Last Updated on 2026年3月9日 by Sayaka Kudo

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気候変動対策の重要性が高まる中、多くの企業がカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを進めています。しかし、「具体的にどのような施策に取り組めばよいのか」「他社はどのように対応しているのか」といった疑問を持つ企業も少なくありません。

本コラムでは、カーボンニュートラルの基本的な考え方を整理するとともに、国内企業の具体的な取り組み事例を紹介します。

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カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、企業や個人が排出する二酸化炭素の量を、削減、吸収、またはオフセットすることにより実質的にゼロにする取り組みのことを指します。気候変動の影響を最小限に抑え、地球温暖化を1.5°C以内にとどめることを目指す国際的な目標です。

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企業がカーボンニュートラルを目指す理由

2020年に、日本政府は2050年を目標にカーボンニュートラル達成を目指すことを表明しました。温室効果ガス増加による地球温暖化と、それに伴う異常気象の増加が世界的な懸念となっており、GHG削減への取り組みが国際的に求められています。

多くの企業がカーボンニュートラルに取り組む背景には、こうした気候変動への対応に加え、それがもたらす経済的なメリットがあります。例えば、企業が気候変動への影響を最小限に抑えることは、企業の社会的責任のひとつであると同時に、企業がカーボンニュートラルに取り組むことで、新たなビジネスチャンスを創出でき、長期的な視点で企業の競争力を高め、経済的成長を促進できるという側面もあります。

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企業による様々なカーボンニュートラルの定義

ISO(国際標準化機構)は、GHGの排出量と除去量が等しく、大気中のGHGを増加させない状態のことを「カーボンニュートラリティ」と定義していますが、一部の企業や組織では、カーボンニュートラルを自社で定義し、それに基づいた独自の取り組みを推進しています。それぞれの事業活動に合わせ、温室効果ガス排出量を実質ゼロにするための目標や基準を定めています。例えば、東京海上グループは、カーボンニュートラルを「事業活動により生じるCO2排出量と、自然エネルギーの利用、マングローブ植林等によるCO2の吸収・固定・削減効果の換算量が等しい状態」と定義しています。

企業によるカーボンニュートラル実現へのプロセス

国内企業に義務付けられている法律

現在の国内企業には、カーボンニュートラルへの対応として義務付けられている法律があります。

・地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法
・エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)

温対法は、温暖化の防止・温室効果ガスの排出抑制を推進するための法律で、企業に温室効果ガス排出量の報告や削減目標の設定を義務付けています。一方で省エネ法は、エネルギー使用の効率化・電気需要平準化を促進し、非化石エネルギーへの転換を促すことで、エネルギー消費の合理化を目指しています。

企業による様々なカーボンニュートラルの取り組み方法

企業がカーボンニュートラルに取り組む方法はさまざまです。以下のようにまとめることができます。

取り組み項目内容目的・効果
自社のCO2排出量の可視化排出係数を用いて、直接排出(Scope1)と間接排出(Scope2・Scope3)を算出し、現在の排出状況を把握する排出量の現状把握、削減目標設定や改善策立案の基礎とする
エネルギー効率の向上省エネルギー機器の導入や運用プロセスの見直しによりエネルギー使用効率を改善するCO2排出量削減と運営コスト削減
再生可能エネルギーへの転換太陽光・風力などの再生可能エネルギーの導入やグリーン電力の購入化石燃料依存の低減と排出量削減
サプライチェーンの最適化原材料調達から物流までのサプライチェーン全体で環境負荷低減を図るScope3排出量の削減、サプライチェーン全体の環境負荷低減
製品設計の改善ライフサイクルアセスメント(LCA)に基づき、環境負荷の少ない製品設計や長寿命・リサイクル可能な製品を開発製品ライフサイクル全体の排出量削減
廃棄物削減とリサイクル事業活動や製造工程で発生する廃棄物を削減し、リサイクルを促進する資源効率向上と廃棄物処理に伴う排出削減
従業員の意識向上と教育気候変動に関する教育プログラムを実施し、従業員の行動変容を促す組織全体での脱炭素活動の推進
炭素オフセットプロジェクトへの投資削減が困難な排出量を森林再生や再生可能エネルギープロジェクトへの投資で相殺する実質的な排出量削減
新技術の研究開発CO2回収・貯留技術や代替材料などの新技術の研究開発将来的な排出削減技術の確立
政策・規制への対応炭素税や排出量取引などの環境規制に対応し、事業戦略やビジネスモデルを調整する規制リスクへの対応と競争力維持
ステークホルダーとの協働消費者、取引先、NGOなどと連携し、共同プロジェクトやイニシアチブを推進する社会全体での排出削減効果の拡大

