【インタビュアー】
リクロマ株式会社CEO 加藤 貴大
ご支援内容
・CDP気候変動質問書 回答支援(2024年度回答振り返り、2025年回答支援)
・継続的なアドバイザリー契約(フリーディスカッション形式)
評価機関が求めることの本質が見えず、手応えのない回答を続けていた
加藤:本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。まずは、弊社の支援を受けていただく前、CDPの回答プロセスにおいてどのような課題や悩みを感じていらっしゃったのか、改めて詳しくお聞かせいただけますでしょうか。
我妻様:一言で言えば、設問が何を求めているのか、その本質がどうしても掴めない状態が続いていました。CDPの質問書は非常に膨大で専門的です。言葉そのものの意味を辞書的に理解することはできても、その設問の裏側に、どのような評価の意向があるのか、何を以て良しとするのかなど、本質的な意図が見えてこなかったんですね。
ですから、回答を書き進めていても、常に霧の中にいるような、手応えのない感覚がありました。「これで合っているはず」という確信も持てなければ、かといって「これだ!」と自信を持って言えるレベルにも達しない。この確信のなさが最大のストレスでした。
加藤:他の評価機関との違いを感じる部分はありますか?
我妻様: はい。例えばS&Pなどは、非常にロジカルで意図が分かりやすいと感じます。例えば離職率についての設問があれば、従業員エンゲージメント施策が、出口(結果)として機能しているかを見たいんだな、と、その先の文脈が想像できます。しかし、CDPの気候変動に関する設問は、我々のような事業会社からすると、時に意図の解釈に迷う独特の難解さがありました。
進藤様: チーム内での議論も大変でした。自分たちなりに必死に調べて回答案を作るのですが、「この設問の意図はAではないか?」「いや、Bという可能性もある」と意見が割れることもしばしばで。結局、長時間かけて調べた結果、全く別の方向性が正解だったと分かり、全て作り直しになるようなこともありました。
我妻様: 調べること自体に膨大なリソースを割いているのに、出来上がったものに対して本当に理解が合っているのかと問われると、「合っています……多分」としか答えられない。社内の意思決定の場においても、この「多分」という言葉が、サステナビリティ推進の勢いを削いでしまっていたように思います。
設問の解説が安心感と自信をもたらした
加藤:そのような課題感をお持ちの中で、リクロマがCDP回答支援に入らせていただきました。具体的にどの部分が変化のきっかけになったのでしょうか。

ESG推進室 室長 / ビジネスプロセス改革推進室 室長 我妻 竜雄様
我妻様:
最も助かったのは、やはり設問ごとの詳細な解説です。単に書き方を教えるだけの代行的なスタンスではなく、設問の背景にある国際的基準や企業に求められる姿勢、当社の事業内容を鑑みてどの取り組みをどう表現することが適切、といった具合に、本質と具体論を繋いでくださいました。
これにより、長年感じていた霧が晴れ、大きな安心感に繋がりました。ただ、スコアが上がったこと以上に重要だったのは、私たちが自信を持って、ロジックで社内を説明・説得できるようになったことです。
社内の関係部門にも「やる意義」が浸透し始めた
加藤: 「社内を動かすロジック」という点は、多くのサステナ担当者様が苦労されている部分ですね。
我妻様: そうなんです。サステナビリティの取り組みは、ESG推進室だけで完結するものは一つもありません。現場の部門にお金や人といったリソースを割いてもらい、業務プロセスを変えてもらう必要があります。 自分たちが中途半端な理解しかしていないのに、現場に「これが必要なんです」とお願いするのは、非常に申し訳ないですし、何より責任を持てないので怖かった。
しかし、リクロマさんとの対話を通じて設問の本質を理解できたことで、なぜそのアクションが必要なのかを自信を持って語れるようになりました。 「この国際的な要請に応えるためには、今の当社のこのプロセスをこう変える必要がある」とロジカルに説明すると、部外のメンバーも「なるほど、それならやるべきだね」と納得してくれる。協力的な空気感が生まれ、組織としての動き出しが劇的に早まりました。
進藤様: 現場の皆さんにとっても、自分たちが協力した結果が開示という形で世に出て、評価機関から正当な評価を受ける。それが巡り巡って企業価値として跳ね返ってくる。このストーリーがつながり始めたことで、社内にサステナビリティに取り組む意義が浸透し始めたと感じています。
サプライチェーンへの働きかけにも変化が
加藤:スコアが上がったこと以外の成果として、他にポジティブだった面はありますか。
我妻様:はい、顕著な変化がありました。当社はファブレス(工場を持たない)企業ですので、製造委託先であるパートナー企業様との連携が不可欠です。これまでも労働環境や人権といったソーシャル面でのデューデリジェンスは実施してきましたが、気候変動に関しては、そこまで深く踏み込めていない部分がありました。
しかし今回、リクロマ社の支援を通じて、管理すべき項目が明確になったことで、委託先に対する働きかけが具体化しました。現在は、毎年のデューデリジェンスのスコープに気候変動もしっかりと組み込み、パートナー企業側もそれを真摯に受け止めてくれるようになっています。
次に取るべきアクションの輪郭が見えてきた
加藤:今回のプロジェクトを通じて得られた最大の成果について、スコア以外の観点も含めてお聞かせいただけますか。
進藤様:
自社の現在地が客観的に見えたことが大きいです。回答プロセスの中でリクロマさんと「当社のレベルは他社と比較してどうなのか」「何が弱みで、どこが強みなのか」という議論を重ねる中で、自社の課題が浮き彫りになりました。スコアを上げるための小手先のテクニックではなく、「世の中から取り残されないために、次に何をすべきか」というアクションの輪郭がはっきりしたんです。これが明確になると、翌年度の計画策定に向けた意思決定が迅速化するとともに、検討負荷の軽減につながります。また、評価機関の基準を「自社を良くするためのベンチマーク」として前向きに捉えられるようになりました。

