Last Updated on 2024年12月31日 by Moe Yamazaki

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温室効果ガス排出量削減は、サプライチェーン全体で取り組むべき課題として企業に大きな影響を与えています。特に、輸送手段や物流拠点でのエネルギー使用は、企業の排出削減戦略において不可欠な要素です。

この記事では、企業のサプライチェーンに関連するスコープ3カテゴリ4およびカテゴリ9について解説し、企業がどのように排出量削減に取り組むべきか、算出方法や実際の企業事例を交えて紹介します。

<サマリー>
•スコープ3カテゴリ4は、企業の調達活動や費用負担する輸送・物流(上流)が対象で、サプライヤーから自社までの輸送や、企業が費用負担する物流サービスが含まれる
•スコープ3カテゴリ9は、製品の出荷後や所有権移転後の輸送・物流(下流)が対象で、自社から消費者までの企業が費用負担しない輸送や、企業が所有・負担しない車両および施設での小売や保管が含まれる
•輸送方法や距離によって排出量が異なるため、データに基づいた正確な算定が必要
•輸送の効率化や物流センターでのエネルギー削減が、排出量削減に大きく貢献
•持続可能なサプライチェーンの構築に向け、企業とサプライヤーとの連携が重要

スコープ3算定式の精緻化を図る、「Scope3の削減方法とは?WP」
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スコープ3カテゴリ4・カテゴリ9の詳細解説

スコープ3カテゴリ4は、企業がサプライチェーン上で購入した製品やサービスの輸送に関連する間接排出量に焦点を当てています。

特に、上流の物流段階における温室効果ガス(GHG)の排出削減が中心課題です。輸送手段の選択、ルートの最適化、効率的な燃料消費といった物流プロセスの見直しは、企業がサプライヤーと協力して行う重要な取り組みです。

一方、スコープ3カテゴリ9は、企業が報告年に販売した製品やサービスの消費者までの輸送(出荷)に関連する間接排出量に焦点を当てています。

カテゴリ4と9の注意するべき点として、出荷輸送時の荷主に応じて、算定カテゴリが異なることが挙げられます。具体的には、他社に委託している輸送のうち、自社が荷主の場合は、カテゴリ4に該当し、他社が荷主の場合は、カテゴリ9に該当します。

カテゴリ4の対象 調達に伴う物流

スコープ3カテゴリ4は、サプライヤーから自社に製品やサービスが輸送される際の排出量に加え、企業が費用を負担するあらゆる物流サービスが対象となります。これには、調達時の輸送だけでなく、横持ち輸送や出荷輸送も含まれます。

排出量の算定には、トラック、船舶、航空機などの輸送手段ごとの排出原単位が適用され、輸送距離、貨物の重量、積載効率なども考慮されます。こうした要素は排出量に大きく影響するため、企業は正確なデータの収集と算定を行う必要があります。また、輸送手段ごとに異なる排出特性があるため、各手段に応じた排出削減の戦略が求められます。

たとえば、トラック輸送では、燃料や積載率が排出量を左右し、船舶や航空輸送では燃料の種類や距離が大きな要素となります。こうした要因に基づいて輸送手段ごとの排出量を精密に計測することで、企業は輸送全体の排出量削減のための具体的な施策を立てることができます。

さらに、カテゴリ4には、物流サービス以外に伴うエネルギー消費も含まれてます。これには、物流や販売の拠点内での排出、特に冷凍・冷蔵施設の冷媒漏洩や電力消費などが挙げられ、これらすべての要素を含んだ正確な排出量把握が求められます。

カテゴリ9の対象 出荷に伴う物流

スコープ3カテゴリ9は、自社から消費者に製品やサービスが輸送される際の排出量に加え、企業が費用を負担しないあらゆる物流サービスが対象となります。これには、出荷時の輸送だけでなく、所有権を引き渡した後の保管や販売に関連する物流も含まれます。

排出量の算定は、2種類あります。①自社から消費者までの輸送・流通を対象としたもの②自社が所有権を有さない車両・施設での小売や保管を対象としたものがあります。①の出荷物流の算定方法は、カテゴリ4と同様ですが、②の販売の算定方法は、販売チャネル別の排出原単位が適用され、そのチャネル別の製品出荷量のデータが必要になります。

たとえば、ディーラー販売では、自社グループ外の販売店の店舗かつ自社製品の販売分のみを計上します。

算定方法

カテゴリ4とカテゴリ9の一部における輸送・流通の算定方法には、燃料ベース手法、距離ベース手法、消費ベース手法など、さまざまな手法があります。ここでは、輸送にかかる排出量算定として、以下の3つを紹介します。

1.トンキロ法
トンキロ法は、貨物の重量と輸送距離を掛け合わせて算出する方法です。輸送手段ごとに排出係数が異なり、トラック、船舶、航空機などのそれぞれに適用する排出原単位に基づき、排出量を算定します。

2.燃料消費に伴う排出
燃料ベースの手法では、輸送に使用した燃料量を基に排出量を算定します。消費された燃料に対して、燃料の種類ごとのCO₂排出係数を掛け合わせ、輸送時に発生した排出量を導き出します。

