Last Updated on 2026年4月28日 by 加藤 貴大

特殊潤滑油や機能性化学品を手がける化学メーカー・株式会社MORESCOは、GHG排出量の管理やCDP対応、社内へのサステナビリティ浸透に継続的に取り組んでいます。同社のサステナビリティマネジメント部を牽引する岸本充様と平野智之様に、脱炭素経営を推進するうえでの課題感や外部支援の活用方法、今後の展望について、リクロマ株式会社・加藤がお話を伺いました。

【インタビュアー】
リクロマ株式会社CEO 加藤 貴大

サステナビリティ経営の推進で感じた課題とは? 「自分ごと化」の難しさ

加藤:リクロマにご相談いただく前、MORESCO様のサステナビリティ推進やCDP対応において、どのような課題をお感じでしたか。


岸本様:私も平野も、このサステナビリティ全般を担当するようになって約一年です。それ以前の経緯を詳しくお伝えするのは難しい部分もありますが、一般論として言えば、社員一人ひとりがサステナビリティを「自分ごと」として捉えることが、なかなか難しかったのではないかと思っています。

株式会社MORESCO
サステナビリティマネジメント部長
岸本 充様

弊社では2022年ごろにサステナビリティ推進室が立ち上がりましたが、当初は「サステナ」と名のつくものはすべてサステナビリティ推進室に集中してしまうような状況があったのではないかと。私自身、工場に所属していた時期を振り返ると、少しそういった意識があったかもしれないと反省しています。

カーボンニュートラルについては、省エネという観点から工場スタッフも比較的イメージしやすい領域です。一方で、サステナビリティをより広い視点で捉えようとすると、なかなか理解しにくい、というのが一つの課題でした。

加藤:工場の現場から見ると、「省エネで排出量を減らせばよい」という感覚から、カーボンニュートラル・サステナビリティという広い概念へと視野を広げることは、自分ごととして捉えにくい面があったのかもしれません。CDPについてはいかがでしょうか。

岸本様:CDPについては、リクロマさんにご依頼する約一年前に別の外部コンサルに委託していた時期があり、それ以前は自社で何度か回答を試みていました。ただ、今振り返ると、内容面でもテクニック面でも十分な回答にはなっていなかったと思います。CDPは難易度が高く、「どこに何を書くべきか」がわからないというのが当時の課題でした。

脱炭素・ESGの社内浸透をどう進めるか 社内向け発信とeラーニングの活用

加藤:サステナビリティや脱炭素の社内浸透に向けて、具体的にどのような取り組みをされていますか。

岸本様:弊社のサステナビリティマネジメント部の中に、サステナビリティ推進室とカーボンニュートラル推進室の二つがあり、私は両推進室の室長も兼務しています。

スコープ1・2については、昨年から月次で全社の排出量をまとめ、社内掲示板で継続的に発信しています。全社員が目を通してくれているかはわかりませんが、一人でも多くの目に触れてほしいという思いから続けています。スコープ3については、現状では年1回程度の発信にとどまっています。

また、リクロマさんのご支援のもと、eラーニング形式のサステナビリティ研修を実施しました。カーボンニュートラルや気候変動といった概念は、取り組んでいる側にはなじみ深くても、「スコープ3のカテゴリーが15項目」と聞けば「なぜそんなに多いのか」となってしまいます。いかに身近なところからわかりやすく伝えるかを、常に意識しています。

eラーニング研修の手応えと課題 グローバル展開での気づき

株式会社MORESCO
サステナビリティマネジメント部 サステナビリティ推進室
平野 智之様

加藤:研修を実施された際の反応はいかがでしたか。

平野様:研修の完了率は100%を達成できたので、その点は良かったです。ただ、弊社には開発・営業・製造・事務という大きく四つの部門があり、製造部門の社員全員がPCを持っているわけではなく、営業担当は外出が多い。アクセス環境の整備が、次回への課題として残りました。

平野様:内容面では、弊社独自の環境配慮製品認定制度であるMORESCO Green SX(モレスコグリーンSX)をはじめ、実際の取り組みを研修に組み込んでいただいたことが好評でした。開発・営業の担当者にとっては既知の内容でも、製造部門へのPRの機会になりましたし、他社事例も交えていただいたことで「面白い研修だった」という声をいただきました。

グローバル展開も行い、AI翻訳で多言語に対応しました。

製品とサステナビリティをつなぐ MORESCO Green SXで環境貢献を可視化

加藤:サステナビリティと製品をどのように結びつけていらっしゃるのか、教えていただけますか。

平野様:弊社ではマテリアリティを設定しており、それに関連する6つの貢献領域を定義しています。各製品がどの領域に貢献するかを、外部有識者も交えた審査を通じてMORESCO Green SXとして認定し、データを集計・管理しています。売上比率として目標値を設定し、毎年その達成に向けて取り組んでいます。また、新製品開発においても、原則としてこの認定基準を満たす製品を開発するという方針にしています。

岸本様:社長も非常に力を入れている施策で、年頭や創立記念式典のあいさつで具体的な数値にまで言及するほどです。環境や個々の健康・安全といった社会課題に貢献できる製品を増やし、お客様へのお役立ちと、付加価値の高い製品ラインアップの強化という、両面の意義があります。

