Last Updated on 2025年1月27日 by Moe Yamazaki
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2050年のカーボンニュートラルを実現するための脱炭素社会への移行にともない、企業では、CO2をはじめとしたGHG排出量の削減が急務となっています。
その第一歩として、企業は、事業活動を通じて製品やサービスが作られてから廃棄されるまでのサプライチェーン全体で発生する排出量をしっかりと把握し、その上で、できるところから削減していくことが重要になります。
本コラムでは、上流編の続きとして、サプライチェーンの中で最も排出量の実態の把握が難しいスコープ3とその下流カテゴリについて解説していきます。
★上流編はこちら!
→スコープ3各カテゴリの内容解説(上流編)
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⇒スコープ3(scope3)の削減方法とは?企業の具体的事例を解説
スコープ3とは?
企業がサプライチェーンを通じた排出量を捉えるとき有用な手段として、温室効果ガス排出量の算定・報告の国際基準である「GHGプロトコル」が提唱する「スコープ1」「スコープ2」「スコープ3」という分類手法の採用があります。
その一つであるスコープ3は、サプライチェーンのなかで発生する自社グループのサイト外、つまり事業者活動に関連する他社由来の排出量をいいます。例えば、原材料仕入れや販売後に排出されるGHG排出量などが含まれています。
スコープ3は広範囲に渡ることから、「GHGプロトコル」では、サプライチェーンの上流と下流、さらに細分化された企業活動ごとに分類された15個のカテゴリが設けられています。
これにより、企業は該当する活動や収集すべきデータを特定し、排出状況を把握するのを円滑に行うことができます。
以下では、下流に含まれる8つのカテゴリについて環境省の基本ガイドラインに基づいて概説します。
スコープ3の下流とは?
スコープ3では、上流と下流の区分は、お金の流れで決められています。カテゴリ1〜8が上流で9〜15が下流に位置付けられており、下流の定義は「原則として販売した製品やサービスに関する活動」と定義づけられています。
具体的には、自社が販売した製品の最終消費者までの物流に伴う排出、製品の加工、使用及び廃棄に伴う排出、フランチャイズ加盟店における排出、投資やリース資産の運用に伴う排出が含まれます。
カテゴリ9 下流の輸送・配送
このカテゴリの算定対象は、企業が販売した製品の製造者(自社)から消費者までの輸送・流通に係る排出量になります。これには、企業が所有または管理してない小売店や倉庫での保管も含まれます。算定に必要なデータには、グループ内外問わず販売チャネル別の製品出荷量などがあります。
カテゴリ9の詳細についてはこちらをご覧ください
→カテゴリ4『輸送・流通(上流)』・カテゴリ9『輸送・配送(下流)』とは? サプライヤーエンゲージメント評価と排出削減事例についても解説
カテゴリ10 販売した製品の加工
このカテゴリの算定対象は、企業が販売した部品や部材などの中間製品に、下流の企業が付加価値をつけた、その加工に係る排出量になります。納入先から加工に伴うエネルギー使用量が算定に必要なデータです。しかし、現実的には、下流のバリューチェーンパートナーと密にコミュニケーションを取るのは難しい問題があります。折衷策として、中間製品の販売量のデータがあれば、算定をすることは可能です。
カテゴリ11 販売した製品の使用
このカテゴリの算定対象は、企業が販売した製品・サービスの消費者による使用に係る排出量になります。ただし、製品・サービスには、様々な種類があります。使用時に直接エネルギーを使用するものもあれば、間接的にエネルギーを消費するものもあります。例えば、乗用車や航空機は直接的な排出タイプになりますが、アパレルは洗濯時など間接的な排出タイプに分けることができます。また、直接消費されるものが電気なのか燃料か、あるいはエネルギーではなくGHGを直接排出するのかなどに応じて、製品タイプを分ける必要があります。。このカテゴリの算定には、排出タイプや製品タイプを考慮した製品の販売量、生涯使用時間、単位時間あたりのエネルギー使用量などのデータが必要になります。
