Last Updated on 2025年12月17日 by Sayaka Kudo
再生可能エネルギーは、COP30においても世界的な重要性が再確認され、ますます注目を浴びています。
本コラムでは、再生可能エネルギーの世界と日本の動向、世界再生可能エネルギー国別ランキング、企業が導入する方法などを、メリットや課題も含めて詳しく解説します。
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再生可能エネルギーとは
再生可能エネルギーとは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど地球資源をもとにした、温室効果ガスを排出せずに発電するエネルギーの総称です。化石燃料に比べて環境への負荷が低く、温室効果ガスの排出を削減できるというメリットがあります。
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再生可能エネルギーの種類
再生可能エネルギーには主に以下のようなものがあります。
| エネルギー種別 | 概要 | 主な利用場所・特徴 |
|---|---|---|
| 太陽光エネルギー | 太陽からの光を利用して電力を発生させるエネルギー。 | 住宅の屋根や太陽光発電施設などで広く利用されている。 |
| 風力エネルギー | 風の力で風車を回し、発電機によって電気を生み出すエネルギー。 | 風の強い地域や海上(洋上風力)での活用が進んでいる。 |
| 水力エネルギー | 河川やダムなどの水の流れを利用して発電するエネルギー。 | 古くから利用されており、安定した電力供給が可能。 |
| 地熱エネルギー | 地下に存在する熱を利用して発電するエネルギー。 | 地熱地帯で有効で、地熱発電所を中心に利用されている。 |
| バイオエネルギー | 生物由来の資源を利用するエネルギー。 | バイオマス発電、バイオ燃料、バイオガスなどが含まれる。 |
2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとする目標の達成のカギを握るのは、二酸化炭素排出量が最も多い「エネルギー転換」部門となっています。
発電は、天然ガスや石炭など化石燃料によるものと、原子力や再生可能エネルギーなど非化石燃料によるものに分かれます。前者の利用を減らしつつ、後者のうち再エネによる発電をいかに拡大させるかが重要です。
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世界の再生可能エネルギー国別ランキング
世界の再生可能エネルギー設備容量ランキングは以下の通りです。
2024年再生可能エネルギー設備容量 先導国

中国は、再生可能エネルギーの導入において世界をリードしています。2位の米国を3倍以上超える規模に達します。経済成長に伴い、エネルギーの消費量が世界で最も多い国となりました。しかしその後自然エネルギー発電が急速に拡大し、自然エネルギー発電設備の総容量は、中国の主要電源である火力発電を上回りました。
ブラジルは第3位であり、気象条件や資源、政府による積極的な政策により再生可能エネルギー大国とも言われています。
ドイツでも、2019年に国内の発電量における再生可能エネルギーの割合が化石燃料を上回りました。ドイツの先進的な政策は、多くの国においても再エネ支援策のモデルともなっています。
日本の再エネ発電設備容量は第6位です。一方、発電電力量に占める再エネの比率は約22%と低いのが現状です。
世界における再生可能エネルギーの現状
パリ協定
パリ協定とは、2015年にフランスのパリで開催された国際連合気候変動枠組み条約の第21回締約国会議(COP21)で採択された国際的な合意です。この協定は、気候変動の対策を進め、地球温暖化を2度未満、できれば1.5度以下に抑えることが、世界共通の目標となっています。
IPCC第6次評価報告書
2023年3月20日、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、最新の統合報告書を発表しました。
第6次評価報告書によると、世界の平均気温は産業革命前からすでに1.1度上昇しており、2030年代には1.5度に到達する可能性が高いと指摘しました。
1.5度に抑えるための対策として、CO2排出量を30年に48%、35年に65%、40年に80%、50年には99%まで削減する必要があると予測してます。また、温室効果ガス全体の排出量も30年に43%、35年に60%、40年に69%、50年に84%まで減少させる必要があります。
報告書では、早急で大規模な削減措置を講じない限り、地球温暖化は避けられない、との警告がなされました。再生可能エネルギーの普及がこの目標の達成に不可欠であり、なかでも化石燃料の使用を大幅に削減することが強調されています。
COP28の目標
近年の世界的な動向として、2023年11月からブラジルで行われたCOP30(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)では、「世界全体の再生可能エネルギー設備容量を2030年までに3倍にする」という新たな目標が掲げられ、日本を含む118カ国が賛同しました。
これは、国際社会の気候変動に対するコミットメントが強化されたことを象徴しています。再生可能エネルギーの拡大が、気候変動対策の有効的な手段として位置づけられています。
具体的には、各国が再生可能エネルギーの導入を拡大し、設備容量を既存の3倍にすることが求められています。これは、太陽光、風力、水力などの再生可能エネルギー源の利用を拡大することを意味しています。目標達成に向け、各国が国内の再生可能エネルギーインフラの整備や技術革新を進め、エネルギー転換を促進していく必要があります。
日本もこの目標に賛同し、再生可能エネルギーの普及を加速させる方針を打ち出しました。太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入量を大幅に増加させ、国内のエネルギーミックスを再生可能エネルギー中心に転換することが視野に入れられています。
日本における再生可能エネルギーの現状
日本政府は、2030年までに13年度比で温室効果ガス排出量を46%減らし、50年までに実質ゼロにするという目標を掲げています。
2022年度のエネルギー供給構造をみると、主力は火力発電であり、そのうち72.8%が化石燃料によるものです。一方で、温室効果ガスを発生させない特性を持つ原子力発電はエネルギー供給の中で6.9%を占め、再生可能エネルギー発電は20.3%を占めています。依然として、持続可能なエネルギーへの転換が求められています。
2012年7月のFIT制度*(固定価格買取制度)開始により、国内での再生可能エネルギーの導入率は増加しました。(2011年度10.4% → 2021年度20.3%)