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カーボンニュートラル実現に向けた企業の取り組み事例

続いて、それぞれの項目ごとに実際の企業事例を紹介していきます。

エネルギー効率の向上に取り組む企業 ANAホールディングス

ANAは、エネルギー効率の良い飛行方法を採用することで、燃料消費量の削減やCO2削減を実現しています。他にも気象条件に合わせて、高度や速度、経路の選定を行い、飛行計画を最適化しています。

出典)ANA「航空機の運航における取り組み」

再生可能エネルギーへの転換に取り組む企業 NTTデータ

NTTは、自社サービスのデータセンター使用電力の100%再生可能エネルギーへ切り替えを進めています。2030年度までに温室効果ガス排出量の80%削減、2040年度までにカーボンニュートラルを実現する方針です。

出典)NTTデータグループ「気候変動対応新ビジョンで2050年までに温室効果ガス排出量を「ネットゼロ」へ」

サプライチェーンの最適化に取り組む企業 ライオン

ライオンは、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量を算出しています。

2013年からGHGプロトコル・スコープ3基準に基づいて算出しており、商品の「使用段階」における排出削減に貢献する商品も開発する方針です。

またこの取り組みが評価され、CDP「サプライヤー・エンゲージメント評価」で最高評価のサプライヤー・エンゲージメント・リーダーを4年連続で獲得しています。

物流における輸配送において環境負荷を低減する企業 サントリーホールディングス

サントリーでは、物流における輸配送において環境負荷の低減を行っています。輸配送業務においては、地産地消により工場からの走行距離を短くする取り組みや、大型車両の活用、次世代燃料への転換を進めています。またトラックに比べてGHG排出量が少ない鉄道や海上船舶輸送に転換するモーダルシフトを推進しています。

さらに、環境負荷の少ない輸送手段として、共同配送やコンテナの共同利用など、他社と協力した物流を行っています。

出典)サントリーホールディングス「気候変動 取り組み」

製品設計の改善に取り組む企業 トヨタ自動車

トヨタ自動車は、従来の石油由来プラスチックに代わるバイオプラスチックの採用を積極的に進めています。これにより、自動車製造過程や使用中のCO2排出量の削減に貢献しています。トヨタはこの技術を用いた新しい自動車開発により、環境負荷の低減を目指しています。

グンゼは、リサイクルポリエステルなど再生原材料の使用、オーガニックコットンやパッケージのバイオマス化など、持続可能な原材料の使用率向上と、環境配慮型商品の拡充を行っています。

出典)グンゼ「石油化学原料の削減に貢献する収縮フィルム「ファンシーラップ® GB50」を販売開始」

廃棄物削減とリサイクルに取り組む企業 マルイ

マルイは、食品廃棄物や産業廃棄物等の処理体制を整備し、汚染防止なども含めた廃棄物の適正処理を行っています。事業所内では廃棄物の分別によりリサイクル率の向上を図っています。また自社から排出される廃棄物削減だけでなく、材料調達、商品販売、廃棄までのバリューチェーン全体において3Rを推進し、サプライヤーに対しても過剰生産、使い捨ての削減を働きかけています。

