Last Updated on 2024年11月21日 by AmakoNatsuto

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欧州連合(EU)は、環境負荷を削減し、持続可能なモビリティの実現を目指して、包括的なモビリティ戦略と関連規制を導入しました。

企業がこの戦略に適応するためには、ゼロエミッション車の普及やインフラ整備、新車の排出基準強化に対する具体的な対応策が必要です。

当記事では、バッテリー規則が自動車産業に与える影響について詳しく解説し、企業がどのようにサプライチェーン全体での環境基準を満たし、持続可能な交通手段の導入を進めるべきかを紹介します。

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バッテリー規則とは

バッテリー規則の概要

欧州連合(EU)は、バッテリー規則を導入しました。

この規則は、バッテリーの設計、製造、使用、廃棄に関する厳格な基準を設定し、全体的な環境負荷を削減することを目指しています。

特に、電気自動車や再生可能エネルギーの普及に伴い、バッテリーの需要が増加する中で、その生産と廃棄における環境負荷を最小限に抑えることが求められています。

例えばバッテリーの設計においては、リサイクル可能な材料の使用や、エネルギー効率の向上が求められます。

これにより、バッテリーのライフサイクル全体での環境負荷を低減できます。

使用中のバッテリーについては、効率的なエネルギー管理が求められます。

また、廃棄時には適切なリサイクルプロセスを経ることが義務付けられており、環境への影響を最小限に抑える取り組みが求められます。

バッテリー規制の適用スケジュール

バッテリー規則の導入は段階的に行われ、その適用スケジュールも明確に定められています。

これにより、企業は適応するための十分な時間を確保しつつ、規制に準拠するための準備を進められます。

初期適用段階

欧州バッテリー規則は2023年8月17日に施行され、2024年2月18日から段階的に実施されることとなります。

具体的には、2024年8月18日以降、産業用バッテリーおよび電気自動車用バッテリーに関して、カーボンフットプリントの報告が必須となります。

完全適用時期

完全適用は2027年から開始されます。

この時点で、すべてのバッテリーは規制に完全に準拠していることが求められます。

企業は、バッテリーの生産から廃棄までの全過程で環境負荷を最小限に抑える取り組みを行うことが必要です。

経過措置と準備期間

規制の完全適用までの間、企業は段階的な適応期間を利用し、必要な体制の整備やプロセスの見直しを進めることができます。

この経過措置は、企業がスムーズに新しい規制に移行できるようにするための重要な期間となります。

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バッテリー規則による自動車産業への影響

特に、車載電池のライフサイクル全体のCO2排出量(CFP)の管理と報告が義務化されるため、自動車メーカーとその関連企業は厳しい基準に準拠する必要があります。

電池のサプライチェーンと規則への対応

バッテリー規則の要件を満たさない場合、欧州市場での車両販売が制限されます。

このため、電池のサプライチェーンを構成する企業は、新しい規則に対応するための体制整備が不可欠です。

電池の製造から廃棄に至るまでの全ての段階で環境基準を満たす必要があります。

特に、電池の生産過程でのCO2排出量を削減するための技術開発や、効率的なリサイクルシステムの構築が求められます。

車載電池のCFP義務化

2025年2月から、車載電池のライフサイクル全体のCO2排出量(CFP)の申告が義務化されます。

これにより、自動車メーカーは、電池の生産、使用、廃棄に至るまでの全過程でのCO2排出量を計測し、報告する責任を負います。

CFP申告の準備

企業は、CFPを正確に計測するためのシステムを導入し、データを収集・管理する体制を整える必要があります。

また、第三者機関による検証を受けることで、報告の信頼性を確保します。

2026年8月からは、CFPの大小を識別するための性能分類の記載が義務化されます。

これにより、消費者や規制当局は、各車載電池の環境負荷を比較・評価することが可能となります。

性能分類の導入

性能分類は、電池のCFPを数値化し、その大小を明示するものです。

企業は、製品ラベルやカタログにこの情報を記載し、透明性を高める必要があります。

CFP最大しきい値の設定

2028年2月からは、設定されたCFPの最大しきい値を下回らないと、EU域内での車両販売ができなくなります。

