Last Updated on 2024年11月20日 by HaidarAli
企業の脱炭素経営を積極的に進めるサステナ担当者の方の中には、
「カーボンニュートラルについて詳しく知りたい。」
「カーボンニュートラルに取り組む企業はどれくらいあるのか知りたい。」
「企業がカーボンニュートラルに取り組むメリットについて知りたい。」
このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
本記事ではこのような悩みを解決していきます。
記事を最後まで読んでいただければ、上記悩みについて解決できるかと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。
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カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルについて知りたいと思われているサステナ担当者の方は、カーボンニュートラルが何かはもちろんのこと、パリ協定や目標とされる数値についても詳しく理解しておく必要があります。
カーボンニュートラルの定義
二酸化炭素などの温室効果ガス排出量を減らし、植林などの二酸化炭素吸収量を増加させることにより、全体で見た温室効果ガス排出量を実質ゼロにする考えです。
世界でも2021年4月時点で125の国と1つの地域がカーボンニュートラルを2050年までに実現すると公開されています。
温室効果ガスの排出量を削減するためには、省エネだけでなく再エネなどの脱炭素化技術を積極的に導入し活用することが不可欠です。
しかし、温室効果ガス排出量自体をゼロにするわけではなく、カーボンニュートラルは吸収も考慮する必要があるため注意が必要です。
電力等のエネルギーを使わないことは現実的に不可能であり、温室効果ガス排出量に対し除去量と吸収量を合わせ全体で実質的なゼロを目指すのがカーボンニュートラルの考え方です。
カーボンニュートラルは、2015年に開催されたパリ協定で定められた目標を実現するために掲げられたものであり、カーボンニュートラルを理解するためには、パリ協定についても理解しておく必要があります。
パリ協定
2016年11月に発効され、2020年以降における温室効果ガスの排出量を減らすために設立された国際的な枠組みのことです。
国連気候変動枠組条約が1994年に発効されてから、温室効果ガスを安定させること、気候変動への悪影響を防止する目的で、毎年締約国会議が開かれており、2015年に開かれた第21回締約国会議でパリ協定が採択されました。
パリ協定が取り組む主な内容は、以下の通りです。
・産業革命前と比べ、地球の平均気温上昇を2℃未満に抑え、1.5℃未満に抑える努力を継続することが目標とする。
・2020年以降における世界での温室効果ガス排出量を減らすために、途上国や先進国で区別せず、それぞれの国で気候変動に対して対策をする。
・すべての国で、それぞれの国情を考慮し温室効果ガスの排出量を減らす、または抑制する目標を定める。
・透明性を向上させるために、温室効果ガスの排出量、および活動状況を5年ごと事務局に提出する。更新が必要であれば、よりレベルの高い目標を定める。
・目標達成のために、財務資源を適切に活用し、新技術開発と移転、それぞれの国における能力の向上に取り組む。先進国は途上国に対して、それぞれのNDCが達成できるようサポートする。
・気候変動対策で、温室効果ガスの排出量を減らすために、エネルギー政策などの緩和策のみならず、すでに発生している気候変動下に対する対応や備えとして適応策を検討する。
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日本の削減目標
日本は2020年10月にカーボンニュートラルを2050年まで達成することを目標として宣言し、21年の4月では2030年度までに温室効果ガス排出量を2013年度と比べて46%削減させること、さらには50%削減に向け取り組むことを発表しました。
カーボンニュートラルに取り組む企業数
カーボンニュートラルに取り組む企業は、年々増加しています。
国際的イニシアチブ「TCFD」「SBT」「RE100」に取り組む企業数、国内のSBT認定企業数について詳しく解説します。
国際的イニシアチブ「TCFD」「SBT」「RE100」
国際的イニシアチブ「TCFD」「SBT」「RE100」に取り組む日本企業の数は、以下画像の通りとなっており、日本は世界でトップクラスの企業数を誇っています。
TCFDは、日本で気候関連財務情報開示タスクフォースと呼ばれます。
それぞれの企業における気候変動の取り組みを、企業に具体的に開示するよう推奨する国際的組織です。
既存の財務情報に対し、環境リスクだけでなく、対応状況も公開するよう提言されており、組織や企業の積極的な環境問題に対する取り組みや、投資家や金融機関に向けたESG投資を推進させ、よりスピーディーに低炭素社会へ移行することが目的です。
SBTは、CDPと国連グローバルコンパクト、世界自然保護基金、世界資源研究所により共同運営されている国際的なイニシアチブであり、科学的根拠に基づく温室効果ガス排出量の削減目標を指します。
また、RE100とは、2014年に結成された事業活動を再エネ電⼒により100%賄うことを目指した企業連合です。
2050年までに⾃社のグループ全体における消費電⼒を、再エネ率100%にすることが目標であり、2030年までに再エネ割合を60%、2040年までには再エネ割合を90%にすることを中間目標として定めています。
この3つは、枠組みが異なるだけで、いずれもカーボンニュートラルに深く関係しています。
国内のSBT認定企業数は増加傾向
地球環境問題の深刻化が進み続け、世界的に脱炭素社会への取り組みが活発化している理由から、国や企業は温室効果ガスの排出量をできるだけ抑えた経済活動を行う必要があります。
