Last Updated on 2024年11月20日 by AmakoNatsuto
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温室効果ガス排出量の削減を含んだ環境負荷の軽減や、自社の環境に対する取り組みのPRなど、幅広い用途で知られる「LCA」が注目を集めています。
この記事では、LCAの概要とLCAの活用方法を押さえ、実際のLCAの算定方法を解説したあと、最後にLCAを効果的に活用している実際の事例を紹介します。
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LCAの意味と概要
LCA(Life Cycle Assessment:ライフサイクル評価)とは、製品の原材料の採取から廃棄またはリサイクルに至るまでの過程(ライフサイクル)において環境へ与える影響を定量的に評価する手法です。想定される影響としては、水やエネルギーの消費量、また温室効果ガス排出量などが挙げられます。
c-LCAとLCAの違い
c-LCA(carbon Life Cycle Analysis:カーボンライフサイクル分析)とは、LCAのうち、環境へ与える影響の因子を特に温室効果ガス排出量のみに絞り分析する手法です。
LCAと同じく、様々な意思決定の場面で活用できます。例えば自社HPやサステナビリティ報告書への掲載などにより企業価値向上にも寄与します。
今回の記事では、気候変動対応の一環としてLCA導入を検討している企業様に向けて、c-LCA=製品ライフサイクルにおける温室効果ガス排出量の評価に絞って解説します。
LCAの活用方法
LCAは自社製品のライフサイクルにおける環境負荷を定量的に把握するための手法です。LCAを活用する方法は多くありますが、ここでは3つほど例を紹介します。
(1)環境負荷の低い製品のPR
自社の製品の環境負荷を定量的な数字で情報開示する、またLCAに関する第三者認証を受けた上で認証ロゴを製品パッケージに記載するなど、自社製品の環境負荷の低さをPRするために用いることが可能です。
これは環境負荷が低いことが前提ですが、下記(2)(3)のように、環境負荷を低減させるための取り組みの段階でも活用することが可能です。
(2)環境負荷の低い製品の開発
製品開発部門が環境負荷の低い製品を開発する際、“どれほど環境負荷が低減された製品か”を明確にするために、既存の製品と新製品の環境負荷を定量的な数字として比較可能にする活用方法があります。
(3)自社の温室効果ガス排出量の把握および削減
また、自社の温室効果ガス排出量(スコープ1,2)の把握をした後、TCFD対応のために削減策を洗い出す際にも活用できます。すなわち、製品ライフサイクルの温室効果ガス排出量が把握できれば削減のためにアプローチすべきポイントが分かるため、削減策の策定に役立ちます。実際にこの手法を用いて情報開示を行っている企業の事例は、記事の後半で解説します。
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LCAによる算定方法
STEP(1) 目的の明確化
まず何よりも先に、LCAの目的と活用方法を整理します。ここは事前準備的な位置付けで、
先述のような活用方法を設定する段階です。具体的に、LCAによる算定結果を誰にどのように提供し利用するのかを明確にできるとよいでしょう。
STEP(2) 範囲の設定
目的を明確にしたら、下記3つの観点の範囲をそれぞれ決めることで、LCA算定の“範囲”を設定します。
(a) 対象とする機能を特定
複数種類の製品のLCA結果を比較したい場合には、「対象とする機能(その製品の持つ性能・特性のこと)」を特定します。例えば、例えばプラスチック製容器であれば、「室内常温でマヨネーズ500g を6カ月間保存できる」などのように、特定の状況下で同じパフォーマンスをする機能を特定します。顧客からの要請によるLCA算定では不要なプロセスですが、自社開発の環境負荷の製品を比較したい場合は、この機能を定義する必要があります。
(b) ライフサイクルフロー図を作成し、算定対象とする境界を設定する
製品のライフサイクルを可視化するべく、5つのフェーズから成る「ライフサイクルフロー図」を作成し、その中で算定対象とする範囲を決定します。 複数の製品を比較する場合、製造プロセスの差異を踏まえて決定します。
ライフサイクルフロー図は、「原材料調達」「生産」「流通」「使用・維持管理」「廃棄・リサイクル」の5つのフェーズから構成されます。下図は筆記具のライフサイクルフローを示しています。
(c) データの要件を決定
