Last Updated on 2024年11月20日 by HaidarAli

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フロンによる地球への影響、という言葉は子どもの頃から聞いたことがあるかと思います。地球環境に大きなダメージを与えると言われるフロンとは、実際どのような物質なのでしょうか。

以下に簡単に説明します。

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フロンとは

フロンは特定の物質ではなく、正確にはフルオロカーボン類と呼ばれるフッ素と炭素の化合物の総称のことを指します。

化学的には非常に安定した物質で毒性もないことから、エアコンや冷蔵庫、製氷器などの冷却や半導体の洗浄、断熱材などに長年用いられてきました。
現在でも古い装置だと、よく利用されています。

フロンの種類

先ほども述べたようにフロンはフッ素と炭素の化合物のことを指します。

では一体どのような物質が該当するのでしょうか。

国によって基準が違うものの、日本のフロン排出抑制法では以下の3種類をフロンとして指定しています。

  • CFC:クロロフルオロカーボン
  • HCFC:ハイドロクロロフルオロカーボン
  • HFCs:ハイドロフルオロカーボン

この中でも初期から使われてきたCFCとHCFCは特定フロン、後述するオゾン層破壊が問題となった後に使用されるようになったHFCsを代替フロンと呼ぶことがあります。

フロンによる気候変動への影響

フロンは安定した化学的性質から冷却用途を中心に事業用・家庭用問わず使われてきましたが、1980年代以降オゾン層の破壊などの原因となっているのではないかという指摘が相次ぎました。

その結果世界各国で生産や使用に関して規制されるようになり、現在では生産・消費ともに停止しています。

以下にフロンによる地球環境への2つの影響をまとめてお伝えします。

オゾン層破壊への影響

参照:経済産業省「改正フロン法に基づく今後の取り組みについて」p3

フロンによる環境への影響で最も顕著なのがオゾン層の破壊です。

地球の表層にあるこの層は太陽光線中に含まれる有害な紫外線が地表に到達するのを防ぐ重要な役割を持っています。

しかしCFCなどの特定フロンが待機中に放出されると、太陽光の紫外線によって分解されて塩素原子ができ、オゾン層を破壊してしまいます。

こうなると地表に到達する有害な紫外線が増え、皮膚がんなどの健康被害をもたらす危険性をはらんでしまいます。

この現象が知られるようになった1980年代以降は世界的にフロンへの規制が始まるようになり、1987年にはオゾン保護のためのモントリオール条約が発行されました。

日本でもこの翌年「オゾン層保護法」が発行され、上述したCFCや HCFCを特定フロンとして指定した上で、生産・輸入に関する規制を出すようになっています。

地球温暖化への影響

またフロンは構成物質として炭素を含むために、高い温室効果を持っているのも特徴です。

その基準は代表的なGHG(温室効果ガス)である二酸化炭素を基準とすると、CFCは約10,900倍、HCFCで約1,810倍となっています。

しばしば温室効果が高いとして避難されるメタンでも二酸化炭素の約25倍であることを考えるといかに高いかがわかります。

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HFCs(代替フロン)とは

HFCs(代替フロン)は、CFCやHCFCをはじめとする特定フロンのオゾン層破壊問題が知られるようになって以降、代替品として開発された物質です。

こちらはオゾン層の破壊効果はないため、特定フロンに変わる冷房や冷蔵庫の触媒としてよく利用されるようになりました。

しかしHFCsでも大きな温室効果はあり、地球温暖化係数(GWP)は二酸化炭素の100~10,000倍以上という数値を記録しています。

特定フロンよりは少ないものの、地球温暖化の原因物質としては十分すぎるほどの問題を抱えていると言えるため、本日では冷却にノンフロンを使わない機器が開発され導入が推奨されています。

国内のHFCs(代替フロン)排出量目標と取り組み

HFCs(代替フロン)は上記のように温室効果が極めて高いため、その回収と減少に向けた取り組みが地球温暖化防止に果たす役割は大きくなっています。

日本国内でも以下のような取り組みが始まっています。

日本におけるフロン規制「フロン排出抑制法」

日本では1988年より「オゾン層保護法」、2001年より「フロン回収・破壊法」が発行され、フロンガスの使用量削減・排出抑制が図られてきました。

その流れを強化するべく「フロン回収・破壊法」を改正する形で2015年に施工されたのが「フロン排出抑制法」で、以下のような取り組みを実施することを定めています。

  1. フロン類の転換、再生利用に よる新規製造量等の削減
  2. 冷媒転換の促進 (ノンフロン・ 低GWP(※)製品への転換)
  3. 業務用冷凍空調機器の冷媒適正管理(使用時漏えいの削減)
  4. 充塡の適正化、回収の義務
  5. 再生・破壊処理の適正化

この中でも3番目にあたる使用時漏洩の削減においては、漏洩したフロンの量も算出することが義務付けられています。

特に1年間で二酸化炭素1000トン以上に値する温室効果をもたらす量を排出した場合は環境大臣や経済産業大臣により都道府県に公表されることになっています。

フロン類は温室効果が相当に高いため、漏洩した量が1〜10トンというわずかな量でも都道府県の検査立ち入りの対象となる可能性があります。

これに伴うサステナビリティ戦略への影響、企業イメージの低下は計り知れないため、老朽化した冷房や冷蔵・冷凍機器の運用や破棄など関連した業務を進める際には細心の注意を図って進める必要があるといえるでしょう。

