Last Updated on 2024年12月30日 by Moe Yamazaki
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企業の脱炭素経営を積極的に進めるサステナ担当者の方の中には
「Scope3が企業のサプライチェーン全体で発生する間接的な温室効果ガス排出をどのように定義しているか、重要性や定義について理解したい。」
「Scope3に含まれる排出の範囲が知りたい。」
「Scope3排出を構成する15のカテゴリについて知りたい。」
このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
当記事ではこのような悩みを解決していきます。
記事を最後まで読んでいただければ、上記悩みについて解決できるかと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。
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スコープ1,2,3とは?各スコープの詳細から、温室効果ガス排出量の算定方法まで解説
Scope3とは
Scope3は、企業のバリューチェーン全体にわたるその他の間接的な温室効果ガスの排出量を指します。
これには、サプライヤーからの原材料の調達、製品の輸送や流通、使用および廃棄などの幅広い活動が含まれます。
Scope3はさらに15のカテゴリに分かれており、サプライチェーン全体をカバーしています。
サプライチェーン排出量の仕組み
サプライチェーン排出量とは、原料調達・製造・物流・販売・廃棄等、一連の流れ全体から発生する排出量のことを指します。
サプライチェーン排出量は、前述したScope1,2,3の3つの区分があり、以下計算式より求められます。
Scope1での排出量+Scope2での排出量+Scope3での排出量=サプライチェーン排出量
このように、すべての排出量を合わせたものがサプライチェーン排出量です。
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GHGプロトコルとは
GHGプロトコルとは、企業が温室効果ガスの算定および報告をする際の国際的な基準です。
Scope3はこのGHGプロトコルに基づく分類の一つであり、企業のGHG排出量を包括的に管理するための枠組みの一部です。
アメリカに拠点を構える世界資源研究所と、スイスに本部を構える世界経済人会議を中心とし、世界中の政府機関やNGO、事業者など多くの利害関係者で取り組む共同の活動として、それぞれの国の政府機関も関っています。
GHGプロトコルで定められている基準に沿って温室効果ガス排出量を報告することにより、企業は国際的に通じる公正な情報を開示することができます。
Scope3の対象範囲
Scope3は、企業のバリューチェーンで発生するその他すべての間接的排出量を対象としています。
事業活動に関わるさまざまなサプライヤーから発生している温室効果ガス排出量を意味するため、事業活動上流での原材料調達から製品輸配送で発生する温室効果ガス排出量、下流での製品に加え、廃棄したりする温室効果ガス排出量なども含まれてきます。
参考文献:環境省「サプライチェーン排出量算定の考え方」
Scope3の15カテゴリ
Scope3における温室効果ガス排出量を求める場合、自社の事業活動に関わっている他社の排出した温室効果ガス排出量を、それぞれのカテゴリーに区別する必要があります。
Scope3では、全部で15のカテゴリーが存在しています。
カテゴリー1は、「購入した製品・サービス」であり、原材料調達や消耗品調達などが該当し、カテゴリー2は、「資本財」であり、生産設備増設などです。
その他カテゴリでは「輸送、配送」「リース資産」「フランチャイズ」「投資」など、さまざまな分野にカテゴリー分けされています。
それぞれのカテゴリと該当する活動について、簡単に解説します。
上流カテゴリは、以下の通りです。
- 購⼊した製品・ サービス
原材料の採掘や加工など - 資本財
⼯場等の資本財製造や資材採掘、加⼯など - 燃料・エネルギー関連
購入燃料や電力採掘、精製など - 輸送、配送(上流)
購入物品の物流や委託物流 - 事業から出る廃棄物
自社拠点で生じる廃棄物処理 - 出張
出張に関する移動 - 雇用者の通勤
通勤に関する移動 - リース資産(上流)
リース使用している倉庫運用
下流カテゴリは、以下の通りです。
- 輸送・配送(下流)
出荷後や所有権移転後における物流 - 販売した製品の加工
販売された部品や素材などの中間製品における出荷先での加工 - 販売した製品の使用
販売された製品の使用 - 販売した製品の廃棄
販売された製品の廃棄 - リース資産(下流)
リース貸ししている資産の客先運用 - フランチャイズ
フランチャイズ店舗の稼働 - 投資
投資先の稼働 - その他
従業員・消費者の日常生活に関する排出など
詳細は、以下に記載する環境省資料から確認できます。
Scope1、2との違い
Scope3は、サプライヤーからの原材料の調達、製品の輸送や流通、使用および廃棄などの幅広い活動が含まれます。
一方でScope1は、企業が所有または管理する施設や車両から直接発生する温室効果ガスの排出量を指します。これには、燃料の燃焼や製造プロセスからの排出が含まれます。
Scope2は、企業が購入して使用する電力、熱、蒸気、エネルギーの消費に伴う間接的な温室効果ガスの排出量を指します。
これらのエネルギーは外部の発電所や熱供給施設から供給されます。
Scope3の計算方法
温室効果ガスの排出量を求める場合、基本的に活動量に排出原単位をかけることで求められます。
活動量とは、事業者における活動規模に関連した量を指し、電気を使用した量や貨物における輸送量などが該当します。
一方で排出原単位は、排出係数と呼ばれることもあり、経済活動量あたりに発生する温室効果ガス排出量のことです。
温室効果ガスの排出量を求める方法には、排出原単位を使う方法と、実測値を使う方法の2種類があります。
