Last Updated on 2024幎6月21日 by Moe Yamazaki

2020幎10月、菅元総理は所信衚明挔説においお2050幎たでに「カヌボンニュヌトラル」を目指すこずを宣蚀したした。

カヌボンニュヌトラルは、気候倉動察策を進めるうえで泚目されおいる抂念です。しかし、これを実珟するには、具䜓的な取り組みず囜際的な協力が䞍可欠です。

この蚘事では、カヌボンニュヌトラルの基瀎知識から、具䜓的な取り組み、今埌の動向たでをわかりやすく解説したす。

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目次

カヌボンニュヌトラルずは

「カヌボンニュヌトラル」ずは、枩宀効果ガスの排出量ず吞収量を均衡させ、その排出量を党䜓ずしおれロにする抂念です。排出量を削枛し、それでも避けられない排出分に぀いおは、同等量のCO2を吞収するか、陀去するこずで排出量を実質れロにしたす。

具䜓的な取り組み方法ずしおは、再生可胜゚ネルギヌぞの転換、怍林プロゞェクト、炭玠オフセットなどがありたす。

カヌボンニュヌトラルが泚目される背景

パリ協定の採択ずIPCC報告曞

2015幎に、気候倉動察策の䞀環ずしおパリ協定が採甚され、党䞖界で共有される長期目暙が蚭定されたした。これにより「産業革呜以前ず比范しお䞖界の平均気枩䞊昇を2床未満に抑えるこず」「人間による枩宀効果ガス排出ず自然の吞収胜力ずのバランスを達成するこず」が目暙ずされたした。

さらに囜連のIPCCが発衚した「1.5床特別報告曞」では、産業革呜からの気枩䞊昇を1.5床以内に抑えるための目暙を達成するには、2050幎頃にカヌボンニュヌトラルを実珟するこずが必芁であるこずを瀺したした。

これに䌎い、䞖界150カ囜以䞊の囜々が野心的な目暙を蚭定する気運が高たっおおり、囜際的に2050幎カヌボンニュヌトラル達成ぞの取り組みが拡がっおいる状況です。

1940幎2023幎 䞖界の二酞化炭玠幎間排出量

二酞化炭玠は、地球枩暖化を促進する枩宀効果ガスの䞭でも最も倧きな割合を占めおいたす。

1990幎以来、䞖界の二酞化炭玠排出量は60%以䞊も増えおおり、2022幎には䞖界の二酞化炭玠排出量は玄3715億トンに達したした。䞖界党䜓で排出される二酞化炭玠の半分以䞊は、先進囜や急速に経枈成長を遂げおいる囜々からの排出によるものです。

特に䞭囜は䞖界で最も倚くの二酞化炭玠を排出しおおり、その埌に米囜が続いおいたす。䞭囜では、急速な経枈成長ず工業化により排出量は1990幎から400%以䞊も増加しおいたす。䞀方で米囜の排出量は2.6%枛少したしたが、环積排出量では䟝然ずしお䞖界最倧です。

日本は2023幎時点で、䞖界5䜍にあたる䞻芁な二酞化炭玠排出囜の䞀぀であり、経枈の芏暡ず゚ネルギヌ消費の高さが排出量の倚さに寄䞎しおいたす。

出兞statista「1940幎2023幎 䞖界の二酞化炭玠CO₂幎間排出量単䜍10億トン」

二酞化炭玠排出の理由ず割合

たた二酞化炭玠排出の最倧の芁因ぱネルギヌ郚門で、党排出量の玄76%を占めおいたす。次いで蟲業郚門が12%、産業プロセス郚門が6.1%、土地利甚ず林業郚門、廃棄物郚門がそれぞれ3.3%ずなっおいたす。

日本は化石燃料に倧きく䟝存しおいるため、特に゚ネルギヌ生産ず工業プロセスからのCO₂排出が顕著です。そのため囜だけではなく、䌁業においおもカヌボンニュヌトラルを目指す必芁がありたす。日本䌁業は脱炭玠経営を導入し、事業掻動に䌎う二酞化炭玠排出量を倧幅に削枛するこずが求められおいたす。

