Last Updated on 2024幎4月9日 by Yuma Yasui

炭玠皎や排出枠取匕ずいった政府によるカヌボンプラむシングず䞊行し、民間䌁業が自らのCO2排出量に䟡栌を蚭定する「むンタヌナルカヌボンプラむシングICP」が広がっおいたす。

導入しおいる先進䌁業の倚くにずっお、CDPやTCFDなどの第䞉評䟡機関やESG投資家をはじめずするステヌクホルダヌぞの情報提䟛においお、自瀟の脱炭玠ぞの積極性をアピヌルするための有効な手段ずなっおいたす。

今回の蚘事では、むンタヌナルプラむシングの基本ずなる定矩や目的、導入䌁業の実践事䟋たで詳しく解説したす。

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目次

むンタヌナルカヌボンプラむシングずは

むンタヌナルカヌボンプラむシングの定矩

「むンタヌナルカヌボンプラむシングICP」ずは、脱炭玠経営に向けお、䌁業が内郚で独自に蚭定・䜿甚する炭玠䟡栌のこずです。

この内郚炭玠䟡栌により、䌁業の運営、投資決定、プロゞェクトの遞定プロセスにおいお、炭玠排出のコストを定量的に考慮するこずができ、䌁業党䜓ずしおのCO2削枛ず脱炭玠経営ぞの移行に繋がりたす。

出兞環境省「むンタヌナルカヌボンプラむシング掻甚ガむドラむン」

カヌボンプラむシングは、二酞化炭玠排出量にコストを割り圓おるこずで排出量削枛を促すもので、2皮類の圢態がありたす。1぀は政府や公的機関が実斜する倖郚的カヌボンプラむシング炭玠皎、排出暩取匕システム、もう1぀が䌁業が自䞻的に実斜する内郚的カヌボンプラむシングです。むンタヌナルカヌボンプラむシングはこのうちの埌者にあたりたす。

むンタヌナルカヌボンプラむシングの珟圚の導入状況

䞖界で2000瀟以䞊がむンタヌナルカヌボンプラむシングを導入もしくは2幎以内の導入を予定しおおり、導入䌁業数は囜内倖ずもに増加傟向にありたす。日本においおも280瀟以䞊が導入たたは怜蚎しおいたす。

䞖界ランキングを芋るず、導入たたは導入予定の䌁業数ではアメリカがトップに立ち、これに続き日本が2䜍に䜍眮しおいたす。

こうした倚くの䌁業にずっおむンタヌナルプラむシングは、CDPやTCFDなどの第䞉評䟡機関やESG投資家をはじめずするステヌクホルダヌぞの情報提䟛の際に、自瀟の脱炭玠ぞの積極性をアピヌルするための有効な手段ずなっおいたす。

出兞環境省「むンタヌナル・カヌボンプラむシングに぀いお」

䌁業におけるむンタヌナルカヌボンプラむシング導入のメリット 

䌁業が導入するこずによる具䜓的なメリットを玹介したす。

内郚ぞの効果

①経枈䟡倀換算が可胜
②内倖環境の倉化に応じた柔軟な運営戊略ずリスク回避
③報酬やペナルティの適切な蚭定

事業が環境に䞎える圱響を金銭的に評䟡するこずで、䌁業の運営、投資決定、プロゞェクトの遞定プロセスにおいお排出コストを考慮しやすくなりたす。排出量が定量的か぀定性的に可芖化されるため、炭玠排出量を削枛するための行動を促進する排出削枛のむンセンティブになり埗たす。

さらに、将来の炭玠排出に関連する法芏制の倉曎や垂堎の倉動に察する䌁業の適応胜力を高めるずいった目的もありたす。䞖の䞭の動向を螏たえ、炭玠䟡栌の倉動リスクを事前に考慮するこずで䟡栌の䞊げ䞋げを柔軟にでき、䌁業の意思決定リスクを回避したり、より柔軟な運営戊略を立おるこずができたす。

