Last Updated on 2024年6月10日 by YamashitaRina

クレジット市場は世界中で現在成長を続けています。世界では民間グループにより運営されているボランタリークレジットやNGOなどのクレジット制度、日本においてはJークレジット制度など、多様なクレジット制度が普及しています。

今回はその中でも二国間クレジット制度(JCM)に着目し、その仕組みや市場規模、メリットや課題について解説していきます。

GHG排出量算定の具体的プロセスを知る、「Scope123の算定方法とは?」
⇒資料をダウンロードする

二国間クレジット制度(JCM)とは

クレジットの仕組み

二国間クレジット制度(JCM)とは、発展途上国と協力して温室効果ガスの削減に取り組み、その削減成果を両国で分け合う制度です。

先進国が開発途上国の排出する温室効果ガスを減らすためのプロジェクトに対し、技術・資金の支援を行い、その成果でCO2の排出量が削減できた量を貢献度合いによって分配します。

この制度により、先進国は開発途上国に対する技術支援などにより、自国におけるCO2排出量を減らしたとみなすことが可能です。

日本では、2015年のパリ協定が締結される前から積極的にJCMに取り組み、29か国と構築しています。

参考文献:経済産業省「JCM(二国間クレジット制度)

クレジット市場規模

クレジット市場は世界中で現在成長を続けています。似たようなクレジット制度は他にも存在しています。

世界では民間グループにより運営されているボランタリークレジットやNGOなどのクレジット制度、日本においてはJークレジット制度など、多様なクレジット制度が普及しています。

Jークレジットとは、温室効果ガスの排出削減量および吸収量を日本政府がクレジットで認証する制度のことです。

ボランタリークレジットの取引傾向を、2009年から2020年までの発行、無効化、取引価格のグラフで示しています。
参考文献:経済産業省「世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等を取り巻く状況

二国間クレジット制度(JCM)とクリーン開発メカニズム(CDM)の違い

2012年までは、国際的なクレジット制度の代表は、クリーン開発メカニズム(CDM)などでした。

しかし、複雑な仕組みなこともあり、補完する目的で日本政府がパリ協定で二国間クレジット制度を提唱しました。

二国間クレジット制度(JCM)とクリーン開発メカニズム(CDM)の違いとして、クリーン開発メカニズムと比べ二国間クレジット制度の方が簡易的であり、より効率的な柔軟な仕組みになっていることがあります。

クリーン開発メカニズムでは、プロセスすべてを国連気候変動枠組条約理事会の下で行っていたことで、事業開発から実施まで多数の時間が必要など、民間部門によって事業を行う妨げとなっており問題となっていました。

それに対して、日本政府がパリ協定で提唱した二国間クレジット制度では、先進国・途上国の2つの国の間に限り行なわれるため迅速な対応が可能であることに加え、それぞれの途上国の実情に寄り添った取り組みが可能です。

その他の具体的な違いとしては、プロジェクトの対象範囲や妥当性検証の点、排出削減量の計算方法などがあります。

二国間クレジット制度(JCM)のメリット

二国間クレジット制度(JCM)のメリットは、以下の3つです。

先進国と途上国で協力してCO2を減らすことができる

産業革命以降では人的要因によって、温室効果ガス排出量が増加し、急激な地球温暖化現象が発生したことが、国際的に深刻問題とされています。

年々深刻化する地球温暖化を軽減させるためには、温暖化対策を先進国だけ取り組んでいても解決は困難であり、途上国と連携し地球全体で対策しなければなりません。

しかし、環境問題解決に向け取り組むためには、大規模な投資と高い技術力が必要です。

そのため、途上国が自分達の力だけで環境問題対策に取り組むことは簡単ではありません。

そこで、先進国の持つ脱炭素技術やインフラサービス・製品などを途上国に対し支援することで、途上国だけでは取り組めなかった環境対策が可能になります。

官民の連携によって、相手国のニーズを考慮した分野横断的なサポートができ、結果、先進国と途上国で協力してCO2排出量の削減に取り組めます。

クレジットで取引可能

排出削減量であるクレジットは、通貨価値の違いといった影響を受けにくいです。

これは途上国にとってメリットも大きく、クレジット市場が今後拡大した場合、新たな低炭素および脱炭素ビジネスが誕生し、温室効果ガス排出量の削減や雇用創出が期待できます。