これにより、環境負荷の高い車載電池を使用した車両は市場から排除されることになります。

しきい値の遵守

企業は、電池の製造過程でのCO2排出量を低減するための技術革新や、再生可能エネルギーの利用を促進する必要があります。

また、全体的なサプライチェーンの効率化を図り、設定されたしきい値を遵守するための取り組みを強化します。

欧州モビリティ戦略・関連規制

欧州連合(EU)は、持続可能なモビリティの実現を目指し、ゼロエミッション車の普及やインフラ整備、新車の排出基準強化など、さまざまな規制を導入しています。

これにより、企業は脱炭素経営を進めるための具体的な指針を得られます。

ゼロエミッション車普及目標

EUは、2030年までに少なくとも3,000万台のゼロエミッション車を普及させるという野心的な目標を掲げていました。

さらに、2050年までにはほぼ全ての乗用車、商用車、貨物車、バスをゼロエミッション車へ移行する計画です。

ゼロエミッション車の推進

この目標を達成するために、EUは自動車メーカーに対してゼロエミッション車の開発と生産を加速するよう求めています。

また、消費者がこれらの車両を選びやすくするためのインセンティブも提供されています。

インフラ整備目標

ゼロエミッション車の普及には、充実したインフラが不可欠です。

充電インフラと水素ステーション

これらのインフラ整備により、ゼロエミッション車の利用が一層容易になり、普及が加速します。

企業はこの流れに対応するために、インフラ投資や関連技術の開発を進める必要があります。

インセンティブの設定

消費者がより持続可能な交通手段を選択できるようにするため、EUは炭素価格の設定や課税、インフラ補助金などのインセンティブを提供しています。

これにより、ゼロエミッション車の購入コストが削減され、普及が促進されます。

消費者向けインセンティブ

インセンティブの導入により、消費者は環境に優しい車両を選択しやすくなります。

企業は、これらの政策を活用して、ゼロエミッション車の市場シェアを拡大する戦略を立てることが求められます。

新車CO2排出基準の強化

2030年から2034年に販売される新車のCO2排出量について、2021年比で50%以上(乗用車は55%以上、バンは50%以上)の削減を求め、2035年以降に販売される新車はゼロエミッション車のみとする規制が導入されます。

CO2排出基準の詳細

これらの基準により、自動車メーカーはさらなる技術革新が求められます。

企業は新しい基準に対応するための開発体制を強化し、持続可能な製品ラインナップを構築する必要があります。

新車の大気汚染物質の排出基準強化

2035年までに乗用車やバンのNOx排出量を現行基準値からさらに35%以上削減することが求められています。

また、アンモニア排出量やブレーキ・タイヤの摩耗による粉じん量も新たな規制対象となります。

大気汚染物質の管理

この規制により、自動車メーカーはよりクリーンなエンジン技術やフィルターシステムの導入が求められます。

企業は環境規制をクリアするための技術革新を推進し、持続可能なモビリティの実現に貢献する必要があります。

まとめ

欧州連合(EU)のモビリティ戦略と関連規制は、企業が脱炭素経営を進める上で重要な指針です。

ゼロエミッション車の普及目標や充実したインフラ整備、新車のCO2排出基準の強化など、具体的な対応策が求められます。

特にバッテリー規則は自動車産業に大きな影響を与え、電池のライフサイクル全体でのCO2排出量管理が義務化されるため、企業は技術革新と体制整備を進めることが必要です。

これにより、持続可能な交通手段の導入を促進し、環境負荷の低減を実現することが期待されます。

参考文献

[1]レスポンス「自動車業界と電池業界における車載電池のビジネス動向と生き残り戦略…車載バッテリー最前線 第2回
[2]TUV「欧州バッテリー規則(EU BATTERY REGULATION)とは
[3]PlaPlat「「欧州バッテリー規制」が与える日本企業への影響とは?」」
[4]リクロマ「欧州バッテリー規則の対象製品と日本企業の対応
[5]自然電力グループ「欧州(EU)電池規則とは|内容・日本企業への影響をわかりやすく解説

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Author

  • 2022年10月入社。総合政策学部にて気候変動対策や社会企業論を学ぶ。スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリによる国際的な組織での活動経験を持つ。北欧へ留学しサステナビリティと社会政策を学ぶ。

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