Last Updated on 2024年4月25日 by Yuma Yasui

企業がTCFDの開示を行う際には、実際に排出している温室効果ガス排出量を把握する必要があります。排出量の測定は、スコープ1,2,3と呼ばれる範囲のそれぞれで行う必要がありますが、データの収集や項目の分類、排出量の計算など、複雑で取組みづらいと感じる企業も少なくありません。今回は弊社が支援させていただいた、温室効果ガス排出量算定の支援事例をご紹介します。

GHG排出量算定の具体的プロセスを知る、「Scope123の算定方法とは?」
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支援企業様

今回は、医療情報サイトを運営するIT企業様の事例をご紹介致します。こちらの企業様は、TCFDの開示にあたって、スコープ算定を検討していましたが、特にスコープ3の算出に確信をもてずにいました。そんな折に、他社様のご紹介で弊社を知り、温室効果ガス排出量算定支援のご依頼を頂きました。

当初の課題

算出に必要なデータがわからない

ご依頼を頂いた企業様がスコープ算定を行うにあたって抱いていた課題として、連結子会社を含めて算定をする際の必要なデータがわからないこと、を挙げておられました。

連結子会社をお持ちの企業様の場合、算定対象として子会社や関連会社を含めることもあります。算定に必要なデータを収集する際、必要なデータを適切に把握し、協力を仰ぐなど企業間の連携が欠かせません。しかし、連結子会社に協力してもらう上で、算定に必要なデータがわからず、適切に指示を出せないことに課題を感じていました。

スコープ3のカテゴリー分けの判断がつかない

また、スコープ3に関して、どのカテゴリーで算定したらいいのか判断がつかない、と感じていました。スコープ3では、自社以外の原料調達・物流・販売など、バリューチェーン全体での排出量を算出します。その際、自社のサプライチェーン上の活動を15のカテゴリーに分類する必要がありますが、どちらのカテゴリーに入るのか判断に困ることも少なくありません。

これは、多くの企業様が感じている課題ではありますが、ご依頼頂いた企業様も、同様の課題を感じていました。

―スコープ算定について詳しく知りたいご担当者様は、こちらの記事をご参照ください。:スコープ1,2,3とは?各スコープの詳細から、温室効果ガス排出量の算定方法まで解説 – リクロマ株式会社

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提案内容と納品までのプロセス

具体的な提案内容

スコープ算定に必要なデータについて

スコープ1,2に関しては、算定を行う対象範囲を決定し、ご依頼頂いた企業様及び連結子会社の算定に必要なデータをエクセルファイルにて提示させて頂きました。企業様には、ご提案内容をもとに、データを収集して頂きました。また、不足しているデータや数値の妥当性について、適宜情報共有を行いながら、算定に必要なデータ収集及び排出量の算出をサポートさせて頂きました。

カテゴリーの分類について

また、スコープ3に関しては、企業様の事業内容に合わせて、該当するカテゴリーの特定をした上で、算定に必要なデータをご提示させて頂きました。先述のように、データを収集している際には、どちらのカテゴリーに分類されるのかがわからない項目も出てきます。

具体的な例としては、自社で使用しているソフトウェアがカテゴリー1の「製品・サービス」に含まれるのか、カテゴリー2の「資本財」に含まれるのか、などが挙げられます。IT企業様の場合、自社で開発を行ったものが含まれていたりするため、こちらも併せて考える必要があります。

スコープ1,2,3ごとの排出
スコープ1,2,3ごとの排出(出所:弊社作成)

このような項目の一つひとつに対し、弊社の知見をもとにカテゴリーの分類を行いました。また、定期的に行う企業様との打ち合わせにて、分類内容を確認をしながら、算定までの流れを伴走させて頂きました。

