Last Updated on 2024年5月2日 by Yuma Yasui

気候変動対応やGHG削減が求められる現代において、再生可能エネルギーの需要が再熱しています。その中で注目を集めているのが「再エネ電力証書」です。

この記事では、非化石証書の種類とその使用方法、特にScope2の計算における適用方法について、グローバルな基準を踏まえて解説します。

スコープ3算定式の精緻化を図る、「Scope3の削減方法とは?WP」
⇒資料をダウンロードする

再エネ電力証書とは、再生可能エネルギー源から発電される電力の量や割合を証明するための仕組みです。再生可能エネルギー源には太陽光、風力、水力、地熱などが含まれます。再エネ電力証書は、そのような再生可能エネルギー源から発電された電力の「環境的な価値」を評価し、電力の使用者や発電事業者が環境への配慮を示すための仕組みとして導入されています。

具体的には、発電事業者が再生可能エネルギー発電所で生産した電力に対して再エネ電力証書を取得できます。これは、その電力が環境に優しい再生可能エネルギー源から生産されたことを示すものです。

そして、電力の消費者や企業は、自身が消費する電力が再エネ電力証書によって証明された再生可能エネルギー源からのものであることを示すことができます。これにより、環境への負荷を減少させることや、再生可能エネルギーへの投資を促進することが目指されています。

スコープ3算定式の精緻化を図る、「Scope3の削減方法とは?WP」
⇒資料をダウンロードする

再エネ電力証書の種類

日本国内において再エネ関連の証書として扱われるものは大きく分けて、「J-クレジット(再エネ発電由来J-クレジット)」「非化石証書」「グリーン電力証書」の3種類が存在します。

弊社作成

また海外において再エネ関連の証書として扱われるものは各国ごとに異なります。2024年1月現在GHGプロトコルが整理を行ってはいないため、企業の気候変動対応の報告機関であるCDPの基準に照らすことが多いです。
※参考:CDP Technical Note: Accounting of Scope 2 emissions P29以降

再エネ発電由来クレジット

J-クレジットとは、日本国内で実施される温室効果ガスの排出削減プロジェクトから生じる排出削減量を証明し、取引可能にするための制度です。その中でも「再エネ発電由来J-クレジット」とは、再生可能エネルギー発電によって削減される温室効果ガスの排出量を計測し、それに対するクレジットを発行する制度です。

経済産業省、環境省、農林水産省が共同で設立した事務局により運営されており、太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱による発電が対象となります。

非化石証書

非化石証書は、エネルギーの源が化石燃料でないことを証明するための仕組みです。この証書は、再生可能エネルギーや原子力など、化石燃料以外のエネルギー源から発電された電力の特定の割合や量を示すものです。日本のおける非化石証書は、資源エネルギー庁が管轄しています。

非化石証書はまず、「再エネ指定」と「指定無し」に分けられ、再エネ指定の中でも「FIT非化石証書」と「非FIT非化石証書」の2種類に分類されます。

再エネ指定:FIT非化石証書
再エネ指定:FIT非化石証書は、FIT電力(太陽光、風力、小水力、バイオマス、地熱等)の再生可能エネルギーの中で、FIT制度を通して買い取られた電気が対象となっています。

再エネ指定:非FIT非化石証書
再エネ指定:非FIT非化石証書は、非FIT再エネ電源(大型水力、卒FIT電源等)の電気が対象となっています。FIT非化石証書と比較し、販売単価が低い傾向にありますが、RE100では使用できないなど、活用の幅に注意が必要です。

指定なし:非FIT非化石証書
指定無し:非FIT非化石証書は、非FIT非化石電源(大型水力、卒FIT電源、原子力等)の電気が対象となっています。原子力発電が含まれることが特徴であり、これにより活用の幅に制限があることに注意が必要です。

スコープ3算定式の精緻化を図る、「Scope3の削減方法とは?WP」
⇒資料をダウンロードする

グリーン電力証書

グリーン電力証書は、民間によって運営されており主に一般財団法人日本品質保証機構(JQA)がその品質保証等を管轄しています。風力、太陽光、バイオマス、水力、地熱による発電が対象となっています。

