Last Updated on 2025年3月5日 by Moe Yamazaki
~2050年カーボンニュートラルに向けた日本の戦略~
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はじめに
2025年2月18日、日本政府は「地球温暖化対策計画」「GX2040ビジョン(脱炭素成長型経済構造移行推進戦略 改訂)」「第7次エネルギー基本計画」を閣議決定しました。
これらの政策は、2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を目指し、産業構造やエネルギー政策の変革を進めるための重要な指針です。
本記事では、それぞれの計画の概要と、企業・自治体・国民に求められる対応について解説します。
本記事のポイント
- 地球温暖化対策計画:2035年・2040年の温室効果ガス削減目標
- GX2040ビジョン:脱炭素成長型経済構造への移行
- 第7次エネルギー基本計画:エネルギー安定供給と脱炭素の両立
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1. 地球温暖化対策計画
政府は、2035年度に温室効果ガス60%削減(2013年度比)、2040年度には73%削減を目指します。
これは、2050年のカーボンニュートラル達成に向けた中間目標として、パリ協定の1.5℃目標と整合的な形で設定されています。
(1) 温室効果ガス削減目標
政府は、以下のような具体的な排出削減目標を設定し、段階的な削減を進めるとしています。
年度 | 削減率(2013年度比) | 目標排出量 |
2030年度 | ▲46% | 7.6億トンCO₂ |
2035年度 | ▲60% | 5.7億トンCO₂ |
2040年度 | ▲73% | 3.8億トンCO₂ |
2050年度 | ネットゼロ | 0トンCO₂ |
(2) 主要な対策
地球温暖化対策計画の達成には、エネルギー転換や産業・交通・地域の各分野での取り組みが不可欠です。政府は、再生可能エネルギーの最大活用や産業界の脱炭素化を促進する政策を推進するとしています。
1. エネルギー転換
日本のエネルギー供給の脱炭素化を進めるため、再生可能エネルギーや原子力の活用を最大化するとともに、水素・アンモニア・CCUS技術の導入を推進。
- 再生可能エネルギー・原子力の活用を最大化
- LNG火力をトランジション手段としつつ、水素・アンモニア・CCUS技術の活用
- 産業の電化・燃料転換を推進
2. 産業・業務・運輸分野
産業界におけるカーボンプライシングの導入や低炭素技術の活用を促進し、物流・交通の脱炭素化を図る。
- カーボンプライシングの強化
- GX投資の支援(低炭素技術の導入促進)
- 物流・交通の脱炭素化(EV・FCV・次世代燃料の活用)
3. くらし・地域
住宅・建築物の省エネ化を進めるとともに、食品ロス削減や資源循環を促進し、地域ごとの脱炭素化を推進。
- 住宅・建築物の省エネ化(高断熱窓・高効率給湯器など)
- 食品ロス削減・資源循環の促進
- 地域GX(地方脱炭素化)の推進
地球温暖化対策計画は、日本の温室効果ガス削減目標の軸であり、日本の脱炭素の指針となる計画です。
2. GX2040ビジョン
GX2040ビジョンは、カーボンニュートラルを実現するための成長戦略です。エネルギー供給の安定性を確保しながら、脱炭素経済へ移行し、新たな産業を創出することを目的としています。
(1) 背景
近年、エネルギーを取り巻く国際情勢の変化やデジタル化の進展が進んでおり、日本経済の競争力を維持するためには、GX(グリーントランスフォーメーション)による成長戦略が不可欠です。
- 国際情勢の変化(ロシア・ウクライナ情勢、中東の緊迫化)
- デジタル化の進展(電力需要の増加)
- 経済安全保障上の課題(エネルギー・サプライチェーンの安定確保)
(2) 主要な戦略
GX2040ビジョンでは、GX産業の成長促進、脱炭素技術の普及、公正なエネルギー移行の実現についての方向性が示されています。
