Last Updated on 2024年12月3日 by Moe Yamazaki

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スコープ3カテゴリ8「上流のリース資産」とカテゴリ13「下流のリース資産」は、企業がリース契約を通じて利用または提供する資産の運用中に発生する温室効果ガス排出量を対象としています。リース資産の管理は、企業の脱炭素戦略において欠かせない要素です。

この記事では、カテゴリ8とカテゴリ13の詳細や算定方法、そして企業の成功事例を詳しく解説します。

サマリー
•スコープ3カテゴリ8は、企業が借用するリース資産の運用中に発生するエネルギー消費と燃料使用が対象
•カテゴリ13は、企業がリース提供する資産の利用中に発生する排出量を計上
•リース資産の排出削減は、サプライヤーエンゲージメント評価にも影響する重要項目

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スコープ3カテゴリ8とカテゴリ13の詳細解説

スコープ3は、スコープ2に含まれないすべての間接排出を対象とし、発電や熱生成時の排出を除いた全15カテゴリに分かれています。

その中でカテゴリ8「上流のリース資産」とカテゴリ13「下流のリース資産」は、リース資産の使用や運用に伴う排出量を算定する重要なカテゴリです。

まず初めに、それぞれの対象範囲、算定範囲、そして算定方法について詳しく解説します。

対象

カテゴリ8「上流のリース資産」は、企業が他社から借用して使用している資産が稼働する際に発生する排出量を対象としています。

このカテゴリには、リース契約に基づく車両、、製造設備などが含まれ、これらの使用に伴うエネルギー消費や燃料使用が該当します。具体的には、借用した車両の燃料消費量や、リースした設備の電力使用量などが対象となります。

一方で、これらの排出量はスコープ1,2として算出されるケースが多いです。

カテゴリ13「下流のリース資産」は、企業が所有する資産を他社にリースしている場合、その使用時に発生する排出量が対象です。

リース車両や設備などの稼働中に消費されるエネルギーや燃料に関連する排出量を、貸し手側がスコープ3の下流として計上します。リース資産のライフサイクル全体での環境負荷を把握し、リース品の低炭素化などを通じて削減策を講じることが重要です。

算定範囲

カテゴリ8では、企業が借用しているリース資産の稼働中に発生する排出量が算定範囲です。これには、車両の燃料消費や設備の電力使用など、資産が運用される際に生じるエネルギー関連の排出量が含まれます。

これらの排出量は、厳密にはカテゴリ8に該当しますが、エネルギー使用の区別が困難であるため、多くの企業でスコープ1、スコープ2に含まれています。

一方カテゴリ13では、企業が所有する資産を他社にリースしている場合に、その稼働時に発生する排出量が算定範囲となるため、たとえばリース先が使用する車両の燃料使用量や、貸し出した設備の電力消費量が該当します。この場合、貸し手側がリース先の稼働データや貸し出した設備のエネルギー効率からの推計などを基に排出量を計算し、スコープ3として報告します。

貸し手側と借り手側のデータ連携等を行うことで、より正確な排出量の算出が可能となります。です。

算定方法

カテゴリ8(上流のリース資産)およびカテゴリ13(下流のリース資産)の排出量算定は、リース資産のエネルギー消費に基づき行われます。以下に、現実的とされる算定方法の一例を紹介します。

<エネルギー消費量を基にした算定方法>

1.データ収集
リース資産の使用中に発生するエネルギー消費データを収集します。対象となるのは、リース車両の燃料使用量やリース設備の電力消費量などです。このような活動量データが不明な場合、推計や仮定等を用いることもあります。

2.排出係数を用いた計算
収集したエネルギー消費データに、適切な排出係数を掛け合わせます。たとえば、電力使用には地域別の電力排出係数を、燃料使用には燃料種類ごとの排出係数を適用します。

<計算式>
\text{排出量} = \text{エネルギー消費量} \times \text{排出係数}

例えば、リース車両が年間500リットルの燃料を消費し、燃料の排出係数が2.5kgCO₂/Lの場合、排出量は1,250kgCO₂となります。

サプライヤーエンゲージメント評価の概要とスコープ3の関係

サプライヤーエンゲージメント評価は、企業の気候変動対策の実効性を測るうえで欠かせない制度です。

この評価は、企業がサプライヤーと連携してどのように排出削減に取り組み、持続可能なサプライチェーンを構築しているかを多角的に分析するものです。特にスコープ3排出量算定との関連性は、企業全体の脱炭素化戦略において重要なポイントとなります。

サプライヤーエンゲージメント評価とは

サプライヤーエンゲージメント評価は、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)が提供する制度で、企業のサプライヤーと連携した排出削減の取り組みを評価します。

