Last Updated on 2024年4月25日 by Yuma Yasui

 GXリーグは2023年度の本格始動を予定しており、排出権取引などが行われていく予定です。GXリーグの参画企業は排出量の算定を求められます。注意点は、TCFD開示ではGHGプロトコルに基づくGHG排出量算定が推奨されているのに対し、GXリーグではSHK制度(温室効果ガス排出量算定・報告・公表)に基づく算定が原則求められいる点です。

そのためこの記事ではSHK制度による算定とGHGプロトコルによる算定との違いを述べ、その後既にGHGプロトコルに基づき、排出量を算定している際の対応方法について解説していきます。

※関連記事:スコープ1,2,3とは?各スコープの詳細から算定方法まで解説

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GXリーグとは

GXリーグとは2050年時点でのカーボンニュートラルを達成するために必要な社会変革に向けて、GXに挑戦する企業群や官・学が協働するイニシアチブです。GXとはグリーントランスフォーメーションの略であり、経済産業省は「グリーンエネルギーの利用への変革に向けた活動」と述べています。GXリーグ内で行う主な事は排出量取引・カーボンニュートラル時代のルール形成に向けた討論・サスティナブルな未来像を議論する事です。
参考:排出量取引の新制度 GX-ETSを解説

SHK制度とGHGプロトコルの違い

・SHK制度について

SHK制度は温対法に基づく制度で環境省により推進されています。SHK制度は温室効果ガス算定量算定・報告・公表制度の略で、温室効果ガスを多量に排出する事業者に、自らの温室効果ガス排出量を算定、報告することを義務付けた制度です。排出者自らが排出量を算定することを義務付けることで自主的な開示の取り組みを促進しています。しかし2006年にできた制度であるため、最新の科学技術によって導かれる排出係数などを導入しきれておらず、算定方法改定の議論も行われています。

・GHGプロトコルについて

GHGプロトコルはGHG排出量算定・報告する際の国際的な基準で、事業者、NGO政府機関などの協力によって作られた制度です。世界レベルでの適用可能性を求めたものであり、また将来に考えられる制度などについても考慮したものであるため、GHGプロトコルは包括的な制度になっています。また環境省によるとGHGプロトコルは将来的に各国の運用による適用性についてのフィードバックから改定されると考えられています。

・二つの制度の違いについて

これら二つの主な違いは算定対象活動、またその地理的範囲の設定、排出係数の利用などです。まず算定対象活動の違いには直接排出に関わる活動が挙げられます。SHK制度では他社供給用に自社で発電した電力に伴うGHG排出や社用車、公用車の移動によるGHG排出は直接排出であっても算定対象外となります。それに対しGHGプロトコルでは他社供給用に自社で発電した電力と直接排出はScope1(温室効果ガスの直接排出)として算定することが義務付けられています。

次に地理的範囲の設定では、SHK制度では環境省により日本を対象として作られたものであるため地理的範囲を国内に限定しています。それに対しGHGプロトコルでは国際的な水準であるため地理的限定をしていません。

また排出係数の利用においてはSHK制度では活動ごとに具体的な排出係数が決まっているのに対し、GHGプロトコルでは活動ごとに具体的な排出係数は決まっていません。またその他にもSHK制度では算定式まで明確に決められているのに対し、GHGプロトコルでは活動量×排出係数、物質係数または直接測定等の算定方法が認められているといった違いがあります。

このように二つの制度には違いがみられるため、GXリーグでGHGプロトコルの値を用いたい際は複数の対応を求められます。

GHGプロトコルとSHK法における証書の取り扱い:再エネ電力証書の種類とその使用方法を解説

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GHGプロトコルで算定した企業の対応策

SHK制度による算定に対する対応策

GXリーグでは温対法に基づくSHK制度により定められた算定方法を基礎としています。しかし世界的に見るとTCFDなどGHGプロトコルに定められる算定方法を用いて算定することが多いです。そのためGHGプロトコルでの算定の次の二点を修正することでGHGプロトコルによる排出量を代用することが可能です。

1. 間接排出における調整後排出係数の使用

GHGプロトコル算定数値においてSHK制度以外の排出係数の使用をしている場合は、SHK制度で定める排出係数への変換が必要です。前述のように、SHK制度とGHGプロトコルでは用いている排出係数が異なるため、よりSHK制度に準じた排出係数の使用を求められます。

2. 算定対象活動

前の項で述べたようにSHK制度とGHGプロトコルでは地理的対象範囲や直接排出に関する設定が異なります。そのためGHGプロトコルにおいてSHK制度に定めがない活動を伴う排出量の算定をしている場合は排出量に含める事を可能としています。それらの活動を含める場合、その活動内容と理由を明示し、使用する排出係数及びその排出係数の採用理由を明示する必要があります。

3. 注意点

図1で表されているようにSHK制度では他者供給用の電力に伴う排出量を控除の対象としていますが、GXリーグの規程ではこれを直接排出に含むと述べています。ここはSHK制度ではなくGHGプロトコルに則っているところなので注意が必要です。

まとめ

GXリーグの基盤となるSHK制度とTCFD等の基盤となっているGHGプロトコルとでは対象としている範囲が異なり、またその算定方法にもいくつか違いがみられます。そのため既にGHGプロトコルで排出量を求めている企業はGXリーグが定めた対応方法を行う必要があります。

#GXリーグ #SHK制度 #GHGプロトコル

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参考文献

[1]SHK制度による算定方法と他の算定方法の違い (環境省)
[2]GXリーグ基本構想 (経済産業省)
[3]GXリーグ算定・モニタリング・報告ガイドライン(GXリーグ)
[4]GXリーグの取組について(経済産業省)

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リクロマ株式会社

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カーボンニュートラルやネットゼロ、TCFDと言った気候変動に関わる課題を抱える法人に対し、「社内勉強会」「コンサルティング」「気候変動の実働面のオペレーション支援/代行」を提供しています。

Author

  • 西家 光一

    2021年9月入社。国際経営学修士。大学在学中より国際人権NGOにて「ビジネスと人権」や「気候変動と人権」領域の活動を経験。卒業後はインフラ系研究財団へ客員研究員として参画し、気候変動適応策に関する研究へ従事する。企業と気候変動問題の関わりに強い関心を寄せ、リクロマ株式会社へ参画。