Last Updated on 2024年11月20日 by HaidarAli
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地球温暖化対策の一環として、CO2の排出削減が喫緊の課題となっています。
その中でも注目を集めているのが、CO2を大気中に放出することなく管理する技術です。具体的には、CCS、CCU、およびCCUSという3つのアプローチがあります。これらの技術は、それぞれ異なる方法でCO₂を捕集し、貯留または再利用することで、環境への負荷を軽減します。
本記事では、これらの技術の仕組みとその違いについて詳しく解説します。
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CCS・CCU・CCUSとは
CCSとは「Carbon Capture and Storage(炭素捕捉・貯留)」の略称です。二酸化炭素を大気中に排出することなく補集し、地下深くに貯留する技術を指します。
CCUとは「Carbon Capture and Utilization(炭素捕捉・利用)」の略称です。二酸化炭素を大気中に排出することなく捕集し、それを様々な形で再利用する技術やプロセスを指します。貯留するのではなく、有用な製品やエネルギー源として活用することに焦点を当てています。
CCUSとは「Carbon Capture、 Utilization, and Storage(炭素捕捉・利用・貯留)」の略称です。CCSに加え、CO2を貯留するだけでなく、様々な形で再利用する技術です。
日本の温室効果ガス排出量の現状
日本の2022年度における温室効果ガス排出量および吸収量は、CO2換算で約10億8,500万tです。2021年度に比べ2.3%減少し、2013年度と比べると22.9%減少しています。
この数値は過去最低値であり、ネットゼロを2050年までに達成する上で順調に進んでいると言えます。
CCS・CCU・CCUSが注目される理由
1994年発行の国際連合気候変動条約に基づき、2016年にパリ協定が発効されました。
このパリ協定では途上国や先進国に関係なく、加盟しているすべての国で温室効果ガス排出量の削減が求められています。
CCS・CCU・CCUSが注目されている理由は、大量のCO2を処理および有効に使える方法であるという理由があります。例えば環境省は、石炭火力発電所(出力80万kW)にCCSを導入した場合、1年間に約340万tにもおよぶCO2が排出されることを防ぐことができると発表しています。
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CCS・CCU・CCUSの仕組み
CCSはCO2回収および貯留技術であり、化学工場や発電所などに排出されるCO2を他の気体から分離させ回収し、地中深くに貯留する技術です。
また、CCUは二酸化炭素の回収・有効利用を意味し、CCSにより貯留したCO2を新たな商品やエネルギーに変える技術です。
分離や貯留したCO2を使うのがCCUSであり、米国では古い油田にCO2を注入することにより、圧力で油田に残っている原油を押し出しながら、CO2を地中に貯めるCCUSが実施されています。
世界のCCS・CCU・CCUSの導入動向
資源エネルギー庁は、実際に世界で稼働するCCUS施設は、2021年8月時点でオーストラリアやヨーロッパ、北アメリカなど約26カ所存在し、開発段階の施設も含めた場合は、65カ所の商用CCS施設があると公開しています。
その中でも最も大きな取り組みがオーストラリアで実施されており、CO2回収能力は年間に最大で400万tです。地下帯水層に天然ガスを採掘する際に不純物として混合するCO2を貯留しています。
参考文献:環境省「CCUSを活用したカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組み」
また国際連携の取り組みとしては、2021年6月にCCUSの活用に向け、アジア全域で事業環境整備や知見共有を目指した「アジアCCUSネットワーク」が発足されています。
ASEAN10カ国に日本やアメリカ、オーストラリアを含めた13加盟国に加え、100以上の企業や国際機関、研究機関などが参加しています。
日本政府によるCCS・CCU・CCUSの政策とロードマップ
2050年時点におけるCO2年間貯留量の目安は、年間で約1.2~2.4億tと予測されており、政府の目標として2030年までにCCS事業を開始させるための事業環境整備を掲げ、2023~2026年の間に探査データの試掘や評価、試掘などを実施し最終投資を決めています。
掘削施設の設置や船舶建造、圧入井掘削などを2026年から進め、圧入を2030年に開始し操業する流れです。