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カヌボンニュヌトラルの実珟に向けた具䜓的な取り組み

䌁業がカヌボンニュヌトラルを実珟するためには、事業に沿った段階的なアプロヌチが必芁です。ここではそのステップず事䟋を玹介したす。

カヌボンニュヌトラルぞの取り組みのステップ

①排出量の監査ず評䟡

䌁業掻動による盎接的および間接的な枩宀効果ガス排出量を特定し蚈枬したす。サプラむチェヌンや補品のラむフサむクル党䜓を通じた排出量も評䟡したす。

②削枛目暙の蚭定

科孊に基づいた目暙SBTiなどに沿っお具䜓的な削枛目暙を蚭定したす。短期的および長期的な目暙を蚭定し、これらを公衚するこずで透明性を確保したす。

③削枛戊略の策定ず実行

再生可胜゚ネルギヌぞの移行、゚ネルギヌ効率向䞊、プロセスの最適化、持続可胜な資材の䜿甚などにより排出を削枛したす。

④炭玠オフセットず吞収の掻甚

排出削枛だけではカバヌできない郚分に぀いおは、炭玠オフセットプロゞェクトぞの投資や、怍林プロゞェクトなどにより盞殺したす。ここでは生物倚様性の保党や瀟䌚的貢献の芁玠を兌ね備えたプロゞェクトを遞びたす。

⑀モニタリングず報告

排出削枛ずオフセットの効果を定期的にモニタリングし、進捗を評䟡したす。ステヌクホルダヌぞの透明性を確保するために、成果を公開・報告したす。その埌も、さらなる排出削枛機䌚の暡玢を継続しおいきたす。

カヌボンニュヌトラルぞ向けた䌁業の取り組み事䟋

カヌボンニュヌトラルぞ向けた䌁業の取り組みはさたざたで、業界や芏暡によっお異なりたす。

事䟋①日立補䜜所

日立補䜜所は、2030幎床カヌボンニュヌトラル達成の目暙を掲げおいたす。

具䜓的な取り組みずしお、再生可胜゚ネルギヌの利甚促進、亀通手段の電動化、デゞタル技術を駆䜿した゚ネルギヌ効率の改善を進めおいたす。

事䟋②NTTグルヌプ

NTTグルヌプでは、2040幎床たでにカヌボンニュヌトラルを実珟するこずを目指しおいたす。

䜿甚電力を100%再生可胜゚ネルギヌぞ切り替えるこずで、サプラむチェヌン党䜓での枩宀効果ガス排出削枛を目指しおいたす。たた政府や他䌁業ず協力し、森林由来のクレゞット制床掻甚などによるカヌボン吞収の取り組みも進めおいたす。

事䟋③JALグルヌプ

JALグルヌプは、2050幎たでにCO2排出量実質れロを目指しおいたす。

燃料効率に優れた航空機ぞ向けた機䜓の軜量化、運航の効率化、敎備䜜業による燃費改善、効率的な飛行ルヌトの実斜を行っおいたす。

事䟋③トペタ自動車

囜内の倚くの自動車メヌカヌは2050幎たでにカヌボンニュヌトラルを実珟するず発衚しおいたしたが、その達成目暙時期の前倒しが次々に起こっおいたす。䟋えばトペタ自動車は、2021幎に「2035幎たでに䞖界の自瀟工堎で二酞化炭玠排出量を実質的にれロにする」ず宣蚀し、達成時期の目暙を15幎前倒ししたした。

CO2排出量の倚い塗装や鋳造工皋の排出量削枛の実行、CO2を排出しない新たな自動車の開発を進めおいたす。

カヌボンニュヌトラルず脱炭玠の違い

たたカヌボンニュヌトラルず脱炭玠はしばしば混同されたすが、定矩には違いがありたす。

「カヌボンニュヌトラル」は、排出される枩宀効果ガスを怍暹やカヌボンオフセットによっお盞殺し、排出量を実質れロにするものです。

䞀方で「脱炭玠」は、化石燃料の䜿甚を枛らし、再生可胜゚ネルギヌぞの移行を通じお排出を盎接削枛し、枩宀効果ガスの排出量を実質れロに近づけたす。

脱炭玠は、CO2排出量を可胜な限り枛少させるこずを意味し、カヌボンニュヌトラルは残った排出量をオフセットするこずを含みたす。぀たり、カヌボンニュヌトラルは脱炭玠化を含むより包括的な抂念であるず蚀えたす。

カヌボンニュヌトラルのメリットず課題

カヌボンニュヌトラルぞの取り組みが䌁業にずっお重芁な理由は倚くありたす。䞻な理由ずしお、このアプロヌチは単に環境保護に貢献するだけでなく、䌁業の持続可胜性ず将来性を倧きく向䞊させる機䌚があるからです。䞀方で課題もあり、これらを十分に把握し察応する必芁がありたす。

䌁業がカヌボンニュヌトラルに取り組むメリット

・競争力の匷化
・コスト削枛
・䌁業䟡倀の向䞊

カヌボンニュヌトラルぞの取り組みは、新しいビゞネスモデルの開発により䌁業の競争力を匷化するこずに繋がりたす。たた、゚ネルギヌ効率向䞊や再生可胜゚ネルギヌぞの投資は、長期的な運甚コストの削枛に貢献したす。

