Last Updated on 2025年12月24日 by Moe Yamazaki
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本コラムでは以下について解説します。
・Scope2の定義や企業が間接的に排出する温室効果ガスについて
・企業のサプライチェーン全体における温室効果ガス排出量の計算の重要性
・Scope2の対象範囲
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Scope1,2,3について一気に解説!
スコープ1,2,3とは?各スコープの詳細から、温室効果ガス排出量の算定方法まで解説
Scope3(スコープ3)とは?基本概要・計算方法をわかりやすく解説
Scope2とは?
Scope2は、自社が購入した電気・熱等のエネルギーの使用に伴う間接的な排出のことを指します。具体的には、自社が購入して使用した電気、熱、冷水、蒸気などが排出源となります。[1]
Scope2はGHGプロトコル*に基づく分類の一つであり、企業のGHG排出量を包括的に管理するための枠組みの一部です。
GHGプロトコル:2011年10月に世界経済人会議と世界資源研究所により設立された、企業が温室効果ガスの算定および報告をする際の国際的な基準です。
Scope2の対象範囲
Scope2の対象範囲は、他社から供給された電気・熱・蒸気を使うことで間接的に排出されるGHGです。
消費電力の生成元である発電事業者は、燃料を燃焼させ温室効果ガスを排出しています。
Scope2では、そういった間接的な温室効果ガス排出量としてこれらを算出します。
Scope1、3との違い
前述したようにScope2は、他社から供給される蒸気や熱、電気を自社で使う際に生じる間接的な温室効果ガス排出量です。
Scope1は、燃料を燃焼させたり、製品を製造したりすることにより企業が直接排出している温室効果ガスの排出量を意味します。また、Scope3は、製品の原材料を仕入れたり、販売したりした後に発生する温室効果ガス排出量のことです。
Scope1、Scope2、Scope3のこれら3つの枠組みに分けて排出源を特定します。
参考:サプライチェーン排出量の仕組み
サプライチェーン排出量とは原料調達・製造・物流・販売・廃棄等、一連の流れ全体から発生する排出量のことを指します。自社で直接的な発生した温室効果ガス排出に限らず、サプライチェーンに関わる他業者が発生する間接的な温室効果ガス排出量も含まれています。
つまり、Scope1とScope2、Scope3の温室効果ガス排出量を合わせたのがサプライチェーン排出量です。
サプライチェーン排出量の算定は、事業者自身の排出量だけでなく、事業活動に関連するすべての排出量を計測することを通じ、企業の活動全体を把握し、管理することを目的としています。[3]
スコープ1,2,3の対象範囲

Scope2の算定方法
事業活動において、自社以外の事業者が供給する蒸気や熱、電気などを使う場合は、Scope2における排出量を計算します。[4]
例えば電気の場合、電力会社の排出係数に電気使用量(kWh)をかけることで求められます。
計算式にすると、以下の通りです。電力会社の排出係数×電気使用量(kWh)= Scope2における排出量
GHGプロトコルにおける2つの基準
GHGプロトコルによるScope2ガイダンスでは、ローケーション基準とマーケット基準の2つの手法を押さえておく必要があります。
| 項目 | ロケーション基準 | マーケット基準 |
|---|---|---|
| 概要 | 国や地域など、特定のエリアにおける平均的な電力排出係数に基づいてScope2排出量を算定する方法 | 企業が契約している電力会社や電力メニューごとの排出係数に基づいてScope2排出量を算定する方法 |
| 考え方 | 「どの地域で電力を使用したか」を重視 | 「どの電力を選択・調達しているか」を重視 |
| 使用する排出係数 | 全国平均排出係数(地域平均) | 電力会社別・電力メニュー別の調整後排出係数 |
| 計算式 | 全国平均排出係数 × 電力消費量(kWh) | Σ{調整後排出係数(t-CO₂/kWh)× 電力消費量(kWh)} |
| 主な用途 | 各国・地域の電力構成を反映した排出量把握 | 再エネ電力調達など、企業の電力選択努力を反映 |
Scope2の計算に必要なデータ
ロケーション基準とマーケット基準のそれぞれに必要なデータは、以下の通りです。
ロケーション基準
