Last Updated on 2024年8月28日 by Moe Yamazaki

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CDPとは

CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)は、地球環境の保全に向けて透明性と責任を高めることを目的として2000年に英国で設立されたNGOです。

世界中の企業や政府に対して、温室効果ガスの排出量、気候変動への対策、水資源の管理などの環境関連情報について毎年質問を出した上で、スコアリングを行い以下のようなレポートを発行しています。

  • 気候変動レポート
  • 水セキュリティレポート
  • フォレストレポート

スコアリングの方法は、各企業や政府機関の環境問題に対しての取り組みの度合いについて以下の5段階、閾値も含めると「A」〜「F」までの9段階で評価するというものです。

  1. リーダーシップ(A,A-):企業が環境マネジメントにおけるベストプラクティスを行っているかどうか
  2. マネジメント(B, B-):環境問題に対する活動や方針、戦略の策定・実行状況の評価
  3. 認識(C, C-):自社の事業に関する環境問題やそのリスク、影響に対する評価度合い
  4. 情報開示(D, D-):企業の開示度合い
  5. 情報提供なし(F)
出典:CDPジャパン「CDP 気候変動レポート 2022: 日本版

スコアを付与された企業は、自社の状況を見ることで次にどのような環境戦略を行うべきかが客観的にわかるというのが大きな魅力と言えるでしょう。

なお、企業を対象とした際に調査対象となったのは全世界で約21,000社以上もありましたが、気候変動、フォレスト、水セキュリティの3分野のうちどれか1つだけでもA評価を受けた企業は400社未満と全体の5%弱にとどまっています。
3分野全てとなると2023年では全世界で10社にすぎません。
このことからもCDPの評価基準が、いかに厳しいものであるかがご理解できるかと思います。

またCDPでは、気候変動のための施策を出している自治体を表彰する「シティAリスト」も発表しています。
2023年には939の自治体を調査、うち13%にあたる119の自治体が最高評価であるAリストに選定されています。
Aリストに指定された自治体は再生エネルギーの利用が盛んであるなど、他の自治体に比べてネットゼロに向けた取り組みが盛んであることも示されています。なお、日本では東京都が唯一Aリストに入っています。

CDPスコアアップについての詳しい情報はこちら!
CDP2024回答にどう備えるべきか?スコアアップのポイントを解説

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世界の事例

CDPは世界中の上場企業を対象に調査をしており、その地域も拠点を置く英国だけでなく、アメリカやヨーロッパ各国、日本を含むアジア、南米など世界中に広がっています。

しかしその評価は前述通りかなり厳しく、最高評価である「気候変動」、「フォレスト」、「水セキュリティ」の3つで全てAを取得しているトリプルAに認定された企業は全世界でもわずか10社に止まります。

その中でも代表例と言えるフランス企業・ダノンの事例をご紹介します。

事例①:ダノン(フランス・食品)

出典:Danone “Danone IMPACTJourney

ヨーグルトなどの乳製品で知られるフランスの大手食品企業、ダノンは2023年までに5年連続でトリプルAを獲得しており、世界で最も高く環境保護活動を評価されている企業といっていいでしょう。

同社では貧困対策や環境保全などの施策に対し、「ダノン・インパクト・ジャーニー」と名付けられた自社独自のサステナビリティ戦略を発表しており、そのなかには以下のような意欲的な取り組みが多数みられます。

  • 2030年までに生乳生産で排出されるメタンガスの排出量を20年比30%削減する。
  • 主要原料の生産による森林伐採を2025年までにゼロにする
  • 企業活動の影響を受けやすい湿地帯の保護・回復

同社は湿原の保護で知られるラムサール・ネットワークとの25年以上にわたる連携があるなど、古くから環境保全に向けた活動を行った歴史があります。。

CSRやメセナ活動で数十年にわたる活動も多くみられる日本企業でも見習える部分の多い企業であるといえるでしょう。

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日本の事例

CDPは日本でも2005年より活動しており、気候変動レポートを例にすると東証プライム上場企業のうち57%が回答するようになっています。

2023年では全体で1,985社が回答。

それぞれのレポートごとの回答や結果は以下の通りです。

  • 気候変動:1,984社回答。うち110社がA評価。
  • フォレスト:138社回答。うち7社がA評価。
  • 水セキュリティ:706社回答。うち36社がA評価。