3.物流拠点におけるエネルギー消費
物流拠点や販売拠点では、荷役、保管、冷却設備などのエネルギー消費により排出が発生します。ここでは、電力や燃料の使用量に対する排出係数を適用し、拠点でのエネルギー使用に伴う排出量を算定します。特に、冷媒漏洩が発生する場合、HFC(ハイドロフルオロカーボン)などの冷媒が大きな排出源となります。

サプライヤーエンゲージメント評価の概要とスコープ3の関係

次に、サプライヤーエンゲージメント評価の概要とスコープ3の関係について解説します。

サプライヤーエンゲージメント評価とは

サプライヤーエンゲージメント評価は、企業がサプライヤーと協力して、サプライチェーン全体での温室効果ガス削減をどの程度実行しているかを評価する制度です。

この評価は、企業がサプライヤーとともに、物流の効率化や環境負荷の低減に取り組むプロセスを測定します。

サプライヤーエンゲージメント評価におけるスコープ3排出量算定のウェイト

CDPの評価において、スコープ3排出量の管理と削減は、全体評価の20%を占めています。

スコアリングカテゴリサプライヤーエンゲージメント評価におけるウェイト
ガバナンス20%
目標15%
スコープ3排出量算定20%
サプライヤーとエンゲージメント35%
CDP気候変動質問書全体のスコア10%
(※)CDP2023 サプライヤーエンゲージメント評価 イントロダクションを元に作成

スコープ3カテゴリ4・カテゴリ9で対象となる、物流における二酸化炭素(CO₂)などの温室効果ガスの排出は、輸送手段や輸送距離によって大きく異なるため、サプライヤーとの協力が不可欠です。

特に、効率的な輸送ルートの選択や、低排出の輸送手段の導入が排出削減に寄与します。サプライヤーエンゲージメント評価では、こうした具体的な取り組みがどの程度実行されているかが評価されます。

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スコープ3排出削減の企業事例

最後に、物流センターでのエネルギー使用量削減を通じて、スコープ3排出削減に取り組んでいるアスクル株式会社の事例を紹介します。

※環境省モデル企業事例集を元に作成
https://www.env.go.jp/content/000118181.pdf

会社事業概要 アスクル株式会社

アスクル株式会社は、物品調達や通信販売サービスを手掛ける企業で、GHG排出量の大部分が物流センターでの電力使用に起因しています。

特に、物流拠点における空調や冷却システムによるエネルギー消費が主な排出源となっています。

取り組み 空調負荷削減

アスクルは、以下の3つの重点施策を通じて排出削減に取り組んでいます。

  • 空調負荷削減
    物流センターにおける空調負荷の削減に注力し、冷房や暖房のエネルギー効率を改善。具体的には、効率的な空調設備の導入や、センター内の温度管理を徹底し、エネルギー使用量を削減する取り組みを行っています。
  • 電力使用の見直し
    物流拠点でのエネルギー使用を見直し、再生可能エネルギーの導入を進めています。これにより、GHG排出を抑えつつ、効率的な運営を実現しています。
  • 配送効率化
    輸送・配送においては、ルート最適化や低排出車両の導入など、物流の効率化を推進し、輸送段階でのCO₂排出削減を目指しています。

これらの取り組みにより、アスクルはサプライチェーン全体の持続可能性を高め、環境への影響を最小限に抑えた事業運営を実現しています。

まとめ

スコープ3カテゴリ4・カテゴリ9では、輸送・流通に関連する排出削減が焦点となります。サプライヤーからの調達に伴う排出量を正確に算定し、輸送手段やエネルギー消費を見直すことが重要です。

リクロマでは、ISSB(TCFD)開示、Scope1,2,3の算定など、幅広いサポートを提供しています。詳細な情報やご相談については、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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#サプライヤーエンゲージメント

Scope3の削減方法とは?

【このホワイトペーパーに含まれる内容
・Scope3の基本情報とScope1,2との違いを説明
・Scope3の算出方法と削減方法をそれぞれ詳細に解説
・Scope3削減好事例を複数のカテゴリーでわかりやすく解説

参考文献

・CDP2023 サプライヤーエンゲージメント評価 イントロダクション
https://cdn.cdp.net/cdp-production/comfy/cms/files/files/000/008/101/original/SER_Introduction_JPN_2023.pdf
・GHG プロトコル スコープ 3 排出量の算定技術ガイダンス
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/(J)-calculation_guidance.pdf
・環境省 スコープ3排出量の算定技術ガイダンス
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/(J)-calculation_guidance.pdf
・環境省 サプライチェーン排出量算定に関する説明会 Scope3~算定編
~https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/dms_trends/study_meeting_2020.pdf
・環境省 モデル企業事例集
https://www.env.go.jp/content/000118181.pd

リクロマの支援について

弊社はISSB(TCFD)開示、Scope1,2,3算定・削減、CDP回答、CFP算定、研修事業等を行っています。
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  • 大学では気候変動の経済学を専攻し、リクロマ株式会社には創業初期よりコンサルタントとして参画。 情報開示支援を中心に温室効果ガスの排出の算定や高度なシナリオ分析の業務を担う。

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