LCAでは、製品の原材料の環境負荷などのデータを掛け合わせることで環境への影響を算定します。このステップでは、このデータの要件を定めます。例えば、1次データ/2次データ、国内/海外で有効なデータ、データの年次などの要件を決める必要があるでしょう。
こと1次データ/2次データの要件に関しては、必要な工数の観点から、2次データの使用を推奨します。1次データはサプライヤーにLCA算定をしてもらう必要があるため、環境省やIDEAという国際機関が公表している2次データを用いることで比較的少ない工数で算定が可能です。とりわけIDEAは素材単位の係数を公表しているため、大体の製品の原材料のデータが参照できます。
STEP(3) データの収集
次のステップでは、ライフサイクルフロー図を細分化し製品ライフサイクル上の原材料の使用量を詳細に記述していきます。下図のような原材料レベルまで細分化されたフロー図では、製品になるまでに使用される部品や原材料を階層にして示すことができます。
具体的には、製品ライフサイクルの各工程ごとに、投入資源量(材料使用量、エネルギー消費量)と排出物量(排水、廃棄物)等を収集・集計します。
STEP(4) 計算式を用いて算定
最後に、これまで収集したデータを算定式に当てはめて算定します。今回は、ライフサイクルにおけるCO2排出量でLCAを行いたい場合を想定し、下記5つの式を用います。図の「排出原単位」に関しては、係数の種類が豊富なIDEAによって公開されているものを使用することを推奨します。
LCAの導入事例
事例(1)キリン
1996年からLCAを導入
キリンは1996年にはLCAを導入し、ビール製造関連のGHG排出量を公表[3]、また1999年からは環境負荷の少ない容器の開発のためにLCAを実施しました[3]。2004年には、自社のビールブランドの缶パッケージに製缶時の環境負荷が小さいaTULC(エータルク)缶を採用しました[5]。
現在の「環境報告書」でも先進的な開示
キリンは最新の環境報告書で先進的な開示をしています。環境問題全体を対象に行なった“シナリオ分析”にて、生物資源・水資源・容器包装・気候変動の項目における“リスクと機会”を特定し、その影響度の定量的な評価を行なっています。
また、環境問題全般に関しての“指標と目標”も掲載しており、その達成のためのアプローチとしてLCAを活用し、製品ライフサイクルの早期段階で容器原材料の選定を行うとしています[3]。
事例(2)Allbirds
LCAをGHG排出量開示の手法として活用
2016年にサンフランシスコで設立されたアパレルブランド「Allbirds」も、環境への取り組みに積極的なことで知られています。AllbirdsはLCAを用いて全製品のライフサイクル排出量を算定しており、サステナビリティ報告書にて算定結果を開示しています。
TCFD提言で求められるスコープ1,2,3の開示ではないためTCFD対応の観点では不十分ですが、全製品の排出量を開示することによる環境への取り組みのPRは、消費者などのステークホルダーからの評価は見込めるでしょう。
全製品のGHG排出量を表示
またAllbirdsは、製品ひとつ当たりの排出量を、自社オンラインストアの製品情報の欄に記載することに加え製品そのものにラベリングもしています。
まとめ
この記事では、LCAの概要と算定方法、そして活用事例について紹介しました。LCAとは製品の原材料の採取から廃棄またはリサイクルに至るまでの過程(ライフサイクル)において環境へ与える影響を定量的に評価する手法です。
活用方法としては、自社製品の環境負荷の低さのPR、環境負荷を定量的な数字として比較可能にする、TCFD対応のために削減策を洗い出す、などが挙げられます。LCAは、目的の明確化→範囲の設定→データの収集→計算式を用いて算定、というステップで実施します。キリンやAllbirdsはLCAを独自の方法で活用しており、自社サイトなどを活用した効果的なPRに成功していると言えるでしょう。
#CFP#カーボンフットプリント
参考文献
[1]サステナブル経営推進機構「初心者のためのCFP」
[2]産業環境管理協会(2004)「環境経営実務コース Ⅲ環境適合製品・サービス支援手法コース ⅢA ライフサイクルアセスメント」
[3]キリングループ(2021年7月)「キリングループ環境報告書 2021」
[4]キリンホールディングス(2009年3月)「キリングループの環境の取り組みについて」
[5]日本食糧新聞(2004年1月)「キリンビール、「ラガー」を刷新、エータルク缶採用へ」
[6]Allbirds(2020)「2020年 サステナビリティレポート」
[7]Allbirds(2022)「Men’s Canvas Pacers」
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