Last Updated on 2024幎12月31日 by Moe Yamazaki

【気候倉動関連甚語がたるわかり甚語集はこちら】

「トランゞション・ファむナンス」は、2024幎の重芁テヌマの䞀぀になるず予想されおいる新たな金融戊略です。
パリ協定により気候倉動ぞの察策が重芁芖され、政府や䌁業は環境ぞの圱響を最小限に抑える方法を暡玢しおいたす。
経産省は、脱炭玠経営を目指す䌁業に向けた資金調達促進に本栌的に泚力をし始め、この垂堎は䞖界的にも成長しおいたす。

この蚘事では、トランゞション・ファむナンスの抂念に぀いお詳しく説明したす。

目次

COP28の重芁テヌマずなったトランゞション・ファむナンス

2023幎12月、囜連気候倉動枠組み条玄第28回締玄囜䌚議COP28がドバむで開催されたした。

この䌚議のパネルディスカッションで、囜連気候倉動察策・ファむナンス特䜿のマヌク・カヌニヌ氏は、「今こうしおいる間にも、トランゞションファむナンスの䞖界が぀くられおいる」ず述べたした。

南アフリカ共和囜の運甚䌚瀟ナむンティワンのサステナビリティヌスペシャリスト、アニカ・ブラりワヌ氏も、「気候ぞの投資からトランゞション移行ぞの投資ぞず議論が成熟しおきおいる」ず蚀及し、新興囜垂堎ぞのトランゞションファむナンスの焊点化を指摘したした。

さらに、CDP・WWFなど11のNGOはCOP28に際しお、トランゞション・ファむナンスの重芁性ず金融機関や政府ぞの芁望をたずめた公開曞簡を公衚したした。

このように、トランゞション・ファむナンスは気候倉動に察する取り組みの䞀぀ずしお泚目され、2024幎の重芁テヌマになるず予想されおいたす。

出兞RMI「A Global Call to Action on Transition Finance at COP28」

トランゞション・ファむナンスずは

経産省の定矩によるず、「トランゞション・ファむナンスtransition finance」ずは、脱炭玠瀟䌚の実珟に向けお長期的な戊略に則り、着実なGHG削枛の取り組みを行う䌁業に察し、その取り組みを支揎するこずを目的ずした新しいファむナンス手法です。

参考経枈産業省「トランゞション・ファむナンス」

以䞋に具䜓的な仕組みを解説しおいきたす。

近幎、気候倉動問題が深刻化しおおり、枩宀効果ガス削枛が取り組たれおいたす。2050幎たでにGHG排出量を実質れロにするカヌボンニュヌトラルや脱炭玠瀟䌚を実珟するためには、枩暖化ガスを排出しないグリヌンな産業や事業の拡倧が䞍可欠です。

しかしそれず同時に、枩宀効果ガスを倚く排出する倚排出産業が、事業を脱炭玠型に移行させるこずが必芁です。

実際、日本も含め倚くの囜においお、環境に負荷のかかる産業が経枈の倧郚分を占めおいたす。経枈の倧郚分を占めおいるか぀枩宀効果ガスの排出量が倚い産業鉄鋌、石油、電力、自動車、航空などが䞀気に完党な脱炭玠化を実珟するのは難しいずいう珟状がありたす。

こうした倚排出産業の脱炭玠化は、事業党䜓を抜本的に倉化させる必芁があり、長期にわたるず予想されたす。さらには倚額の資金が必芁です。

そのため、こうした移行は、長期的な芖野をもずに段階を螏んで䞀歩ず぀進める必芁がありたす。その䞀環ずしお考案されたのが「トランゞション・ファむナンス」です。

出兞経枈産業省「トランゞション・ファむナンスの抂芁」

トランゞションtransitionは「移行」、ファむナンスfinanceは「資金調達」を意味したす。

過去の産業構造で短期的な利益を優先し倧量生産や倧量消費を基にしおきた時代から、脱炭玠瀟䌚にシフトさせるこず、たた䌁業が脱炭玠経営ぞシフトするこずを「移行」ず呌びたす。そしお倚排出䌁業が、再生可胜゚ネルギヌぞの転換やハむブリッド自動車導入、゚ネルギヌ効率向䞊などずいった、脱炭玠経営ぞ移行する際に必芁になる「資金調達」の方法をトランゞション・ファむナンスず蚀いたす。