この中でも、花王株式会社と積水ハウス株式会社の2社は3つのレポート全てでAを獲得しています。

前述通り全世界でも10社しかないうちの2社であるため、極めて優秀な事例と言えるでしょう。

以下に最高ランクを獲得した両者の環境戦略を簡単にお伝えします。

事例①:花王株式会社

出典:花王株式会社「パームダッシュボード

花王株式会社は2023年まで4年連続で「気候変動」・「フォレスト」・「水セキュリティ」の3分野全てでA評価を獲得しています。

世界的にみても高い評価を受けるようになったのは、各分野で以下のような活動があったためでした。

気候変動

2040年までのカーボンゼロ、2050年までのカーボンネガティブの達成を目標とし、工場内でのバイオマスの熱利用や肉厚を薄くしてプラスチックの利用量を削減した詰め替えボトルの導入などを実施しています。

フォレスト

パーム油の調達に関する活動を紹介する「パームダッシュボード」を作成し、トレーサビリティの実施状況やインドネシアで進めている独立小規模パーム農園からのクレジット購入数量などを公開しています。

水セキュリティ

粉末洗剤でもすすぎ1回を可能にした「アタックZEROパーフェクトスティック」を開発

3分野ともシナリオ分析を入念に行うことで、具体的な目標値や数値を設定して、活動内容を明確化しており、同社がいかに環境に対して力を入れているか明確にわかる内容となっています。

サステナビリティ活動の熱心さを伝える際に大いに参考になる起業と言えるでしょう。

事例②:積水ハウス株式会社

出典:「茶色と白のコンクリートの建物

積水ハウス株式会社は2023年に「気候変動」・「フォレスト」・「水セキュリティ」の3分野全てでA評価を獲得。

これは国内の住宅メーカーとしては初めての事例となりました。

同社でも以下に見られるように多くの取り組みを実施しています。

気候変動

建設する住宅のZEH(ネットゼロエミッションハウス:生活で消費するエネルギーよりもパネルの太陽光発電などで算出するエネルギーが上回る住宅)化を推進。

2023年以降は分譲マンション全住戸をZEHに。戸建住宅においても2022年では93%の住宅がZEH化し、賃貸住宅でも累計受注が2万5千を超えるまでに進展しています。

また建築・建設分野における脱炭素化に向かうグローバルアライアンスであるGlobal ABCに参加するなど、気候変動対策への枠組みに積極的に参加しています。

フォレスト

2007年に独自の調達基準「木材調達ガイドライン」を制定している他、生態系に配慮した造園緑化事業である「5本の木」計画に参加。

TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の指針に沿った情報公開も積極的に実施しています。

水セキュリティ

住宅メーカーは水を使うことが比較的少ない業種ではあるものの、工場内では循環水を利用するなど持続的な水資源の活用に向けて積極的な姿勢を見せています。

まとめ

CDPのレポートは数万社もの対象があるなかで最高評価を受けるのは全世界でも数社だけという非常に辛口の評価をする期間ではありますが、高い評価を得られれば注目されるリリースとなり、自社の環境活動を広く世界に知らしめる良い機会になるといえるでしょう。

海外での製造や販売を行いたい企業、世界の投資家から資金を獲得したい企業にとっては、手間はかかるものの質問に答えて挑戦してみる価値のある取り組みであると思います。

#CDP #2023

CDP(気候変動質問書)の基本情報や回答メリット、ポイントを知る!

CDPの概要や回答メリット、抑えるべきポイントを一通り理解できるホワイトペーパーです。

参考文献

[1] CDPジャパン 公式ページ
[2] CDPジャパン「CDP 気候変動レポート 2022: 日本版
[3] CDPジャパン「CDP2023 企業スコアリリース:気候と自然の課題を考慮する企業が増加 CDPの最高水準のベンチマークを達成した企業は400社に満たず
[4] CDPジャパン「2023 年 CDP シティ A リスト発表:119 自治体が「2023 年 A リスト自治体」に選定され、 気候変動対策が世界の自治体の主流になりつつあることを示す
[5]Danone “Danone recognized for the fifth year in a row as global environmental leader with triple ‘A’ score given by CDP
[6]Danone “Danone IMPACTJourney
[7]花王株式会社「花王、4年連続でCDPから「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」の分野で最高評価を獲得
[8]花王株式会社「パームダッシュボード
[9]積水ハウス株式会社「CDP「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」全分野最高の「Aリスト」国内住宅・建設業界初のトリプルAに選定、先駆的な取り組みと情報開示が評価

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Author

  • Hiroki M

    学生時代は環境経済学を専攻。現在は会社員として働きつつも、環境問題に対する強い関心を断ち切れずリクロマに副業ライターとして参画。

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