【登場人物】
グンゼ株式会社 石井氏 技術開発部 環境戦略推進室 室長
グンゼ株式会社 井上氏 技術開発部 環境戦略推進室
(※所属部署、役職は当時の記載)
インタビュアー:加藤 リクロマ株式会社
脱炭素・気候変動情報開示において多角的事業体が直面する課題とは
加藤(リクロマ株式会社)
リクロマ株式会社とのプロジェクトは2021年頃から始まりましたが、当初、気候変動情報の開示においてどのような難しさを感じていらっしゃいましたか。
石井氏(グンゼ株式会社 技術開発部 環境戦略推進室 室長)
私たちの会社は、アパレル・プラスチック・メディカルなど複数の事業体を持っています。その中で難しいのは、業界や関係するステークホルダーの違いにより環境への取り組みに積極的な事業体とそうでない事業体が混在している点です。グンゼ全体として取り組みをどのように示すか、開示の在り方がなかなか定まりませんでした。シナリオ分析も現状ではアパレルとプラスチックの主要事業部門にとどまっており、本来はより多くの事業体に展開すべきだとは認識しています。ただ、各事業部への負荷を考えると一気には進められません。ステークホルダーから見た時に、グンゼとして何を・どこまで開示するかという判断が、非常に難しいところです。
加藤
世の中の動き——環境省や金融庁の政策も含め——何をどのタイミングでやるべきか、判断に迷われる場面もあったのではないでしょうか。
石井氏
そうですね。特にCDP対応のタイミングには毎年悩みました。どこまでコストをかけて取り組むべきかの線引きが難しく、次期NDC(国が決定する貢献)でも産業界の削減目標に関する指針がなかなか示されない中、政策動向を見極めながら優先順位を判断することが課題でした。
井上氏(グンゼ株式会社 技術開発部 環境戦略推進室)
加えて、弊社では担当部門が主体となってサステナビリティを推進しており、社内の納得感を醸成しながら少しずつ意識を浸透させていく作業が必要でした。規制への対応の必要性を社内に刷り込んでいく、そのプロセスが伴走支援なしには難しかったと感じています。
政策動向をふまえた資源循環への取り組み
石井氏
資源循環の推進においては、制度や政策の動向をしっかりウォッチしながら次の対策を考えていくことが重要です。その情報収集において、加藤さんからいただく最新情報は非常に参考になっています。
加藤
私たちも環境省・金融庁・経済産業省の動向をまとめてご提供できるようにしています。引き続きタイムリーにお届けできればと思っています。

省エネ・歩留まり改善から脱炭素へ——気候変動対応と既存活動の親和性
加藤
御社はもともと省エネや歩留まり改善に力を入れてこられました。気候変動対応はその延長線上にあると感じていらっしゃいますか?それとも、追加的な取り組みが必要だったと感じていますか?
石井氏
延長線上にある部分と、新たに追加した部分の両方があります。以前は「省エネはコストダウンのため」という位置づけでしたが、スコープ1・2・3という概念が登場し、政府のNDCに合わせた数値目標を設定するとなると、従来の取り組みだけでは不十分でした。技術開発部内でも、従来からエネルギーや設備管理を行っている生産統括室だけでなく、環境戦略推進室としても省エネ・創エネの深掘りに取り組むようになっています。また、カーボンクレジットのような新しい手法にも挑戦しました。
石井氏
資源循環については、脱炭素とは少し異なる文脈から始まっています。プラスチックカンパニーはマイクロプラスチック問題への対応として以前から資源循環を進めてきました。気候変動が注目されるようになって以降、資源循環がGHG排出量削減にもつながる部分があるという整理ができ、全社的な取り組みとして位置づけが強化されました。スコープ1・2の削減と合わせ、スコープ3削減の観点からも資源循環を一層推進しています。
加藤
今後はCDPでもマイクロプラスチック・海洋汚染に関する設問が追加される見込みです。プラスチックを扱うメーカーにとっては、この領域への対応がますます重要になってくるでしょう。
ESG経営の社内浸透——CDPスコアと第三者の視点が組織を変える
加藤
CDPへの対応を通じて、社内の意識や経営層の捉え方に変化はありましたか?
