気汚染という別の環境問題が発生してしまい本末転倒となります。だからこそ、温暖化を促進させている二酸化炭素等温室効果ガスを削減していく方向で岐路を見つけていく必要があるのです。

また、二酸化炭素ではなくメタンの排出量さえ減らせば大丈夫という意見も考えられます。しかし、二酸化炭素はメタンと異なり地中に固定されるまでの時間が長く、一度排出すると後戻りできなくなる点、二酸化炭素の方が人間活動による排出の割合が高い点から、メタンだけではなく二酸化炭素の削減も求められているのです。この点に関して深く知りたい方は、物質収支に関して信頼性の高い報告書を発表しているGlobal Carbon Projectの最新報告書を参照することをお勧めします。

参考URL

IPCC(2021). Climate Change 2021: The Physical Science Basis
https://www.ipcc.ch/report/sixth-assessment-report-working-group-i/

環境省(2021). 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第 6 次評価報告書第 1 作業部会報告書(自然科学的根拠)政策決定者向け要約(SPM)の概要(ヘッドライン・ステートメント
http://www.env.go.jp/press/109850/116628.pdf

環境省(2021). 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第 6 次評価報告書第 1 作業部会報告書(自然科学的根拠)と従来の IPCC 報告書の政策決定者向け要約(SPM)における主な評価
http://www.env.go.jp/press/109850/116629.pdf

国立環境研究所(2014). エアロゾルの温暖化抑止効果
https://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/14/14-1/qa_14-1-j.html

Global Carbon Project(2020). Global Carbon Budget
https://www.globalcarbonproject.org/carbonbudget/index.htm

Global Carbon Project(2020). Global Methane Budget
https://www.globalcarbonproject.org/methanebudget/index.htm

記:江波 太

リクロマ株式会社<br>
リクロマ株式会社

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