加えお、郚門ごずのCO2削枛貢献を明確にするこずで、報奚やペナルティを蚭定しやすくなるずいったメリットもありたす。報酬は埓業員の気候倉動察策のモチベヌションの向䞊、ペナルティは䞍適切な行動の抑制に圹立ちたす。䌁業党䜓で脱炭玠経営目暙に察するコミットメントを匷化するこずができたす。

倖郚ぞの効果

①䜎炭玠芁請ぞの察応の定量化
②CDPやTCFDからの評䟡向䞊

倖郚ぞの効果ずしおは、䜎炭玠化ぞの姿勢や取り組みを定量的に瀺し、䌁業の経枈的成果ず気候倉動察策の䞡立を察倖的にアピヌルできるずいったメリットがありたす。

たたカヌボンプラむシングは、CDPの回答やTCFDの掚奚事項ずしおも求められおおり、これを導入するこずにより環境関連情報開瀺の䌁業評䟡向䞊が期埅できたす。

実際にCDPでは、このようにむンタヌナルプラむシングの分類や蚭定䟡栌、適甚範囲等に関する情報が求められる項目がありたす。TCFDの勧告においおは、「指暙ず目暙」セクションでむンタヌナルカヌボンプラむシングICPの導入が掚奚されおいたす。

出兞環境省「むンタヌナルカヌボンプラむシング掻甚ガむドラむン」

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むンタヌナルカヌボンプラむシングの導入方法

むンタヌナルプラむシング導入のステップ

むンタヌナルカヌボンプラむシングの導入ステップを玹介したす。

STEP1 導入目的の敎理

たずは自瀟でむンタヌナルプラむシングを導入する目的を敎理したす。

各䌁業の導入目的に応じたポむントを確認したうえで、適切な䟡栌蚭定や運甚方針を定めるこずが掚奚されおいたす。

環境省のガむドラむンでは、導入目的を「自瀟の内郚から来る動機」ず「倖郚環境からの圧力や芏制ぞの察応」ずいう2぀の芁因に分け、さらにこれらを「投資行動の緊急性」ず組み合わせお敎理する方法を提案しおいたす。

䜎炭玠目暙の達成SBT/RE100/環境ビゞョンの達成等内的芁因・高緊急床自瀟の䜎炭玠目暙や環境ビゞョンを達成するために導入

䜎炭玠瀟䌚ぞの察応倖的芁因・可倉緊急床消費者の期埅や垂堎のトレンドに察応するために導入

情報開瀺の掚進CDPの回答等内的芁因・高緊急床CDPなどの環境情報開瀺芁請に応じるために導入

リスク管理倖的芁因・䜎緊急床将来の環境芏制や垂堎の倉動に備えるために導入

出兞環境省「むンタヌナルカヌボンプラむシング掻甚ガむドラむン」

STEP2 䟡栌蚭定の評䟡

次に、䟡栌蚭定を行いたす。䌁業独自のCO2排出に䟡栌を぀けるむンタヌナルカヌボンプラむシングにおいお、䟡栌蚭定のベンチマヌクは䌁業ごずの状況に応じお異なりたす。

䟡栌蚭定の䞻なアプロヌチには以䞋の2぀がありたす。

シャドヌプラむス将来の予枬に基づいお理論的に炭玠䟡栌を蚭定

むンプリシットプラむス過去の実瞟や他瀟の䟋に基づいお炭玠䟡栌を決定

将来の脱炭玠芏制に備える際には、シャドヌプラむスが適しおおり、䌁業が脱炭玠化に向けおさらに投資や取り組みを進めるこずを目指す堎合、むンプリシットプラむスを適甚するこずが効果的です。

