Last Updated on 2024年11月26日 by AmakoNatsuto

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スコープ3カテゴリ6「出張」とカテゴリ7「従業員通勤」は、企業活動に伴う移動に関連する温室効果ガス(GHG)排出を対象としています。

これらのカテゴリは、日常業務に密接に関わる排出源であり、効果的な削減施策を導入することで環境負荷を軽減しつつ、効率的な業務運営を実現することが可能です。

本記事では、カテゴリ6と7の詳細な解説、排出量算定の方法、さらに実践的な削減事例について紹介します。

<サマリー>
• スコープ3カテゴリ6は、出張に伴う移動に関連する排出を対象とする
• スコープ3カテゴリ7は、従業員の通勤に伴う移動に関連する排出を対象とする
• 持続可能な交通手段の導入が、カテゴリ6・7での排出削減の鍵
• 排出源の細分化と初期段階でのクイックウィン施策が削減成功のポイント
• バリューチェーン全体での排出管理が、サステナビリティ目標達成に貢献

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スコープ3カテゴリ6、カテゴリ7の詳細解説

スコープ3は、Scope2に含まれない間接排出、すなわち他社が排出源となる温室効果ガス(GHG)の排出を対象とし、発電や熱生成時の排出を除いた15カテゴリに分けられています。

今回はその中でも算定方法が類似しているカテゴリ6「出張」とカテゴリ7「従業員通勤」について、対象範囲と具体的な算定方法を解説します。

これらは多くの企業が関与する活動であり、データ収集の難易度が高いものの、削減ポテンシャルも大きい分野です。

算定範囲

カテゴリ6とカテゴリ7の対象範囲は、それぞれ異なる活動に関連しているものの、どちらも交通機関や移動に伴う排出が中心となる点で共通しています。

<カテゴリ6:出張に伴う排出>
カテゴリ6は、従業員が業務上必要な移動に関連する排出を対象としています。


• 公共交通機関:飛行機、鉄道、バスなどの利用
• 個人利用の車両:自家用車やレンタカー
• タクシー利用

一方、自社が所有する車両(社用車など)による排出は、スコープ1または2に該当するため、カテゴリ6には含まれません。また、宿泊施設でのエネルギー使用に伴う排出も任意で算定に含めることができます。

<カテゴリ7:従業員通勤に伴う排出>
カテゴリ7は、従業員の通勤に関連する移動に伴う排出を対象としています。

• 公共交通機関:鉄道やバスなど
• 自動車通勤:自家用車やカープール
• その他:自転車や徒歩は通常排出ゼロとして扱われます

また、テレワークなどの在宅勤務が普及している企業では、自宅勤務に伴う排出(たとえば家庭での電力消費)を任意で含めることも可能です。ただし、これには従業員の協力が必要で、データ収集方法の工夫が求められます。

算定方法

カテゴリ6とカテゴリ7の排出量算定には、いくつかのアプローチがありますが、今回は比較的実現可能な交通費支給額を基にした算定方法を紹介します。具体的には、各移動手段ごとに交通費支給額に排出原単位を掛け合わせることで排出量を算出します。

例:交通費支給額を基にした算定方法

1.交通費データの収集
企業が従業員に支給している交通費の総額を収集します。このデータは、給与システムや経費精算システムから取得できます。

2.排出係数の適用
交通費に基づき、移動手段ごとの排出係数を適用します。たとえば、鉄道利用には「1円あたりのCO₂排出量」を、飛行機利用には別途設定された係数を用います。

3.合計排出量の算定
各移動手段における排出量を合計し、カテゴリ全体の排出量を算定します。

この方法は、移動距離や使用燃料量などの詳細データが不足している場合でも適用可能であり、実務的に現実的な手法とされています。そのほかには、移動距離を基に算定する方法や、旅客数を基に算定、燃料消費量を基に算定する方法も挙げられます。