この流れを実現させるには、事業者がCCSのために地下を使う権利を設定するといった、法的課題が存在していることから、国内法整備に向け論点を整理し、できるだけ早く国内法を整える方針です。
その上で、CCS事業に関して国民理解を促進させるため、貯留したCO2を有効に活用し自治体に対し経済波及効果が獲得できるCCUS実施も言及されています。
国内におけるCCS・CCU・CCUSの取り組み事例
国内における取り組み事例を2つ紹介します。
佐賀市
佐賀市では、CO2を地下に貯留せず、活用するCCUが実施されています。
清掃工場から排出されるガスからCO2を分離させ回収し、農業や藻類培養に活用することにより、産業の振興や二酸化炭素削減の取り組みが行われています。
参考文献:佐賀市「二酸化炭素分離回収事業を「世界最高の秘密」と評価」
株式会社東芝
東芝では、選択的にCO2を吸収・放出する特性を所有する吸収液を燃焼後の回収技術として利用しています。
吸収塔で発電などによって生じた排ガスに含まれるCO2を吸収液に吸収させ、再生塔で吸収した液を加熱することでCO2を放出させる仕組みです。
吸収塔の吸収にCO2の放出された吸収液を再度使用するように、排出するガスに含まれるCO2を連続的に分離、および回収します。
参考文献:株式会社東芝「CO2排出に対する取り組み」
CCS・CCU・CCUSの導入メリット
CCS、CCU、CCUS技術は、二酸化炭素の大規模な排出源からの排出を大幅に削減することで、地球温暖化の進行を抑制し、気候変動対策に貢献します。
またCO2を再利用することでエネルギー資源の効率的な利用が可能となり、特に再生可能エネルギー源との組み合わせにより、エネルギーの安定供給を確保しエネルギー安全保障の向上にも寄与します。
さらに、これらの技術を導入することで国際的な環境規制に対応し、国際市場での競争力が強化され、国のプレゼンスが向上するという見方もあります。
CCS・CCU・CCUS導入の課題
地球温暖化対策として、効果が期待できる技術といっても、導入・運営コストが現実的なものでなければ普及は困難です。特にCCS・CCUSでは、各プロセスで高いコストが発生します。
例えば、CO2分離や回収では、設備・運転コストがかかり、貯留の際には調査コストが必要です。現在では1tのCO2を回収する場合、約4,000円かかるとされています。
また、バリューチェーン構築という課題もあります。
日本において、回収したCO2を貯めておくための地域は日本海側に多く、CO2排出源は反対の太平洋側に多い現状があります。
そのため、輸送が近距離の場合は低いコストでパイプラインを使い輸送できますが、200km以上の長距離では、パイプラインより船舶輸送の方が低コストとされています。
液化CO2を大量に輸送できる技術はまだ確立されていないため、今後バリューチェーンを構築していく必要があります。
まとめ
CCSは二酸化炭素を大気中に排出することなく補集し、地下深くに貯留する技術です。
CCUは、二酸化炭素を大気中に排出することなく捕集し、それを様々な形で再利用する技術を指します。貯留するのではなく、有用な製品やエネルギー源として活用することに焦点を当てています。
CCUSはCCSに加え、CO2を貯留するだけでなく、様々な形で再利用する技術です。
これらCCS・CCU・CCUSの導入メリットは、CO₂排出量を効果的に削減できたり、再エネの普及を加速できたりすることです、
その一方で、導入には、コストをできるだけ安くする、バリューチェーンを構築するといった課題もあります。
このようにCCS・CCU・CCUSは、世界で注目されている技術であり、導入によりメリットが得られる一方で課題も存在するため、企業の脱炭素経営を積極的に進めるサステナ担当者の方は、CCS・CCU・CCUSについて十分理解しておくことが大切です。
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参考文献
[1]環境省「2030年度目標及び2050ネットゼロに対する進捗」
[2]資材エネルギー庁「知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる「CCUS」」
[3]環境省「CCUSを活用したカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組み」
[4]資材エネルギー庁「CCS長期ロードマップ検討会 中間とりまとめ」
[5]佐賀市「二酸化炭素分離回収事業を「世界最高の秘密」と評価」
[6]株式会社東芝「CO2排出に対する取り組み」
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