完成までのプロセス

ご依頼を頂いてから、最終的な算定結果を出すまで、およそ3ヶ月の期間で、スコープ1,2,3排出量算定の支援をさせて頂きました。以下が、大まかな流れとなります。

キックオフMTG

キックオフMTGでは、以下の3点について企業様との認識を合わせました。ご依頼頂いた企業様は、連結子会社を持たれていたため、算定する会社をどこまで入れるのかについての確認も行いました。

  • スコープ1,2,3の概要
  • 算定対象の確認(子会社、海外を含めるのか)
  • スケジュールの概要

算定に必要なデータ収集する際にどこまで細かく集めるのかにつきましては、キックオフMTG後に決めていきます。

その後のやり取り

通常、キックオフMTGにて企業様との認識を共有した後、スコープ1,2は1〜2週間程度でデータの収集を企業様にお願いします。スコープ3ではキックオフMTG後に、カテゴリと算定ロジックを確認するミーティングを行い、その後2〜3週間程度で、データの収集を企業様にお願いしております。

企業様とのやり取りは、Google Meetを用いたオンラインでのミーティングを、2週間に1回ほどの頻度で行い、データの中身や算定方法等について確認を行いました。また、連結子会社のデータを一部集められなさそうとのご連絡を頂いた際にも、ミーティングを実施し、算定の方向性を適宜確認しながら排出量の算出を進めてまいりました。

ミーティング以外での情報共有に関しましては、SlackやTeams、メールにて行いました。データ収集に関してご質問を頂いた際には、弊社より迅速にご回答させて頂き、スムーズにデータの収集を行っていただけました。

算定結果のご報告

算定が終わりましたら、算定結果をミーティングにて共有させていただきます。ミーティングにて、企業様に内容をご確認頂いた後、最終的な算定結果をまとめさせていただきます。今回は、以下の形式にて納品させて頂きました。また、その結果を最終報告会にてご説明させて頂きました。

  • 算定報告書(ワード)
  • 算定データ資料(エクセル)

スコープ1,2,3算定による効果

今回ご依頼頂いた企業様は、上述のような課題を抱えていた上、リソースの関係上、自社で温室効果ガスの排出量算定を完結させるのは難しいと考えておられました。自社や連結子会社のデータを集めていただくのは、企業様にお願いすることとなりますが、複雑で手間のかかる算定をスムーズに進めて頂けました。また、スコープ3のカテゴリー分けで生じる不明瞭な項目に関して、弊社コンサルタントの真摯な対応にもご好評をいただきました。

来年度以降、自社で算出することも検討していらっしゃったことから、今回共有させていただいたエクセル等の資料を含め、自社で取組むイメージもつかむことができたとのことです。子会社等を多く持たれている企業様は、データの収集や算定が通常よりも煩雑になる傾向にありますが、自社で行う温室効果ガス排出量算定の一助になりましたら幸いです。

お気軽にお問い合わせください

今回は、温室効果ガス排出量算定の支援事例をご紹介しました。弊社では、TCFD開示に関する総合的な支援のみならず、スコープ算定のみといったスポットでの支援も承っております。また支援内容は、企業様の業態や状況等に合わせて柔軟に対応させていただきます。依頼をご検討されているご担当者様は、一度お気軽にお問い合わせください。

#TCFD #スコープ #算定 #支援事例

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リクロマ株式会社

当社は「気候変動時代に求められる情報を提供することで社会に貢献する」を企業理念に掲げています。

カーボンニュートラルやネットゼロ、TCFDと言った気候変動に関わる課題を抱える法人に対し、「社内勉強会」「コンサルティング」「気候変動の実働面のオペレーション支援/代行」を提供しています。

Author

  • 長濵翔大

    2022年11月入社。在学中は、環境情報学を専攻。農業の持続可能性について研究を行い、ラオス農村部でのフィールドワーク調査やネパールの農村部で医療情報の電子化を行うNPOでのインターンを経験。持続可能性の観点から気候変動領域に関心を持ち、リクロマ株式会社に参画。