サプライヤーエンゲージメント評価の概要とスコープ3の関係

サプライヤーエンゲージメント評価は、企業がサプライチェーン全体でどのように環境負荷を削減し、持続可能なビジネスモデルを構築しているかを評価する重要な指標です。

次に、サプライヤーエンゲージメント評価がスコープ3排出量算定に与える影響について詳しく見ていきます。

サプライヤーエンゲージメント評価とは

サプライヤーエンゲージメント評価は、CDPが提供する制度で、企業がサプライヤーと協力し、排出削減に向けた取り組みをどの程度実行しているかを評価する仕組みです。

この制度では、企業のサステナビリティ目標達成に向けたサプライヤーとの連携状況が重点的に評価されます。

サプライヤーエンゲージメント評価におけるスコープ3排出量算定のウェイト

CDPのサプライヤーエンゲージメント評価では、企業のスコープ3排出量管理が全体スコアの約20%を占めています。

スコアリングカテゴリサプライヤーエンゲージメント評価におけるウェイト
ガバナンス20%
目標15%
スコープ3排出量算定20%
サプライヤーとエンゲージメント35%
CDP気候変動質問書全体のスコア10%
(※)CDP2023 サプライヤーエンゲージメント評価 イントロダクションを元に作成

カテゴリ6「出張」とカテゴリ7「従業員通勤」は、企業活動の一環として排出量が生じる領域であり、交通機関や宿泊施設などの選別が影響します。
たとえば、従業員の移動においてエネルギー効率の高い交通手段を推奨するまた、出張に伴う排出削減を目指す、等の施策においては、航空会社や宿泊施設の選択を通じて、環境負荷を低減する選択肢を選択する必要があります。

スコープ3排出削減の企業事例

最後に、リクルートホールディングスによるスコープ3カテゴリ6,7の排出削減に向けた取り組みを紹介します。

会社事業概要

リクルートホールディングスは、HRテクノロジー、マッチング&ソリューション、人材派遣の3つの戦略ビジネスユニット(SBU)で構成され、求人広告、人材紹介、販促メディア、ITソリューションなどを提供しています。
同社のGHG(温室効果ガス)排出量の約95%は、バリューチェーン全体(スコープ3)から発生しており、特に人材派遣事業におけるスタッフの通勤や移動が主要な排出源となっています。

取り組み

リクルートホールディングスはスタッフの通勤や移動に伴うGHG排出量の削減のために以下のような取り組みを行っています。
まず、派遣スタッフの通勤に伴うGHG排出量を正確に把握するため、一人ひとりの自宅から派遣先までの距離や通勤手段を確認し、そのデータを基に排出量を測定する取り組みを進めています。また、スタッフに仕事を提案する際は、可能な限り自宅から近い勤務地を選べるよう配慮しています。
オランダのRGF Staffingでは、電気自動車を導入しており、2027年までに法人車両をすべて電動化する計画を進行中です。さらに、日本の株式会社スタッフサービス・ホールディングスおよび株式会社リクルートスタッフィングも、2030年までに営業用車両をすべて電気またはハイブリッド車に切り替える方針を掲げています。
参照:リクルートホールディングス 「サステナビリティ 気候変動への取り組み」

まとめ

スコープ3カテゴリ6「出張」とカテゴリ7「従業員通勤」の排出削減は、企業の日常的な活動と密接に関わっています。それぞれの活動に伴う排出量を正確に算定し、データに基づいた削減施策を計画・実行することが求められます。

特に、テレワークや交通手段の見直しなど、短期間で効果を発揮する施策もありますが、全体像を把握し継続的に取り組む姿勢が重要です。

リクロマでは、Scope1,2,3における排出量算定や削減計画の立案をサポートしています。企業の脱炭素経営を推進するための最適な解決策をご提供しますので、お気軽にお問い合わせください。

参考文献

環境省 スコープ3排出量の算定技術ガイダンス
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/(J)-calculation_guidance.pdf
CDP2023 サプライヤーエンゲージメント評価 イントロダクション
https://cdn.cdp.net/cdp-production/comfy/cms/files/files/000/008/101/original/SER_Introduction_JPN_2023.pdf
環境省 サプライチェーン排出量算定に関する説明会 Scope3~算定編~
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/dms_trends/study_meeting_2020.pdf
リクルートホールディングス 「サステナビリティ 気候変動への取り組み」
https://recruit-holdings.com/ja/sustainability/environmental/climate-action/

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  • 2021年9月入社。国際経営学修士。大学在学中より国際人権NGOにて「ビジネスと人権」や「気候変動と人権」領域の活動を経験。卒業後はインフラ系研究財団へ客員研究員として参画し、気候変動適応策に関する研究へ従事する。企業と気候変動問題の関わりに強い関心を寄せ、リクロマ株式会社へ参画。

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