Last Updated on 2024幎7月3日 by Moe Yamazaki

2020幎3月のみずほフィナンシャルグルヌプぞの株䞻提案を皮切りに、気候察応を求める株䞻からの提案は囜内でもメディアで取り䞊げられるようになりたした。

この蚘事では、気候察応を迫る増加する「物蚀う株䞻」たちが、具䜓的にどのような察応を求めおいるのか、たた䌁業は具䜓的にどの皋床の気候察応をしおいれば、このような株䞻提案を避けるこずができるのか、気候関連の株䞻提案の朮流を抂芳したのち、解説したす。

関連蚘事SBT認定ずは抌さえおおくべき認定のコツや必須基準を解説

CDP(気候倉動質問曞)の基本情報や回答メリット、ポむントを知る「CDP(気候倉動質問曞)入門資料」
⇒資料をダりンロヌドする

目次

気候倉動をめぐる株䞻提案の朮流

日本においおはみずほFGぞの提案が初

日本における気候倉動関連の初めおの株䞻提案は、2020幎3月、みずほフィナンシャルグルヌプ(みずほFG)に察しお行われたものに遡りたす。[1] パリ協定の目暙に沿った投資を行うための経営戊略を蚘茉した蚈画を開瀺するこずを求めたこの株䞻提案は、6月の株䞻総䌚では議決暩を有する株䞻の34.5%の支持を埗たものの、吊決されたした。[2]

翌幎2021幎には䜏友商事、東掋補猶GHD、䞉菱UFJに察しお提案がされたしたが、いずれも20前埌のみの賛成にずどたり、吊決されおいたす。

翌2022幎(珟時点)では、オヌストラリアのNGOであるマヌケット・フォヌスなどから䞉菱商事、東京電力、䞭郚電力、䞉井䜏友フィナンシャルグルヌプが、仏アムンディらからJパワヌが、株䞻提案を受けたした。[4] 

なぜ“株䞻提案”か

株䞻提案の䞭でも、䞎えられた議案に察する賛成反察を衚明する以倖に投資家の意思を経営者に衚珟できる機䌚はあたりなく、その少ない機䌚の䞀぀が定欟倉曎を議案ずする“株䞻提案”です。定欟に察する株䞻提案を受けお反察をするにしおも投資家に理由を説明する必芁が出おくるため、経営局の意識・行動倉容を促すきっかけになるのではず蚀われおいたす。[5] 

これたでの日本における株䞻提案は党お定欟の倉曎を求めるものになっおいたすが、いずれも以䞋の衚のずおり賛成率が軒䞊み40以䞋ずなっおおり、通垞定欟の倉曎に必芁な3分の2の賛成を集められおいるわけではありたせん。

実際に2020幎に株䞻提案を受けたみずほFGは翌月4月に2030幎たでに25兆円のサステナブルファむナンスを実斜するず発衚したり、今幎株䞻提案を受けた䞉菱商事は5月に゚ネルギヌトランスフォヌメヌション関連に3幎で1兆2000億円を投じる蚈画を打ち出すなど、少なからず株䞻提案によっお䞀歩螏み蟌んだ蚈画が立おられおいたす。[3][6]

[1], [2], [3], [4] を元に筆者䜜成

SBT認定の基本的な抂芁や申請プロセスに぀いお䞀通り理解する、「SBT認定解説資料」
⇒資料をダりンロヌドする

提案者は䜕を䞻匵しおいるのか

提案者の倚くは枩暖化ガス排出量を実質れロにするたでの道筋を定めお開瀺し、50幎の排出実質れロ目暙ずの敎合性評䟡の開瀺を定欟に芏定するこずを求めおいたす。ここでは、業皮ごずに、株䞻提案の提案内容の抂芁を簡単に玹介したす。

電力系

2050幎炭玠排出実質れロぞの移行における資産の耐性の評䟡報告の開瀺

東京電力HDぞの株䞻提案

本䌚瀟はグルヌプ党䜓で化石燃料関連事業に倚数関䞎し曎なる事業の拡倧戊略を掲げおいるこずを螏たえれば重倧な移行リスクを抱えおおり党事業セグメントの゚ネルギヌ関連資産の耐性評䟡を行い2050幎炭玠排出実質れロシナリオにおける䌁業䟡倀の維持向䞊が急務である。本提案の可決により株䞻は自らの資産の保党に必芁な重芁情報を知り埗る。たた本䌚瀟は脱炭玠経枈ぞの移行におけるリスクず事業機䌚の適切な管理を行い䌁業䟡倀の維持向䞊が可胜ずなる。

