Last Updated on 2026年1月8日 by Sayaka Kudo

【気候変動関連用語がまるわかり!用語集はこちら

近年、CDPスコアは企業の気候変動対応力を示す重要な指標として、投資家や金融機関からの注目度を一層高めています。中でもA/A-スコアは、情報開示にとどまらず、戦略・ガバナンス・実行力までを含めた「リーダーシップレベル」の取り組みを示す評価です。本コラムでは、CDP A/A-スコアの位置づけや要件、そして高スコアを維持するために企業が押さえるべきポイントを体系的に解説します。

<サマリー>
・必須要件の内容と水準を把握することが重要
・拡大する要求事項に応えるための継続な取り組みが必要
・自由記述欄の記載内容もスコアリング評価の一要素

CDP(気候変動質問書)の基本情報や回答メリット、ポイントを知る「CDP(気候変動質問書)入門資料」
⇒資料ダウンロードはこちら

CDP A/A-スコアとは

CDPのスコアは、Disclosure(情報開示)、Awareness(認識)、Management(マネジメント)、Leadership(リーダーシップ)の4段階に分かれています[1]。A-/A(リーダーシップレベル)スコアとは最上位レベルであり、サステナビリティ戦略と戦略実現のための行動において「ベストプラクティスを実践」していることを示す指標です[2]。A/A-スコア企業は、取締役会レベルでの気候ガバナンス、具体的な排出削減目標、移行計画の策定・実施、そして詳細なリスク・機会評価など、各レベルの必須要件を網羅していることが求められます。

各スコアレベルとその詳細についての画像
弊社作成

A-/A(リーダーシップレベル)の獲得基準

CDPでは、回答内容がDisclosure(情報開示)、Awareness(認識)、Management(管理)、Leadership(リーダーシップ)の4段階で評価され、それぞれスコアが集計されます。リーダーシップレベルでのスコアが70%以上に達するとA評価(Aリスト候補)となり、70%未満でもリーダーシップレベルに到達していればA-評価となります[1]​。Aリスト企業は、Aリスト候補に選定された企業の中から優秀企業として特別に認定されます。

CDP A/A-スコア企業の要件

必須要件の充足

CDP2024からはA-以下の評価においても必須要件が導入されました。A-/Aスコア企業に対してはサステナビリティに関するベストプラクティスの実践が求められ、各類型に要素分解された必須要件設定がなされています。

A-スコア必須要件

A-スコア必須要件
出典:CDP「CDP_Climate_Change_Scoring_Essential_Criteria_2024.pdf」を元に弊社作成

Aスコア必須要件

Aスコア必須要件
出典:CDP「CDP_Climate_Change_Scoring_Essential_Criteria_2024.pdf」を元に弊社作成

CDP(気候変動質問書)の基本情報や回答メリット、ポイントを知る「CDP(気候変動質問書)入門資料」
⇒資料ダウンロードはこちら

継続的な取り組みの高度化

CDPは毎年評価基準を更新し、企業の環境対応水準の向上を促すとともに、従来の取り組みが標準化してしまうとより野心的な施策が求められるようになります。前年と同じ内容の回答では十分なスコアを維持できない可能性があるため、企業は継続的な改善と情報更新が必要です。

自由記述欄の充実(Aリスト評価のみ)

自由記述欄の記載内容は、Aリスト企業選定時の評価項目の一つです。自由記述欄は、単なる補足情報ではなく、設問ごとに求められる詳細な説明や根拠、具体例を記載することを求められており、記載内容が文脈に沿っていない場合や、評価者により 読み手(機関投資家を始めとしたステークホルダー)の意思決定に資する情報ではないと判断された場合は、評価に繋がらない可能性があります。

CDP A/A-スコアを維持するためのポイント

継続的な取り組みの実施と回答への反映

前述の通り、A-/Aスコア企業は、サステナビリティに関する戦略面・戦術面・施策面で「ベストプラクティスを実践」していることを求められます[2]。CDPの評価基準は毎年更新・強化されます。企業が高スコアを維持するためには、取り組みの継続的な高度化と回答内容への反映が必要となります。特に今後注力が求められると考えられる領域を以下に示します。

