Last Updated on 2024年11月20日 by HaidarAli
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気候変動対策において、GHGプロトコル土地・除去ガイダンスという用語を聞くことがありますが、どのような指標なのでしょうか。
GHGプロトコル土地・除去ガイダンスは、Land Sector and Removals Guidance)と記載され、土地セクターと炭素除去量の算定に係るガイダンスです。
温室効果ガスGHGの削減が現在、世界的に最重要課題となっており、特に、土地関連分野における、炭酸ガスの排出や削減手法への感心も高まっています。また、最近特に、炭酸ガスを直接的に削減する、いわゆる炭素除去という手法にも注目が集まっています。
本解説では、GHGプロトコル土地・除去ガイダンスについて、導入の経緯や、今後の注意点まで総合的に説明します。
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GHGプロトコル土地・除去ガイダンスにおける「排出」とは?
GHGプロトコルでは、新たに本ガイダンスの素案を2022年9月に公開しています。
GHGプロトコル土地・除去ガイダンスは、炭素収支に係るもので、排出量算出と、除去量算出の両面からなっています。まず、本ガイダンスにおける排出側面について説明します。
排出側面には大きく分けて、「土地以外からの排出」「土地関連の排出」と「製品貯留からのネット排出」の3つがあげられます。
本ガイダンスでは、算定対象となる活動の枠組みを拡張しており、SBTi目標などで削減対象とされていた排出量(燃料燃焼、プロセス由来の排出量等)を「土地以外の排出」と位置づけ、さらに「土地関連の排出」という分類を追加して整理しています。
土地以外の排出
土地以外の排出とは、工業などの土地関連業種などにはかかわらない要素から起因します。
まず、ボイラーなどの燃料燃焼に伴う排出(定常燃焼排出という)と、自動車等の移動媒体における燃料排出に伴う排出(移動燃焼排出という)が挙げられます。さらに,製造工程での物理的・化学的プロセスからの燃料燃焼以外の排出(プロセス排出という)と、廃棄物の嫌気性消化や排水処理からのメタンガス排出(濾出損失という)があり、さまざまな領域からの排出量算定が今後必要となります。
土地関連の排出
森林関連や農業領域における、土地セクターからの排出も重要な要素となっています。たとえば、森林からの耕作地への転用による炭素除去量の減少(土地利用変化排出という)、森林劣化や耕作地放棄などによる炭素除去量の減少(土地管理CO2ネット排出という)、家畜飼育時のメタンガスや、施肥肥料からの一酸化二窒素などの温室効果ガスによる排出(土地管理非CO2ネット排出という)などがあり、今後、算定方法を含めてさらに検討が必要となります。
既に、SBT FLAG関連の排出量としても、森林から牧草地のように、土地形態が別の形態に変化することによる土地利用変化に伴う排出(LUC排出)と、肥料の製造使用や農業機械使用などによる排出(非LUC排出)に大別されカウントされますので、当該企業ではこれらの規制も考慮することが必要です。
製品貯留からのネット排出
また最近注目されている直接空気回収技術DACにおいて、いったん回収した炭素の貯留時における漏出などによる排出(技術的ネット排出という)や、森林伐採時の木材製品による炭素除去量の減少(生物由来ネット排出という)も、算出しておく必要があります。
またこれ以外にも、DACで回収した炭素を地中貯留した場合の漏出等による排出(地中貯留からのネット排出という)の問題もあります。
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GHGプロトコル土地・除去ガイダンスにおける「除去」とは?
次に、本ガイダンスにおける炭素の除去側面について説明します。
炭素除去には大きく分けて、「土地管理ネット除去」「製品貯留によるネット除去」と「地中貯留によるネット除去」の3つがあげられます。
土地管理ネット除去
土地管理ネット除去とは、転用がない場合の森林や耕作地などからの炭素除去量の増加(すなわち差し引きでは。ネット除去となる)のことです。転用がない場合は、森林や耕作地を適切に管理することが求められます。なおSBT FLAG目標では、企業体のより森林や耕作地が適切に管理されていれば、それによる炭素除去のカウントが可能となります。
製品貯留によるネット除去
また直接空気回収技術DACにおいて、回収炭素の貯留時における炭素除去(技術的ネット除去という)や、伐採木材製品やバイオプラスチック利用による炭素除去量の増加(生物由来ネット除去という)が注目されています。今後、これらの領域における、技術開発や実用化により、さらに除去量が増加すると予想されます。
地中貯留によるネット除去
さらに直接空気回収技術DACにおいて、回収炭素の地中貯留(DACCSという)も検討されており、これらによるネット除去量がますます増えていくと考えられます。なお直接空気回収・貯留技術DACCSや、二酸化炭素回収貯留技術CCSや、それをさらに地下の原油生産層等に注入する技術CCUSなどの技術が、近年世界各国で実施されており、国内でも重要な技術となると推定されます。
GHGプロトコル土地・除去ガイダンスにおける注意点
最後に、算定ルールや土地セクター追加の影響について説明します。
GHG算定ルール
本ガイダンスの特徴としては、大気へのGHGの放出を「排出」、大気から大気以外の貯留層などへのGHGの移動を「除去」と定義して、排出と除去を区別した算定方法を示しています。これにより、DACなどの技術でCO2を分離回収した場合にGHG除去量として計上することが可能となりました。さらに回収したCO2を合成燃料等に転換して利用する場合は、前半の分離回収分は「除去量」として、後半の燃料消費分は「排出量」としてカウントすることができます。その差し引き部分(除去量マイナス排出量)は、当該企業の目標値に合算可能となります。
これらの概要以外にも、目標設定、排出および除去クレジットの品質や算定上の扱い、報告方法についてはまだ確定していない部分もあり、今後確定版の発行がまたれるところです。
土地セクター追加の影響
炭素除去部分も企業の排出量算定に取り込んだことで、Scope1~3の枠組みそのものが拡張されることなりました。たとえば、社有林の森林吸収などは、従来のSBTi目標(SBT FLAG)などでは、企業の削減活動の中には必ずしも包含することは難しいのが実情でした。
新たに、本ガイダンスによれば社有林での森林吸収は「Scope1での土地除去量」とすることができ、企業活動にとってはかなりのメリットとなります。また先に記載した「土地管理ネット除去」などの一貫としてカウントすることができます。土地利用に関わる企業だけでなく、バリューチェーン全体にも影響するため、今後の土地利用関連の情報収集が必要となります。
まとめ
GHGプロトコル土地・除去ガイダンスは、温室効果ガスGHG削減のあらたな指標として、注目が集まっています。
本ガイダンスにより、従来のSBTi目標などでもカバーされていなかった土地関連の部分を、GHGフラックス(排出と除去)として明確化しています。今まで曖昧であった社有林などの炭素除去量のカウントも可能となり、企業活動にも資するものとなります。
今後さらに、GHGプロトコル土地・除去ガイダンス確定版の内容や動向が期待されます。
本記事で説明した内容が、担当者様の業務に今後少しでもお役に立てるのであれば大変光栄です。
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参考文献
[1]土地セクター・炭素除去ガイダンス:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/tools/1-10r_Land-Sector-and-Removals-Guidance-Pilot-Testing-and-Review-Draft-Part-1_JP.pdf
[2]今年度の検討方針について(環境省):https://www.env.go.jp/content/000142633.pdf
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