Last Updated on 2024年11月20日 by AmakoNatsuto

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Scope3カテゴリ11『販売した製品の使用』は、企業が販売した製品が使用される際に発生する温室効果ガス(GHG)の排出量を対象としています。

この記事では、スコープ3カテゴリ11の算定方法や、サプライヤーエンゲージメント評価の概要、そして企業のスコープ3排出量削減事例について解説します。

<サマリー>
• スコープ3カテゴリ11は、販売した製品の使用による排出量を対象とする
• 企業は製品の使用中に発生する温室効果ガスの排出を測定し報告する必要がある
• エネルギー消費製品やGHG含有製品が特に対象となる
• 持続可能な製品設計や効率性の向上が、排出削減に重要な役割を果たす
• サプライチェーン全体での排出削減戦略が求められる

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スコープ3カテゴリ11とは

スコープ3は、Scope2に含まれないすべての間接排出(他社が排出源となるもの)を対象とし、発電や熱生成時の排出を除いた全15カテゴリの活動に細分化されている排出量の範囲を指します。
なかでもスコープ3カテゴリ11は、「販売された製品の使用」として定義された項目です。

対象 

スコープ3カテゴリ11では、企業が販売した製品やサービスの使用時に発生する温室効果ガス(GHG)排出量が対象となります。このカテゴリでは、製品の使用フェーズで直接的・間接的に排出されるGHGが含まれます。

フェーズ製品例排出の特徴
直接使用フェーズ自動車、トラック燃料を直接消費し、排出されるCO₂が対象
冷蔵庫、エアコン電力を消費し、その電力使用に伴う排出
発電機燃料を燃焼させエネルギー供給に伴う排出
間接使用フェーズ工業用機械稼働に伴い、設備やプロセスで消費されるエネルギーが排出される
建設資材(セメント等)建設資材はその使用自体が直接排出を伴わないが、資材使用のプロセスがエネルギーを大量に消費することによる排出

算定範囲 販売した製品・サービスの使用に伴う排出量

スコープ3カテゴリ11の算定範囲は、企業が販売した製品やサービスの使用に伴う排出量を対象としています。

排出量の算定において重要な考え方は、「排出量 = 報告対象年の販売台数 × 生涯排出量」という式です。この式では、製品の販売台数と、その製品が使用される期間中にどれだけの温室効果ガス(GHG)が排出されるかを基に計算します。

例えば、自動車のようなエネルギー消費製品では、生涯にわたる燃料消費が排出量に直結します。企業はこの算定式を活用して、販売した製品の環境負荷を長期的に評価し、持続可能な製品開発の基礎とします。

算定方法

スコープ3カテゴリ11における排出量の算定方法は、製品の使用フェーズに焦点を当てています。次に、直接使用フェーズ排出における3つの代表的な算定方法を紹介します。

1.エネルギー使用製品

製品が使用時に電力や燃料を消費する場合、使用量に応じた排出量を算定します。例えば、自動車や家電製品が該当します。

算定式
排出量 = 活動量 × 排出原単位


車1台が年間500リットルのガソリンを消費し、ガソリンの排出原単位が2.3トンCO₂/1,000リットルの場合、排出量は次の通りです。
500リットル × 2.3トンCO₂/1,000リットル = 1.15トンCO₂


2.燃料・フィードストック

燃料として使用される製品やフィードストック(化学工業で使用される原料)から生じる排出量を算定します。

算定式
排出量 = 燃料消費量 × 燃料ごとの排出原単位


1トンの天然ガスを使用した場合、排出原単位が2.75トンCO₂/トン天然ガスとすると、排出量は次の通りです。
1トン × 2.75トンCO₂/トン = 2.75トンCO₂


3.GHG含有かつGHG排出製品

GHGを含有する製品(例えば冷媒を含むエアコンや冷蔵庫)や使用時にGHGを直接排出する製品の場合、使用量に基づき排出量を算定します。

算定式
排出量 = 使用量 × GHG排出原単位


エアコン1台が年間50kgの冷媒を使用し、その冷媒の排出原単位が1.8トンCO₂/トン冷媒であれば、排出量は次の通りです。
50kg × 1.8トンCO₂/トン = 0.09トンCO₂

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サプライヤーエンゲージメント評価の概要とスコープ3の関係

ここからはサプライヤーエンゲージメント評価の概要と、スコープ3の関連について説明します。

サプライヤーエンゲージメント評価とは

サプライヤーエンゲージメント評価は、CDP(Carbon Disclosure Project)が提供する制度であり、企業がサプライヤーと気候変動対策にどのように協力しているかを評価します。

具体的には、サプライヤーとの協力体制を通じて、サプライチェーン全体での排出削減や環境負荷低減を目指す取り組みが評価のポイントです。特にスコープ3排出量を削減するための協力が重要視されます。