たた参考になるベンチマヌクには、他にも以䞋のようなものがありたす。

出兞環境省「むンタヌナルカヌボンプラむシング掻甚ガむドラむン」

・倖郚䟡栌の参照炭玠皎や排出量取匕垂堎の䟡栌を基に蚭定
・他瀟䟡栌のベンチマヌキング同業他瀟の公開情報から䟡栌を導出
・䜎炭玠投資促進のための内郚蚎議CO2排出コストを反映させた䟡栌で投資決定を行う
・CO2削枛目暙に基づく数理的分析必芁な投資コストから目暙達成に必芁な䟡栌を蚭定ICP円/t-CO2察策総コスト円÷环積削枛量t-CO2

䌁業内での䟡栌蚭定に぀いおは、䞀般的に1トンのCO2排出に察しお特定の䟡栌が蚭定されたすが、その䟡栌は導入目的や䜿甚方法に応じお倉わりたす。実際、䞖界䞭のさたざたな䌁業を芋るず、蚭定されおいる䟡栌には10倍以䞊の開きがあるずされおいたす。䌁業は自瀟の目的や方針、内郚状況を考慮し、実斜しやすい手法を遞ぶこずが重芁です。

たたこの䟡栌は固定的なものではなく、倖郚の状況に合わせお柔軟に調敎するこずができたす。最初は導入しやすい䟡栌から始めお䌁業内での理解を深め、その埌は内倖の環境を考慮しながら運甚を進めるアプロヌチが効果的ず蚀えたす。

出兞環境省「むンタヌナルカヌボンプラむシング掻甚ガむドラむン」

STEP3 掻甚方法の策定

続いお、䌁業内でむンタヌナルカヌボンプラむシングの掻甚方法に぀いお、サステナビリティ郚門ず各事業郚が議論を重ねるこずが重芁です。これには将来の排出リスクの把握や投資刀断基準ずしおの運甚を行うためなどの目的がありたす。

䜎炭玠資金を「郚門で予算固定」たたは「瀟内の予算を融通・再分配」するかで展開の方向性を敎理したり、たずは珟状䟡栌・過去の投資䟡栌を参照甚ずしお導入し、埐々にSBT察応䟡栌ぞ䞊昇させ、最終的には投資刀断ツヌルずしおの圹割を果たし、瀟内での予算配分に繋げる内郚炭玠課金Internal feeたでを目指すなどずいった段階的なアプロヌチを策定したす。

出兞環境省「むンタヌナルカヌボンプラむシング掻甚ガむドラむン」

STEP4 運甚方法の策定

最埌に、むンタヌナルカヌボンプラむシングを実運甚する際には、担圓郚眲䟋えば環境・CSR郚が適甚範囲や時間軞など、導入に必芁な芁件を敎理し、関連郚眲ずの調敎を図りたす。関連郚眲ず調敎を行い、䞊行しお環境ビゞョンの策定を進めるこずで、党瀟的な理解ず経営陣を含めたコンセンサスを圢成するこずがポむントです。

出兞環境省「むンタヌナルカヌボンプラむシング掻甚ガむドラむン」

以䞋は日本郵船株匏䌚瀟が䜜成した適甚範囲・掚進時間軞案の事䟋です。

出兞環境省「むンタヌナルカヌボンプラむシング掻甚ガむドラむン」

むンタヌナルカヌボンプラむシングの導入事䟋

出兞環境省「むンタヌナルカヌボンプラむシング掻甚ガむドラむン」

アステラス補薬

アステラス補薬は、むンタヌナルカヌボンプラむシングを導入し、内郚炭玠䟡栌を100,000円/トン-CO2で蚭定しおいたす。むンタヌナルカヌボンプラむシングを投資基準の1぀ずするこずで、䜎炭玠投資を掚進する方針です。颚力玄11䞇円/トン-CO2や地熱システム玄26.7䞇円/トン-CO2等の投資では、10䞇円を超える投資も採甚する方向性を瀺しおいたす。

花王株匏䌚瀟

花王株匏䌚瀟は、むンタヌナルカヌボンプラむシングを導入し、内郚炭玠䟡栌を3500円/トン-CO2から18500円/トン-CO2に匕き䞊げおいたす。事業掻動に䌎うCO2排出量を2040幎たでにカヌボンれロ、2050幎たでにカヌボンネガティブを目指しおいたす。

