Last Updated on 2024年8月25日 by Moe Yamazaki
【気候変動関連用語がまるわかり!用語集はこちら】
企業の脱炭素経営を積極的に進めるサステナ担当者の方の中には
「CFPの概要について詳しく知りたい。」
「CFPの算定用途について知りたい。」
「規制や政策対応・公共調達でのCFP活用について知りたい。」
このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
当記事ではこのような悩みを解決していきます。
記事を最後まで読んでいただければ、上記悩みについて解決できるかと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。
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カーボンフットプリント(CFP)の全体像を理解したい方はこちら!
⇒CFP(カーボンフットプリント)とは?全体像を解説
カーボンフットプリント(CFP)とは
カーボンフットプリント(CFP)とは、製品やサービスの原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通じて排出される温室効果ガス排出量をCO2に換算し、その数値を製品に表示する仕組みです。
カーボンフットプリント(CFP)の算定方法
カーボンフットプリントを算定する際、ベースとなるのがライフサイクルアセスメントにおける手法です。
ISO14040により国際規格化されている手法であり、4つのフェーズによって構成されています。
算定手順は、以下の通りです。
- LCAの実施目的と適用範囲を定める
- LCAの対象製品・サービスに投入するエネルギーや排出される製品のデータを集め明細表を作る
- 分析した明細表を使い環境への影響を評価する
- 目的と照合し分析や評価の結果を解釈する
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カーボンフットプリント(CFP)の算定目的
CFPの算定用途について解説します。
社内での活用
社内で活用することで、以下2つのメリットが得られます。
削減の優先順位を可視化できる
企業は自社のCO2排出状況を把握でき、CO2を削減するためにどこから着手すべきなのか優先順位を可視化することができます。
CFPを活用しCO2削減に向けて取り組むことで、企業の競争力も高められます。
カーボンプライシングによるリスクの把握にもつながる
CO2といった温室効果ガスに対し価格づけすることをカーボンプライシングと呼びます。
温室効果ガス排出量に対し、金銭的負荷をかけることによって、排出者に削減対策の行動を積極的に実施するための手法として、注目を集めています。
環境問題が深刻化している背景から、(ESG投資)が拡大し、企業は事業を存続させるためにも環境問題を考慮した取り組みを行わなければなりません。
CFPを算定することで、自社の温室効果ガス削減の優先順位を可視化できるため、カーボンプライシングによるリスクを把握できます。
顧客への情報提供
顧客への情報提供として、顧客からCFPの要請があった際に対応が可能です。
取引先に対してScope1,2,3やCFPの情報開示を要請する企業が増えてきているため、CFPを算定しておくことでスムーズに対応できます。
事例:大和ハウス
大和ハウスは、サプライヤーとの提携を通じScope3における排出量削減に取り組んでいます。
事業活動でのScope1・2から排出される量は非常に少なく、全体の1%です。
その反面、Scope3が全体の99%を占め、自社を除いた間接排出量が多いため、バリューチェーン全体における温室効果ガス排出量の可視化が行われています。
参考文献:大和ハウス工業株式会社「長期環境ビジョン」
具体的な取り組みとして、CSR調達ガイドラインを策定しており、「取引先行動規範」「企業活動ガイドライン」「物品ガイドライン」の3つで構成される方針は、関連する部門担当者により構成されているCSR調達部会が主導となり、サプライヤー企業に対し説明される仕組みです。
大和ハウスは、主要となる204社のサプライヤー企業に対して、温室効果ガス排出量を削減する目標を定めるよう要請しています。[3]
