Last Updated on 2024年8月31日 by Moe Yamazaki

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CBAM(炭素国境調整措置)は、EUが導入する国境炭素税で、輸入製品に対する炭素排出量の報告と炭素証書の購入を義務付けます。

この記事では、CBAMの導入背景や実施時期、日本企業が求められる対応について詳しく解説します。

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EUの国境炭素税 CBAM(炭素国境調整措置)とは?

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CBAM(炭素国境調整措置)とは

CBAMの概要

CBAM(Carbon Border Adjustment Mechanism)は、EUが導入を進める国境炭素税です。

EU域外から輸入される製品に対して、炭素価格を反映した証書の購入を義務付けることで、域内外の企業に同等の炭素負担を求める制度です。

対象製品にはセメント、鉄・鉄鋼、アルミニウム、肥料、電力、水素が含まれます。

CBAMの導入背景

CBAMの導入背景には、カーボンリーケージの防止と自国産業の保護があります。

カーボンリーケージとは、厳しい環境規制により自国の産業が競争力を失い、他国に移転してしまう現象です。

これを防ぐために、輸入品にも同様の炭素価格を適用することで、公平な競争環境を維持します。

CBAMの目的は、EU域内と域外の炭素価格の格差を解消し、温室効果ガス規制が緩い国々にも気候変動対策を促進することです。

これにより、EUは自国の産業を保護しつつ、国際的な環境基準の向上を図っています。

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CBAMの実施時期・スケジュール

移行期間

CBAMの導入は段階的に進められます。

2023年10月1日から2025年末までの移行期間中、対象企業は輸入品の炭素排出量を報告する義務があります。

この期間中、企業は炭素証書の購入は不要ですが、炭素排出量のデータ収集と報告の準備を進めることが必要です。

実施期間

2026年1月からはCBAMの本格的な実施が開始され、企業は輸入品の炭素排出量に応じて炭素証書を購入しなければなりません。

この期間には、EU域内での炭素価格に基づいた調整が行われ、国際的な炭素排出削減の一環として機能します。

企業の脱炭素経営にとって、この移行期間中に準備を整え、本格実施に対応することが重要です。

適切な炭素フットプリントの算定と報告体制の整備が求められます。

CBAMの対象事業者

移行期間中の報告義務者

移行期間(2023年10月1日~2025年12月31日)中、CBAM対象製品を輸入する欧州の輸入者には、輸入品の炭素排出量等の情報を四半期ごとに報告する義務があります。

この期間中の報告内容には、製品の直接排出量、間接排出量、および原産国で支払われた炭素価格が含まれます。

報告義務者はCBAM対象品の輸入申告者です。

参考文献:pwc「欧州国境炭素調整措置(CBAM)の導入と貿易への影響

実施期間中の報告義務者

2026年1月からの本格実施期間では、EU域内の輸入者は輸入製品の含有炭素排出量に応じた炭素証書を購入し、EUに支払う必要があります。

この報告は定期的に行われ、企業は炭素フットプリントを正確に測定し、適切に対応することが求められます。

CBAMの対象国

CBAM(炭素国境調整措置)の対象国は、EU域外のすべての国です。

ただし、特定の国や地域は例外となっています。その一例がEFTA(欧州自由貿易連合)加盟国であるアイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタインです。

これらの国々は、CBAM規則の適用対象外となっており、EUへの輸出において炭素証書の購入義務がありません。

この措置により、EU内外での公平な競争環境が確保されることを目指しています。

参考文献:pwc「欧州国境炭素調整措置(CBAM)の導入と貿易への影響

CBAMの対象セクター・製品

対象製品と対象GHG

CBAM(炭素国境調整措置)の対象製品は、セメント、鉄鋼、アルミニウム、肥料、電力、水素などの主要な産業製品です。

これらの製品に対して、EUへの輸入時に炭素排出量が報告され、炭素証書の購入が必要となります。

対象となる温室効果ガス(GHG)は二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)などです。

2025年の対象製品の見直しについて

2025年にはCBAMの対象製品リストが見直される予定です。

これにより、対象製品が追加される可能性があります。

企業はこの見直しに備え、対象製品の拡大に対応するための準備が必要です。

見直しにより、さらに多くの産業がCBAMの影響を受けることが予想されます。

参考文献:日本貿易振興機構(ジェトロ)「EU 炭素国境調整メカニズム(CBAM)の解説(基礎編)

CBAMに対し日本企業が求められる対応

日本企業への影響(影響がある場合について言及)

CBAMの導入により、日本企業は輸出製品に対して炭素排出量の報告義務が課されます。

特に、鉄鋼、アルミニウム、セメントなどの産業は大きな影響を受ける可能性があります。

これに伴い、製品コストの増加や競争力の低下が懸念されます。

参考文献:日本貿易振興機構(ジェトロ)「EU 炭素国境調整メカニズム(CBAM)の解説(基礎編)

EU域外・域内別の推奨対応、準備

EU域外・域内別の対応策は、以下の通りです。

EU域外企業向け対応策

  • 炭素排出量の計測と報告体制の整備
  • カーボンフットプリントの削減努力
  • EUの規制に対応するためのコンサルティングや技術支援の活用

EU域内企業向け対応策

  • サプライチェーン全体での炭素排出量管理
  • EU内の既存の炭素市場との連携
  • 持続可能なエネルギーの利用促進と技術投資

日本企業はこれらの対応を通じて、CBAMに適応し、持続可能な経営を推進することが求められます。

参考文献:日本貿易振興機構(ジェトロ)「EU 炭素国境調整メカニズム(CBAM)の解説(基礎編)

まとめ

CBAM(炭素国境調整措置)はEUが導入する国境炭素税で、輸入製品の炭素排出量に応じた証書購入を義務付けます。

2023年からの移行期間では炭素排出量の報告が求められ、2026年から本格実施されます。

日本企業は製品コストの増加や競争力の低下が懸念されるため、炭素フットプリントの算定・管理体制の整備が不可欠です。

これにより、国際的な炭素排出削減に貢献し、持続可能な経営を推進することが求められます。

そのため、企業の脱炭素経営を積極的に進めるサステナ担当者の方は、CBAMの概要や実施時期・スケジュール、対象製品について十分理解しておくことが大切です。

#カーボンプライシング

参考文献

[1] pwc「欧州国境炭素調整措置(CBAM)の導入と貿易への影響

[2]日本貿易振興機構(ジェトロ)「EU 炭素国境調整メカニズム(CBAM)の解説(基礎編)

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Author

  • 西家 光一

    2021年9月入社。国際経営学修士。大学在学中より国際人権NGOにて「ビジネスと人権」や「気候変動と人権」領域の活動を経験。卒業後はインフラ系研究財団へ客員研究員として参画し、気候変動適応策に関する研究へ従事する。企業と気候変動問題の関わりに強い関心を寄せ、リクロマ株式会社へ参画。

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