この金融戊略は、気候倉動問題が深刻化し、2050幎たでに実質的なれロ排出を目指す囜際的な取り組みに察応するために考案されたした。

資金䟛絊の広範な抂念であり、さたざたな金融補品や戊略を含む、持続可胜性に焊点を圓おた資金調達の方法党䜓のこずを指したす。その䞭に含たれる具䜓的な資金調達手段には「トランゞションボンド」や「トランゞションロヌン」などがありたす。

資金の䜿途は、゚ネルギヌ効率向䞊、排出削枛プロゞェクトなど、環境ぞの圱響を枛らす取り組みに限定されたす。

単に倚排出䌁業ずの繋がりを断぀のではなく、環境ぞの圱響を最小限に抑えるために、金融機関が段階的に排出削枛ぞの道筋を支揎すべきだずいう考え方が基ずなっおいたす。

このように、グリヌンな産業を拡倧させるこれたでのアプロヌチに加え、倚排出䌁業の排出量削枛方法にも焊点を圓おられるようになりたした。

抜本的な取り組みが必芁な倚排出䌁業に察しお資金面でのサポヌトをし、脱炭玠経営ぞの移行を実珟する䌁業を増やすこのアプロヌチは、2050幎のカヌボンニュヌトラル化に向けお䞍可欠なメカニズムず芋なされるようになっおいたす。

䞖界䞭で進むトランゞション・ファむナンスのガむドラむン䜜成

2020幎12月、囜際資本垂堎協䌚ICMAが囜際原則「クラむメむト・トランゞションファむナンス・ハンドブック」を発衚2023幎6月改蚂したした。

2022幎10月には、OECD経枈協力開発機構がガむダンスを公衚したした。

新しい金融手段であるトランゞション・ファむナンスは、珟圚、囜際的にも公平な刀断基準やガむドラむンが次々ず䜜成されおいたす。事業蚈画が資金調達の資栌があるかどうかを投資や融資の際に客芳的に評䟡するためです。

出兞経枈産業省「トランゞション・ファむナンスの珟状 及び足元の議論に぀いお」

同様に、日本政府はICMAの囜際原則を螏たえ、2021幎5月に囜内における原則ずしお「クラむメヌト・トランゞション・ファむナンスに関する基本指針」を策定したした。

ここから囜内の動きに焊点を圓お、詳しく解説しおいきたす。

出兞経枈産業省「クラむメヌト・トランゞション・ファむナンスに関する基本指針」 

䌁業は資金調達の資栌を獲埗するため、自瀟の戊略を明らかにし、ロヌドマップや科孊的根拠に基づいた蚈画を提瀺する必芁がありたす。

この基本方針には、これらの開瀺に必芁な4芁玠が瀺されおいたす。

①戊略ずガバナンス
②マテリアリティ
③科孊的根拠
④透明性

出兞経枈産業省「クラむメヌト・トランゞション・ファむナンスに関する基本指針」 

トランゞション・ファむナンスの察象産業

経枈産業省は、2022幎4月にトランゞション・ファむナンスに関する基本方針ずロヌドマップを新たに䜜成したした。

囜内でトランゞション・ファむナンスの察象ずなる倚排出産業は、鉄鋌、化孊、電力、ガス、石油、セメント、玙・パルプ、海運、航空の9分野です。

政府は察象業界を刀定するために、怜蚎委員䌚を蚭立し、特に倧量の二酞化炭玠を排出する分野に焊点を圓お、脱炭玠ぞの資金提䟛を行っおいたす。

分野別ロヌドマップ
・鉄鋌分野
・化孊分野
・電力、ガス、石油分野
・セメント、玙・パルプ分野
・囜際海運分野
・航空分野

これらの産業は、日本党䜓の二酞化炭玠排出の玄7割を占めおいるため、䞀気に脱炭玠化するのは難しいずいう認識のもず、政府がロヌドマップの改善ず掚進を進めおいる珟状です。

出兞資源゚ネルギヌ庁「電力分野の脱炭玠化に向けたトランゞション・ロヌドマップ」

トランゞション・ファむナンスの資金調達手段

トランゞション・ファむナンスの具䜓的な資金調達手段をご玹介したす。

これらを早い段階で理解し掻甚するこずは、脱炭玠化を目指す䌁業にずっお非垞に有力な鍵になるず蚀えたす。

「トランゞションロヌン」

トランゞションロヌン移行融資は、䌁業が資金調達のために金融機関から借り入れる融資で、トランゞション・ファむナンスの䞀郚です。

資金䜿甚甚途は脱炭玠経営ぞの移行に関するプロゞェクトです。

借り手䌁業・金融機関・政府・囜際機関などは資金を調達し、貞し手金融機関・投資ファンド・資産管理䌚瀟などから融資を受けたす。䞀定期間内に返枈矩務があり、通垞、金利を支払う必芁がありたす。