サプライチェーン企業では、脱炭素化に対しての取り組みを行うことで、サプライヤーからの信頼を高められるため、発注してもらえる可能性が高くなります。
また、ESG投資など、環境問題を意識している企業に対する投資が拡大していることため、これからの社会で継続して経済活動を行っていくには、環境に配慮した活動が不可欠です。
そのような理由から、SBTの目標を提出する企業が増加しています。
なお、環境省が公開しているデータでは、2024年3月時点でSBT認定を取得している、もしくは取得することに※コミットした企業数は、日本だけで見ても約1000社です。
※コミット:SBT認定を2年以内に取得すると宣言すること
企業がカーボンニュートラルに取り組むメリット
企業がカーボンニュートラルに取り組むメリットは、大きく分けてコスト削減、競争力強化、企業価値向上の3つがあります。
それぞれ詳しく解説していきます。
メリット①:コスト削減
コスト削減の面では、電力・燃料コスト削減があります。
電力・燃料コスト削減
脱炭素化社会を実現するために、最も基本的といえる取り組みは、現在消費しているエネルギーを見直し、より効率の高いエネルギー消費サイクルに変えることです。
省エネ化を行うことにより、温室効果ガス排出量を減らすことに貢献しますが、結果的に企業におけるエネルギー消費でのコスト削減に繋がります。
近年では電力の省エネ化を推進している企業に向け補助金が支給されるため、そのようなリソースを上手く利用しつつ、省エネ設備を導入する企業も増加しています。
メリット②:競争力強化
競争力強化の面では、リスク低減・新たなビジネスチャンス獲得があります。
リスク低減
カーボンニュートラル実現の目標設定をしたり、実際の取り組み内容を公開したりすることにより、炭素税などのカーボンプライシングによる影響や環境規制によるリスクを低減できます。
カーボンプライジングとは、気候変動問題における主な要因とされている炭素に対し価格を設定する仕組みです。
この仕組みにより、炭素を排出している企業などに対し排出量に見合った金銭的な負担を与えることで、政府は低炭素社会の推進が期待できます。
企業はカーボンニュートラルに取り組むことで、このような金銭的負担を背負わされるリスクの軽減が可能です。
また、環境規制では代表的なものに動車排出ガス規制があります。
窒素酸化物や硫黄酸化物などを多く排出するディーゼル車に、厳しい規制を定める方向にあります。
このように環境に配慮されていない製品は、今後規制を受ける可能性が高いです。
しかし、カーボンニュートラルに取り組むことで、このようなリスクも軽減できます。
新たなビジネスチャンス獲得
カーボンニュートラル実現に向けて取り組むことで、新たなビジネスチャンスを獲得できる可能性が高いです。
現代では、深刻化する地球環境問題から、カーボンニュートラルを意識した商品が評価されています。
例えば、食品の容器を製造している企業の場合、競合他社と比べ、エコで地球にやさしい商品の開発に成功すれば、ブルー・オーシャンのため大きな利益が期待できます。
環境保護を慈善事業としてイメージするのは時代遅れであり、現代では環境保護を意識した経済活動が必要不可欠です。
メリット③:企業価値向上
企業価値向上の面では、ステークホルダーからの評価向上・サプライヤー選定・投資・融資機会増加があります。
ステークホルダーからの評価向上
近年の社会風潮では、企業が地球環境に配慮した活動を行っているかが、非常に重要視されています。
このような現代で脱炭素経営を実施することで、ステークホルダーからの信頼など、評価の向上が期待できます。
サプライヤー選定
近年では、サプライヤーに対して、温室効果ガス排出量の削減を要求する動きが広がっています。
理由は、SBTなど温室効果ガス排出量削減のルールや、投資家からの評価基準が自社の温室効果ガス排出量(Scope1・2)だけでなく、サプライヤーなどのサプライチェーン上における温室効果ガス排出量(Scope3)に関しても対象だからです。
そのため、カーボンニュートラルに取り組むことで、サプライヤー選定で優位に立つことができます。
投資・融資機会増加
カーボンニュートラルに取り組むかどうかは、資金調達の面でも大きく影響してきます。
近年では、環境や社会に対し配慮した事業に取り組んでおり、適切な企業統治(ガバナンス)が行われている企業に投資しようというESG投資が拡大しています。
そのため、カーボンニュートラルに取り組む企業の方が、投資や融資してもらえる可能性が高いです。
まとめ
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素などの温室効果ガス排出量を減らし、植林などの二酸化炭素吸収量を増加させることにより、全体で見た温室効果ガス排出量を実質ゼロにする考えです。
カーボンニュートラルに取り組む企業は、年々増加しており、国際的イニシアチブ「TCFD」「SBT」「RE100」に取り組む日本企業の数は、世界でトップクラスの企業数を誇っています。
企業がカーボンニュートラルに取り組むメリットには、大きく分けてコスト削減、競争力強化、企業価値向上の3つがあります。
カーボンニュートラルに取り組むことで、さまざまな面でメリットが期待できるため、企業の脱炭素経営を積極的に進めるサステナ担当者の方は、カーボンニュートラルの概要や企業が取り組むメリットについて十分理解しておくことが大切です。
#カーボンニュートラル
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温室効果ガス排出量の「算定」について、一通り理解できるホワイトペーパーです。
「どんなデータ/計算式」を用い、「どんなプロセス」で算定するのかを理解できます。
参考文献
[1]経済産業省 資源エネルギー庁「脱炭素化に向けた諸外国の動向」
[2]環境省「SBT参加企業」
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