できるだけ実測値を使う方が正確な値を求められますが、製品輸送で発生する温室効果ガスの排出量や、事務所の電気を使うことで発生する温室効果ガスの排出量など、事業活動を行う上で発生している温室効果ガス排出量を実測するのは簡単ではありません。
また、取引先からデータを集めるのにも手間がかかります。
サプライチェーン全体で発生している温室効果ガス排出量を正確に把握するのも、現実的とはいえません。
しかし、排出原単位で電力1kWhの使用で発生する温室効果ガス排出量、輸送距離・重量あたりで発生する温室効果ガス排出量などの値を利用すれば、企業は幅広く環境負荷算定が行うことができます。
基本的に排出原単位一覧がまとめられているデータベースを使用し求めるものの、データベースには複数の種類が存在し、算定目的によって使うデータベースを選ぶ必要があります。
Scope3の計算に必要なデータ
Scope3の計算では、活動量と排出原単位のデータが必要です。
活動量は、事業者の事業活動の規模に関連する量であり、電気使用量や貨物輸送量、廃棄物処理量などがあります。
また、排出原単位は、活動量あたりに排出されるCO2の量です。
各カテゴリで収集すべきデータは、以下画像の通りです。
サプライチェーン排出量の算定では、取引先に排出量を提供してもらう方法(一次データを使う方法)と活動量を自社で集め、該当する排出原単位を掛け合わせて算定する方法の2種類があります。
排出原単位を一覧にまとめたものが排出原単位データベースであり、使用されることも多いです。
IDEA
日本のLCAを牽引する産業環境管理協会、産業技術総合研究所が共同で開発した、日本における統計情報やLCIデータ、日本を利用し、日本のすべての産業をできるだけ細かく解像しモデル化するのを目的に開発されたデータベースです。
環境負荷原単位データブック(3EID)
日本の『産業連関表』を活用し算出された環境負荷原単位を記録しているデータブックです。
それぞれの部門における単位生産活動で発生する環境負荷量を表しており、部門間の産出と投入の構造を基礎にした産業連関分析で求められています。
JLCAデータベース
文献データ・インパクト評価用データ・インベントリ分析用データにより構成されたデータベースです。
利用する場合は、LCA日本フォーラムに入会する必要があります。
Scope3の削減事例
Scope3の削減事例を2社紹介します。
事例①:株式会社ニチレイ
加工食品や畜産・水産、低温物流などの食を支える事業に取り組むニチレイは、2050年までに、日本国内だけでなく、海外拠点も含めサプライチェーン全体における温室効果ガス排出量をできるだけゼロに近づけることを目標にしています。
また、削減できなかった温室効果ガス排出量に関しては、吸収および除去によりカーボンニュートラルの実現を目指しています。
取り組みとしては、Scope3に関するデータ収集などの取り組み推進や、温室効果ガス排出量を削減するための対応策の検討および推進などです。
具体的には、グリーン電力証書を活用したり、自然冷媒へ切り替えたりといったことがあります。
ニチレイグループにおけるScope3での温室効果ガス排出量は、総排出量に対し約90%を占めており、カテゴリ1の区分がScope3で発生している総排出量の約89%です。
加工食品や畜産・水産製品で使用する原材料、OEM製品調達などが主な排出源となっています。
参考文献:株式会社ニチレイ「気候変動への取り組み」
事例②:日本ハム株式会社
日本ハム株式会社は、ハムやソーセージといった加工品、健康食品、乳製品、水産品、調理加工品、食肉など食と健康に関連する事業に取り組む企業です。
Scope3での温室工ガス排出に関連するリスクと機会を識別し、削減目標を設定する参考資料としています。
具体的な取り組みとしては、事業所の屋根や敷地を使い太陽光発電を導入したり、重油からLPGやLNGに燃料転換したりなどがあります。
Scope3での環境に負荷を与えている量について把握することにより、商品の生産にあたり、ライフサイクルで温室効果ガス排出量削減に取り組んでいる企業です。
参考文献:日本ハム株式会社「非財務データ」
まとめ
Scope3とは、製品原材料の調達から廃棄・リサイクルまでの一連の工程における温室効果ガス排出量であり、自社で直接的に排出するScope1の量と、自社で間接的に排出するScope2の量を除いた間接的な排出量のことです。
企業が取り組む事業活動全体における温室効果ガスの排出量を、サプライチェーン排出量と呼びます。
GHGプロトコルとは、2011年10月策定された、温室効果ガスの排出量算定および報告に関連した国際的に共通の基準です。
温室効果ガスの排出量を求める場合、基本的に活動量に排出原単位をかけることで求められます。
また、Scope3を算出するためには、企業は取引先から排出量データを集める必要があります。
企業の脱炭素経営を積極的に進めるサステナ担当者の方は、Scope3の計算方法や、実際の企業事例に理解することで、排出量の算出がスムーズに行えるようになりますので、しっかりと押さえておきましょう。
#Scope1.2.3#スコープ1.2.3
Scope1,2,3の算定方法とは?
【このホワイトペーパーに含まれる内容】
・Scope1,2,3の概要を説明
・Scope1,2,3算定のための具体的なプロセスをスコープごとに詳しく解説
・GHGプロトコルとISOの違いなどをQ&A形式でわかりやすく解説
参考文献
[1]資源エネルギー庁「知っておきたいサステナビリティの基礎用語~サプライチェーンの排出量のものさし「スコープ1・2・3」とは」
[2]環境省「サプライチェーン排出量算定の考え方」
[3]環境省「サプライチェーン排出量とは」
[4]株式会社ニチレイ「気候変動への取り組み」
[5]株式会社ニチレイ「GHG(温室効果ガス)排出量」
[6]日本ハム株式会社「非財務データ」
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