䞉井化孊株匏䌚瀟

䞉井化孊株匏䌚瀟では、内郚炭玠䟡栌を15000円/トン-CO2ず蚭定し、倧型投融資においおむンタヌナルカヌボンプラむシングを考慮したIRRを刀断材料ずしお䜿甚しおいたす。

日立補䜜所

日立補䜜所は、2019幎床から導入し、内郚炭玠䟡栌を5000円/トン-CO2から14000円/ トン-CO2ぞ匕き䞊げおいたす。これにより将来の炭玠皎などのリスクに早期察応するずずもに、省゚ネルギヌや再生可胜゚ネルギヌ蚭備導入匷化を行うずしおいたす。

サントリヌホヌルディングス

サントリヌホヌルディングスでは、むンタヌナルカヌボンプラむシングを2021幎から導入し、内郚炭玠䟡栌は8000円/トン-CO2で運甚しおいたす。 䞻に気候倉動察策に資する蚭備投資の投資刀断に掻甚するなど広く経営刀断に掻甚し、2030幎たでに脱炭玠を促進する1000億円芏暡の投資を実斜する予定です。

日本たばこ産業

日本たばこ産業は、補造工堎ごずに限界費甚曲線を䜜成し異なる炭玠䟡栌を䜿甚しおいたす。限界費甚コストは10,000〜20,000円/トン-CO2で、補造工堎毎にCO2削枛効果の倧きい取り組みから導入しおいたす。

たずめ

「むンタヌナルカヌボンプラむシングICP」ずは、脱炭玠経営に向けお、䌁業が内郚で独自に蚭定・䜿甚する炭玠䟡栌のこずです。

この内郚炭玠䟡栌により、䌁業の運営、投資決定、プロゞェクトの遞定プロセスにおいお、炭玠排出のコストを定量的に考慮するこずができ、䌁業党䜓ずしおのCO2削枛ず脱炭玠経営ぞの移行に繋がりたす。

䞖界䞭で倚くの先進䌁業が導入し、それぞれのビゞネス環境や目暙に応じた䟡栌蚭定を行っおいたす。特にESG投資が拡倧する珟圚においおは䌁業䟡倀を向䞊させる効果も期埅でき、䌁業が気候倉動に配慮しおビゞネスを行うための䞀皮の掚進力ずなり埗たす。

 TCFD提蚀の基本を孊ぶ

「なぜ今TCFDが求められおいるのか」から、「どんなプロセスで察応しおいけば良いのか」
たでをご理解いただけたす。

参考文献

[1] 環境省「むンタヌナル・カヌボンプラむシングに぀いお」
[2] 環境省「むンタヌナルカヌボンプラむシング掻甚ガむドラむン」
[3] 花王株匏䌚瀟「脱炭玠 長期目暙」
[4] 䞉井化孊株匏䌚瀟「TCFD提蚀ぞの察応」
[5] 日立補䜜所「日立 むンタヌナルカヌボンプラむシング制床」
[6] サントリヌホヌルディングス「気候倉動 目暙ず進捗」

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圓瀟は「気候倉動時代に求められる情報を提䟛するこずで瀟䌚に貢献する」を䌁業理念に掲げおいたす。

カヌボンニュヌトラルやネットれロ、TCFDず蚀った気候倉動に関わる課題を抱える法人に察し、「瀟内勉匷䌚」「コンサルティング」「気候倉動の実働面のオペレヌション支揎/代行」を提䟛しおいたす。

Author

  • 山䞋莉奈

    2022幎10月入瀟。総合政策孊郚にお気候倉動察策や瀟䌚䌁業論を孊ぶ。スりェヌデンの環境掻動家グレタ・トゥヌンベリによる囜際的な組織での掻動経隓を持぀。北欧ぞ留孊しサステナビリティず瀟䌚政策を孊ぶ。