石井氏
CDPに初めて回答してBスコアを獲得した時は、社内に大きなインパクトがありました。自分たちが思っていた以上の評価が得られたことで、経営層の関心も高まりました。翌年にスコアが下がれば「なぜ下がったのか」と問われるようになり、環境情報開示に対する社内の目が確実に厳しくなっています。当初は評価が上がるだけで注目されましたが、今ではそれが当たり前の基準になっています。

井上氏
私たちの部門が環境対応を推進する際、自社内だけの意見では経営層の納得を得にくい場面があります。そうした時に、リクロマ株式会社のような外部の専門家が「この規制への対応は○○だから必要です」と客観的に伝えてくれることで、話が通りやすくなりました。ある意味、意図的に外部の声として伝えてもらう場面もありました(笑)。外からの視点が入ることで、組織全体が動きやすくなると実感しています。
外部伴走支援を5年継続する理由——スピード・カスタマイズ・同じ目線
加藤
単発ではなく、長期にわたってご一緒させていただいている理由をお聞かせいただけますか。
石井氏
一番の理由は、レスポンスの速さと情報の的確さです。気候変動分野の情報は日々変化しており、そのスピードに対応するためには、弊社の事業内容を深く理解した上でタイムリーに回答してもらえる存在が不可欠です。リクロマ株式会社はプラスチックカンパニーのシナリオ分析を皮切りに、全事業体のリスク・機会の整理にも関わっていただいたため、弊社の内情をよくご存知です。そのため、こちらが質問した時の背景理解が早く、対応工数も大幅に減っています。
石井氏
もう一つは、「一緒に考えてもらえる」姿勢です。以前、大手コンサルティング会社と取り組んだ際は、指示されたことをこなしていく進め方でした。リクロマ株式会社は同じ目線で考えてくれるため、自分たちで学びながら進められます。また、第三者として優先順位を示していただけることも大切です。ある規制対応についても、御社の企業規模では現段階で必要ないとご意見をいただきました。その後、経営層の方針で対応の方向に一時シフトしましたが、そういった率直なアドバイスが方向修正に役立っています。
井上氏
社内では「リクロマ株式会社が言うなら正しい」という信頼感が生まれています。規制や情報に対して、弊社の立場から解釈した上での助言をいただけるため、第三者の意見として社内への説明がしやすくなりました。CDPの対応においても密接に連携いただいており 、もはや「第三の社員」のような存在です(笑)。
環境貢献製品でサステナビリティ経営を事業成長につなげる
加藤
アパレルカンパニーやエンプラ事業部では、サステナビリティをどのように事業と結びつけていらっしゃいますか?
石井氏
アパレル部門では、体温調節機能を持つ素材が空調設備の使用削減につながるという観点から、環境貢献製品として訴求する取り組みを進めています。着用することで夏は涼しく・冬は暖かく感じられるため、エアコンの設定温度を緩和でき、GHG排出量削減に寄与できます。エンプラ部門では、耐摩耗性・耐熱性の高いフッ素樹脂などが最終製品の交換頻度を下げ、廃棄物削減につながるという視点でPRするようになっています。また、エンプラ部門では20年以上前から溶剤を回収・精製して再利用する循環プロセスを社内で実施しており、これが実は資源循環の先進事例であることをあらためて気づき、対外的にも積極的に発信するようになりました。
加藤
環境への取り組みを「コスト」ではなく「製品の付加価値・差別化」として捉え直すことで、事業部の協力も得やすくなりますね。今後はこうした切り口での需要喚起にもつなげていけると、さらに良いのではないかと思っています。
サステナビリティ経営の先を見据えて——今後に期待する伴走支援の役割
加藤
最後に、今後のリクロマ株式会社への期待や役割をお聞かせいただけますか。
石井氏
「先を見る力」を持った支援に期待しています。私たちは日々の事業運営で目先の課題に追われがちです。しかし気候変動対応は中長期の視点で取り組むべきものです。将来の方向性について「本当にそうなのか」という疑問が社内でどうしても出てきますが、信頼性のある情報源に基づいた確証を示していただければ、社内の意思決定がスムーズに進みます。スピード感を持って、私たちが進むべき方向を一緒に固めていただける支援を引き続きお願いしたいと思っています。
井上氏
世の中が急速に変化する過渡期において、社内だけでできることには限界があります。外部からさまざまな情報を持つ方が「ハブ」として機能してくださることで、社内への影響力が大きく変わります。「第三の社員」として、これからも一緒に伴走していただけると心強いです。
まとめ
グンゼ株式会社は、アパレル・プラスチック・メディカルなど多角的な事業を展開しながら、CDPへの対応やスコープ1・2・3のGHG排出量削減、資源循環の推進を通じてサステナビリティ経営を着実に深化させてきました。多様な事業体ゆえの開示の難しさなどに直面しながらも、外部伴走支援との「同じ目線での協働」が社内の意識変革と経営層への説明力向上に大きく寄与しています。今後は環境貢献製品を通じた事業成長との連動、そして政策動向を先読みしたスピード感ある意思決定が、同社のサステナビリティ経営のさらなる進化を支えていくでしょう。
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