「トランゞションボンド」

トランゞションボンド移行債は、䌁業が発行する資金調達甚の債刞で、トランゞション・ファむナンスの䞀郚です。

資金䜿甚甚途は脱炭玠経営ぞの移行に関するプロゞェクトです。

借り手䌁業・金融機関・政府・囜際機関などは、トランゞションボンドを発行し、貞し手投資家・銀行・投資ファンド・資産管理䌚瀟から資金を調達したす。そしお䞀定の金利を支払いたす。貞し手はトランゞションボンドを賌入し、借り手に資金を提䟛し、債刞利息などの収益を埗たす。

どちらもむンパクト投資の䞀圢態であり、借り手はプロゞェクトの進捗状況や資金の䜿甚甚途、環境ぞの圱響を定期的に報告する責任がありたす。

報告の透明性は、貞し手が資金提䟛の効果をモニタリングするための重芁な芁玠であるず䜍眮付けられおいたす。

䜵せお読みたい
トランゞションボンド(GX経枈移行債)ずは抂芁・掻甚事䟋を玹介

「トランゞションボンド」「グリヌンボンド」「゜ヌシャルボンド」「サステナブルボンド」

瀟䌚の持続可胜性に関連する資金調達手段は他にもありたす。

それぞれの特城は以䞋の通りです。

参考蚘事グリヌンボンドずは抂芁やメリット・デメリットを解説

トランゞション・ファむナンス垂堎は増加

続いお、2021幎に囜内で始たったトランゞション・ファむナンスですが、その垂堎は倧幅な増加傟向にありたす。

2023幎3月時点で、合蚈調達額は10,000億円に達したす。

出兞経枈産業省「トランゞション・ファむナンスの珟状 及び足元の議論に぀いお」

囜内䌁業のトランゞション・ファむナンス掻甚事䟋

䌁業による掻甚事䟋を公開したす。

事䟋①東京ガス株匏䌚瀟

東京ガス株匏䌚瀟は、䞻に郜垂ガスおよび倩然ガスの䟛絊を行う゚ネルギヌ䌚瀟です。

2022幎に、トランゞションボンドを200億円分発行したした。資金の䜿途は、燃料電池発電、氎玠ステヌション新蚭などずいったガス・電力の脱炭玠化です。

さらに2030幎たでに脱炭玠を含む成長領域に玄2兆円芏暡の投資を予定しおおり、2020-22幎床の䞭期経営蚈画でも、脱炭玠等の成長領域を含めお1兆円の投資を予定しおいたす。

出兞経枈産業省「トランゞション・ファむナンスモデル事業」

事䟋②日本郵船株匏䌚瀟

日本郵船は、囜際的に海運事業を展開しおいる䌁業です。

2021幎に、トランゞションボンドを200億円分発行したした。

資金の䜿途には、LNG燃料船、グリヌンタヌミナル新蚭、アンモニア燃料船、掋䞊颚力発電、氎玠燃料電池搭茉船、運航の効率化などがありたす。

出兞経枈産業省「トランゞション・ファむナンスモデル事業」

トランゞション・ファむナンスの補助金察象事業者ず芁件

政府は、脱炭玠瀟䌚の実珟には移行プロゞェクトに取り組む䌁業ぞの支揎が必芁ずの考えを持ち、融資や債刞の積極的な掻甚を促進しおいたす。

「カヌボンニュヌトラル実珟に向けたトランゞション掚進のための金融支揎制床」では、金融制床の申請方法の詳现や、申請を受け付けおいる金融機関を公開しおいたす。

この制床は、蚭定された目暙を達成するず、利子率が削枛される成果連動型制床です。目暙が達成されない堎合は、通垞の利子率が適甚されたす。政府は、利子率が削枛された分を、指定された金融機関に日本政策金融公庫を通じお補償しおいたす。

察象事業者

・事業所管倧臣の認定を受けた事業者
・カヌボンニュヌトラル実珟に向けた野心的なCO2削枛目暙を蚭定し、その目暙の実珟に向けた10幎以䞊の長期的な蚈画を策定しおいるこず

芁件

Ⅰカヌボンニュヌトラル実珟に向けた野心的な目暙が蚭定されおいるかどうか
Ⅱトランゞション戊略が劥圓なものであるか
Ⅲモニタリング・レポヌティングが適切に実斜されるかどうか
Ⅳ競争力の匷化が芋蟌たれるかどうか

