Last Updated on 2024年12月3日 by AmakoNatsuto
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スコープ3カテゴリ12「販売した製品の廃棄」は、企業が販売した製品が廃棄される際に発生する温室効果ガス(GHG)排出量を対象としています。製品のライフサイクルの最終段階での排出削減は、持続可能なサプライチェーンの構築をするために重要な要素です。
本記事では、カテゴリ12の詳細な解説や、排出量削減に向けた企業の実践事例について紹介します。
<サマリー>
• スコープ3カテゴリ12は、販売後の製品廃棄時に生じる排出量が対象
• 製品廃棄には、無償提供製品や包装材も算定範囲に含まれる
• 廃棄方法(焼却、埋め立て、リサイクルなど)により排出量が変動
• サプライヤーとの連携で、回収・リサイクルを推進する企業も
• 廃棄段階の排出削減には、ライフサイクル全体を考慮した戦略が重要
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スコープ3カテゴリ12の詳細解説
スコープ3は、スコープ2に含まれないすべての間接排出、すなわち他社が排出源となる排出量を対象とし、発電や熱生成時の排出を除いた全15カテゴリに分かれています。
そのうちカテゴリ12「販売した製品の廃棄」は、製品が使用済みとなり廃棄処理される際に発生する温室効果ガス(GHG)排出量に焦点を当てます。企業が販売する製品のライフサイクルにおける最終段階において生じる排出量であり、特にリサイクルや適切な廃棄処理が求められる分野です。
対象
スコープ3カテゴリ12の対象には、製品そのものだけでなく、製品の包装材も含まれ、無償提供した製品についても同様に算定の範囲に含まれます。
なお、製品自体が消費される食品や医薬品などは通常の算定対象から外れますが、これらに関連する食品ロスや化粧品業界における一部の廃棄物の取り扱いなどは、企業により対象内として考慮される場合があります。
算定範囲
カテゴリ12の算定範囲には、使用後に廃棄される製品とその処理段階で発生する排出量が含まれます。
具体的には、製品が廃棄処理(焼却、埋め立て、リサイクルなど)される際の処理方法ごとの排出量が対象です。排出量を正確に把握するためには、廃棄物の種類や処理方法別に適切な排出原単位を適用し、製品本体および包装材のデータを含めた算定が必要となります。
算定方法
カテゴリ12の排出量算定方法はカテゴリ5と同様で、活動量と排出原単位を掛け合わせる手法が主に用いられます。
具体的には、廃棄される製品やその包装材の重量に対して、廃棄方法(焼却、埋め立て、リサイクルなど)に応じた排出原単位を適用して算定します。
例として挙げられる方法は、製品の廃棄が想定される最終処分地や処理方式に基づいた計算方法です。廃棄物の処理手法に応じた排出係数(たとえば焼却によるCO₂排出量など)を利用し、活動量(廃棄物の重量)を掛け合わせて排出量を算出することが求められます。
サプライヤーエンゲージメント評価の概要とスコープ3の関係
サプライヤーエンゲージメント評価は、企業がサステナブルな目標に向けてどのようにサプライヤーと連携し、排出削減に取り組んでいるかを評価するための制度です。
次に、サプライヤーエンゲージメント評価とスコープ3の関係性について解説していきます。
サプライヤーエンゲージメント評価とは
サプライヤーエンゲージメント評価は、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)が提供する評価制度で、企業がサプライヤーとどのように協力して排出削減を進めているかを測る制度です。
この評価制度は、サプライヤーを巻き込んだ気候変動対策がどの程度実施されているか、さらに企業全体としてのサステナビリティ目標に対する貢献度を分析する役割を果たしています。
カテゴリ12「販売した製品の廃棄」においては、消費者使用後の製品廃棄に伴う排出削減が求められるため、製品の終端処理段階での環境負荷を最小限に抑えるためのサプライチェーン全体での連携が重要になります。
具体的には、製品の再利用可能性やリサイクルの手軽さを考慮した設計、環境負荷の少ない原材料の採用、回収ルートの最適化などが含まれます。これにより、製品廃棄に伴う排出量を削減し、製品ライフサイクル全体で環境負荷の低減に取り組むことができるでしょう。
サプライヤーエンゲージメント評価におけるスコープ3排出量算定のウェイト
