Last Updated on 2024年9月3日 by Moe Yamazaki

【気候変動関連用語がまるわかり!用語集はこちら

近年、ESG要素は企業評価の重要な指標となり、投資家やステークホルダーの関心が高まっています。

本記事では、ESG評価機関の種類と算定基準について解説します。

企業の持続可能性や社会的責任を評価するため、どのような基準が設けられているのかを理解し、より良い投資判断や企業経営に役立てていただければと思います。

関連記事はこちら!
【ESG格付け】徹底解説

ESG評価機関とは

ESG評価機関は、企業の環境(Environmental)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に関連するパフォーマンスを評価し、格付けを提供する専門機関です。

これらの機関は、投資家やその他の利害関係者が企業のESGリスクと機会を理解し、それに基づいて意思決定を行うための重要な情報源となります。

出典)日本経済新聞

ESG評価機関の目的

ESG評価機関の主な目的は、企業の環境、社会、ガバナンスに関する取り組みを評価し、その結果を投資家や利害関係者に提供することです。

これにより、投資家は企業の持続可能性に関するリスクと機会をより正確に把握し、より良い投資判断を行うことができます。

具体的には、ESG評価機関は以下のような役割を果たします。

環境評価

企業の環境への影響や環境保護に関する取り組みを評価します。

これには、温室効果ガスの排出量、エネルギー効率、水資源の管理、生物多様性保護などが含まれます。

社会評価

企業の社会的責任や労働慣行、コミュニティへの影響などを評価します。

これには、労働条件の改善、社員の健康と安全、地域社会への貢献、人権尊重などが含まれます。

ガバナンス評価

企業の経営の透明性や取締役会の構成、内部統制システムなどを評価します。

これには、経営の独立性、取締役会の多様性、腐敗防止対策、企業倫理などが含まれます。

ESG情報

ESG情報は、企業の財務情報とは異なり、数値化が難しい非財務情報です。

このため、企業が投資家などのステークホルダーに向けてESG情報を開示する際の基準や媒体は統一されていません。

これを踏まえ、ESG評価機関は独自に構築したスコアリングモデルに基づいて企業のESG情報を集計・分析し、その結果をESGスコアとして提供します。

ESG評価機関のスコアリングモデルは、各機関の専門知識と評価基準に基づいて構築されています。

これにより、各機関の評価方法やスコアは異なることがありますが、共通して以下の要素が考慮されます。

データ収集

企業の公開情報や第三者機関のデータベース、企業へのアンケート調査などを通じて、必要なデータを収集します。

データ分析

収集したデータを基に、各企業のESGパフォーマンスを評価します。

これには、定量的な指標や定性的な評価が含まれます。

スコアリング

分析結果を基に、各企業のESGスコアを算出します。

このスコアは、企業の持続可能性に関する総合的な評価を示します。

参考文献:RICOH「ESGレーティングとは?評価項目や活用事例をわかりやすく解説

関連記事はこちら!
【ESG格付け】徹底解説

ESG評価機関の種類

ESG評価機関には、さまざまな種類があります。

それぞれの機関が独自の評価基準とスコアリングモデルを持ち、異なる側面から企業のESGパフォーマンスを評価しています。

代表的なESG評価機関は、以下の通りです。

S&P Global

S&P Globalは、世界的に有名な金融情報サービス企業であり、ESG評価の分野でも高い評価を受けています。

S&P Globalは、企業の環境、社会、ガバナンスの取り組みを総合的に評価し、独自のスコアを提供しています。

この評価は、企業の持続可能性を客観的に評価するために用いられ、投資家にとって重要な指標です。

S&P GlobalのESG評価は、広範なデータベースに基づいており、企業の公開情報、持続可能性レポート、第三者のデータなどを総合的に分析します。

これにより、企業の持続可能性に関する包括的な評価が可能となり、投資家に対して信頼性の高い情報を提供しています。

bloomberg

bloombergは、金融情報やニュースの提供で知られる企業ですが、ESG評価の分野でも重要な役割を果たしています。

BloombergのESG評価は、企業の環境、社会、ガバナンスのパフォーマンスを評価し、投資家に対して詳細なデータと分析を提供する企業です。

企業の持続可能性に関するデータを収集・分析し、投資家に対して透明性のある評価を提供しています。

特に、BloombergのESGデータサービスは、投資家が企業の持続可能性パフォーマンスを比較・分析するための強力なツールとして利用されています。

arabesque

Arabesqueは、データ分析とテクノロジーを駆使したESG評価を行う企業で、持続可能な投資を推進しています。

Arabesqueの評価は、独自のアルゴリズムと機械学習を活用して企業のESGパフォーマンスを評価し、投資家に対して高精度のデータを提供しています。

ArabesqueのESG評価は、環境、社会、ガバナンスの各側面を詳細に分析し、企業の持続可能性を総合的に評価しています。

この評価は、投資家がESG投資の意思決定を行う際に役立つ情報を提供し、持続可能な投資を促進するための重要なツールです。

格付投資情報センター(R&I)

格付投資情報センター(R&I)は、日本のESG評価機関として知られており、国内外の企業のESGパフォーマンスを評価しています。

R&IのESG評価は、企業の持続可能性に関する広範なデータを収集・分析し、投資家に対して信頼性の高い評価を提供しています。

R&Iの評価は、環境、社会、ガバナンスの各要素を総合的に評価し、企業の持続可能性を詳細に分析します。

特に、日本国内の企業に対する評価に強みを持ち、国内外の投資家に対して有用な情報を提供しています。

MSCI ESG Research

MSCI ESG Researchは、環境、社会、ガバナンスに関するリサーチと格付けを提供する大手機関です。
MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)は、1969年に創立された、アメリカのニューヨークを拠点とする金融サービス企業です。

