Last Updated on 2024年7月12日 by Moe Yamazaki

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気候変動対策の重要性が日々高まる中で、SBT認定の対応を進めている企業の担当者様も多いことと存じます。そこで、SBT短期目標の業界別の事例を参考にしたいという担当者様もいるのではないでしょうか。

本記事では、SBT短期目標の企業事例を業界別に詳しく解説します。

SBT短期目標の概要が理解できる!SBT 短期目標の取得ポイントは?基準について詳しく解説

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SBTの概要

SBTは、パリ協定が設定した水準と整合する、企業が定めた温室効果ガスの排出量を削減する目標のことです。[1]

2015年にCOPにより合意となったパリ協定で、長期目標に世界における産業革命前の平均気温の上昇を2℃未満にし、1.5℃未満に抑える目標が掲げられました。

平均気温の上昇を抑えるには、日本だけでなく世界で温室効果ガス排出量を減らさなければなりません。

途上国を含んだすべてのSBT参加国は、それぞれ国の事情と合わせ積極的に削減目標を設定しており、日本では2013年度の水準と比べ、2030年度まで温室効果ガスを26%減らすことを中間目標に掲げています。

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SBTに参加する企業の数の増加

SBT参加企業は年々増加しています。

環境省によると、2023年1⽉までにSBT認定を受けた企業は2,140社、コミット(※SBT認定を2年以内に取得すると宣言すること)した企業は2,237社、合計4,377社となっています。

国別でみると、認定企業数が多い国はイギリスと日本です(2023年時点)。

 出典[2]:環境省「SBT参加企業

※コミット:SBT認定を2年以内に取得すると宣言すること

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SBT認定取得の業界別企業事例

SBT認定を取得した企業事例を業界別に紹介します。

建設業界

建設業界の企業では、八洲建設株式会社が挙げられます。[3]

2020年度にSBT認定を取得し、スコープ1と2における削減目標では、2018年と比べ2030年までに温室効果ガス排出量を半分の50%に減らすとしています。

目標達成に向けた取り組みでは、工事車両や営業車両の電気や、本社や現場事務所で使う電気を再エネに移行させるものです。

また、他にも2030年までに再エネに50%移行させ、2040年には100%移行させることを目指しています。

食料品業界

食料品業界の企業では、日清食品ホールディングス株式会社が挙げられます。

2022年4月に​​SBT認定を取得し、現在の削減目標は以下の通りです。

  • グループ全体における温室効果ガスの排出量を2018年度と比べ2030年度までに30%減らす
  • バリューチェーンにおける温室効果ガスの排出量を2018年度と比べ2030年度までに15%減らす

この目標達成に向け、製造工場で再エネでの電力調達や省エネ化に取り組んでいます。

さらに、バイオマス発電といった新たな技術を使った温室効果ガス削減も検討されています。[4] 

化学業界

化学業界の企業では、花王株式会社が挙げられます。

花王は、脱炭素化社会の実現に向け定めた目標で認定を取得し、事業で使う電力の100%を再エネで発電することを目標にした「RE100」にも参加しています。

脱炭素化社会を実現するため、温室効果ガスの「リデュース」「リサイクル」の2つに取り組むことにより、事業活動で発生する温室効果ガスを2040年までにゼロにすることを目標に掲げています。[5]

医薬品業界

医薬品業界の企業では、第一三共株式会社が挙げられます。

第一三共では、SBTの考え方から2030年までに温室効果ガスの排出量を27%減らすことが目標です。[6]

また、2025年までに原料の調達先全体における温室効果ガス排出量を70%以上削減することを目指しており、環境eラーニングの提供が取り組まれています。

電気機器業界

電気機器業界の企業では、東芝株式会社が挙げられます。

東芝では、スコープ1・2における温室効果ガス削減において、海外にある生産工程も含め、燃料やエネルギーを使う量を減らし、インターナルカーボンプライシング制度による高いエネルギー効率を持つプロセスや設備への変更、再エネの導入促進に取り組んでいます。[7]

スコープ3における温室効果ガスの削減では、石炭火力発電所を新たに建設したり、撤退したりといった火力事業構造転換での削減を行なっています。

また、その他にもCO2分離回収技術や再エネの導入、高い省エネ性を持つインフラ製品などさまざまな取り組みが行われています。

不動産業界

不動産業界の企業では、三井不動産が挙げられます。

三井不動産では、グループ環境方針に基づいてエネルギーの消費量や温室効果ガス排出量が少ない建物づくりの推進と並行し、共同事業者や出店者、顧客とともに省エネ活動といった地球温暖化対策に取り組んでいます。[8]

行動計画では、新築や既存物件の環境性能を向上させたり、再エネの安定的な確保に取り組んだりとさまざまです。その他、森林活用や外部認証取得にも取り組んでいます。

サービス業界

サービス業界の企業では、株式会社ベネッセホールディングスが挙げられます。

2021年にSBT認証を取得し、2018年度と比べ温室効果ガスの排出量を2030年までに52.8%、2041年までに100%削減することを目指しています。[9]

従来は紙の教材を使っていたものを、デジタル技術を活用した教材に変え、使う紙の量を大きく削減しました。

まとめ

SBTは、パリ協定が設定した水準と整合する、企業が定めた温室効果ガスの排出量を削減する目標のことです。

2015年にCOPにより合意となったパリ協定で、長期目標に世界における産業革命前の平均気温の上昇を2℃未満にし、1.5℃未満に抑える目標が掲げられました。

世界中でSBTに参加する企業が増えており、認定された企業は約2000社も存在します。

深刻化する地球環境問題、世界的な脱炭素社会への取り組みといった理由から、国や企業は温室効果ガス(GHG)の排出量をできる限り抑えた経済活動が推進され、SBTを取得する企業が増えています。

そのため、企業のサステナ担当者の方は、SBTに参加している企業事例を参考にし、自社に上手く取り入れていくことが期待されます。

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参考文献

[1]資源エネルギー庁「今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~
[2]環境省「SBT参加企業
[3]環境省「⼋洲建設株式会社
[4]日清グループ「「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」温室効果ガス削減目標
[5]花王「2040年カーボンゼロ、2050年カーボンネガティブ実現に向けた活動を加速
[6]第一三共株式会社「「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ」の1.5℃目標における承認を取得
[7]東芝「SBTイニシアティブから「ネットゼロ目標」の認定を取得
[8]三井不動産「気候変動に対する認識
[9]ベネッセホールディングス「企業・IR・ESG・採用

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Author

  • 西家 光一

    2021年9月入社。国際経営学修士。大学在学中より国際人権NGOにて「ビジネスと人権」や「気候変動と人権」領域の活動を経験。卒業後はインフラ系研究財団へ客員研究員として参画し、気候変動適応策に関する研究へ従事する。企業と気候変動問題の関わりに強い関心を寄せ、リクロマ株式会社へ参画。

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