CDPのサプライヤーエンゲージメント評価では、企業のスコープ3排出量管理が全体スコアの約20%を占めています。
スコアリングカテゴリ | サプライヤーエンゲージメント評価におけるウェイト |
ガバナンス | 20% |
目標 | 15% |
スコープ3排出量算定 | 20% |
サプライヤーとエンゲージメント | 35% |
CDP気候変動質問書全体のスコア | 10% |
スコープ3の排出量算定では、カテゴリ12「販売した製品の廃棄」のように製品ライフサイクル全体での削減が求められるため、サプライヤーと連携し効果的な排出削減戦略を立案・実施することが評価のポイントとなります。
このようにサプライチェーン全体の管理が行き届いているかどうかが、企業の持続可能性に直結し、CDP評価でも高く評価される要素です。
スコープ3排出削減の企業事例
最後に、物流センターでのエネルギー使用量削減を通じて、スコープ3排出削減に取り組んでいるユニチャーム株式会社の事例を紹介します。
※環境省モデル企業事例集を元に作成
会社事業概要
ユニチャーム株式会社は、紙おむつや生理用品などの製品を製造・販売しています。
これらの製品は人々にとって欠かせない生活必需品である一方、使用後の廃棄に伴う温室効果ガス(GHG)排出が課題となっています。ユニチャームでは、スコープ3カテゴリ12(販売した製品の廃棄)が全体排出量の約36%を占めており、この分野での排出削減が企業の環境目標達成に向けて重要なテーマとなっていました。
そのため、ユニチャームは廃棄段階における環境負荷を軽減すべく、使用済み製品のリサイクルに注力し、リサイクルプロセスそのものの環境負荷低減にも積極的に取り組んでいます。
取り組み① 使用済み紙おむつの分別回収とリサイクルシステムの構築
ユニチャームは、使用済み紙おむつの再資源化を進めるために、鹿児島県志布志市と協定を結び、地域社会と連携して紙おむつの分別回収を実施しています。
この取り組みでは、家庭や医療施設からの使用済み紙おむつを回収し、専用のリサイクルセンターで再資源化するプロセスを確立しました。分別回収した紙おむつは、紙製品の原料やエネルギー資源として再利用され、廃棄物の削減と資源の有効活用に貢献しています。
取り組み② 再資源化プロセスにおける技術開発とエネルギー効率化
回収された紙おむつをリサイクル資源として処理する際、ユニチャームは独自の技術を用いて再資源化を進めています。
例えば、紙おむつの再利用可能な素材を低炭素燃料(RPF)として加工する技術や、再生パルプとしての活用を目指した技術を開発し、リサイクルプロセスでの環境負荷を軽減する工夫を行っています。また、このプロセスではエネルギー効率を向上させることで、温室効果ガス排出量の削減を図り、持続可能な循環型社会の実現に向けた取り組みを進めています。
こうした取り組みによって、ユニチャームはリサイクルの過程で生じる温室効果ガス排出の削減を実現しています。
まとめ
スコープ3カテゴリ12は、製品廃棄に伴う温室効果ガス排出を削減するために、企業がサプライヤーとともに取り組むべき重要な課題です。
特に、廃棄処理方法や再利用可能な素材の採用を推進することが排出量削減に有効ですが、適切なデータの管理と計画的な削減対策には相当のリソースが必要です。
リクロマでは、ISSB(TCFD)開示、Scope1,2,3の算定など、幅広いサポートを提供しています。詳細な情報やご相談については、ぜひお気軽にお問い合わせください。
参考文献
環境省 スコープ3排出量の算定技術ガイダンス
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/(J)-calculation_guidance.pdf
CDP2023 サプライヤーエンゲージメント評価 イントロダクション
https://cdn.cdp.net/cdp-production/comfy/cms/files/files/000/008/101/original/SER_Introduction_JPN_2023.pdf
環境省 サプライチェーン排出量算定に関する説明会 Scope3~算定編~
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/dms_trends/study_meeting_2020.pdf
環境省モデル企業事例集
https://www.env.go.jp/content/000118181.pdf
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