従業員の意識向上と教育に取り組む企業 日立製作所

日立製作所は、環境に対する評価指標を役員報酬にリンクさせる新制度を導入し、役員報酬と環境評価を連携させることで、社内でのCO2削減へのコミットメントを強化しています。

炭素オフセットプログラムへの投資に取り組む企業 キューピー

キユーピーはJクレジットを活用しCO2排出を減らしており、これによりネットゼロ工場を実現しました。こうした取り組みにより、年間で約3,680トンのCO2排出量削減を目指しています。

新技術の研究と開発に取り組む企業 川崎重工業

川崎重工業は、ごみ焼却施設から排出される燃焼排ガス中のCO2を分離・回収する技術の実証試験を進めています。

固体吸収材を利用した省エネルギー型CO2分離・回収システムをごみ焼却施設に設置し、運用性評価や経済性評価を実施していく計画です。ごみ焼却施設から排出される燃焼排ガス中のCO2分離・回収に、固体吸収法を利用する試みは国内初となっています。

出典)川崎重工業「CO2排出量ゼロに向けた取り組み カーボンニュートラル目標(中・長期目標)」

政府による規制への対応に取り組む企業 ENEOS

ENEOSは、森林資源の管理によるカーボンクレジットの創出を行っています。クレジット創出時の課題であるモニタリングや手続きをサポートすることで、 地域とともに森林吸収の増加を目指しています。

「久万高原町未来の森づくりプロジェクト」では、愛媛県久万高原町および久万広域森林組合と、森林を活用した脱炭素社会の実現に向けた連携協定を締結し、森林事業によるCO2吸収とカーボンクレジットの創出事業を進めています。

ステークホルダーとの協働に取り組む企業 ソニー

ソニーは、主要な原材料・部品サプライヤーおよび製造委託先での温室効果ガス排出量を把握し、温室効果ガス排出量の管理と削減を促進しています。

出典)TECHBLITZ「スタートアップと目指すカーボンニュートラル ソニー、オムロン CVCの挑戦」

まとめ

本コラムでは、カーボンニュートラルの基本的な考え方を整理するとともに、企業が実践している具体的な取り組みと国内企業の事例を紹介しました。カーボンニュートラルとは、排出される温室効果ガスを削減・吸収・オフセットすることで実質的にゼロにする取り組みであり、企業活動全体に関わる重要な経営課題であることを解説しました。カーボンニュートラルの実現には、自社の排出量を正確に把握し、削減可能な領域から着実に取り組みを進めていくことが不可欠です。サステナビリティ担当者としては、まずScope1・2・3の排出量を可視化し、削減目標と具体的な施策を整理したうえで、事業戦略やサプライチェーンと連動した脱炭素計画を策定することが重要です。さらに、社内の各部門や取引先、外部ステークホルダーと連携しながら、継続的に取り組みを拡大していくことが、企業の競争力向上と持続可能な成長につながる次のステップになるでしょう。

#カーボンニュートラル

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温室効果ガス排出量算定の具体的プロセスを知る!

温室効果ガス排出量の「算定」について、一通り理解できるホワイトペーパーです。
「どんなデータ/計算式」を用い、「どんなプロセス」で算定するのかを理解できます。

参考文献

[1] 経済産業省(2021)「令和3年度エネルギーに関する年次報告」(閲覧日:2026年3月9日)
[2] 経済産業省(2020)「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(閲覧日:2026年3月9日)
[3] 環境省(2023)「国内外の最近の動向について(報告)」(閲覧日:2026年3月9日)
[4] 東京海上グループ(2022)「東京海上グループにおける2022年度「カーボン・ニュートラル」の達成」(閲覧日:2026年3月9日)

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弊社はISSB(TCFD)開示、Scope1,2,3算定・削減、CDP回答、CFP算定、研修事業等を行っています。
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  • 大学では気候変動の経済学を専攻し、リクロマ株式会社には創業初期よりコンサルタントとして参画。
    情報開示支援を中心に温室効果ガスの排出の算定や高度なシナリオ分析の業務を担う。

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