Last Updated on 2023年9月22日 by Akiko Ando
- 要旨
- ESG関連ファンドの拡大とパフォーマンス
- 参考URL
要旨
金融庁は2021年6月25日、資産運用会社の現状や課題をまとめた「資産運用業高度化プログレスレポート2021」を公表しました。ESG関連ファンドの数や規模は順調に拡大しているものの、現状は他ファンドと比べてパフォーマンスに大きな差は見られないと結論付けています。この差に関しては、長期的な視点でも見ていく必要がありそうです。
ESG関連ファンドの拡大とパフォーマンス

金融庁(2021)『資産運用業高度化プログレスレポート2021』より
ESG関連ファンドの拡大
ESG関連ファンドの数はグラフAのように2018年から急速に伸びています。21年は上半期だけで39本設定されているので、昨年比で倍増しそうな勢いとなっています。
各ファンドにおける純資産額に関しても、グラフBのように、18年以降に500億円以上のファンドが現れだしました。2020年には、アセットマネジメントOneが設定した「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)」が登場し、現在では1兆円を超えているほどです。
ESG関連ファンドのパフォーマンス
グラフCでは、ファンドのリスク(リターンのばらつき)に対するリターンの大きさを表すシャープレシオについて、ESG関連ファンドと他のファンドを比較しています。このグラフからは、ESG関連ファンドの優位性は読み取れません。
ESG関連ファンドとそれ以外のファンドで有意な差が見られたのが、表Dの信託報酬の部分です。信託報酬とは、ファンド運用の管理コストとして投資家が運用会社に払う報酬のことで、この値が大きいほど投資家のコストとなります。ESG関連アクティブファンドがその他のファンドと比べて高い値となっているので、ESG銘柄の選定等に比較的高いコストがかかっているものと想像されます。
さらに、下記のグラフのように、ESG関連ファンドとその他ファンドのESGスコアの違いを検証しています。ESG関連ファンドのスコアがその他のファンドをわずかに上回りました。しかし、ESGとは関係ない日経平均連動ETFのスコアがESG関連ファンドをわずかに上回っています。これを踏まえ、このレポートはESGスコアに大きな違いは見られないと結論付けています。

金融庁(2021)『資産運用業高度化プログレスレポート2021』より
参考URL
金融庁(2021)『資産運用業高度化プログレスレポート2021』
https://www.fsa.go.jp/news/r2/sonota/20210625_2/01.pdf
半沢 智 (2021)『ESG投資信託、2021年倍増も運用成果の優位性は見えず』日経ESG
https://project.nikkeibp.co.jp/ESG/atcl/column/00005/080500105/?P=2
記:江波 太
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