Last Updated on 2024年8月25日 by Moe Yamazaki

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公共調達の基本方針として定められているグリーン購入法。

環境に配慮した物を調達することを推奨した、20年以上前から存在する法律ではありますが、近年ではカーボンフットプリント(CFP)について考慮した動きも目立ちます。

また古くからある法律なだけに企業の調達方針としての事例も豊富です。

この記事ではグリーン購入法やCFPとの結びつけ、近年における事例などについて詳しくお伝えします!

カーボンフットプリント(CFP)の概要を理解する、「製品カーボンフットプリント(CFP)解説資料」
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グリーン購入法とは

グリーン購入法は正式には「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」といい、2000年5月に成立した法律です。

名前の通り、国や自治体の公共機関が必要とする商品やサービスを購入するにあたって、可能な限り環境に負荷をかけないものを指定することを努力するように求めています。

また事業者や国民に対してもできるだけ環境に配慮した物品を購入することを求めており、昨今重要視されるステークホルダー全体での持続可能性に言及しているさきがけにもなっています。

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グリーン購入法におけるCFPの位置づけ

グリーン購入法の制定は2000年と古くからある法律ではあるものの、今後のCFP(カーボンフットプリント)ガイドラインの策定も見据え、その端緒となる定量的環境情報が開示された製品・サービスを指定することを推奨しています。

定量的環境情報の算定・開示においては、以下の3つを重要な考え方として整理し、判断の基準としてできる限り利用できる仕組みを整えています。

  1. PCR(商品別算出基準)など、CFP(ISO14067)やLCA(ISO14040)に準拠した温室効果ガス排出量を算定していること。現段階において開示された製品などがない項目についても、原則として当該品目に関わる配慮事項としての設定を検討すること
  2. ライフサイクルにおける温室効果ガス排出量を、製品への表示や取扱説明書、ウェブサイトなど適切な方法により開示していること
  3. 定量的環境情報の算定・開示を推奨し、温室効果ガス排出量を可視化して、製造事業者などのインセンティブにすること。その際には第三者機関による妥当性確認及び検証があることを推奨
参考:環境省「グリーン購入法におけるカーボンフットプリントの活用について

またカーボンフットプリントを算定した商品についてグリーン購入法で認めてもらう判断基準としては、最低限満たすべき水準(基準値2)はもちろん、より高い環境性能(基準値1)を満たす必要があると制定されています。

そのため、今後官公庁向けにCFPについてアピールした製品・サービスを納入する場合は、温室効果ガス削減効果などの計算が効果的な前提のもとで行われているのか、計算ミスなどがないか、など計算の正確性や妥当性について考慮するようにしたほうがいいと言えるでしょう。

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カーボンフットプリントについての政府の動き

出典:カウンターの上に置かれた白と黒のプリンター

カーボンフットプリント(CFP)について配慮した製品調達については、日本政府で既に始まっています。

日本政府では、2023年よりグリーン購入法の基本方針を改訂。

これまでもグリーン購入法の公共調達対象としては、トイレットペーパーやティッシュペーパーであれば「古紙パルプ配合率100%」、CDやDVD、ブルーレイなどの記録用メディアであれば「再生プラスチックがプラスチック重量の40%以上使用」などリサイクル素材やエネルギー消費については細かい基準が品目ごとに定められていました。

CFPの算出については、これまでの方針の中には条件としては含まれていませんでしたが、算定基準の作成が進んでいたカーペットとコピー機については、公的入札の必須要件にすることを公表。

前者については2023年度に導入。

後者についても2024年度に始まる予定です。

CFP算出が義務化されているのはグリーン購入法の対象となる幅広い商品の中でもわずか2種類ではありますが、他の製品についても任意として推奨するという方針も定められています。

実際2023年12月改定の基準ではすでにLED照明やガスコンロ、電子レンジなどの商品についても「配慮事項」として「原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクルにおける温室効果ガス排出量を地球温暖化係数に基づき二酸化炭素相当量に換算して算定した定量的環境情報が開示されていること」という記載が見られます。

必須条件になる品目は今後増えることも予想されるため、今後は政府への納入についてCFPの算定は必ずやっておいた方がいい項目になったといえるでしょう。

グリーン購入法の対象製品

出典:木製の道具が乗った緑色の皿

グリーン購入法の対象製品については多種多様で、紙や文房具のような消耗品からオフィス家具、パソコン、テレビなどの耐久消費財、作業着、保存食やブルーシートのような災害備蓄用品、間伐材などの公共工事に至るまで多くの品目が設定されています。

それぞれの項目について、古紙や再生プラスチックの使用率などの環境水準が定められています。

また対象製品については、第三者機関によって定められた規格を十分に活用することが求められています。

その代表例となるのが日本環境協会によって指定されたエコマーク。

紙製品などで見かけることも多いこのマークがついたものであれば、基本的にはグリーン購入法に適合します。

エコマークは2024年2月8日現在、53,263製品を認定。

認定企業数も1,494を数え、環境基準として広く普及しています。

GHG排出量算定の具体的プロセスを知る、「Scope123の算定方法とは?」
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グリーン購入法を活かした企業の事例