注力領域1:サプライチェーン排出量のさらなる可視化と削減

自社バリューチェーン(サプライチェーン全体)におけるGHG排出量の把握と削減は、ネットゼロ実現の要です。A-/Aスコア企業はすでにScope3算定を一通り完了しているため、今後はさらなる可視化と実際の排出量削減推進に対する要請が強まると考えられます。

一次データ活用

Scope3算定にあたり、サプライヤーから直接入手したCFPデータや排出原単位を活用し、実効性の高い削減施策の検討につなげることが重要です。

サプライヤーエンゲージメント

CDPもサプライヤーエンゲージメントを重視しています。今後は、サプライヤーからの情報収集にとどまらず、サプライヤー向けの排出削減要請・目標設定要請や、研修や資金提供・技術提供を通したキャパシティビルディング(能力構築)など、実効性のある削減施策の実施有無やその進捗が評価のポイントとなる可能性が高いです。

関連記事:CDPサプライヤーエンゲージメント評価・最高評価企業を紹介

注力領域2:自然資本関連の取り組み

2024年の質問書から、自然資本全体を対象とした取り組みに焦点が当てられるよう変更されています。これは2023年に最終提言が公表されたTNFD(Nature関連財務情報開示タスクフォース)の動きと歩調を合わせたものです。TNFDは企業が生態系サービスなど自然への「依存」と「影響」を把握・開示することを求めており、CDPは2024年の質問書において早速こうした「自然資本や生態系サービスへの依存関係や、自然資本への影響」に関する設問を盛り込みました​。スコアリング基準上も、TNFD要素である依存と影響を評価・管理する取り組みが重視され始めており、今後も要求水準の引き上げがなされる可能性が高いです。

注力領域3:グローバルな法令・規制との整合

2024年の質問書では、IFRS S2との整合が図られました。SSBJ開示基準の適用が迫る中、気候関連情報の開示は「遵守すべき最低ライン」として定着していくと考えられます。今後はIFRS S2準拠の開示事項が、スコアリングにおける開示レベルや認識レベルの前提条件となる可能性があります。例えば、移行計画の有無もIFRS S2に含まれており、CDPは2024年から移行計画の開示をリーダーシップ企業の必須要件に加えています​。IFRS S2との整合は、CDPに劇的な設問変更をもたらすというより、従来「先進的」とされていた開示が今後は標準要件化することを意味します。したがってCDPで高スコアを維持するには、IFRS S2で網羅される事項を確実に満たしつつ、その上でより踏み込んだ長期戦略や実績を示す必要性が増すと考えられます。

また、CDPとEFRAG(欧州財務報告アドバイザリーグループ)との連携強化の動きも注視が必要です。2024年11月にCDPは、「2025 年質問書とESRS E1の整合性を強化することも検討」する旨のリリースを公表しています[4]。この変化により、2025以降のスコアリングで、気候だけでなく自然資本や循環経済にまで目配りした取り組みの有無や、EUタクソノミーとの整合などの項目が、CSRD適用対象外の企業に対してもより強く求められる可能性も否定できません。

自由記述欄の見直し・改善

自由記述欄は、CDPスコアの中でも特に評価者が注目する部分です。A-/Aスコア企業の自由記述欄では、実際の取り組みを実施する際の意思決定背景や取り組みを実践した結果、および取り組みの時間軸などを詳細に記載することが求められます。

自由記述欄のチェック観点

  • 明確な根拠の提示:
    単に「当社は〜に取り組んでいる」と述べるだけでなく、その判断や行動の根拠を明確に説明します。なぜその施策が必要で、どのような論理に基づいて実施されているのか、具体的な背景を示すことが求められます
  • 具体例・定量データの記載:
    可能な限り具体的な数値や実績、タイムラインを示すことで、回答の説得力が向上します。たとえば、再生可能エネルギー導入の具体的な成果や、温室効果ガス削減の定量目標などを記載することで、CDP評価者に自社の取り組みの実効性を伝えます。
  • タイムライン(時間軸)と事例の提示
    取り組みの概要への言及にとどまらず、いつからいつまでに何を行い、何を達成したかを明確にすることが必要です。CDPでは、行動のタイムフレーム(例:開始年や達成予定年)の記載が評価ポイントになる設問があります。「2023年から取組を開始し2024年末までに30%削減を達成」といった形で行動の期間と成果をセットで示すと高評価につながります。
  • STAR話法による構造化:
    自由記述欄で具体的な事例を記載する際は、状況(Situation)、課題(Task)、行動(Action)、結果(Result)の各要素を盛り込むSTAR話法を採用することで、論理的・包括的な説明が可能となります。
  • 一貫性と整合性の維持:
    他設問の回答内容と矛盾がないよう、全体として統一感のある回答を作成することが重要です。特に、自由記述欄で述べた内容と定量データ、選択回答の整合性が求められ、これが欠けると評価に繋がらない可能性があります。
  • 将来の展望への言及:
    現在の取り組みだけでなく、今後の目標や計画、取り組みの進展状況についても言及することで、継続的な改善姿勢を示すことができ、高スコア維持の一因となると考えられます。

