Last Updated on 2024年6月20日 by Moe Yamazaki

気候変動対策において、CFP(カーボンフットプリント)算定を進める企業が増加しています。

CFP(カーボンフットプリント)とは、製品やサービスが生産から廃棄に至るまでの全ライフサイクルにわたって排出する温室効果ガスの総量を示す指標です。

本記事では、CFPの概要、CFP算定方法、CFPとScope1,2,3算定の違いなどについてわかりやすく解説します。

CFP(カーボンフットプリント)解説資料についてはこちらをご覧ください。
CFP(カーボンフットプリント)解説資料

CFP(カーボンフットプリント)とは

CFP(カーボンフットプリント)とは、製品やサービスが生産から廃棄に至るまでの全ライフサイクルにわたって排出する温室効果ガスの総量を示す指標です。

原材料の調達、製造、使用、輸送、廃棄・リサイクルの各段階で発生する温室効果ガスを対象とします。

参考文献:経済産業省「カーボンフットプリントガイドライン

⇒CFPについてのより詳しい説明はこちら:CFP(カーボンフットプリント)とは?全体像を解説

CFP(カーボンフットプリント)を算定する目的

CFP(カーボンフットプリント)を算定する目的は、消費者および事業者間にて、二酸化炭素の排出量を削減する目的の取り組みを両者で共有し、数値により可視化させた情報を使い、より二酸化炭素排出量を減らすことです。

可視化させた情報を使い、消費者が積極的に、より低炭素な生活に移っていけるようサポートすることもCFPの目的です。

近年では、気候変動問題に対し関⼼が⾼まっていることもあり、企業を取り巻くさまざまなステークホルダーが、多種多様な⽬的により企業にCFPを要請しています。
CFPは企業における競争⼒を左右する要因になりつつあります。

また、二酸化炭素を排出する量が減らせることによって、環境保護および日本産業の発展に繋がるため、結果的としてカーボンニュートラルの実現にも貢献できます。

参考文献:環境省「企業がCFPに取り組む意義

関連記事はこちら:CFP(カーボンフットプリント)とは?LCAとの違いや計算方法を解説
         グリーン購入法とは?原則とCFPにおける位置付け

CFP(カーボンフットプリント)算定方法

CFP(カーボンフットプリント)算定方法は、以下3つのSTEPです。

STEP① 算定対象製品のライフサイクルをプロセスに分解する

CFPを算定する際には、はじめに製品におけるライフサイクルを構成しているそれぞれのプロセスで分解する必要があります。

各プロセスに分解することで、製品で使用されている原材料の調達から、生産や輸送といった各段階でのGHG排出源を見極めます。

例えば、原材料に関しては、材料を採掘したり、加工したりすることで発生する排出量、生産工程においては工場の製造過程における排出やエネルギー消費まで分解することが必要です。

輸送工程に関しては、製品やサービスが工場から市場に運搬される際に発生する車両および船舶等の燃料消費まで事業のプロセスを細分化します。

このように各プロセスに分解し細かく分析することにより、製品・サービスのライフサイクル全体における環境への影響が正確に求められます。

STEP②各プロセスのGHG排出量(活動量×排出係数)を算定する

分解した各プロセスにおけるGHG排出量を求めるため、そのプロセスでの「活動量」および「排出係数」を利用し算定します。

活動量とは、その特定のプロセスにおける生産量や消費エネルギー量のことであり、排出係数とは特定活動により生じるGHGの排出量のことです。

例えば、製造工程でのエネルギー消費量に基づいて、石炭や天然ガスといったそのエネルギー源に関する排出係数を用いてGHG排出量を求めます。

この計算によって、それぞれのプロセスにおいて具体的なGHG排出量の定量化が可能となり、製品が環境に与えている影響についてより正確に可視化することができるようになります。

STEP③ 算定結果の開示

算定結果を開示するCFP算定報告書では、CFPを算定した結果と、信頼性を担保する項目が含んでいなければなりません。

信頼性を担保するための項目は、算定の対象となる範囲、また、実際に利用したデータソース、算定期間やカットオフ基準などがあり、必要に応じ報告する項目を選んだ上で開示する必要があります。

また、定められている項目だけでなく、削減目標といった将来の方向性を記載し、企業のCFP算定に対する姿勢を伝えるのも重要なポイントです。

ここまで解説してきた3つのSTEPに加え、社内で情報を共有するために算定手順書を作成し、担当者が変更になった場合でも同じ算定方法が行えるようにしておくことも大切です。