出典:木の表面にプランターの緑の植物

グリーン購入法は主に国や地方自治体などの公共団体のサステナビリティ追求に利用される法律ではありますが、同時に企業や国民に対しても環境に配慮した製品を購入することを促す法律でもあります。

そのため、企業の調達活動についてのグリーン購入には数多くの事例があり、環境省のホームページでも公開されています。

代表的なものを3社ご紹介します。

事例①:ソニーグループ

ソニーグループでは自社製品の部品や材料に使われる素材について、「部品・材料における環境管理物質 管理規定」を定め、地球環境や人体に悪影響を及ぼす水準の物質を排除する仕組みを整えています。

例えばフッ素系温室効果ガス(いわゆる大体フロン)や放射性物質などは全ての製品で禁止。

携帯電話など皮膚に長時間接する製品での利用を禁止するニッケルやニッケル加工物など製品別での禁止事項も存在します。

同社ではこの基準に従ったサプライヤーのみを部品・材料供給先として指定。

遵守してもらうための仕組みとして「グリーンパートナー環境品質認定制度」を導入しています。

事例②:JR東日本

JR東日本ではサステナブル調達の実践のために、以下の項目を定めたグリーン調達ガイドラインを定め、取引先に要求しています。

  1. 環境マネジメント体制:環境認証としてISO14001(またはその他のEMS認証)を取得しています。また化学物質に対しても、危険性のあるものは使用を禁止。それらの物質についての理解やトレーサビリティの確立についても要求しています。
  2. 環境アセスメント:材料や部品の統一化や梱包材の削減などによる廃棄物削減、製品の省エネルギー化、廃棄する際に利便なよう容易に分解可能な構造での提供、材料名・リサイクル・廃棄方法の情報開示について要求しています。

同社では2021年9月に調達方針を改訂した後から4ヶ月が経過した2022年1月から2月にかけて、取引先1030社を対象に取り組みの推進の進捗についてアンケートを実施。

その結果「環境」や「サプライチェーンへの取り組みの浸透」についての項目は「コーポレートガバナンス」や「情報セキュリティ」、「品質・安全性」といった項目に比べて、社内推進体制の構築が見られないことが判明しています。

この結果を受け、JR東日本では製品を製造しない代理店などに対しても環境問題への社内推進体制の構築や調達元のサプライチェーンへの人権・環境問題への考慮などを促すよう、意見交換を進めています。

事例③:モスフードサービス

外食業界は食肉生産や原材料の輸送、店舗の照明など環境負荷が高いことで知られている業界ではありますが、その中でもグリーン調達に乗り出す企業は続々と現れています。

その一つが「モスバーガー」を運営する、モスフードサービスです。

同社では「環境マネジメントシステム」と名付けたサステナビリティ活動を実施し、国内全店舗でエコマーク認定を達成。

使用する備品や資材についてもグリーン購入を積極的に推進するように定めています。

例として原材料である野菜を栽培する契約農家の一つであるモスファーム広島では、土壌からのCO₂(二酸化炭素)排出を削減するレタスの栽培を実施。

その運営会社である株式会社モスファームでも、農林水産省が推進する温室効果ガスの「見える化」認定を受けています。

おわりに

グリーン購入法は2000年公布と比較的歴史のある法律ではあるものの、サプライチェーン全体を含めた温室効果ガスの削減が言われる中でその重要性は高まっています。

既に多くの企業が温室効果ガス削減を前提としたグリーン購入を課題として取り入れている他、タイルカーペットやコピー機ではCFPの算出も条件に加わるなど日本政府の方針も定まったため、公共調達におけるグリーン購入法とCFP算出の重要性はますます高まったといえるでしょう。

今後は自治体などに広まる可能性もあるため、公共調達の供給基となっている場合は、CFPやグリーン購入法についての最新情報をよく確認するようにしてください。

#CFP #カーボンフットプリント

参考文献

[1]環境省 「グリーン購入法について
[2]環境省「グリーン購入法におけるカーボンフットプリントの活用について
[3]朝日新聞「グリーン購入法とは? 内容やメリット、対象物品をわかりやすく紹介
[4] エコマーク事務局「グリーン購入法品目で検索
[5]環境省「環境物品等の調達の推進に関する基本方針
[6]日刊工業新聞「コピー機など対象…国の調達「カーボンフットプリント」必須への影響度
[7]ソニーグループ「グリーン調達
[8]JR東日本「サステナブル調達 グリーン調達ガイドライン
[9]JR東日本「2021年度サステナブル調達アンケート結果
[10]モスフードサービス「環境マネジメントシステム
[11]モスフードサービス「気候変動・省エネルギー|環境(E)|モスフードサービス企業サイト

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Author

  • Hiroki M

    学生時代は環境経済学を専攻。現在は会社員として働きつつも、環境問題に対する強い関心を断ち切れずリクロマに副業ライターとして参画。

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