MSCIのESG評価は、企業の長期的なリスクと機会を評価し、投資家が持続可能な投資を行うための情報を提供します。

MSCIは、各企業のESGパフォーマンスを総合的に評価し、その結果を投資家に提供しています。

Sustainalytics

Home - Sustainalytics

Sustainalyticsは、1992年にオランダのアムステルダムで設立された企業で、主に社会的責任と環境リスクの分析に特化した評価機関です。

企業のESGリスクを評価し、そのリスクを管理する能力を評価します。

Sustainalyticsのレポートは、投資家が企業のESGリスクを理解し、投資判断を行う際の参考となります。

FTSE Russell

FTSE Russellは、1995年にイギリスのロンドンで設立された金融サービスを提供する企業で、金融市場におけるESG指数を提供し、企業の持続可能性を評価します。

FTSE RussellのESG指数は、企業のESGパフォーマンスを評価するための基準となり、多くの投資家が参考にしています。

これにより、投資家は企業の持続可能性を評価し、持続可能な投資戦略の構築が可能です。

ISS ESG

ISS ESG | LinkedIn

ISS ESGは、投票助言サービスやガバナンス評価を行う大手機関です。

ISS ESGは、企業のガバナンス構造や環境・社会的責任に関するリスクを評価し、投資家が企業のガバナンスの質を評価するための情報を提供しています。

RobecoSAM 

RobecoSAMは、、スイスのチューリッヒに拠点を置く、環境、社会、ガバナンスに特化した調査と格付けを行う評価機関です。

RobecoSAMの評価は、企業の持続可能性を総合的に評価し、企業のESGパフォーマンスを明確にするためのデータを提供しています。

参考文献:日本取引所グループ「ESG評価機関等の紹介

ESG算定基準

ESG評価には、総合型(包括型)とテーマ型の2つの主要なアプローチがあります。

これらのアプローチは、企業のESGパフォーマンスを異なる視点から評価します。

総合型(包括型)ESG評価

総合型ESG評価は、環境、社会、ガバナンスの全ての要素を総合的に評価します。

このアプローチは特定のテーマに偏ることなく企業全体のESGパフォーマンスを包括的に評価するため、多くの投資家やステークホルダーにとって有用です。

総合型ESG評価の利点は、企業の全体的な持続可能性を評価できる点です。

これにより、企業の強みや弱みを総合的に把握することができ、長期的な投資判断を行う際に役立ちます。

テーマ型ESG評価

テーマ型ESG評価は、特定のESG課題に焦点を当てて評価を行います。

このアプローチは、特定の分野における企業の取り組みを詳しく評価するのに最適です。

例えば、気候変動や人権問題など、特定のテーマに特化した評価を行うことで、企業の特定分野におけるパフォーマンスを明確にすることができます。

テーマ型ESG評価の利点は、特定の課題に対する企業の取り組みを詳細に評価できる点です。

これにより、特定の分野に関心を持つ投資家やステークホルダーにとって、より具体的な情報を提供することができます。

参考文献:Sustainable Biz「【ESGスコアとは?】評価機関5社、認証・算出基準を事例で解説

まとめ

企業の脱炭素経営を担当するサステナビリティ担当者にとって、ESG評価機関についての理解は極めて重要です。

ESG評価機関は、企業の環境(Environmental)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)のパフォーマンスを評価し、投資家に対して企業のリスクと機会を示しています。

MSCI ESG Research、Sustainalytics、FTSE Russell、ISS ESG、RobecoSAMなどの主要機関は、それぞれ独自の評価基準とスコアリングモデルを持ち、企業のESGパフォーマンスを多角的に分析します。

さらに、ESG評価には総合型とテーマ型の2つのアプローチがあり、企業全体の持続可能性や特定の課題に対する取り組みを評価するために使用されています。

ESG評価機関の理解は、企業の持続可能な成長を支援し、より良い投資判断を促すために不可欠ですので、企業の脱炭素経営を担当するサステナビリティ担当者はしっかりと理解しておきましょう。

次の記事はこちら!
【ESG格付け】徹底解説

参考文献

[1]RICOH「ESGレーティングとは?評価項目や活用事例をわかりやすく解説
[2]JPX「ESG評価機関等の紹介
[3]Sustainable Biz「【ESGスコアとは?】評価機関5社、認証・算出基準を事例で解説

温室効果ガス排出量算定の具体的プロセスを知る!

温室効果ガス排出量の「算定」について、一通り理解できるホワイトペーパーです。
「どんなデータ/計算式」を用い、「どんなプロセス」で算定するのかを理解できます。

リクロマの支援について

弊社はISSB(TCFD)開示、Scope1,2,3算定・削減、CDP回答、CFP算定、研修事業等を行っています。
お客様に合わせた柔軟性の高いご支援形態で、直近2年間の総合満足度は94%以上となっております。
貴社ロードマップ作成からスポット対応まで、次年度内製化へ向けたサービス設計を駆使し、幅広くご提案差し上げております。
課題に合わせた情報提供、サービス内容のご説明やお見積り依頼も随時受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。
お問合せフォーム

メールマガジン登録

担当者様が押さえるべき最新動向が分かるニュース記事や、
深く理解しておきたいトピックを解説するコラム記事を定期的にお届けします。

Author

  • 2021年9月入社。国際経営学修士。大学在学中より国際人権NGOにて「ビジネスと人権」や「気候変動と人権」領域の活動を経験。卒業後はインフラ系研究財団へ客員研究員として参画し、気候変動適応策に関する研究へ従事する。企業と気候変動問題の関わりに強い関心を寄せ、リクロマ株式会社へ参画。

    View all posts