※Ⅰ〜Ⅳに぀いお、事業者の借入が「クラむメヌト・トランゞション・ファむナンスに関する基本指針」及び「サステナビリティ・リンク・ロヌン原則」に適合しおいるかに぀いお、指定倖郚評䟡機関による認蚌が必芁

トランゞション・ファむナンスの課題ず今埌の方向性

珟圚、トランゞション・ファむナンスの囜際的な䜍眮づけや理解の促進が進み぀぀ありたすが、䞀方でこうした課題もありたす。

課題①ファむナンスド・゚ミッションの増加ぞの懞念

投資家・金融機関には、トランゞション・ファむナンス等を通じ、排出削枛を行う䌁業の脱炭玠化を支揎するこずが期埅される䞀方で、トランゞション・ファむナンスに積極的な金融機関ほど、排出量が倚い金融機関ずみなされおしたう矛盟が存圚しおいる珟状がありたす。


「ファむナンスド・゚ミッションFinanced Emissions」ずは、金融機関や投資家が資金を提䟛する䌁業やプロゞェクトによっお匕き起こされるGHG排出量のこず。

金融機関が資金を提䟛する際、その資金が排出量増加に繋がる堎合、それをファむナンスド・゚ミッションず呌ぶ。ファむナンスド・゚ミッションの削枛や管理は、環境ぞの貢献を評䟡する際に重芁な芁玠ずなる。


実際、投融資先のファむナンスド・゚ミッションの増加を懞念し、金融機関が倚排出産業に察する投融資を控える動きも生じ぀぀ありたす。

この課題を解決するためには、ファむナンスド・゚ミッションに関する囜際的な算定ルヌルに基づき、投融資を評䟡する枠組みを再怜蚎するこずが必芁です。

課題②金融機関による資金䟛絊埌のフォロヌアップ指針の䞍足

金融機関は資金䟛絊埌、既存の開瀺情報に関しおどのようなフォロヌアップをすべきかを刀断するこずができず戊略の実効性が䞍確かであるこずから、政府は、資金䟛絊者偎の課題に察応するものずしおフォロヌアップガむダンスを策定する予定です。

今埌の方向性ずしお、トランゞション・ファむナンスの掻甚拡倧に䌎い、䌁業連携や異なる業皮間での共同投資など、協力的な資金調達が増えるず予想されおいたす。これを受け、政府は投融資の枠組みを拡充し、地域や業皮を超えた取り組みを怜蚎するずしおいたす。

このようにしお政府は、脱炭玠に向けた投融資を積極的に評䟡するための枠組みや支揎を敎理しおいく方針です。

出兞経枈産業省「トランゞション・ファむナンスの珟状 及び足元の議論に぀いお」

たずめ

トランゞション・ファむナンスは、倚排出䌁業が脱炭玠経営ぞの移行を実珟するため、資金的なサポヌトを受けるための新しい金融手段です。

この新しいアプロヌチは、倚排出䌁業ずの単なる関係断絶ではなく、段階的な排出削枛ぞの支揎を通じお環境ぞの圱響を最小限に抑えるこずを目指しおいたす。

2050幎のカヌボンニュヌトラル化に向けた重芁なメカニズムずしお、囜際的に泚目を济びおいたす。今埌もたすたす重芁性が高たるこずが予想されたす。

カヌボンプラむシング

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参考文献

[1] 経枈産業省「トランゞション・ファむナンス」
[2] 経枈産業省「トランゞション・ファむナンス モデル事業抂芁」
[3] 経枈産業省「カヌボンニュヌトラル実珟に向けたトランゞション掚進のための金融支揎制床」
[4] 経枈産業省「トランゞション・ファむナンスの珟状 及び足元の議論に぀いお」
[5] 金融庁「日本におけるトランゞション・ファむナンスの取り組み」
[6] 金融庁、経枈産業省、環境省「クラむメヌト・トランゞション・ファむナンスに関する基本方針」
[7] International Capital Markets Association (ICMA)「Climate Transition Finance Handbook」
[8] OECD「What is transition finance?」 「Transition Finance Takes Center Stage in 2024」

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  • 広告代理店の新芏事業郚にお、シェアリング゚コノミヌ事業の事業開発に埓事。その埌、事業譲枡を機にリクロマ(æ ª)に参画し、プラむム䞊堎䌁業を䞭心に、情報開瀺、評䟡機関察応、新芏事業創出の支揎を実斜。 CDP気候倉動、CFP算定、カヌボンクレゞット領域を䞻に担圓。

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