※GWP:地球温暖化係数(Global Warming Potential)の略称。二酸化炭素基準でどれだけ地球温暖化に寄与しているかを表している数値。

日本におけるHFCs(代替フロン)排出量目標

世界各国で温室効果ガスの削減目標が発表される中、地球温暖化への影響が大きいHFCsも削減対象としてとらえられるようになりました。

日本でも中期目標として、HFCs排出量を2030年までに2013年比32%削減することをCOP21に先立って表明しています。

また同会議で発行されたパリ協定においては、長期目標として代替フロンについて、2036年までに2013年比率85%削減することを長期低排出戦略に記載しています。

日本は世界的な空調設備や冷凍機のメーカーが立地するため、最先端の低温室効果を持つノンフロン冷媒を開発することも併せて表明しているのも特徴です。

海外のHFCs(代替フロン)削減目標と取り組み

HFCs(代替フロン)の抑制は全世界的に進められています。

中でも環境に対しての意識が高いEU(欧州)においては、さまざまな規制が発行されており、加盟国にビジネスを展開する企業にとっては無視できないものとなっています。

以下にその概要をまとめます。

EU(欧州)における代替フロンガス規制

EUでは2006年からフロンガスの漏洩防止・回収に関する規制を定め、2015年より「F-Gas Regulation」として生産などにも対象を広げた改正案を出しています。

近年では2050年までにカーボンニュートラルを目指すサステナビリティ戦略の一環としても重視され、HFCs(代替フロン)を含めたフロン類も対象として規制が進められるようになりました。

2023年には欧州議会にて3~5年以内に低GWPの物も含めてフロンガスの使用を禁止する改正案も提示されています。

上記の規制についてはあまりにも厳しいものであったため、欧州委員会や欧州議会、欧州理事会が妥協案を探しているものの、HFCs(代替フロン)を含めて今後も高いGWPのものから段階的に禁止されていく流れに変更はないため、今後も厳格な規制が出てくることが予想されます。

また「F-Gas Regulation」ではHFCにおけるEU市場への投入量の割当制度も導入されており、生産や輸入に対しても厳しい規則が適用されています。

国によっては削減した量に対する補助金や還付制度といった優遇措置や排出に対する課税なども導入されており、日本や米国、英国などと比べても大きく進んだ取り組みが進められています。

EU(欧州)における冷媒規制

EUではフロン類が使われる冷媒についても規制が定められており、前述した「F-Gas Regulation」で定められた割当制度の基準内にHFCs(代替フロン)が環状されているもの以外は使用できないように定められています。

2020年からはその規制はさらに強化され、GWP 2500以上のものについては冷蔵庫や冷房、ヒートポンプの冷媒装置への使用が禁止されるようになりました。

また新たに製造される冷媒装置においては、アンモニアや二酸化炭素などフロンを使用しないノンフロンのものが推奨されるようになっています。

EU加盟国では規制が大幅に強化された影響で、2015年よりフロン類の使用量は年々減少傾向をたどるようになりました。

規制強化により、今後も使用量の減少傾向は続くと考えられるでしょう。

フロンの需要とHFCs排出の今後の動向

前述通り特定フロンとしてみなされたCFCやHCFCについては、オゾン層の破壊効果が大きな問題となり、現在では大きく需要を減らしています。

日本においては2005年までにHCFC以外のオゾン層破壊硬貨を持つフロンの生産・消費が停止され、HCFCについても2020年までに生産・輸入とも終了しています。

ただモントリオール議定書は機器の使用停止までは求められていないため、今後は残ったHCFC製品を大気中に放出せずに破棄を進めるかが重要になっています。

しかしHFCsについてはCFCやHCFCの代替として利用される中で2000年代以降増加してしまいました。

そのため、現在ではノンフロン製品の普及や冷房の低GWP化により市中ストックを減少していく仕組みが急務となっています。

また発展途上国などの国々は、技術的・経済的な課題により削減が遅れている場合があるため、国際的な協力が求められています。

まとめ

HFCs(代替フロン)は温室効果が非常に高いですが、冷媒装置など決まった用途に使われるためにピンポイントでの対策はしやすく、カーボンニュートラル戦略が世界的に進められているため今後も厳格な規制が予想されます。

日本では政府による漏洩量の公表やEUの投入量割り当て制度など現行のものでもサステナビリティ戦略やブランド戦略に大きな影響を与えるものがあるため、古い冷房装置の廃棄など関連する業務においては十分考慮した上で実行することをおすすめします。

特に日本においては世界シェアの高い冷房・冷蔵装置を提供する企業も多いため、今後登場するフロンや代替フロンの削減技術、ノンフロン装置などにも注目が集まりそうです。

#再エネ#省エネ

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参考文献

[1]経済産業省「改正フロン法に基づく今後の取り組みについて
[2]経済産業省「代替フロンに関する状況と現行の取組について
[3]経済産業省「フロン排出抑制法の概要
[4]EFCTC「THE REVIEW OF THE EU’S F-GAS REGULATION: A LEGISLATIVE TIMELINE
[5]経済産業省「欧米のフロン規制について – (1) EU における新 F ガス規制
[6]経済産業省「フロン排出抑制法の概要 ~フロンに関するライフサイクル全体の取組~

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  • 2021年9月入社。国際経営学修士。大学在学中より国際人権NGOにて「ビジネスと人権」や「気候変動と人権」領域の活動を経験。卒業後はインフラ系研究財団へ客員研究員として参画し、気候変動適応策に関する研究へ従事する。企業と気候変動問題の関わりに強い関心を寄せ、リクロマ株式会社へ参画。

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