説明の記述の具体例

説明記述の具体例
出典:CDP「CDP2024 スコアリング イントロダクション」25-26ページ

補足:コピー&ペーストのリスク

CDP公式文書では他の質問や他の環境テーマ領域で同じ記述を使い回すことについて注意が示されています[2]​。例えば、気候変動と水セキュリティで似た質問があっても、全く同じ文章を貼り付けると文脈にそぐわない可能性があります。同文書では、「質問間または環境課題領域間で複製された回答は、それぞれのケースの文脈で意味が通り、スコアリング基準で求められる具体的な情報を提供している場合のみ、得点の対象となる」 と言及されているため、効率化のために過去の回答や他部門向け回答を流用する際も、必ず設問に適したカスタマイズを行うことが必要です。

まとめ

CDP A/A-スコアを維持するためには、企業は単に現状の取り組みを継続するだけでなく、最新の評価基準や国際的な開示枠組み(IFRS S2、TNFDなど)に柔軟に対応し、情報開示の内容を絶えずアップデートする必要があります。さらに、自由記述欄は、企業の先進性や実績、将来へのコミットメントを示す重要なポイントであり、明確な根拠、具体例、タイムラインなどを盛り込んだ論理的な記述が高スコア維持に直結します。今後も、IFRS S2やTNFDとの整合は順調に進む一方で、ESRSなど議論途中の枠組みに対しては注視し、迅速に対応できる体制を整えることが求められます。

#CDP

CDP(気候変動質問書)とは?

【このホワイトペーパーに含まれる内容
・CDPの概要やその取り組みについて説明
・気候変動質問書の基本情報や回答するメリット、デメリットを詳細に解説
・気候変動質問書のスコアリング基準と回答スケジュールについてわかりやすく解説

参考文献

[1] CDP(2024)「CDP Full Corporate Scoring Introduction 2024」(閲覧日:2026年1月8日)
[2] CDP(2024)「CDP2024 スコアリング イントロダクション」(閲覧日:2026年1月8日)
[3] CDP(2024)「CDP 気候変動 レポート 2023: 日本版」(閲覧日:2026年1月8日)
[4]CDP(2024)「CDP and EFRAG announce extensive interoperability between CDP questionnaire and EU Sustainability Reporting Standards」(閲覧日:2026年1月8日)
[5] CDP(2024)「CDP_Climate_Change_Scoring_Essential_Criteria_2024.pdf」(閲覧日:2026年1月8日)
[6] CDP(2024)「CDP2024 情報開示ウェビナー第1回 CDPを通じた環境情報開示」(閲覧日:2026年1月8日)

リクロマの支援について

弊社はISSB(TCFD)開示、Scope1,2,3算定・削減、CDP回答、CFP算定、研修事業等を行っています。
お客様に合わせた柔軟性の高いご支援形態で、直近2年間の総合満足度は94%以上となっております。
貴社ロードマップ作成からスポット対応まで、次年度内製化へ向けたサービス設計を駆使し、幅広くご提案差し上げております。
課題に合わせた情報提供、サービス内容のご説明やお見積り依頼も随時受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。
お問合せフォーム

Author

  • 大学では気候変動の経済学を専攻し、リクロマ株式会社には創業初期よりコンサルタントとして参画。
    情報開示支援を中心に温室効果ガスの排出の算定や高度なシナリオ分析の業務を担う。

    View all posts