一方で、展示だけでは製品の環境貢献が伝わりにくいという課題もあります。見た目は通常品と変わらないため、お客様への対外PR、そして採用広報においても「いかにわかりやすく伝えるか」が今後の課題です。

CDPスコア向上の鍵は「引き出し」にあり アドバイザリー形式で深まる開示理解

加藤:リクロマのご支援を通じて、CDPへの理解度や回答の質はどのように変化しましたか。

岸本様:かなり高まったと思います。以前は他社コンサルにご依頼していたこともありましたが、十分なキャッチボールができていなかったため、書けるところだけ書いている、というのが正直なところでした。リクロマさんにしっかりご支援いただいてからは、質的に大幅に向上しました。

1年目はハンズオン形式でお願いしましたが、振り返ると少しお任せしすぎた部分があったかもしれません。理解度がより深まったのは、2年目のアドバイザリー形式に移行してからです。担当の方とのやりとりの中で「ここはこういうことを書くのか」「こういう書き方ができるのか」という気づきが積み重なり、どこに何を書けばいいかが段々とわかってきました。

重要なのは、書ける内容は自社の取り組み以上にはなり得ないということです。情報がないのに書くわけにはいきません。リクロマさんに価値を感じているのは、弊社がすでに取り組んでいることを、適切な箇所に、適切な形で引き出していただける点です。

CDP「B」評価の意義と社内へのインパクト

加藤:CDP評価について、社内ではどのように受け止められていますか。

岸本様:必須要件をクリアしていない部分があるため、現時点でA-やAを目指すのは難しいことは経営陣も承知しています。ただ、「Bは維持しなければならない」というプレッシャーは確かにありました。

加えて、これまであまりスコアをPRしてこなかったのですが、積極的に発信していこうという提案を始めています。発信する以上、スコアを落とせないというプレッシャーも生まれます。A-やAへの引き上げにはさらなるコストと人員が必要なため、現時点ではBの維持が現実的な方針です。ただし、CDPの評価基準は毎年厳しくなっています。同じ取り組みを続けるだけではBを維持できるとは限りません。レベルアップは必須と捉えています。

CDP対応の効果は、気候変動の開示にとどまりません。お客様からのサステナビリティアンケートは年間数十社程度いただいており、素材系や特定分野向け製品への問い合わせが特に多いです。CDPを通じて環境関連情報を整理・言語化したことで、こうしたアンケートにも対応しやすくなりました。間接的ではありますが、ご支援の効果が広く波及していると実感しています。

次の課題は「水リスク」 CDP水セキュリティ対応とTNFDへの展望

岸本様:気候変動への対応が少しずつ軌道に乗ってきた中で、次は水の課題に向き合わなければと感じています。CDP水セキュリティでは現在Cランクという状況ですが、これをどのレベルまで引き上げるかが今後の課題です。

TNFDへの対応はまだ難しい段階ですが、Aqueductを使った水リスク分析を実施したところ、国内事業所のリスクは比較的低い一方、東南アジアやインドの拠点で高リスクが浮かび上がりました。取水量・排水量については国内の主要工場でデータを取得していますが精度面ではまだ課題が残っています。目標設定の在り方も含めて、外部の方からアドバイスをいただきながら進めていきたいと思っています。

加藤:取水量・排水量のデータが完全でなくても、取れている範囲でCDPに回答している企業は多いです。「維持」目標でもCDPで評価される例は十分にあります。水リスクの管理については、精緻な計測より先に、海外拠点に対してサプライチェーン上のリスク情報の共有を求めるところから始める企業も増えています。まずは関係構築から、というアプローチも有効です。

今後のサステナビリティ経営に向けて リクロマへの期待と脱炭素の優先課題

加藤:脱炭素に向けた今後の取り組みについて、リクロマに期待することがあればお聞かせください。

岸本様:手前味噌ではございますが、弊社は同規模・同業種の化学メーカーの中では比較的進んでいる方だと思っています。ただ、お客様から求められる水準はさらに高くなっており、毎年CDPの要求レベルも上がっています。同じことをやり続けるだけではBの維持すら保証できないという危機感があります。

そうした中で、弊社の規模・業種・現在の取り組みレベルに照らして、どの課題に優先的に取り組むべきかという示唆とご提案をいただけると大変ありがたいです。気候変動の次は水、そしてTNFDも視野に入れつつ、どのような順序で何に力を入れるべきか、引き続きリクロマさんのようなパートナーのアドバイスを期待しています。

リクロマの支援について

CDP回答作成の完全代行から担当者の質問書メソドロジーの理解向上まで、お客様のニーズに合わせて一貫した支援を実施します。
次年度以降も活用可能な、独自の回答マニュアルやCDP特化の知恵袋システムなど、自走化を支援するサービス設計です。CDP出身の代表が構築した高い専門性を持ったサービスにて、スコアアップを実現します。⇒お問合せフォーム

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  • 加藤 貴大

    リクロマ株式会社代表。2017年5月より、PwC Mexico International Business Centreにて日系企業への法人営業 / アドバイザリー業務に携わる。2018年の帰国後、一般社団法人CDP Worldwide-Japanを経て、リクロマ株式会社(旧:株式会社ウィズアクア)を創業。大学在学中にはNPO法人AIESEC in Japanの事務局次長として1,700人を擁する団体の組織開発に従事。1992年生まれ。開成中・高等学校、慶應義塾大学経済学部卒業。

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