これは、将来的に再びCFPを算定する場合や、第三者保証を依頼する場合にも使えます​​。

参考文献:経済産業省「カーボンフットプリント ガイドライン

CFP(カーボンフットプリント)解説資料についてはこちらをご覧ください。
CFP(カーボンフットプリント)解説資料

CFP(カーボンフットプリント)の算定ルール

CFP(カーボンフットプリント)の算定ルールについて理解するためには、以下2つについて理解しておく必要があります。

国際標準規格 GHGプロトコル

国際標準規格GHGプロトコルとは、企業が温室効果ガスの算定および報告をする際の国際的な基準です。

Scope2はこのGHGプロトコルに基づく分類の一つであり、企業のGHG排出量を包括的に管理するための枠組みの一部です。

国際標準規格GHGプロトコルは、WBCSDを主導に策定され、海外を中心にして多くの企業が参照する標準規格となっています。

参考文献:経済産業省「サプライチェーン全体でのカーボンフットプリントの算定・検証等に関する背景と課題

国際標準規格 ISO 14067

国際標準規格ISO 14067は、温室効果ガス排出の製品CFP(カーボンフットプリント)を評価し報告するための国際標準規格です。この規格は、製品やサービスのライフサイクル全体にわたるGHG排出量を定量化し、CFPを正確に報告するための指針を提供しています。

参考文献:経済産業省「サプライチェーン全体でのカーボンフットプリントの算定・検証等に関する背景と課題

CFP(カーボンフットプリント)算定とScope1,2,3算定の違い

CFP(カーボンフットプリント)算定とScope 1, 2, 3の算定の違いは、対象範囲にあります。

CFP(カーボンフットプリント)は、製品やサービスのライフサイクル全体にわたるGHG排出量を定量化するもので、原材料の取得から製造、輸送、使用、廃棄までの全過程を対象とします。これは主に消費者や取引先に対して製品の環境影響を透明に示すことを目的としています。国際規格ISO 14067に基づいて算定されます。

一方で、Scope1,2,3算定は、企業全体のGHG排出量を評価する手法で、直接排出(Scope 1)、間接排出(Scope 2)、その他の間接排出(Scope 3)に分類されます。

Scope1は企業が所有または支配する施設や車両からの直接GHG排出、Scope2は購入したエネルギーの消費に伴う間接GHG排出、Scope3はサプライチェーン全体の活動に関連するその他の間接GHG排出を対象とします。

これらは、企業全体の環境パフォーマンスを包括的に評価し、削減目標の設定や持続可能な経営戦略の策定、ステークホルダーに対する透明性の確保を目的としています。GHGプロトコルの指針に基づいて算定されます。

つまり、CFPは製品レベルでのGHG排出量を算出し、Scope 1, 2, 3は企業レベルでのGHG排出量を算出する点が主な違いです。

まとめ

CFP(カーボンフットプリント)とは、「Carbon Footprint of Products」から頭文字を取ったもので、商品もしくはサービスにおける原材料調達の工程から、廃棄およびリサイクルに至る製品全体におけるライフサイクルで排出する温室効果ガスの排出量をCO2に変え、商品もしくはサービスに表示する仕組みのことです。

CFP(カーボンフットプリント)算定方法は、算定対象製品のライフサイクルをプロセスに分解し、各プロセスのGHG排出量(活動量×排出係数)を算定した後に、算定結果を開示する手順です。

CFP(カーボンフットプリント)の算定ルールには、国際標準規格 GHGプロトコル、国際標準規格 ISO 14067について理解しておく必要があります。

企業の脱炭素経営を積極的に進めるサステナ担当者の方は、CFPの算定目的や方法、算定ルールについて十分理解しておくことが大切です。

⇒CFP(カーボンフットプリント)の活用方法についてはこちら:CFP(カーボンフットプリント)活用方法の解説

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参考文献

[1]経済産業省「カーボンフットプリントガイドライン
[2]環境省「企業がCFPに取り組む意義
[3]経済産業省「カーボンフットプリント ガイドライン
[4]経済産業省「サプライチェーン全体でのカーボンフットプリントの算定・検証等に関する背景と課題

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リクロマ株式会社

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カーボンニュートラルやネットゼロ、TCFDと言った気候変動に関わる課題を抱える法人に対し、「社内勉強会」「コンサルティング」「気候変動の実働面のオペレーション支援/代行」を提供しています。

Author

  • 西家 光一

    2021年9月入社。国際経営学修士。大学在学中より国際人権NGOにて「ビジネスと人権」や「気候変動と人権」領域の活動を経験。卒業後はインフラ系研究財団へ客員研究員として参画し、気候変動適応策に関する研究へ従事する。企業と気候変動問題の関わりに強い関心を寄せ、リクロマ株式会社へ参画。

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