| 必要データ | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 全国平均排出係数 | 国全体の平均的な電力排出係数 | 環境省が年度ごとに公表 |
| 電力消費量 | 工場・オフィスなどで使用した電力量(kWh) | 自社管理データを使用 |
マーケット基準
| 必要データ | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 電力会社別排出係数 | 電力供給会社・電力メニューごとの調整後排出係数 | 環境省「算定方法・排出係数一覧」で確認可能 |
| 電力契約情報 | 契約している電力会社・電力メニューの情報 | 電力会社への確認が必要 |
| 電力消費量 | 契約ごとの電力量(kWh) | 契約単位での整理が望ましい |
電力供給会社による排出係数は、こちらの環境省のサイトから確認できます。
Scope2の削減事例
Scope2の削減事例を2社紹介します。
事例1:味の素株式会社
食や健康、医薬など、多様な分野で世界的に事業展開する味の素では、2020年4月にSBTからGHG排出量削減で定めた目標の認定を受けています。
味の素株式会社では、温室効果ガス排出係数が低い燃料に転換したり、内部カーボンプライシングを活用したりといった取り組みが行われています。[6]
事例2:花王株式会社
家庭用日用品や工業用化学製品、化粧品などの製造販売を行う花王株式会社では、2040年までにカーボンゼロの達成、2050年までにカーボンネガティブを実現する目標を立てています。[6]
2022年には、花王グループすべての全拠点で使用するエネルギー量を18.1PJ減らすことに成功しています。
再生プラスチックを利用したり、植物由来の天然原料を利用したりすることで温室効果ガスの排出量削減に成功している企業です。
スコープ2についてよくあるQ&A
Scope2の電気使用量の把握が難しい場合、賃借面積からの算定はどのようにするのでしょうか?
電力使用量を直接把握できない場合は、賃借しているオフィスの専用面積を基に、建物用途別の標準的なエネルギー消費原単位を用いて推計します。具体的には、床面積に原単位(GJ/㎡)と電力使用割合を乗じ、GJからkWhへ換算することで電力使用量を算定します。
例えば、対象となる専用部分の床面積は38.40㎡の場合、電力使用量は、環境省データベース(DB16 建物面積、DB15 建物エネルギー)を参照し、床面積(38.40㎡)にエネルギー消費原単位(0.77GJ/㎡)および電力使用割合(78.7%)を乗じたうえで、1kWh=0.0036GJとして電力量に換算します。
38.40m2✖️0.77GJ/m2✖️78.7%(環境省DB15建物エネルギー参照)✖️1kwh/0.0036GJ=6463.89kwh
その結果、当該オフィスにおける年間の電力使用量は 6,463.89kWh と算定されます。
まとめ
Scope2とは、他社から供給される蒸気や熱、電気を自社で使う際に生じる間接的な温室効果ガス排出量です。原材料を調達する工程から廃棄・リサイクルまでの、企業の事業活動における全体の流れのことをサプライチェーンと呼びます。また、Scope2の計算方法には、ロケーション基準とマーケット基準の2つの方法があります。
企業の脱炭素経営、特に目標設定や排出量の算出を積極的に進める上で、Scope2の計算方法や実際の企業事例を知り、理解するのは、有益になるでしょう。
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・Scope1,2,3の概要を説明
・Scope1,2,3算定のための具体的なプロセスをスコープごとに詳しく解説
・GHGプロトコルとISOの違いなどをQ&A形式でわかりやすく解説

参考文献
[1]資源エネルギー庁(2023)「知っておきたいサステナビリティの基礎用語~サプライチェーンの排出量のものさし「スコープ1・2・3」とは」
[2]環境省(2023)「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」
[3]環境省(2023)「サプライチェーン排出量全般」
[4]環境省(2025)「算定方法・排出係数一覧」
[5]味の素株式会社(2021)「サステナビリティの取組み」
[6]花王株式会社(2023)「脱炭素」
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