71%におよぶ企業が2019年度末時点で削減自主目標を定めています。[4]
このように排出量削減目標を設定する際にもCFPは重要です。
顧客への積極的な訴求
続いてCFPの算定目的として、これまで環境対応としての省資源や再エネ導入、廃棄物削減などは、ブランド的価値はあるものの、製品やサービスに関する直接的価値として表現するのが難しい部分がありました。
しかし、CFPを算定することにより、取り組みが可視化でき、自社のCFPが小さいことを訴求することができます。
Scope3削減においては、環境対応が進んでいる企業や製品が優先される傾向が高まっていることに加え、カーボンプライシングによるリスクを考慮した金額換算での価値訴求も可能です。
CBAMの規制・政策対応
CBAMの概要
CBAMは、炭素国境調整措置のことであり、気候変動への対策が不十分な国から輸入する商品やサービスに対し、生産される過程により排出した炭素量によって、自国と同じ排出負担を負わせる措置のことです。
また、自国の企業が気候変動への対策が不十分な国に輸出を行う際、輸出品を生産する過程で負担した炭素コスト分に関して還付することもあります。
CBAMを導入することにより、厳しい排出負担で自国企業における国際競争力が低下してしまったり、自国と比べ排出規制が緩い国に企業が生産拠点を移動することにより、結果として世界全体における炭素排出量が減っていない「炭素リーケージ」が生じるのを防ぐことができます。
CBAMで求められる規制内容
CBAMは、2026年1月から本格的に適応が開始されます。
開始されてからは、EU域内に対象となる品目を輸入する事業者に対して、課徴金として「CBAM証書」を購入することが義務です。
CBAM証書を購入するためには、「CBAM登録簿」と呼ばれる登録システムに、輸入事業者は必要な情報を登録することに加え、「認可CBAM申告者」の許認可を加盟国から受ける必要があります。
証書を納付する期限は該当年の翌年5月ですが、各四半期末までに認可CBAM申告者は1月1日から購入した分の8割以上のCBAM証書を登録国の中央プラットフォーム上から購入し、登録口座に用意します。
そのため、移行期間と同じように、各四半期で排出量に関するデータを準備し、それと同時に証書を購入する必要があります。
カーボンフットプリント(CFP)とCBAMとの関係性
CBAMでは、保護主義と判断されないための制度を設計したり、過度な負担を企業に与えないようにするための運用等が求められたりと、先行してEU-CBAMが事例となることで、CBAM導入国や品目が拡大する可能性があります。
実際に、豪州や英国などで導入が検討されています。
また、自動車などの完成品が対象に含まれる際は、部品などの生産に伴った間接排出であるScope3も課金対象になる可能性があります。
CBAMの導入が今後広がることで、製品単位において多数の企業での排出量の管理や削減が重要視される可能性が高まっています。
近年では、大手企業を中心とし、企業や組織単位での温室効果ガス排出量の計測、および開示が進められています。
製品単位でのCFPを算定するためには、より細かい計測が必要であり、政府は、CFP算定などに関するルールの整備や、中小企業における排出量計測への補助金などを通じ、企業のCFP計測体制構築をサポートすることが求められています。
対象となる製品と今後対象となる可能性のある製品
CBAMで現在対象とされている製品は、以下表の通りです。
分類 | 対象製品 | 本格適用時の対象排出量 |
セメント | カオリン系粘土、セメントクリンカー、白色セメント、アルミナセメント、その他の水硬性セメント | 直接・間接 |
電力 | 電力 | 直接・間接 |
肥料 | 硝酸・硫硝酸、無水アンモニアおよびアンモニア水、硝酸塩、窒素肥料およびその他肥料 | 直接・間接 |
鉄鋼 | 鉄および鉄鋼(ただしフェロシリコン、フェロシリコマンガンなどケイ素化合物、鉄鋼スクラップを除く)、凝結させた鉄鉱、鋼矢板および溶接形鋼、レール(鉄道用建設資材)、鋳鉄管、鉄鋼管および継手、構造物およびその部分品、鉄鋼製の貯蔵タンク・ドラム・缶など容器、ねじ・ボルト・ナット・リベット、その他鉄鋼製品 | 直接排出のみ |