カテゴリ11の詳細についてはこちらをご覧ください
→スコープ3カテゴリ11『販売製品の使用』とは?サプライヤーエンゲージメント評価と排出削減事例についても解説
カテゴリ12 販売した製品の廃棄
このカテゴリの算定対象は、企業が販売した製品そのものとその包装容器の使用済み時の廃棄・処理に係る排出量になります。製品を販売した年に、その製品が将来廃棄される時の排出量を算定していきます。例えば、カーナビを製造しているメーカーは、車全体ではなく、カーナビの廃棄物発生量のデータが必要になります。最近では、サーキュラーエコノミーの実現に向けて、廃棄ではなくリサイクル処理を通じた資源循環が重要課題となっていますが、リサイクル処理由来の排出量の計上先が上流なのか下流なのかは、明文化されていません。
カテゴリ12の詳細についてはこちらをご覧ください
→カテゴリ12『販売した製品の廃棄』とは?サプライヤーエンゲージメント評価と排出削減事例についても解説
カテゴリ13 下流のリース資産
このカテゴリの算定対象は、企業が他者に賃貸しているリース資産の運用に係る排出量になります。算定のためには、リースした製品の販売量や年間使用時間、単位時間あたりのエネルギー使用量などのデータが必要になります。例えば、レンタカー会社が新車を購入し、リースする場合、その台数と年間走行距離、耐用年数、燃費などのデータを使って、算定します。
カテゴリ13の詳細についてはこちらをご覧ください
→カテゴリ8『上流リース資産』カテゴリ13『下流リース資産』とは?サプライヤーエンゲージメント評価と排出削減事例についても解説
カテゴリ14 フランチャイズ
このカテゴリの算定対象は、フランチャイズ加盟店の操業に伴う燃料の燃焼や電気の使用による排出量になります。このとき、フランチャイズ加盟者が常用する車両から排出されるGHGなども計上されます。
カテゴリ15 投資
このカテゴリの算定対象は、株式・債権投資、プロジェクトファイナンスなどの運用に係る排出量であり、投資事業者や金融サービスを提供する事業者などの金融機関に適用されるカテゴリになります。
金融機関の国際的なイニシアチブであるPCAFが提唱するファイナンスド・エミッションの考え方とは画するものであり、対象となるアセットクラスや基本算定に違いがあることに注意が必要です。
カテゴリ15の詳細についてはこちらをご覧ください
→カテゴリ15『投資』とは?サプライヤーエンゲージメント評価と排出削減事例についても解説
まとめ
本コラムでは、スコープ3の下流カテゴリ9〜15までを解説しました。
企業は、サプライチェーンの下流のバリューチェーン・パートナーと協働して、消費者が製品・サービスを使用し、廃棄されるに至るまでのライフライン全体のGHG排出量の実態を把握する必要があります。
また、開示にとどまらず、製品・サービスを環境配慮設計のものに改良したり、廃棄ではなくリサイクル処理に回したりするなど、実行的な脱炭素化への段階的な移行が重要となってくるでしょう。
参考文献
[1] 環境省 サプライチェーン排出量算定に関する説明会 「Scope3〜算定編〜」https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/dms_trends/study_meeting_2020.pdf
[2] 環境省 「排出量算定に関するガイドライン」https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/tools/GuideLine_ver.2.6.pdf
[3]経済産業省「金融機関への環境整備(ファイナンスド・エミッションへの対応についてhttps://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/transition_finance/finance_emission/pdf/001_04_00.pdf
Scope3の削減方法とは?
【このホワイトペーパーに含まれる内容】
・Scope3の基本情報とScope1,2との違いを説明
・Scope3の算出方法と削減方法をそれぞれ詳細に解説
・Scope3削減好事例を複数のカテゴリーでわかりやすく解説
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