Last Updated on 2024年5月2日 by Yuma Yasui

温室効果ガス排出量の取引を可能にするカーボンクレジットの発行は、脱炭素化に伴い急激に増加しています。
本記事では、カーボンクレジットの概要・制度・各クレジットの種類と特徴について解説いたします。

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カーボンクレジットとは?

温室効果ガス削減量や吸収量をクレジットとして発行し、企業間での排出量取引を可能にする仕組みです。また、クレジットは排出削減単位「t-CO2(=1トン)」で認証され、CO2排出量市場で取引されます。

購入側のメリット

削減努力を行った上でもどうしても削減しきれない温室効果ガスの排出量の相殺が可能です。(カーボン・オフセット)
そして購入分を自社の削減実績に組み込むことができます。

発行側のメリット

発行したカーボンクレジットが買い取られた場合に売却益を得ることができます。クレジットは、主に排出削減や吸収が可能となる事業の実施により発行されます。

カーボンクレジットの各制度について

ベースライン&クレジット制度

温室効果ガスの排出削減量を売買する制度を指します。

新設備の導入などで削減できた排出量を商品として考え、カーボンクレジットとして発行し販売します。そのクレジットを、どうしても排出が避けられない事業を行う会社が購入します。購入側は、購入によって削減への貢献を示すことができます。

キャップ&トレード制度

定められた温室効果ガスの排出枠を売買する制度を指します。

排出量を事業所ごとに定められた上限よりも抑えることができた場合、排出枠を商品として販売します。そして、どうしても排出を基準に抑えることのできない企業がその枠を購入することで上限を増やすことができます。

カーボンクレジットの制度の違い(経済産業省HPより)
出典:経済産業省 カーボン・クレジット・レポートの概要 参考資料4 (p.14)

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カーボンクレジットの種類

経済産業省によるカーボン・クレジット・レポートの概要では、以下の分類がされています。

カーボンクレジットの種類(経済産業省HPより)
出典:経済産業省 カーボン・クレジット・レポートの概要 参考資料4 (p.16)


今回はこの分類に沿って、各カーボンクレジットについて解説いたします。

①国連主導のカーボンクレジット

京都メカニズムクレジット

他国での排出量の削減をクレジットとして購入し、自国の議定書における目標達成に含めることができる制度です。京都メカニズムクレジットは主に以下の三種類があります。

・共同実施(JI)
先進国同士が共同で削減プロジェクトを行った上での取引制度。

・クリーン開発メカニズム(CDM)
途上国と先進国が共同で削減プロジェクトを行った上で、途上国が販売側、先進国が購入側となる制度。

・グリーン投資スキーム(GIS)
先進国同士のクレジット取引によって得られた利益を環境問題対策にのみ当てる制度。


② 二国間のカーボンクレジット制度(政府主導)

JCM

先進国と途上国が共同で温室効果ガスの排出の削減を行う制度です。主に先進国は途上国に対し、低炭素技術や製品、システム、インフラ等を提供します。そして、削減できた排出量をカーボンクレジットとして二国間で分け合います。

途上国のメリット:低炭素への移行ができる


日本のメリット:技術の提供により得られた削減効果を、日本の削減目標の達成に含めることができる


③国内のカーボンクレジット制度(政府主導)

Jクレジット

企業や自治体による
・再生可能エネルギーや省エネルギー設備の導入による温室効果ガスの排出削減量
・森林経営や植林活動等によるCO2等の吸収量


を、「クレジット」として国が認証し、国内で取引する制度です。

また、中国には「CCER」、オーストラリアには「ACCUs」という国内取引制度があります。

④民間主導のカーボンクレジット(ボランタリークレジット)

先に解説したカーボンクレジットは、国連や政府によって発行されています。一方で、ボランタリークレジットは民間が主体となりクレジットを発行します。主にNGOや企業、団体、個人などが主体となります。

VCS (Verified Carbon Standard)

【特徴】
VCSは世界で最も取引量が多いボランタリークレジットです。温室効果ガス排出量の削減に対し、VCS事務局がクレジットを発行します。クレジットの創出方法は「エネルギー」「工業プロセス」「建設」「輸送」「廃棄物」「工業」「農業」「森林」「草地」「湿地」「家畜」「家畜と糞尿」の11種類が認められています。また、11種類に該当しない独自の方法論の提案も可能です。

【主導】
国際排出量取引協会や世界経済人会議等、民間企業が参加している団体により設立されました。現在はカーボンオフセット基準を管理する米団体「Verra」によって運営されています。

GS (Gold Standard)

【特徴】
クレジットの発行を行うとともに、国連主導のCDMやJI等、各プロジェクトの「質」の高さに関する認証も行っています。よって、GS認証を受けたプロジェクトは、本質的な持続可能な開発への貢献が保証されています。

【主導】
2003年にWorld Wide Fund for Natureなどの環境NGOによって設立されました。

ACR (American Carbon Registry)

【特徴】
世界で初めての民間クレジット登録機関です。自主炭素市場と規制炭素市場の両方で活動しています。主にオフセットプロジェクトの登録、検証監督、オフセット発行を行っています。また、化学に基づいた厳格なカーボンオフセット基準と方法論の開発を強みとしています。

【主導】
1996年にNPO法人のWinrock Internationalによって設立されました。

CAR (Climate Action Reserve)

【特徴】
世界で初めての民間クレジット認証機関です。多部門のステークホルダーに渡るワークグループを開発し、厳格な基準を確立しています。よって、透明で公的に利用可能なシステムで高品質なクレジットを発行しています。

【主導】
2001年にカリフォルニア州によって創設されたCalifornia Climate Action Registryが基となった機関です。

まと

カーボンクレジット市場は、現在もルールが形成されている段階です。また、その使用方法などについても議論の最中という状況です。そのため、カーボンクレジットでのオフセットを検討する際は、加速していく市場動向を注視する必要があるでしょう。

本記事が少しでも検討の際にお役立ちできれば光栄です。

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参考文献

[1] 経済産業省 第4回 カーボンニュートラルの実現に向けたカーボン・クレジットの適切な活用のための環境整備に関する検討会「参考資料4 カーボン・クレジット・レポートの概要

[2] 経済産業省 京都メカニズム情報コーナー「京都メカニズムの仕組み

[3] Climate Action Reserve 「About us

[4] American Carbon Registry「About us

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リクロマ株式会社

当社は「気候変動時代に求められる情報を提供することで社会に貢献する」を企業理念に掲げています。

カーボンニュートラルやネットゼロ、TCFDと言った気候変動に関わる課題を抱える法人に対し、「社内勉強会」「コンサルティング」「気候変動の実働面のオペレーション支援/代行」を提供しています。

Author

  • 岩﨑有桜

    2023年1月入社。環境問題を中心とした社会問題に取り組む一般社団法人に所属。国際教養学部にて環境問題やソーシャルビジネスをはじめとする社会貢献について学び、サステナビリティに貢献するビジネスに携わりたいという思いからリクロマ株式会社へ参画。

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