FIT制度*:再生可能エネルギー事業者が、その発電した電力を一定の価格で電力会社に売ることができるという制度です。この価格は政府が定め、一定期間(通常は20年間)にわたって保証されます。これによって、発電事業者が安定した収益を得られ、再生可能エネルギーの導入を促進することができます。
再生可能エネルギーの普及における諸課題
再生可能エネルギーの普及にはいくつかの課題があります。
1. エネルギーの収支の不安定性
再エネの中には天候に依存するものが多く、太陽光発電は晴天に、風力発電は風の強さに左右されるため、エネルギー供給が不安定となります。これにより、基本的な電力需給の安定性が損なわれ、その調整に費用がかかることが問題視されています。
2. エネルギーインフラの整備
地政学的リスクや感染症により、エネルギー資源の供給不安が一気に高まりました。これらにより、世界各国でエネルギー価格の上昇が見られ、日本でも電力需給が逼迫し、エネルギー価格が急騰しました。日本がもともとエネルギー資源に恵まれていない国であることから、輸入に頼らない再生可能エネルギーや準国産エネルギーに位置づけられる原子力への移行が注目されるようになりました。
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2030年に向けた再生可能エネルギー導入目標
これらの課題を踏まえ、脱炭素へと向かうための施策として、政府は「GX実現に向けた基本方針」を発表しました。今後10年を見据えて、エネルギー安定供給・経済成長・脱炭素を同時に実現する政策をまとめたロードマップです。
このGXとは、グリーントランスフォーメーション(Green Transformation)のことを指し、これまでの化石エネルギー(石炭や石油など)中心の産業構造・社会構造から、CO2を排出しないクリーンエネルギー中心に転換することを意味しています。

また、2030年に向けた再生可能エネルギー導入目標は以下の通りです。
- 再生可能エネルギーの発電量の割合:36~38%
- 発電量:3360~3530億KWh
- 累積設備容量:187.8~201.8GW
また、具体的な施策のひとつに、省エネの推進があります。脱炭素社会を実現する上で、まず重要なのはエネルギーの使用量を削減することです。企業においては、非化石エネルギーへの転換を進めるために、情報開示のメカニズムを採用し、各企業が省エネの目標を設定して取り組むことを促進すると発表しています。日本政府が企業の情報開示を進める目的は、企業が省エネに対する取り組みを透明かつ具体的に開示し、エネルギーの効率的な利用を促進することです。改正省エネ法などの法律が後押しし、これに対するサポートも今後拡大していくとされています。
さらに、政府は再エネの主電力化にも力を入れています。再生可能エネルギーの主要な電源としての脱炭素効果を高めるため、国全体で電力系統の整備や、洋上風力の拡大計画が進められています。太陽光発電のみでなく風力発電の導入や、新築住宅のZEHの導入の強化など、再エネ導入の最大化と同時に、安全面の不安や環境への影響を最小化する政策を進めていくとしています。
企業が再生可能エネルギーを導入するメリット
企業が再生可能エネルギーの導入に取り組むことには、企業自体にとっても大きなメリットとなります。
1. 新たなビジネスチャンスの創出
再エネ導入を行った企業は、企業価値が向上し、新規ビジネスの機会を生み出したり、既存の事業の幅を広げたりすることができます。
将来、気候変動対策によって日本や世界の経済社会が大きく変容することは確実です。この変化に早期に適応することで、新たな事業への移行や事業の成長を見込むことができます。
2. 収益増加
企業が積極的に省エネや急速に低コスト化が進む再生可能エネルギーを採用したり、脱炭素認証を取得することで、収益増加の可能性があります。再生可能エネルギー導入のポテンシャルはとても高いと言えます。
3. 政府助成金や金融機関からの融資
積極的な再エネ導入に取り組む企業は、政府から補助金、税制や融資の優遇などの支援策を受けることができます。金融機関からの投融資も優先的に提供されることもあります。
企業が再生可能エネルギーを導入するには
こうしたメリットを背景に、再生可能エネルギーを導入する企業は国内で急速に増加しています。再生可能エネルギーの調達手段は3つあります。
1. 自家発電・自家消費
企業が再エネ設備を構築し、発電して自社で使用するというものです。初期投資と運用・管理にはコストがかかりますが、運転後には低いコストで運用できることに加え、リアルタイムの発電状況を把握することができます。
2. 外部電力の購入
多くの電力会社はさまざまな電力を組み合わせて提供しているため、発電設備を特定して購入できないことがあります。一方で、初期投資が不要であるため取り組みやすいというメリットがあります。
3. 環境価値の活用
3つ目は環境価値の活用です。再生可能エネルギーによって得られた電力の環境付加価値は、販売したり、購入することができます。これを活用し、省エネや温室効果ガスの排出抑制といった環境価値そのものを買い取ります。環境負荷の低減においてはインパクトが小さくなりますが、企業にとってコスト面のハードルが比較的低い手段と言えます。
まとめ
再生可能エネルギーの導入は社会に対する企業の責任を果たす一環と言えます。事業活動が自然環境に与える影響を最小限にし、より持続可能な未来への貢献を考えることが大切です。
#再エネ#省エネ
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参考文献
[1]経済産業省(2021)「エネルギー基本計画の概要」https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/20211022_02.pdf
[2]経済産業省(2023)「今後の再生可能エネルギー政策について」https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/052_01_00.pdf
[3]経済産業省(2022)「国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案」
https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/078_01_00.pdf
[4]経済産業省(2023)「「GX実現」に向けた日本のエネルギー政策(前編)安定供給を前提に脱炭素を進める」https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/gx_01.html
[5]WWFジャパン(2023)「IPCC報告書AR6発表『2035年までに世界全体で60%削減必要』
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/5274.html
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