目次
  • 要旨
  • お断り
  • 社会経済シナリオ
  • 各シナリオにおける排出量予測
  • 各シナリオにおける温暖化予測
  • 参考URL
要旨

2021年8月9日に公開されたIPCC第6次評価報告書の第一次作業部会担当部分に関して複数回に分けてポイントを説明していきます。今回は、当報告書で頻繁に用いられている5つのシナリオについて解説しています。今回の報告書では、今後の国際情勢のシナリオである社会経済シナリオを元に5つのシナリオが設定されています。

お断り

AR6:第6次評価報告書のこと
WG1:第一作業部会のこと。自然科学的根拠の部分を担当する作業部会に当たります。
SPM:政策決定者向け要約のこと
放射強制力:気候学における用語で、地球に出入りするエネルギーが地球の気候に対して持つ放射の大きさのこと。英語の”Radiative forcing”の訳語。正の放射強制力は温暖化、負の放射強制力は寒冷化を起こす。(Wikipediaより)

社会経済シナリオ

国際連合欧州経済委員会『Shared Socioeconomic Pathways (SSPs)』を元に筆者作成

気候変動の予測をするためには、温室効果ガスの排出予測などが必要となります。その排出量は、国際社会の行く末に大きく依存します。そこで用意されたのが5つのシナリオです。それらを緩和策の困難性(どれほど気候変動対策ができるか)と適応策の困難性(どれほど気候変動の影響に対応できるか)の軸でポジショニングを行ったのが上図です。

SSP1(持続可能)シナリオは、SDGsが達成される社会となります。SSP2(中庸)シナリオは、4つのシナリオの中間的な社会です。SSP3(地域分断)シナリオは、自国優先が進み、国際協調が破綻する社会となります。SSP4(格差)シナリオは、全体的な経済発展は進まないものの、富の偏在が解決せずに残る社会です。SSP5(化石燃料依存の発展)シナリオは、経済発展が進むものの、その源泉が化石燃料のままである社会となります。

各シナリオにおける排出量予測

IPCC『Climate Change 2021 The Physical Science Basis Summary for Policymakers』を元に筆者作成

今回の報告書では、SSP1-1.9、SSP1-2.6、SSP2-4.5、SSP3-7.0、SSP5-8.5の5つのシナリオが導入されています。例えば、SSP1-1.9は、SSP1(持続可能シナリオ)の内、2100年の段階で放射強制力が1.9W/m²であるシナリオになります。5つの社会経済シナリオの内SSP4を除く4つ、SSP1に関しては2パターンの計5つのシナリオが採用された形になります。SSP4に関しては現実性が低いと判断され、除かれています。

左のグラフに注目すると、SSP1-1.9、SSP1-2.6、SSP2-4.5の3つのシナリオで進むと、CO2排出量は減少傾向に移行することができる事が分かります。非CO2温室効果ガス、大気汚染物質に関してもこの3つのシナリオをたどると温暖化を抑制できることが分かります。

各シナリオにおける温暖化予測

IPCC『Climate Change 2021 The Physical Science Basis Summary for Policymakers』を元に筆者作成

各シナリオに対して、産業革命前に比べて2081-2100年の気温変化を予想したものが上図となります。このグラフから、2度未満の温暖化に抑えるためには、SSP1-1.9、SSP1-2.6の2つのシナリオをたどる必要があることが分かります。十分高い確率でこれを達成するためには、SSP1-1.9のシナリオをたどる必要があるのです。だからこそ、SSP1の持続可能シナリオを目指す動きが各国で見られているのです。

参考URL

IPCC(2021). Climate Change 2021: The Physical Science Basis
https://www.ipcc.ch/report/sixth-assessment-report-working-group-i/

環境省(2021). 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第 6 次評価報告書第 1 作業部会報告書(自然科学的根拠)政策決定者向け要約(SPM)の概要(ヘッドライン・ステートメント)
http://www.env.go.jp/press/109850/116628.pdf

環境省(2021). 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第 6 次評価報告書第 1 作業部会報告書(自然科学的根拠)と従来の IPCC 報告書の政策決定者向け要約(SPM)における主な評価
http://www.env.go.jp/press/109850/116629.pdf

国際連合欧州経済委員会(n.d.). Shared Socioeconomic Pathways (SSPs)
https://unece.org/fileadmin/DAM/energy/se/pdfs/CSE/PATHWAYS/2019/ws_Consult_14_15.May.2019/supp_doc/SSP2_Overview.pdf

記:江波 太

リクロマ株式会社<br>
リクロマ株式会社

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