Last Updated on 2024年11月20日 by HaidarAli
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森林クレジットは、ネットゼロ宣言により、近年本格的な活用が進んでいます。
本記事では、森林クレジットの概要、活用事例、発行手順などについて解説していきます。
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森林クレジットとは
森林クレジットとは、森林保全管理などの取り組みによる温室効果ガス排出削減・吸収量を、クレジットとして国が認証する制度です。
具体的には、森林を間伐などにより適切に管理することにより確保した、樹木で吸収するCO2の量を国がクレジットとして認証したものであり、別の名で森林由来クレジットと呼ばれることもあります。
森林クレジットの活用により、CO2排出量と吸収するCO2の量を同じにする「カーボン・オフセット」が実現できることに加え、森林における適正管理をサポートすることも可能です。
Jクレジットとは
Jクレジットとは、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2などの排出削減量、および適切な森林管理によるCO2などの吸収量を、クレジットとして政府が認証する制度です。
こうしたカーボン・クレジット制度は、国連や政府主導で運営されている制度と、民間主導で運営されているボランタリークレジット制度の2つがあります。
J-クレジットは前者に当てはまり、日本政府主導で運営されています。
カーボン・クレジット制度は、これまで国内クレジット制度は経済産業省、オフセット・クレジット制度は環境省により運用されていました。
しかし、その2つの制度がまとめられ、J-クレジット制度が生まれました。
現在、企業を対象とする制度として、経済産業省、農林水産省、環境省の3省により運営されています。
J-クレジット制度が設立された背景としては、低炭素社会実現や環境保全に対する関心が国際的に高まっていることがあります。
2015年に開催されたパリ協定により2016年5月に日本で地球温暖化対策計画が2016年5月に定められました。
地球温暖化対策計画では、J-クレジットなどを使ったカーボン・オフセットにおける取り組みがCO2排出量の削減目標達成に向けた重要な取り組みとして位置付けられています。
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森林クレジットが注目される理由
森林クレジットが注目されている大きな理由は、企業のネットゼロ宣言にあります。ネットゼロ目標達成に向け、自社で削減が不可能な温室効果ガス排出量を相殺するために活用する企業が増加しています。
また植林などの森林管理は、自社単独で管理・アプローチしやすいプロジェクトであることも注目されている理由の一つです。実際、企業が独自に植林プロジェクトを実施し、そこで得たクレジットを自社の目標達成に活用するケースが多く見られます。
さらにこうした森林クレジットを活用する企業は、炭素以外にも水質汚濁や大気汚染などの他の環境問題を改善し、同時に温室効果ガス排出量を削減する「コベネフィット」も見込むことも期待できるとも言えます。
森林クレジットの活用事例
森林クレジットの活用事例を2件紹介します。
活用事例①:北海道南富良野町
2021年6月に北海道南富良野町と北海道ガス株式会社は森林クレジットで連携協定を結んでいます。
南富良野町振興公社が、南富良野町により創出された森林クレジットを購入し、カーボン・オフセット証明が付いたカプセルトイを道の駅南ふらので訪れた方に対し販売を行い、環境保全に対し誰でも気軽に参加できる取り組みを行っています。
北海道ガスは、富良野町の取り組みに参画し、町内森林における一部を保有し長期的に管理することにより、森林環境保全を行っています。
活用事例②:北海道中標津町
北海道中標津町は、防風林を健全に育成するため、定期的に防風林の一部を間伐しCO2吸収量を向上させています。
地元企業などが創出したクレジットを購入し、北海道内において排出されたCO2に関してカーボン・オフセットで使うだけでなく、売却利益を植栽や間伐費用などに使っています。
その他にも、森林由来の地元のJ-クレジットをふるさと納税の返礼品にし、購入者が排出量のカーボン・オフセットを行うことができるという取り組みもあります。
森林クレジットの課題
カーボンニュートラルに取り組む企業が増加し、ネットゼロ宣言により森林クレジットへの注目が高まっていますが、認証量や普及率の低さという課題があります。
森林クレジットの認証量は、全体のJ-クレジットに対して1.3%と非常に低い割合にとどまっています。また、認証されている森林クレジットのうち、実際にカーボン・オフセットとして使用された割合も全体の38%と低くなっています。
このような状況になっている主な理由は、単価が高いことにあります。J-クレジットの単価は再エネや省エネなどで約2000円ですが、森林クレジットの場合、森林地権者との調整や吸収量を算定するための調査や書類作成などの労力が必要であるため、クレジットの単価は約7000~15000円とJ-クレジットに比べて高く、結果的に普及が遅れているという現状です。[5]
森林クレジットの発行手順
森林クレジットの発行手順は、以下の通りです。
プロジェクトに登録する
発行するためには、はじめにプロジェクトに登録する必要があります。
プロジェクト計画書の作成
J-クレジット制度は国が運営しています。
まずはJ-クレジット制度運営委員会が作成したプロジェクト計画書に記載されたフォーマットに沿い計画書を作り、プロジェクトに登録します。[6]
審査機関からプロジェクト計画書に関して妥当性を確認してもらう
作成したプロジェクト計画が、制度規程に従っているか、プロジェクト実態が反映されているかの確認を、本制度に登録されている審査機関から受けます。
国が定める登録審査機関から審査してもらう必要があり、依頼するには費用が発生しするといったことを事前に確認します。
モニタリングを実施する
プロジェクトに登録したら、モニタリングを実施します。
モニタリング報告書の作成
登録が済んだプロジェクト計画に基づいて、CO2吸収量を求めるために計測を実施します。
計測を実施した上で「モニタリング報告書」を作ります。[7]
審査機関からモニタリング報告書の検証を受ける
そして審査機関が、モニタリング方法などがプロジェクト計画や本制度の規程に沿い実施されているかを確認します。
クレジット認証および発行申請
有識者委員会に諮って認証を受けた後、国からクレジットが発行されます。
委員会に諮るためには、クレジット認証申請書類を提出する必要があります。[8]
まとめ
森林クレジットとは、森林保全管理などの取り組みによる温室効果ガス排出削減・吸収量を、クレジットとして国が認証する制度です。
環境意識の高い企業の増加、ネットゼロ宣言により注目されている森林クレジットですが、森林クレジットの認証率が低いという課題があります。
企業の脱炭素経営を積極的に進めるサステナ担当者の方は、森林クレジットやJ-クレジットの概要、課題や取得手順について十分理解しておくことが大切です。
#クレジット
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参考文献
[1]J-クレジット制度「森林クレジットを活用した森林保全応援スキーム」
[2]林野庁「J-クレジット制度」
[3]北海道ガス株式会社 南富良野町「全国初、「カーボンオフセット カプセルトイ」の設置について~南富良野町の森林のCO2吸収価値で、楽しく環境保全に貢献!~」
[4]中標津町「J-クレジットプロジェクト」
[5]中部経済産業省「森林クレジットの現状と今後の展望」
[6]J-クレジット制度「登録・認証情報」
[7]J-クレジット制度「モニタリング報告書」
[8]J-クレジット制度「申請書類」
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