この制度は、気候変動に対する企業の対応力を測ると同時に、サプライチェーン全体での環境改善の進捗を促進する役割を担っています。

たとえば、リース元とのデータ共有や排出削減施策の協議は、信頼性の高い排出量算定及び削減に直結します。

 サプライヤーエンゲージメント評価におけるスコープ3排出量算定のウェイト

CDPのサプライヤーエンゲージメント評価では、企業のスコープ3排出量管理が全体スコアの約20%を占めています。

スコアリングカテゴリサプライヤーエンゲージメント評価におけるウェイト
ガバナンス20%
目標15%
スコープ3排出量算定20%
サプライヤーとエンゲージメント35%
CDP気候変動質問書全体のスコア10%
(※)CDP2023 サプライヤーエンゲージメント評価 イントロダクションを元に作成

カテゴリ8では、リース元と借り手側とのデータ共有がポイントとなります。たとえば、リース資産のエネルギー消費に関するデータを定期的に取得し、リース元と協力して排出削減策を実施することが求められます。借り手企業は、借用する設備や機器などをより低炭素なものを選択することで、カテゴリ8の削減に繋げることができます。

一方で、カテゴリ13においては、リース元企業が自社のリース資産の稼働中に発生する排出量を正確に把握するために、リース先との連携を深めることがポイントとなります。たとえば、リース車両や設備の利用者に対し、エネルギー効率の高い設備や運用方法を推奨し、実際の排出削減を実現することが求められます。

貸し手企業が、リース契約を結ぶ顧客を「サプライヤー」とみなし、データ共有や排出削減策の導入を進めることは、カテゴリ13における評価を高めるだけでなく、サプライヤーエンゲージメント全体の強化にもつながります。

スコープ3排出削減の企業事例

最後に、サプライヤーとの協力を通じてスコープ3排出削減を推進している株式会社アシックスの取り組みを紹介します。

環境省モデル企業事例集より

会社事業概要

株式会社アシックスは、シューズやアパレルなどのスポーツ用品を製造・販売する日本を代表するスポーツメーカーです。同社では、サプライチェーン全体での排出削減が大きな課題となっており、特にスコープ3の排出量削減に重点を置いた取り組みを進めています。

多くのサプライヤーとの連携が必要な同社は、排出削減をビジネスプロセスの一部として組み込むことで、持続可能なサプライチェーンの実現を目指しています。

取り組み①

アシックスは、サプライヤーとの取引条件に排出削減の取り組みを組み込むことで、持続可能な調達基準を確立しました。この取り組みの目的は、サプライヤーが自社の製造過程やエネルギー使用における排出削減を加速するための具体的な目標を設定することです。

たとえば、製造工程でのエネルギー効率改善や、再生可能エネルギーの導入を奨励する方針を明示。これにより、サプライヤーが排出削減の実施計画を立てやすくなる環境を提供しています。

さらに、アシックスはサプライヤーとの長期的な関係構築を重視し、調達基準を段階的に導入する「移行期間」を設定しました。これにより、各サプライヤーが新たな基準に適応するために十分な時間を確保でき、実効性を高めています。

取り組み②

またアシックスは、調達基準を満たしたサプライヤーとの取引を優先する方針を導入し、持続可能なビジネス体制を整えています。この方針は、排出削減に取り組むサプライヤーを評価し、競争優位性を提供することで、脱炭素化へのインセンティブを生み出すことを目指しています。

具体的には、サプライヤーの進捗状況を定期的にモニタリングし、目標達成に向けたフィードバックを提供しています。

まとめ

スコープ3カテゴリ8「上流のリース資産」とカテゴリ13「下流のリース資産」は、リース資産のライフサイクル全体を通じて排出量を管理し、削減するための重要なカテゴリです。

それぞれ、借用中や提供中のリース資産から発生する排出量を正確に算定し、データに基づいた効果的な削減計画を実行する必要があります。

リクロマでは、Scope1,2,3における排出量算定や削減計画の立案をサポートしています。企業の脱炭素経営を推進するための最適な解決策をご提供しますので、お気軽にお問い合わせください。

 参考文献

環境省 スコープ3排出量の算定技術ガイダンス
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/(J)-calculation_guidance.pdf
CDP2023 サプライヤーエンゲージメント評価 イントロダクション
https://cdn.cdp.net/cdp-production/comfy/cms/files/files/000/008/101/original/SER_Introduction_JPN_2023.pdf
環境省 サプライチェーン排出量算定に関する説明会 Scope3~算定編~
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/dms_trends/study_meeting_2020.pdf
環境省モデル企業事例集
https://www.env.go.jp/content/000118181.pdf

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  • 広告代理店の新規事業部にて、シェアリングエコノミー事業の事業開発に従事。その後、事業譲渡を機にリクロマ(株)に参画し、プライム上場企業を中心に、情報開示、評価機関対応、新規事業創出の支援を実施。 CDP気候変動、CFP算定、カーボンクレジット領域を主に担当。

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