Last Updated on 2024年5月28日 by YamashitaRina

スコープ3(scope3)のカテゴリ1は、自社が購入した製品やサービスの製造過程で排出する温室効果ガスの量を指します。排出量を削減するには他社との協力が必要なため、プロセスが複雑化しがちです。この記事では、取引先との連携を通じてスコープ3カテゴリ1をどのように削減できるかについて、方法と実際の事例を紹介します。

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スコープ3(scope3)のカテゴリ1とその削減に関して

スコープ3(scope3)カテゴリ1とは

スコープ3(scope3)とは、自社の事業活動に関連する事業者や、製品の使用者が間接的に排出する温室効果ガスを指します。自社により直接的に排出された温室効果ガスの量であるスコープ1や、他者から供給された電力の使用によるスコープ2と比べ、正確な算出が難しいとされています。

スコープ3の削減方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
スコープ3の削減方法とは?企業の具体的事例を解説

スコープ3はの15のカテゴリに分かれており、カテゴリ1は購入した製品やサービスが製造されるまでの温室効果ガスの排出量を指します。具体的には、原材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達等が含まれます。

スコープ3(scope3)カテゴリ1の削減方法

スコープ3(scope3)カテゴリ1の排出量を削減するためには、自社の外部で発生する排出の削減に取り組む必要があります。そのため、外部ステークホルダー、例えばサプライヤーとの連携が多く必要とされ、意思決定プロセスがより複雑になることがあります。

また、近年のCDPの調査でも、取引先との連携について問われることが増えています。CDPの2022年版企業向け気候変動質問書では、「取引先との協働、政策への働きかけ」に関する質問が含まれています。具体的には、直接の操業外で発生する排出量を減少させるために、取引先や他のパートナーとどのように連携し、協力しているかについて問われています[1]。

これらの点から、サプライチェーン上の企業に働きかけ、共同で温室効果ガス排出量を削減する取り組みが不可欠です。

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取引先との協働方法

スコープ3の排出削減に向けて、以下の「グリーン調達」と「サプライヤーエンゲージメント」2つの観点を紹介します。

[2]より引用

グリーン調達

グリーン調達は、自社の調達方針と方法を変更することに焦点を当てたアプローチです。

排出削減に成功したサプライヤーや、温室効果ガス(GHG)排出量の低い商品を選択することで排出量を削減します。

具体的な取組例:

  • GHG排出量の低い商品を提供するサプライヤーから調達
  • GHG排出量の少ない代替品に切り替える
  • 調達方法とネットワークの最適化
  • 調達の要件に排出削減を組み込み、サプライヤーに排出削減を促す
  • 排出削減に関連する要件をサプライヤーとの契約条件として設定
[2]より引用

サプライヤーエンゲージメント

サプライヤーが省エネや再エネへの取り組みを加速するよう働きかけを行います。

サプライヤーが実施する製造や輸送などの企業活動における排出を削減することで、自社のスコープ3カテゴリ1,2の削減が見込まれます。

具体的な取り組み例:

  •  サプライヤー自身の排出削減目標の設定を促す
  • 主要サプライヤーと再エネの導入等の共同プロジェクトの実施
  • サプライヤーの排出削減のための資金調達支援
  • サプライヤーへのノウハウと情報の提供
  • サプライヤーからさらに上流のサプライヤーへの働きかけ
[2]より引用

サプライヤーの評価/インセンティブの付与

グリーン調達とサプライヤーエンゲージメントを行うにあたり、排出削減に取り組むサプライヤーの現状を把握し、評価することが重要です。排出削減に貢献するサプライヤーが報酬を得られる仕組みを構築することで、取り組みを継続・拡大する動機付けになります。

具体的な取り組み例:

  • 取り組みの成果や状況に関するデータ提供の依頼
  • 工場や設備における炭素排出状況に関する監査の実施
  • 排出削減努力の大きいサプライヤーへの発注量、発注金額の増加
  • 優れた取り組みを行う企業の表彰、賞金の付与

取引先との協働事例

最後に、サプライヤーへの積極的な働きかけを行い、温室効果ガスの削減に務めている企業を紹介します。

大和ハウス

大和ハウス工業株式会社(以下、大和ハウス)は、サプライヤーとの提携を通じて、スコープ3排出削減の取り組みを推進しています。大和ハウスの事業活動におけるスコープ1および2からの排出量は極めて小さく、全体の1%しか占めていません。その一方で、スコープ3は全体の約99%を占めています。このように自社以外の間接排出量の多い大和ハウスでは、「2050年までにサプライチェーンにおけるカーボンニュートラルの実現」、「2025年までに主要サプライヤーの90%と温室効果ガス削減目標の共有」という目標を掲げています。目標の達成に向けて、バリューチェーン全体で温室効果ガスの排出量を詳細に可視化する取り組みを行っています[3]。

取り組み①

一つ目の取り組みは、「CSR調達ガイドライン」の策定です。「取引先行動規範」「企業活動ガイドライン」「物品ガイドライン」から成るこの方針は、関連部門の担当者で構成されたCSR調達部会が主導でサプライヤー企業に対して説明されます。ガイドラインに沿った調達を行うことにより、持続可能な調達プロセスを構築し、サプライヤーとのパートナーシップを強化しています。

[4]より引用

取り組み②

大和ハウスは主要なサプライヤー企業204社に対し、温室効果ガスの排出量削減目標を設定するように要請しています。2019年度末時点では、すでに71%の企業が削減自主目標を設定しています[5]。2025年までには、SBT目標を90%の企業で設定することを目指しています[6]。

この目標の実現に向け、2019年度に「脱炭素ワーキンググループ」を設立し、研修会や講演会などを開催しています。

まとめ

本記事では、取引先との協働によるスコープ3カテゴリ1の削減方法について解説しました。自社の調達方針の見直しや、サプライヤーの排出量削減の取り組みの推進により、自社のスコープ3排出量を削減することが可能となります。

まずは自分の企業でできる取り組みからはじめてみましょう。

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参考文献

[1] CDP Worldwide-Japan (2022)「CDP 2022年 企業向け 気候変動質問書回答に向けて(詳細版)ver. 2」https://cdn.cdp.net/cdp-production/comfy/cms/files/files/000/006/117/original/Webinar_Climate_Change_2022_JP_v2.pdf
[2] 環境省(2022) 「SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブック(2022年度版)」https://www.env.go.jp/content/000116060.pdf
[3] 大和ハウス工業株式会社(n.d.) 「環境長期ビジョン」https://www.daiwahouse.co.jp/sustainable/eco/vision/index.html#chalZero3
[4]大和ハウス工業株式会社(2023)「CSR調達ガイドライン」https://www.daiwahouse.co.jp/sustainable/csr/pdfs/csr_procurement_guidelines.pdf?page=sj
[5]大和ハウス工業株式会社(2020)「トピックス サプライチェーンの協働力で気候変動・森林破壊を食い止める」https://www.daiwahouse.co.jp/sustainable/sustainable_journey/topics/supply_chain/
[6]大和ハウス工業株式会社(2019)「サステナビリティレポート」https://www.daiwahouse.co.jp/sustainable/csr/pdfs/2019/env_Data.pdf

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Author

  • 西家 光一

    2021年9月入社。国際経営学修士。大学在学中より国際人権NGOにて「ビジネスと人権」や「気候変動と人権」領域の活動を経験。卒業後はインフラ系研究財団へ客員研究員として参画し、気候変動適応策に関する研究へ従事する。企業と気候変動問題の関わりに強い関心を寄せ、リクロマ株式会社へ参画。

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