Last Updated on 2026年2月4日 by 根本祐輔

近年、多くの企業で「ダイバーシティ(多様性)」という言葉が浸透してきました。しかし、現在ではそこに「エクイティ(公平性)」と「インクルージョン(包摂性)」を加えた「DE&I」という考え方が、世界的なスタンダードになりつつあります。

職場には、性別や国籍、年齢といった目に見える違いだけでなく、経験や価値観といった目に見えない背景を持つ人々が集まっています。こうした多様な人材が、単に存在するだけでなく、それぞれの力を最大限に発揮するためには何が必要なのでしょうか。

本コラムでは、Eラーニング教材の内容を基に、DE&Iの基本概念と、特に重要視されている「エクイティ(公平性)」の考え方について解説します。

目次

  • DE&Iを構成する3つの要素
  • なぜ「Equality(平等)」ではなく「Equity(公平性)」なのか
  • 今、DE&Iが求められる社会的背景とSDGs
  • まとめ:違いを力に変える組織づくり

DE&Iを構成する3つの要素

DE&Iとは、「Diversity(多様性)」「Equity(公平性)」「Inclusion(包摂性)」の頭文字を取った言葉です。これらは、すべての人が力を発揮できる環境を作るための重要な要素です。それぞれの意味を具体的に見ていきましょう。

Diversity:ダイバーシティ(多様性)

ダイバーシティとは、直訳すると「多様性」です。これは、私たちが持つさまざまな「違い」を尊重することを指します。ダイバーシティには大きく分けて二つの側面があります。

  • 表層的な多様性:性別、年齢、国籍、人種、障がいの有無など、外見や属性として分かりやすい違い。
  • 深層的な多様性:職歴、スキル、価値観、宗教、性的指向・性自認(LGBTQ+)、性格など、外見からは分かりにくい内面的な違い。

これら全ての「違い」を組織の資産として捉えることが第一歩です。

Inclusion:インクルージョン(包摂性)

インクルージョンは、「包摂」や「受け入れ」を意味します。多様な人材が集まっていても、互いに無視し合っていたり、意見が言いづらい環境では意味がありません。

インクルージョンとは、互いの違いを認め合い、「誰もが安心して働ける文化(心理的安全性)」をつくることです。個々の違いが尊重され、組織の一員として受け入れられている状態を指します。

Equity:エクイティ(公平性)

そして、近年特に注目されているのが「エクイティ」です。これは、多様な人々が活躍するための土台となる概念であり、次のセクションで詳しく解説します。

なぜ「Equality(平等)」ではなく「Equity(公平性)」なのか

DE&Iを理解する上で、最も重要なポイントの一つが「Equality(平等)」と「Equity(公平性)」の違いです。

全員に同じものを与える「平等」の限界

「平等(Equality)」は、全員に同じ環境や道具を与えることを指します。一見正しいように思えますが、個々の置かれている状況や身長、能力などの「違い」を考慮せずに一律の対応を行うと、結果として格差が埋まらない、あるいは機会が均等にならないことがあります。

個々の違いに配慮する「公平」の必要性

一方、「公平(Equity)」は、一人ひとりの違いやスタートラインの差に応じて、必要な支援を届けることを指します。

例えば、背の高さが違う3人が塀の向こうの野球観戦をしようとしている場面を想像してください。

  • 平等(Equality):全員に同じ高さの踏み台を与えること。背の低い人はそれでも見えないかもしれません。
  • 公平(Equity):背の低い人には高い台を、背の高い人には台無しで、全員が「試合を見られる」という結果を揃えるよう支援すること。

ビジネスにおいても同様です。全員に画一的な制度を適用するのではなく、個々の事情(育児、介護、障がい、言語の壁など)に合わせた支援を行うことで、初めて全員が同じスタートラインに立ち、能力を発揮できるのです。

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今、DE&Iが求められる社会的背景とSDGs

なぜ今、企業経営においてDE&Iがこれほどまでに重要視されているのでしょうか。

社会の多様化と孤立の防止

私たちの社会はかつてないほど多様化しています。職場には多様な背景を持つ人々が集まり、協力して働いています。しかし、その「違い」が適切にマネジメントされない場合、すれ違いや孤立を生むリスクもあります。

「誰ひとり取り残さない」社会の実現は、企業にとっても持続可能な成長のために不可欠なテーマです。

SDGs(持続可能な開発目標)との関連

DE&Iの推進は、国連が定めるSDGsの目標達成にも直結しています。特に以下の目標と深く関わっています。

  • 目標5:ジェンダー平等を実現しよう
  • 目標8:働きがいも経済成長も
  • 目標10:人や国の不平等をなくそう
  • 目標16:平和と公正をすべての人に

イノベーションと心理的安全性

働き方改革や心理的安全性の向上、そして公平性の確保は、すべてがつながっています。多様な視点を持つ人材が、公平な環境で、安心して意見を出し合える組織こそが、新しい価値やイノベーションを生み出すことができるのです。

まとめ:違いを力に変える組織づくり

DE&Iは、単なるスローガンや福利厚生の一環ではありません。それは、すべての人が持てる力を最大限に発揮し、組織全体として成長していくための経営戦略です。

「表層的な多様性」だけでなく「深層的な多様性」にも目を向け、画一的な「平等」から個々に寄り添った「公平」へと意識を変革することが、これからの企業には求められています。


参考文献

  • リクロマ E-learning 「第11章_#7_Social_IV-4-1_DE&Iとは」

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Author

  • 根本祐輔

    大学時代にコーポレートファイナンスを専攻し、企業価値評価の視点からESGの重要性に着目。
    リクロマ株式会社にて、気候変動・サステナビリティ領域のキャパシティビルディング(組織の能力構築)に従事し、企業のサステナビリティ社内浸透を支援している。

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