Last Updated on 2024年2月29日 by Yuma Yasui

オークネット様のサステナビリティへの取り組みの概観について教えてください。

我々は現在「Gross Circulation Value/総循環型流通価値」(以下:GCV)という指標を用い、事業とコーポレートサイドの両面から環境負荷の削減と持続可能な社会への取り組みを行っています。GCVとはオークネットの事業活動により“経済”とリユース品の流通などによる“環境”に与えた影響を貨幣価値化したものです 。

GCVについて詳しくはこちらから

オークネットは中古車、中古デジタル機器、中古バイク、ブランド品、花き、中古医療機器など、様々な商品のマーケットを提供しており、年間GCVは2022年12月時点で、5,417億円となりました。

GCVの規模が大きくなることは、モノを捨てずに済んだこと、そして新しくモノをつくらずに済んだことを意味します。つまりGCVとは、地球に対する負荷軽減の指標です。オークネットはGCVを経営指標の一つとして採用し、その規模をパートナーとともに増やしていくことを目指しています。情報の力で流通課題を解決し、世界中の顧客から選ばれ喜ばれる企業として、これからも持続可能な地球環境に貢献してまいります。

このような取り組みを可能にしたのは、オンラインオークションという事業の仕組みがすでにサステナビリティに貢献できるモデルとして存在していたことが大きいかと思います。
以前から森林づくりなどは行っていたのですが、オークネットがやっている事業自体が、どれだけサステナビリティ、SDGsに貢献できているのかということを3年前に強く意識して、社内でプロジェクトを立ち上げて、いろいろとそこで実際に貢献できていることを数値化して具体的にしていこう、というところから始まりました。
そこから、各部門のKPIとして環境貢献の数字を毎月経営会議で報告することで各部門の取り組みと結果を共有する仕組みを構築したり、中古車の評価書において、1台の取引での環境貢献度を詳細に表示することで、取引先の方にも関心を持っていただけたり、取り組みが加速していきました。

そのような取り組みをしていく中で、プラス面の貢献を可視化するだけでなく、マイナス側の環境影響も考慮したい。そのように考え、GCVの指標へと結びつけながらTCFDの開示に取り組むことを決定しました。

自社独自の取り組みへの理解度や専門性

支援企業として、リクロマを選んだ理由を教えてください

リクロマ株式会社には、TCFD開示やGCVの算定式作成、事業のGCV可視化といった部分を支援していただいています。

GCVの中にTCFDを入れたいという思いが強くあり、TCFDの支援企業を探していたところ、リクロマのセミナーが出てきて、そちらに参加させていただいたことがきっかけです。

他にも気候変動関連の情報を調べる際に、名前をよく見かけていたので、信頼感があったと思います。

複数の環境経営支援企業の話を聞いていたのですが、その中でもリクロマはコスト面で適切な提案であったかつ、オークネット独自のGCVという考え方に協力する姿勢や、TCFDに対する専門性が決め手でした。

初めはTCFD開示に関する支援でしたが、GCVへの理解やGCVを進めていくにあたりその算定式を設計する必要性などあり、現在はGCVの制度作りや実際の環境貢献のための新しい取り組みのGCVの数値化など、TCFDにとどまらず広くお願いしています。

事業成長との結びつきが社内理解の推進に

社内外でのサステナビリティ戦略推進の壁など教えてください

始めた当初大きかった課題としては、やはりGCVを用いて数値化することへの理解と伝達の難しさかと思います。数値で示す意義であったり、数値の正確性などに対する疑いや反対の声は社内でもありましたが、取り組みが可視化されていくにあたって、今では肯定的な意見がかなり増えています。これはGCVという指標が、ビジネス面での成長を表すものでもあるということが大きいかと思います。取引先のお客様にも、GCVを理解していただき、さらには活用していただくといった事例も増えています。

しかし、実際数値の正確性や精度といった部分での課題はあり、現在は一般的な環境省やイデアなどの指標を用いていますが、実際にはメーカーの方にご協力いただき、排出源単位の精度を上げていく必要があります。また、中長期的な数値に関しては、状況を仮定して考えなければいけなく、そのような中でそれぞれのシナリオの数値の正確性を高めることはかなり細かい情報が揃っていないと難しいです。

オークネットは2025年までに一兆円のGCVを達成するという目標を掲げています。こちらの目標を達成していく道筋に関しても、リクロマとのミーティングにおいても議題に上げています。

事業成長と環境貢献の両立を推進するプラットフォーム作りを

オークネット様での今後の取り組みの展望を教えてください

環境と事業は切り離せないものであり、サステナビリティ対応は従来のCSRとは異なる視点で取り組むべき、そしてオークネットはその第一人者としてGCVを動かしていくという意識を持っています。

GCVを動かす新しい取り組みの一例として、二次流通を活用することで企業の事業性とサステナビリティの両立を支援する「Selloop」を運営しています。
適切にモノをリユースすることはその環境貢献もさることながら、例えば企業が顧客から不用品を買い取る仕組みを導入することで、新たな顧客接点が生まれ、その接点や買取金額をもとにまた次の購買につながることで既存顧客のLTV (顧客生涯価値)が向上するというビジネス的なメリットもあります。また信頼性のある認定の中古品等を販売することは、新しい顧客層の獲得にもつながります。これらはあくまで一例ですが、Selloopはこれまで培ったオークネットグループのリソースを活用し、こうした仕組みを企業が導入するための構想から実践までの総合支援をさせていただくサービスとなっております。

オークネットならではのマーケットデザインによって、より多くの人をリユースに巻き込んでいきたいと考えています。

このように、GCVという指標を手段として用い、どのようにビジネスのサステナビリティに対する動きを推進していくかが鍵であり、この指標がどの企業にも共通する事業と環境貢献、社会貢献の両立の課題への取り組み方の助けとなれば嬉しいです。

とはいえまだ道半ばであり、社内でも予算担当者や役員におけるGCVの意識は強まっていますが、事業価値と環境価値の両立、これを実現する会社となるためにも、社員一人一人のGCVに対する理解であったり、サステナビリティ対応推進の意識を高めていきたいと考えております。

[企業紹介]

株式会社オークネット
https://www.aucnet.co.jp/

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リクロマ株式会社

当社は「気候変動時代に求められる情報を提供することで社会に貢献する」を企業理念に掲げています。

カーボンニュートラルやネットゼロ、TCFDと言った気候変動に関わる課題を抱える法人に対し、「社内勉強会」「コンサルティング」「気候変動の実働面のオペレーション支援/代行」を提供しています。

Author

  • 西家 光一

    2021年9月入社。国際経営学修士。大学在学中より国際人権NGOにて「ビジネスと人権」や「気候変動と人権」領域の活動を経験。卒業後はインフラ系研究財団へ客員研究員として参画し、気候変動適応策に関する研究へ従事する。企業と気候変動問題の関わりに強い関心を寄せ、リクロマ株式会社へ参画。