アルミニウム | アルミニウム塊(スクラップを除く)、粉・フレーク、棒および形材、ワイヤー、板・シート・ストリップ、アルミニウム箔、アルミニウム製の管および継手、タンク・ドラム・缶など容器、圧縮ガス用または液化ガス用のアルミニウム製容器、より線・ケーブル・組みひもなど(電気絶縁したものを除く)、その他アルミニウム製品 | 直接排出のみ |
化学品 | 水素 | 直接排出のみ |
2026年1月から、CBAMではEUに輸入する対象の製品における生産プロセスで生じた直接排出量、および電力・セメント・肥料に関して、生産に伴い消費された電力を含む間接排出量に相当した課徴金負担が要求されます。
公共調達でのCFP活用
公共調達でのCFP活用について理解するためには、グリーン購入法の概要とCFPに関する要請内容を抑えておく必要があります。
グリーン購入法の概要
グリーン購入法は、国を中心に、環境へ配慮された商品の調達を推進するための法律です。
循環型社会の実現や持続可能な発展を目指し、2000年5月に定められました。
それ以降国の機関を筆頭に地方自治体や事業者などでグリーン購入に対する考え方や取り組みが広がっています。
グリーン購入法についての詳しい記事はこちら!
⇒グリーン購入法とは?原則とCFPにおける位置付けを紹介
グリーン購入法の中でのCFPに関する要請内容
グリーン購入法は古くから存在する法律ですが、これからのCFPガイドラインの策定も考慮し、端緒である定量的な環境情報が開示されている製品やサービスを定めることが推奨されています。
定量的な環境情報を算定し開示するために重要な考え方として、判断基準として利用可能な仕組みが整備されています。
判断基準は、以下3つです。
・商品別算出基準(PCR)など、CFPやLCAに従い温室効果ガス排出量が算定されていること。
現段階で開示されている製品などが存在しない項目に関しても、原則当該品目に関連する配慮事項で設定を検討すること。
・ライフサイクルでの温室効果ガス排出量を、製品に表示、ウェブサイトや取扱説明書など適切な方法によって開示すること
・定量的な環境情報の算定および開示を推奨し、排出量を可視化し、製造事業者といったインセンティブにすること。
その際は妥当性の確認および検証が第三者機関からあることを推奨。
また、CFPを算定した商品に関して、グリーン購入法で承認してもらうための判断基準として、最低限満たすべき水準である基準値2は当然のこと、基準値1のより高い環境性能を満たすことが必要と定められています。
そのため、今後官公庁に向けて、CFPをアピールした製品やサービスを納める際は、温室効果ガス排出量の削減効果に関する計算が効果的な前提で実施されているか、計算ミスはないかなど、計算の妥当性や正確性について考慮する必要があります。
まとめ
カーボンフットプリント(CFP)とは、製品やサービスの原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通じて排出される温室効果ガス排出量をCO2に換算し、その数値を製品に表示する仕組みです。
CFPの算定用途には、社内で活用する、顧客への情報提供で活用する、顧客に積極的に訴求することなどがあります。
公共調達でのCFP活用について理解するためには、グリーン購入法の概要とCFPに関する要請内容を抑えておく必要があります。
CFPは、深刻化する地球環境問題を改善するためにも、企業が継続して事業活動に取り組んでいくためにも非常に重要なものです。
そのため、企業の脱炭素経営を積極的に進めるサステナ担当者の方は、CFPの概要や算定方法、活用方法について十分理解しておくことが大切です。
参考文献
[1]大和ハウス工業株式会社「長期環境ビジョン」
[2]大和ハウス工業株式会社「CSR調達ガイドライン」
[3]大和ハウス工業株式会社「トピックス サプライチェーンの協働力で気候変動・森林破壊を食い止める」
[4]大和ハウス工業株式会社「サステナビリティレポート」
[5]環境省「グリーン購入法におけるカーボンフットプリントの活用について」
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