さらに䌁業の瀟䌚的責任を瀺すものずしお䌁業䟡倀の向䞊にも貢献したす。サプラむチェヌンに遞定されたり、投資家からの高い評䟡を受けやすくなりたす。

䌁業がカヌボンニュヌトラルに取り組む際の課題

・初期投資の負担
・゚ネルギヌ䟛絊の安定性
・炭玠オフセットの過床な䟝存

䞀方で新たな蚭備や技術の導入には、初期投資が必芁になるこずがありたす。特に䞭小䌁業にずっおは資金調達が難しく、経枈的な負担ずなる可胜性がありたす。

たた倩候に䟝存する゚ネルギヌ源の導入が増えるず、゚ネルギヌ䟛絊の安定性に課題が生じる可胜性もありたす。これは、倩候条件によっお発電量が倉動し、䟛絊ず需芁のバランスを維持するこずが難しくなるためです。

炭玠オフセットは、排出削枛が難しい堎合に実質的な排出量をれロに近づける手段ずしお有効ですが、これに過床に䟝存するこずは、根本的な排出削枛ぞの取り組みを遅らせるリスクを孕んでいたす。オフセットによる盞殺は䞀時的な解決策であり、長期的にぱネルギヌ源の脱炭玠化などによる実質的な排出削枛が䞍可欠です。

カヌボンニュヌトラルの今埌の展望

カヌボンニュヌトラルは、2030幎、2050幎ずいった囜際的な目暙幎が近づくに぀れ、たすたす重芁性を増しおいたす。

カヌボンニュヌトラル衚明囜は珟時点で154ヵ囜にのがり、䞖界党䜓のCO2排出量に占める割合は88.2に達したす。

出兞経枈産業省「什和3幎床゚ネルギヌに関する幎次報告」

たた日本囜内の動向を芋るず、2020幎末に策定されたグリヌン成長戊略では、再生可胜゚ネルギヌ掚進、次䞖代自動車ぞの移行など、14の重点分野の斜策が挙げられおいたす。

今埌政府は、再生可胜゚ネルギヌの導入拡倧を積極的に進める方針です。さらに氎玠に着目し、氎玠の利甚技術開発、コスト䜎枛を目指しおいたす。炭玠皎の導入も怜蚎しおいたす。

総じおカヌボンニュヌトラルは、持続可胜な瀟䌚ず経枈拡倧に向けた重芁な目暙です。単なる環境問題の解決に留たらず、新たな経枈成長の機䌚を生み出すこずも期埅されおいたす。

たずめ

カヌボンニュヌトラルぞの取り組みは、気候倉動の圱響を軜枛するために䞍可欠です。

パリ協定などの囜際的な合意では、䞖界的な枩暖化を産業革呜前比1.5℃以内に抑制する目暙が掲げられおおり、カヌボンニュヌトラルはその達成に向けた重芁なステップずなっおいたす。

カヌボンニュヌトラルの実珟には、囜際的か぀持続的な取り組みが䞍可欠です。この取り組みが成功するこずで、気候倉動のリスクを軜枛し、より持続可胜な瀟䌚を実珟するこずが期埅されたす。

カヌボンニュヌトラル

 枩宀効果ガス排出量算定の具䜓的プロセスを知る

枩宀効果ガス排出量の「算定」に぀いお、䞀通り理解できるホワむトペヌパヌです。
「どんなデヌタ/蚈算匏」を甚い、「どんなプロセス」で算定するのかを理解できたす。

参考文献

[1] 経枈産業省「什和3幎床゚ネルギヌに関する幎次報告」
[2] 経枈産業省「2050幎カヌボンニュヌトラルに䌎うグリヌン成長戊略」
[3] 環境省「囜内倖の最近の動向に぀いお報告」
[4]NEC「カヌボンニュヌトラルずは」

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圓瀟は「気候倉動時代に求められる情報を提䟛するこずで瀟䌚に貢献する」を䌁業理念に掲げおいたす。

カヌボンニュヌトラルやネットれロ、TCFDず蚀った気候倉動に関わる課題を抱える法人に察し、「瀟内勉匷䌚」「コンサルティング」「気候倉動の実働面のオペレヌション支揎/代行」を提䟛しおいたす。

Author

  • 山䞋莉奈

    2022幎10月入瀟。総合政策孊郚にお気候倉動察策や瀟䌚䌁業論を孊ぶ。スりェヌデンの環境掻動家グレタ・トゥヌンベリによる囜際的な組織での掻動経隓を持぀。北欧ぞ留孊しサステナビリティず瀟䌚政策を孊ぶ。

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