Last Updated on 2024年4月4日 by Yuma Yasui

気候変動リスクの上昇により、「TCFD」をはじめとする枠組みに沿った情報開示の必要が高まっている現代社会において、温室効果ガス(GHG)削減に取り組む企業は年々増加しています。

本記事では、気候変動対応へのアプローチ法の一つである「カーボンインセット」について解説します。

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カーボンインセットとは?

カーボンインセットは、企業が自社のサプライチェーン内で温室効果ガス(GHG)排出を削減するプロジェクトに直接投資し、そのプロジェクトによって生み出されるカーボンクレジットを用いて自社の排出量を相殺する取り組みです。

このアプローチは、単に排出量を減らすだけでなく、サプライチェーンの持続可能性を向上させることにも貢献します。

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カーボンオフセットとの違い

カーボンインセットとカーボンオフセットは、どちらも温室効果ガス(GHG)排出量を相殺し、環境への負荷を軽減するための戦略ですが、そのアプローチには大きな違いがあります。

カーボンオフセットは、企業や個人が自身の活動によって発生したGHG排出量を相殺するために、他の場所でGHG削減または吸収を実現するプロジェクト(例えば、再生可能エネルギーのプロジェクトや植林活動)に投資することです。この場合、排出量の削減や吸収は、主に投資者の直接的な活動範囲外で行われます。カーボンオフセットは、特に排出削減が困難なセクターや活動において、環境影響の中和を目指す際に利用されます。

一方、カーボンインセットは、自社の事業活動やサプライチェーンを通じて直接的な環境改善を図る点でカーボンオフセットとは異なります。この方法では、企業はサプライチェーンの持続可能性を高めることによって、自社の環境負荷を直接減らすことに焦点を当てます。

要するに、カーボンオフセットは外部の環境プロジェクトへの投資によって間接的に排出量を相殺するのに対し、カーボンインセットは企業が自身のサプライチェーン内での直接的な環境改善活動を通じて排出量を相殺するアプローチです。どちらの方法も環境への貢献を目指していますが、その実施方法と焦点において異なります。

[1]を元に自社で作成

カーボンインセットの問題点

①初期投資費用

カーボンインセットの取り組みの問題点のひとつに、初期投資費用が大きいことがが挙げられます。この問題は特に、資金調達能力が限られている中小企業にとって顕著です。再生可能エネルギー設備の導入や、製造プロセスの改善、エネルギー効率の高い機器への更新など、自社のコミュニティ内でGHGを削減するための取り組みは大きな初期費用を必要とします。さらに、カーボンインセットの取り組みは短期的な費用対効果が少ないと考えられることもあり、カーボンインセットを始めるハードルは低くありません。

②測定と検証の難しさについて

カーボンインセットの取り組みにおけるもう一つの大きな課題は、測定と検証の難しさです。企業が自社の活動を通じて削減した温室効果ガスの量を正確に計測し、その効果を検証することは技術的に複雑であり、高度な専門知識を必要とします。排出削減の効果を測定するには、基準となる排出量の正確な把握から始め、カーボンインセット後の排出量と比較する必要がありますが、この過程で多くの不確実性が生じます。

このような測定と検証の難しさは、カーボンインセットの取り組みの信頼性を確保する上で重要な障壁となっており、企業がこれらの活動に対する投資をためらう一因となっています。

③GHGプロトコルでの温室効果ガス算定や削減活用への限界

カーボンインセットの実施に際して、GHGプロトコルでの温室効果ガスの算定や削減への活用が難しいという点も大きな問題です。GHGプロトコルとは、温室効果ガスの排出量を算定・報告する際の国際的な規準です。しかし、カーボンインセットのプロジェクトは、その具体的な取り組みや地域によって大きく異なるため、一律にGHGプロトコルの基準に則って温室効果ガスの削減効果を算定し、それを活用することが困難な場合があります。特に、地域固有の環境条件や社会経済的背景を考慮したカーボンインセットの取り組みでは、GHGプロトコルが提供する一般的なガイドラインをそのまま適用することができないことも少なくありません。    このように、GHGプロトコルのガイドラインに完全に準拠することなく実施されるカーボンインセットのプロジェクトは、その温室効果ガス削減の効果を正確に測定し、公正に報告することが難しいという問題を抱えています。

カーボンインセットの企業事例

事例①:バーバリー

バーバリー(BURBERRY)は、2040年までにGHG排出を削減量が上回ることを意味する「クライメート・ポジティブ」を宣言しました。

この目標を達成するために、バーバリーはバーバリー・リジェネレーション・ファンドを通じて再生農業プロジェクトに投資し、オーストラリアのウール生産者と協力して土壌中の二酸化炭素を回収し、水循環と生物多様性の改善を図っています。

バーバリー・リジェネレーション・ファンドは、二酸化炭素のオフセット・インセットの検証をするプロジェクトをサポートするため、2020年に設立されました。

これにより、バーバリーの二酸化炭素を相殺、貯留し、エコシステムの復元の推進を可能にしています。

事例②:ネスプレッソ

ネスプレッソは、「全てのネスプレッソコーヒーをカーボンニュートラルに」という目標を掲げ、サプライチェーンを含めたグループ全体でGHG削減を目指しています。

「PUR Projet」と連携し、コーヒー農園とその周辺に、500万本の植樹をおこない、森林の保全と再生を支援しています。

これにより創出されたカーボンクレジットを自社の排出に充てることでカーボンインセットを行っています。

まとめ

カーボンオフセットが外部の環境プロジェクトへの投資によって間接的に排出量を相殺するのに対し、カーボンインセットは企業が自身のサプライチェーン内での直接的な環境改善活動を通じて排出量を相殺するアプローチです。カーボンインセットは、カーボンニュートラル達成に向けた重要な取り組みですが、導入へのハードルが高いというのもまた事実です。短期的ではなく、長期的な目で取り組むことで、社会への貢献だけでなく、自らが持続可能な企業へと成長できるでしょう。

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参考文献

[1]  AHDB”Carbon insetting vs carbon offsetting: what you should know”
[2]NESPRESSO”循環が社会への取り組み”

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カーボンニュートラルやネットゼロ、TCFDと言った気候変動に関わる課題を抱える法人に対し、「社内勉強会」「コンサルティング」「気候変動の実働面のオペレーション支援/代行」を提供しています。

Author

  • 山下莉奈

    2022年10月入社。総合政策学部にて気候変動対策や社会企業論を学ぶ。スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリによる国際的な組織での活動経験を持つ。北欧へ留学しサステナビリティと社会政策を学ぶ。