ESG推進室 プロセス構築担当 / ビジネスプロセス改革推進室
ビジネスプロセス改革推進担当 進藤 修様
答えではなく観点を求めて、継続契約へ
加藤:CDPの支援が一段落した後、現在はフリーディスカッション形式での継続的なアドバイザリー契約をいただいています。あえて形式を決めない「壁打ち」のスタイルで継続を選ばれたのはなぜでしょうか。
我妻様:実を言うと、私は「サステナビリティの項目だけが独立して存在している開示」に、ずっと違和感を持っていたんです。理想は、開示内容が全て事業の成長戦略と紐づいていること。「サステナビリティのためにこれをやります」ではなく、「事業を成長させればさせるほど、社会も良くなる」という考え方を浸透させたいですし、実際そうなりたい。
加藤:その連動を目指していらっしゃるんですね。
我妻様:はい。そして、その領域に到達するためには、CDPの質問書を完璧にこなすだけでは不十分です。常に新しい潮流をインプットし、自社の事業と照らし合わせ、多角的な視点で揉み続ける必要があります。
投資家の方々と対話することもありますが、彼らは評価のプロであっても、具体的な解決策を一緒に考えてくれる実務のパートナーではありません。
だからこそ、リクロマさんとの「壁打ち」が必要なんです。「これをやれば正解」というパッケージ化された答えが欲しいわけではありません。「私たちは今、こういう仮説を持っているけれど、専門家の視点から見てどう思いますか?」という問いに対し、忌憚のない意見や新しい観点をもらう。その対話のプロセス自体に価値があると感じています。
事業とサステナビリティをつなぐ削減貢献量への挑戦
加藤:今後の継続的な対話の中で、特に注力していきたい具体的なテーマを教えてください。
我妻様:当社のビジネスモデルにおいて最も重要な削減貢献量(Avoided Emissions)の可視化と発信です。当社の供給するSoCチップは、世界中の自動車やデータセンター、民生機器に搭載されています。当社の技術は「高性能かつ低消費電力」が最大の武器であり、当社の製品が普及すればするほど、社会全体の消費電力が抑えられる。これこそが、事業とサステナビリティの連動そのものです。
一方でこの見えない価値を、まだお客様や、もしかすると社内のエンジニア自身にも、十分にストーリーを伝えきれていないのではないかという危機感があります。
進藤様:削減貢献量の見せ方って、今は決まったルールがないですよね。だから、いろんなやり方があると思っています。当社は、お客様とともにSoCの仕様を決めていく共同開発プロセスを通じて、お客様にとってより最適なカスタムSoCを提供する「Solution SoC」をビジネスモデルとしています。その中で、どうやって価値の差を見せていくべきなのか。いろんな観点をいただいたり、ディスカッションの中でアイデアが生まれてくるといいなと思っています。
我妻様:まずは、当社なりのロジックを作らなければいけません。そのロジックを作る段階から、エンジニアに入ってもらって一緒に作る。算式や閾値を決めて、「この製品については、こういうロジックだから何パーセントの削減効果がある」と言えるようにする。それができたら、エンジニアへのレクチャー会が始まります。「今までは技術的な訴求ポイントだけ説明していたけど、これからはサステナビリティ観点でのメリットも必ず説明してください」と。新しい業務プロセスとして生まれてくると思っています。
「決まっていないこと」にも、考えを持ってきてくれる
加藤: 最後になりますが、リクロマというパートナーの「らしさ」をどう感じていらっしゃいますか。
我妻様:私は、コンサルタントの方が言うことが全て正解だとは思っていません。特にサステナビリティのような正解のない領域では、「今はまだ決まっていません」という理由で結論を濁そうと思えばいくらでもできてしまいます。
しかし、リクロマさんは「まだ確定はしていませんが、現在の潮流からすれば、こう考えるのが妥当ではないでしょうか」と、リスクを取って自分の意見をぶつけてくれる。もし2年後に結論が違ったとしても、私はそれを責めるつもりはありません。むしろ、不確実な中で逃げずに「現時点での最善の考え」を提示してくれる姿勢に、プロフェッショナルとしての矜持を感じ、信頼を置いています。
進藤様:キャッチボールのスピード感も、私たちがリクロマさんを選び続けている理由です。こちらが投げた課題に対し、期待以上の鮮度と熱量で返ってくる。このリズムの良さがあるからこそ、当社のサステナビリティ推進は停滞することなく、常に前へ進み続けられているのだと思います。
加藤: ありがとうございます。その信頼に応え続けられるよう、これからもソシオネクスト様の 事業とサステナビリティの連動という高い志に伴走させていただきます。本日は本当にありがとうございました。
我妻様・進藤様: ありがとうございました。
会社情報
株式会社ソシオネクスト
先端SoCの設計・開発・販売を手がけるファブレス半導体メーカー。自動車、データセンター、民生機器など幅広い分野に高性能・低消費電力のカスタムSoCを提供。
https://www.socionext.com/jp/
支援期間
CDP回答支援:2024年回答振り返り、2025年回答支援
継続アドバイザリー:CDP支援終了後〜現在
リクロマの支援について
CDP回答作成の完全代行から担当者の質問書メソドロジーの理解向上まで、お客様のニーズに合わせて一貫した支援を実施します。
次年度以降も活用可能な、独自の回答マニュアルやCDP特化の知恵袋システムなど、自走化を支援するサービス設計です。CDP出身の代表が構築した高い専門性を持ったサービスにて、スコアアップを実現します。⇒お問合せフォーム