サプライヤーエンゲージメント評価におけるスコープ3排出量算定のウェイト

CDPの評価において、スコープ3排出量の管理と削減は、全体評価の20%を占めています。

スコアリングカテゴリサプライヤーエンゲージメント評価におけるウェイト
ガバナンス20%
目標15%
スコープ3排出量算定20%
サプライヤーとエンゲージメント35%
CDP気候変動質問書全体のスコア10%
(※)CDP2023 サプライヤーエンゲージメント評価 イントロダクショを元に作成

スコープ3カテゴリ11では、企業が販売した製品の使用過程において排出される温室効果ガス(GHG)の削減が中心課題です。特に、エネルギー消費型の製品(例えば家電製品や自動車)では、使用中のGHG排出量が全ライフサイクルにおける大部分を占めることが多く、製品の効率性向上がGHG削減の鍵となります。

サプライヤーとの連携を通じ、エネルギー効率の高い製品設計や、製品のライフサイクル全体での排出量削減を推進することが求められます。サプライヤーエンゲージメント評価では、こうした具体的な排出削減努力がどの程度実行されているかが評価の焦点となります。

サプライヤーエンゲージメントにおける排出削減の企業事例

最後に、サプライヤーエンゲージメントにおける排出削減の企業事例として、セイコーエプロン株式会社を紹介します。
環境省モデル企業事例集を元に作成

会社事業概要

セイコーエプソン株式会社は、プリンターやスキャナーなどの電子機器を製造・販売する企業であり、グローバルに展開しています。

同社は、気候変動への対応としてサプライチェーン全体での温室効果ガス(GHG)排出削減に注力しており、サプライヤーとの密接に協力することで持続可能な事業運営を推進しています。

取り組み

セイコーエプソン株式会社は、「資源有効利用率の向上」を主要な目標の一つに掲げており、サプライチェーン全体、特に上流から下流に至るまでのプロセスにおいて、主に以下の取り組みを進めています。

①2025年までにスコープ3カテゴリ1および11を44%削減
セイコーエプソンは、2025年までにスコープ3のカテゴリ1(購入した製品やサービスの製造過程における排出量)およびカテゴリ11(販売した製品の使用による排出量)を44%削減するという目標を掲げています。

特にカテゴリ11では、販売されたプリンターやスキャナーの使用時に発生するエネルギー消費量の削減に取り組んでおり、製品の効率化や環境負荷の少ない設計が進められています。

②4つの最小化

セイコーエプソンは、持続可能な運営を実現するため、サプライヤーとの協力を通じて次の4つの最小化に取り組んでいます。

資源有効利用強化のイメージと4つの最小化
環境省モデル企業事例集より

•資源使用の最小化
サプライヤーと連携し、製品に使用する資源を効率的に活用。製品の製造プロセスにおいて、不要な資源消費を抑える

•エネルギー使用の最小化
製品の製造および使用段階でのエネルギー消費を削減。特にカテゴリ11に関連する製品使用時のエネルギー効率向上に重点を置く

•廃棄物の最小化
サプライヤーと協力し、製品の廃棄物を減らすため、リサイクル可能な材料の使用や製品のリサイクルプロセスの最適化を進める

•温室効果ガス排出の最小化
スコープ3全体での排出削減を目指し、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量削減を推進。特に、製品の使用時に発生する排出量を削減するための技術開発に取り組む

まとめ

スコープ3排出削減は、企業が環境への取り組みを強化するために避けては通れない道です。データの収集や算定は難しく、企業がサプライチェーン全体を管理することは容易ではありません。

リクロマでは、ISSB(TCFD)開示、Scope1,2,3の算定・削減、CDP回答、CFP算定、研修事業など幅広いサポートを提供しています。これまでのサービスにおける総合満足度は94%以上を誇り、貴社のニーズに合わせた柔軟な支援を行っています。お気軽にお問い合わせください。

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参考文献

環境省 スコープ3排出量の算定技術ガイダンスhttps://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/(J)-calculation_guidance.pdf
CDP2023 サプライヤーエンゲージメント評価 イントロダクション
https://cdn.cdp.net/cdp-production/comfy/cms/files/files/000/008/101/original/SER_Introduction_JPN_2023.pdf
環境省 サプライチェーン排出量算定に関する説明会 Scope3~算定編https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/dms_trends/study_meeting_2020.pdf
環境省モデル企業事例集
https://www.env.go.jp/content/000118181.pdf

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Author

  • 2021年9月入社。国際経営学修士。大学在学中より国際人権NGOにて「ビジネスと人権」や「気候変動と人権」領域の活動を経験。卒業後はインフラ系研究財団へ客員研究員として参画し、気候変動適応策に関する研究へ従事する。企業と気候変動問題の関わりに強い関心を寄せ、リクロマ株式会社へ参画。

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