再エネ電力の使用方法

使用におけるルールの外観

再エネ電力証書の適用については、国際的なGHGプロトコルと日本の温対法で少々異なります。またCDPやSBTなどの、国際的な規格ではGHGプロトコルを適用しているため、再エネ電力証書についてもGHGプロトコルを準拠すると考えることが自然です。

GHGプロトコルにおける使用方法

GHGプロトコルでの使用方法はシンプルで、購入分の電力量Wh単位を、消費電力Wh単位で置き換えることで算定します。

出典:経済産業省 環境省. 国際的な気候変動イニシアティブへの対応に関するガイダンス. 2021年3月https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/kankyou_keizai/guidance202103.pdf p.17

CDP及びSBTにおける使用方法

基本的には前述したGHGプロトコルでの適用方法で算定します。一方でCDPでは推奨事項としての記載があるため、この点に注意が必要です

出典:CDP 2022年 企業向け 気候変動質問書回答に向けて(詳細版)ver.2https://cdn.cdp.net/cdp-production/comfy/cms/files/files/000/006/117/original/Webinar_Climate_Change_2022_JP_v2.pdf

CDPでは、使用電力の中でも係数が最も小さい電力から適用していくことが望ましいとされています。開示については設問6.3で計算した上でScope2を開示し、C8.2eで使用した証書についての詳細を開示するという流れです。

SBTにおいては明確な言及はないものの、SBTとCDPは基本的に整合しているため、CDPの推奨事項がSBTでの推奨事項でもあると考えることが自然です。

温対法における使用方法

温対法とGHGプロトコルの使用方法の違いとして、CO2換算した後にCO2量で差引するという点があります。

出典:経済産業省. 非化石価値取引についてhttps://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/pdf/062_05_00.pdf P.21

使用における留意点とまとめ

再エネ電力証書については、需要家(一般企業)が購入できるようになったのが2021年からであり、その利用方法に関する基準やルールについては、現在進行形で「作成中」のステータスです。そのため、現在のルールが数年後に変わっている可能性も考えられます。

Scope2の削減に大きく貢献する再エネ電力証書ですが、今後も最新の動向を追いながら、購入・利用するサービス等について検討する必要があるでしょう。

スコープ3算定式の精緻化を図る!

Scope3の概要と削減方法、削減好事例、及び過去の支援を通じて頻繁に
頂いていた質問のQ&A
を取りまとめ、資料を制作いたしました。

参考文献

[1]経済産業省 環境省. 国際的な気候変動イニシアティブへの対応に関するガイダンス. 2021年3月https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/kankyou_keizai/guidance202103.pdf p.17

[2]CDP 2022年 企業向け 気候変動質問書回答に向けて(詳細版)ver.2https://cdn.cdp.net/cdp-production/comfy/cms/files/files/000/006/117/original/Webinar_Climate_Change_2022_JP_v2.pdf

[3]経済産業省. 非化石価値取引についてhttps://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/pdf/062_05_00.pdf P.21
[4]CDP Technical Note: Accounting of Scope 2 emissions
https://cdn.cdp.net/cdp-production/cms/guidance_docs/pdfs/000/000/415/original/CDP-Accounting-of-Scope-2-Emissions.pdf p29以降

セミナー参加登録・お役立ち資料ダウンロード

  • TCFD対応を始める前に、最終アウトプットを想定
  • 投資家目線でより効果的な開示方法を理解
  • 自社業界でどの企業を参考にするべきか知る

リクロマ株式会社

当社は「気候変動時代に求められる情報を提供することで社会に貢献する」を企業理念に掲げています。

カーボンニュートラルやネットゼロ、TCFDと言った気候変動に関わる課題を抱える法人に対し、「社内勉強会」「コンサルティング」「気候変動の実働面のオペレーション支援/代行」を提供しています。

Author

  • 西家 光一

    2021年9月入社。国際経営学修士。大学在学中より国際人権NGOにて「ビジネスと人権」や「気候変動と人権」領域の活動を経験。卒業後はインフラ系研究財団へ客員研究員として参画し、気候変動適応策に関する研究へ従事する。企業と気候変動問題の関わりに強い関心を寄せ、リクロマ株式会社へ参画。