Last Updated on 2024年4月12日 by Yuma Yasui
企業の脱炭素経営を積極的に進めるサステナ担当者の方の中には
「SBTの短期目標について詳しく知りたい。」
「SBTに参加している企業がどれくらいあるのか知りたい。」
「SBTに参加している企業を業界別に知りたい。」
このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
当記事ではこのような悩みを解決していきます。
記事を最後まで読んでいただければ、上記悩みについて解決できるかと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。
SBTの全体像を体系的に理解したい方は、こちらのコラムをご参照ください。
➡︎コラム:SBT認定とは?種類や主なポイント、事例を分かりやすく説明
SBTの概要
SBTは、パリ協定が設定した水準と整合する、企業が定めた温室効果ガスの排出量を削減する目標のことです。[1]
2015年にCOPにより合意となったパリ協定で、長期目標に世界における産業革命前の平均気温の上昇を2℃未満にし、1.5℃未満に抑える目標が掲げられました。
平均気温の上昇を抑えるには、日本だけでなく世界で温室効果ガス排出量を減らさなければなりません。
途上国を含んだすべてのSBT参加国は、それぞれ国の事情と合わせ積極的に削減目標を設定しており、日本では2013年度の水準と比べ、2030年度まで温室効果ガスを26%減らすことを中間目標に掲げています。
SBT認定取得までの道筋を理解する、「SBT認定セミナー」
⇒セミナーに申し込む
SBTに参加する企業の数の増加
世界中でSBTに参加する企業が増えています。
環境省が公表している資料では、2023年1⽉までに認定された企業は2,140社であり、コミット※する企業は2,237社の合計4,377社に増えていることが分かります。
国別で見た際には、2023年時点における認定企業の数が最も多いのはイギリスと日本です。
※コミット:SBT認定を2年以内に取得すると宣言すること
SBT認定取得までの道筋を理解する、「SBT認定セミナー」
⇒セミナーに申し込む
建設業界
建設業界の企業では、八洲建設株式会社があります。[3]
2020年度にSBT認定を取得し、スコープ1と2における削減目標では、2018年と比べ2030年までに温室効果ガス排出量を半分の50%に減らすことです。
目標達成に向けた取り組みでは、工事車両や営業車両の電気や、本社や現場事務所で使う電気を再エネに移行させるものです。
また、他にも2030年までに再エネに50%移行させ、2040年には100%移行させることを目指しています。
食料品業界
食料品業界の企業では、日清食品ホールディングス株式会社があります。
SBT認定を取得したのは、2022年4月であり、現在の削減目標は以下の通りです。
- グループ全体における温室効果ガスの排出量を2018年度と比べ2030年度までに30%減らす
- バリューチェーンにおける温室効果ガスの排出量を2018年度と比べ2030年度までに15%減らす
この目標達成に向け、製造工場で再エネでの電力調達や省エネ化に取り組んでいます。
さらに、バイオマス発電といった新たな技術を使った温室効果ガス削減も検討されています。[4]
化学業界
化学業界の企業では、花王株式会社があります。
花王は、脱炭素化社会の実現に向け定めた目標で認定を取得し、事業で使う電力の100%を再エネで発電することを目標にした「RE100」にも参加している企業です。
脱炭素化社会を実現するため、温室効果ガスの「リデュース」「リサイクル」の2つに取り組むことにより、事業活動で発生する温室効果ガスを2040年までにゼロにすることを目標に掲げています。[5]
医薬品業界
医薬品業界の企業では、第一三共株式会社があります。
第一三共では、SBTの考え方から2030年までに温室効果ガスの排出量を27%減らすことが目標です。[6]
また、2025年までに原料の調達先全体における温室効果ガス排出量を70%以上削減する考えであり、目標達成のため環境eラーニングを提供するといった取り組みが行われています。
電気機器業界
電気機器業界の企業では、東芝株式会社があります。
東芝では、スコープ1・2における温室効果ガス削減では、日本国内だけでなく、海外にある生産工程も含め、燃料やエネルギーを使う量を減らし、インターナルカーボンプライシング制度による高いエネルギー効率を持つプロセスや設備への変更、再エネの導入促進に取り組んでいます。[7]
スコープ3における温室効果ガスの削減では、石炭火力発電所を新たに建設したり、撤退したりといった火力事業構造転換での削減が代表的な取り組みです。
また、その他にもCO2分離回収技術や再エネの導入、高い省エネ性を持つインフラ製品などさまざまな取り組みが行われています。
不動産業界
不動産業界の企業では、三井不動産があります。
三井不動産では、グループ環境方針に基づいてエネルギーの消費量や温室効果ガス排出量が少ない建物づくりの推進と並行し、共同事業者や出店者、顧客とともに省エネ活動といった地球温暖化対策に取り組んでいます。[8]
行動計画では、新築や既存物件の環境性能を向上させたり、再エネの安定的な確保に取り組んだりとさまざまです。
その他にも森林活用や外部認証取得などにも取り組んでいます。
サービス業界
サービス業界の企業では、株式会社ベネッセホールディングスがあります。
SBT認証を取得したのは、2021年であり、2018年度と比べ温室効果ガスの排出量を2030年までに52.8%まで削減し、2041年までには100%の削減が目標です。[9]
従来は紙の教材を使っていたものを、デジタル技術を活用した教材に変え、使う紙の量を大きく削減しました。
まとめ
SBTは、パリ協定が設定した水準と整合する、企業が定めた温室効果ガスの排出量を削減する目標のことです。
2015年にCOPにより合意となったパリ協定で、長期目標に世界における産業革命前の平均気温の上昇を2℃未満にし、1.5℃未満に抑える目標が掲げられました。
世界中でSBTに参加する企業が増えており、認定された企業は約2000社も存在します。
深刻化する地球環境問題、世界的な脱炭素社会への取り組みといった理由から、国や企業は温室効果ガス(GHG)の排出量をできる限り抑えた経済活動が推進され、SBTを取得する企業が増えています。
そのため、企業の脱炭素経営を積極的に進めるサステナ担当者の方は、どれくらいの企業がSBTに参加しているのか、業界別にSBTに参加している企業事例について把握しておくことが大切です。
\ 2024年2月以降の申請対応!/
SBT申請方法の変更点について詳しく説明します。
参考文献
[1]資源エネルギー庁「今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~」
[2]環境省「SBT参加企業」
[3]環境省「⼋洲建設株式会社」
[4]日清グループ「「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」温室効果ガス削減目標」
[5]花王「2040年カーボンゼロ、2050年カーボンネガティブ実現に向けた活動を加速」
[6]第一三共株式会社「「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ」の1.5℃目標における承認を取得」
[7]東芝「SBTイニシアティブから「ネットゼロ目標」の認定を取得」
[8]三井不動産「気候変動に対する認識」
[9]ベネッセホールディングス「企業・IR・ESG・採用」
メールマガジン登録
担当者様が押さえるべき最新動向が分かるニュース記事や、
深く理解しておきたいトピックを解説するコラム記事を定期的にお届けします。
セミナー参加登録・お役立ち資料ダウンロード
- TCFD対応を始める前に、最終アウトプットを想定
- 投資家目線でより効果的な開示方法を理解
- 自社業界でどの企業を参考にするべきか知る