1. GX産業の創出
水素・CCUS・次世代バッテリーなどのGX技術の社会実装を加速させ、新たな脱炭素関連市場の拡大を図る。
- GX技術の社会実装(水素・CCUS・次世代バッテリーなど)
- GX関連市場の拡大(再エネ・脱炭素製品の供給拡大)
- 中堅・中小企業のGX支援(補助金・投資支援)
2. GX産業立地
地方におけるGX産業の集積を進め、クリーンエネルギーを活用した産業の活性化を促進。
- 地方でのGX産業集積(クリーンエネルギーの活用)
- 産業用地のGX対応(脱炭素電源の確保)
3. 成長志向型カーボンプライシング
排出量取引制度の導入や化石燃料への課税強化を通じ、経済成長と環境対策の両立を図る。
- 排出量取引制度の本格稼働(2026年度~)
- 化石燃料賦課金の導入(2028年度~)
- 価格の安定化措置(排出枠の上下限価格設定)
GX2040ビジョンでは、地球温暖化対策計画で示された温室効果ガス削減目標を達成するための施策が示されています。
3. 第7次エネルギー基本計画
第7次エネルギー基本計画は、日本のエネルギー政策の中核を担う指針であり、「S+3E(安全性、安定供給、経済効率性、環境適合性)」の原則を維持しつつ、脱炭素化とエネルギー安定供給の両立を目指しています。
(1) エネルギー政策の基本方針
エネルギー政策の基本方針であるS+3Eの原則が維持することに基づき、再生可能エネルギーや原子力の活用を強化し、日本のエネルギー安定供給を確保する方針。
- S+3E(安全性、安定供給、経済効率性、環境適合性)の維持
- 再生可能エネルギーの最大活用
- 原子力発電の活用強化(次世代革新炉の開発)
(2) 2040年度エネルギー需給見通し
エネルギー需給の長期的な見通しを示し、技術革新を促進することで、持続可能なエネルギー政策を推進。
想定される技術進展
- 再エネ技術の大幅拡大(ペロブスカイト太陽電池・洋上風力)
- 水素・アンモニア活用の拡大(製造コストの低減)
- CCUSの活用拡大
- 次世代技術の進展(核融合、カーボンリサイクル)
- 技術進展が不十分な場合のリスク管理
4. 企業・自治体・国民への影響
これらの宣言を企業・自治体・国民の3つの観点で整理すると、以下のような対応を求めていく方針であることが分かります。
(1) 企業の対応
企業は、GX投資の加速やカーボンプライシングへの対応を進めることで、脱炭素経済への移行を円滑に進める必要があります。また、再生可能エネルギーの確保や調達戦略を構築することが求められます。
- GX投資の加速(脱炭素技術の導入・排出削減)
- カーボンプライシングへの対応(排出量取引制度の活用)
- 再エネの確保と調達戦略の構築
(2) 自治体の役割
自治体は、地域GXの推進や脱炭素都市の形成に向けた支援策を講じ、企業誘致を進めることが重要です。
- 地域GXの推進(脱炭素都市・再エネ導入支援)
- 企業誘致の強化(GX産業の集積支援)
(3) 国民の行動変容
国民一人ひとりの取り組みもカーボンニュートラル達成には不可欠です。省エネ住宅や電動車の導入、食品ロス削減、資源リサイクルの促進などが求められます。
- 省エネ住宅・電動車の導入
- 食品ロス削減・資源リサイクルの促進
- GX市場(再エネ・脱炭素製品)への理解促進
まとめ
「地球温暖化対策計画」「GX2040ビジョン」「第7次エネルギー基本計画」は、日本のカーボンニュートラル実現のための重要な政策です。政府・企業・自治体・国民が一体となり、脱炭素社会への移行を進めることが求められます。
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参考文献
[1] 環境省「地球温暖化対策計画(令和7年2月18日閣議決定)」
[2] 経済産業省「GX2040ビジョン 脱炭素成長型経済構造移行推進戦略 改訂」が閣議決定されました」
[3] 資源エネルギー庁「第7次エネルギー基本計画(令和7年2月)
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