途上国において技術や資金の支援が推進される

将来的に発展に向かっていく途上国にとっては、高いコストがかかる先進的な設備は、技術や資金の不足といった理由から導入できないケースも少なくありません。

このような際に、先進国の支援により取り組みが加速され、排出量を削減することが可能になります。

二国間クレジット制度(JCM)の課題

二国間クレジット制度(JCM)の課題は、以下の2つです。

自国に都合良くルール設定する可能性がある

一つ目の課題として、それぞれの国が自国に都合の良いルールを設定してしまうという可能性があり、それを防ぐため厳格な追加性の審査が設けられています。

理解と認知度の低さ

また二国間クレジット市場は、現在成長中の新市場のため、理解や認知度はそれほど高くありません。

より一層クレジット市場を活性化させるためには、市場メカニズムをより多数の人に認知してもらい、国際的なルールの形成が求められます。

二国間クレジット制度(JCM)の日本とのパートナー国

2011年から、日本では途上国と二国間クレジット制度に関する協議が開始され、これまでにパートナー関係を築いた国は29ヵ国におよびます。

多数のプロジェクトがすでに実施されており、終了しクレジットが発行されているものもいくつかあります。

日本とのJCMパートナー国は以下の通りです。

  • ウクライナ
  • カザフスタン
  • キルギス
  • アラブ首長国連邦(UAE)
  • パプアニューギニア
  • ウズベキスタン
  • スリランカ
  • ジョージア
  • モルドバ
  • アゼルバイジャン
  • チュニジア
  • セネガル
  • フィリピン
  • タイ
  • ミャンマー
  • チリ
  • サウジアラビア
  • メキシコ
  • カンボジア
  • パラオ
  • コスタリカ
  • インドネシア
  • ラオス
  • ベトナム
  • モルディブ
  • ケニア
  • エチオピア
  • バングラデシュ
  • モンゴル
参考文献:環境省「二国間クレジット制度の最新動向

まとめ

二国間クレジット制度は、先進国が開発途上国の排出する温室効果ガスを減らすためのプロジェクトに対し、技術・資金の支援を行い、その成果でCO2の排出量が削減できた量を貢献度合いによって分配するための制度です。

二国間クレジット制度(JCM)とクリーン開発メカニズム(CDM)の違いとして、クリーン開発メカニズムと比べ二国間クレジット制度の方が簡易的であり、より効率的な柔軟な仕組みになっていることがあります。

二国間クレジット制度(JCM)のメリットは、先進国と途上国で協力してCO2を減らせることや、クレジットで取り引きできることなどです。

しかし、メリットもある一方で、自国に都合良くルール設定する可能性があったり、理解と認知度が低かったりといった課題もあります。

そのため、企業の脱炭素経営を積極的に進めるサステナ担当者の方は、二国間クレジット制度の概要やメリット・課題について十分理解しておくことが大切です。

温室効果ガス排出量算定の具体的プロセスを知る!

温室効果ガス排出量の「算定」について、一通り理解できるホワイトペーパーです。
「どんなデータ/計算式」を用い、「どんなプロセス」で算定するのかを理解できます。

参考文献

[1]経済産業省「JCM(二国間クレジット制度)
[2]経済産業省「世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等を取り巻く状況
[3]環境省「二国間クレジット制度の最新動向

メールマガジン登録

担当者様が押さえるべき最新動向が分かるニュース記事や、
深く理解しておきたいトピックを解説するコラム記事を定期的にお届けします。

セミナー参加登録・お役立ち資料ダウンロード

  • TCFD対応を始める前に、最終アウトプットを想定
  • 投資家目線でより効果的な開示方法を理解
  • 自社業界でどの企業を参考にするべきか知る

リクロマ株式会社

当社は「気候変動時代に求められる情報を提供することで社会に貢献する」を企業理念に掲げています。

カーボンニュートラルやネットゼロ、TCFDと言った気候変動に関わる課題を抱える法人に対し、「社内勉強会」「コンサルティング」「気候変動の実働面のオペレーション支援/代行」を提供しています。

Author

  • 西家 光一

    2021年9月入社。国際経営学修士。大学在学中より国際人権NGOにて「ビジネスと人権」や「気候変動と人権」領域の活動を経験。卒業後はインフラ系研究財団へ客員研究員として参画し、気候変動適応策に関する研究へ従事する。企業と気候変動問題の関わりに強い関心を寄せ、リクロマ株式会社へ参画。

    View all posts