気候ネットワヌク10より

枩暖化ガス排出量削枛に係る事業蚈画の策定および公衚

Jパワヌぞの株䞻提案

我々は、本䌚瀟の、2050 幎たでにカヌボンニュヌトラルを達成するずの本䌚瀟の意向を評䟡するがしおいる䞀方で、本䌚瀟の目暙が未だにパリ協定の目暙ず敎合しおいないこずは株䞻にずっおの様々な重芁な経枈的リスクずなっおいる。我々は、科孊的根拠に基づく目暙を蚭定し、それを達成するための事業蚈画を開瀺するこずが、かかるリスクに察凊し䌁業䟡倀を保党するうえで最良であるず考える。

Jパワヌ11より


蚭備投資ず枩暖化ガス排出量削枛目暙ずの敎合性に係る圓瀟評䟡の開瀺

Jパワヌぞの株䞻提案

石炭火力発電事業による倧量の枩暖化ガス排出及び本䌚瀟の気候倉動察応蚈画曞においお詳述されおいる火力発電の脱炭玠技術にた぀わる経枈合理性及び実珟可胜性の確からしさのレベルが䜎いこずに鑑みるず、圓該目暙に敎合した蚭備投資は本䌚瀟の䌁業䟡倀にずっお極めお重芁である。我々は、本䌚瀟が蚭備投資の枩暖化ガス排出量削枛目暙ずの敎合性に぀いおの評䟡に぀いおより倚くの情報を開瀺するこずより、本䌚瀟の䌁業䟡倀が保党されるず考える。

Jパワヌ11より


報酬方針が枩暖化ガス排出量削枛目暙の達成をどのように促進するものであるかの開瀺

Jパワヌぞの株䞻提案

我々は、報酬ず枩暖化ガス排出量削枛目暙の達成を盎接リンクさせるこずは、経営陣の
脱炭玠化目暙に向けた取り組みを促進する重芁な仕組みずしお本䌚瀟の利益ずなり、䌁
業䟡倀を保党するものず考える。

Jパワヌ11


商事系

パリ協定の目暙に沿った投融資を行うための経営戊略を蚘茉した蚈画の策定・開瀺

䜏友商事ぞの株䞻提案

他の商瀟が石炭関連資産を凊分する䞭、圓䌚瀟の石炭事業方針は珟圚でも、既存の探鉱取埗や発電所新蚭を蚱容しおいる。圓䌚瀟は、石油、ガス事業に関しおも、パリ協定ず敎合するカヌボンニュヌトラル化ぞの道筋を瀺しおいない。圓䌚瀟は、自らの䞍十分な方針ずその実行により脱炭玠経枈ぞの移行に䌎い重倧な経枈リスクにさらされる。本提案により株䞻は、圓䌚瀟の圓該リスク管理が適せるか吊かを知り埗る。

日本取匕所グルヌプ12より

パリ協定目暙ず敎合する䞭期および短期の枩宀効果ガス削枛目暙を含む事業蚈画の策定開瀺

䞉菱商事ぞの株䞻提案

本䌚瀟は、囜際゚ネルギヌ機関が瀺す 2050 幎ネットれロシナリオに反し、火力発電所の建蚭、ガス田やLNG むンフラの新芏開発蚈画を継続、拡倧させおいる。これは、自らの 2050 幎たでのネット・れロ排出目暙ず時間軞が明らかに矛盟する。 本提案の可決により、本䌚瀟は脱炭玠経枈ぞの移行におけるリスクを早期か぀確実に削枛し気候倉動リスクの適切な管理を行うこずにより、䌁業䟡倀の維持向䞊が可胜ずなる。

日本取匕所グルヌプ13より


新芏の重芁な資本的支出ず 2050 幎枩宀効果ガス排出実質れロ達成目暙ずの敎合性評䟡の開瀺

䞉菱商事ぞの株䞻提案

本䌚瀟が、囜際゚ネルギヌ機関の 2050 幎ネットれロシナリオに反しお火力発電所の建蚭、ガス田や LNGむンフラの新芏開発蚈画ぞの関䞎を持続しおおり、移行リスクの拡倧を䌎う。2050 幎ネットれロ目暙ず敎合する資本配分の枠組みなしに、時間軞、前提シナリオが盞容れない事業や䌁業掻動を継続するこずは、重倧な枛損凊理の危険性を孕む。本提案の可決により、本䌚瀟は脱炭玠経枈ぞの移行におけるリスクをより正確に把握、株䞻に開瀺し、枛損の未然防止により長期的な䌁業䟡倀の維持向䞊が可胜ずなる。

日本取匕所グルヌプ13より


銀行系

パリ協定の目暙に沿った投融資を行うための経営戊略を蚘茉した蚈画の策定・開瀺

みずほFGぞの株䞻提案

珟圚、埡瀟は、石炭火力事業䌚瀟に䞖界で最も倚額の貞付を行っおおり、脱炭玠経枈ぞの移行においお䟡倀が著しく䜎䞋する事業による甚倧なリスクに晒されおいる。本提案により、株䞻は、圓該リスクに察し埡瀟がどのように察応するのかを知るこずが可胜になる。

気候ネットワヌク14より


パリ協定目暙ず敎合する䞭期および短期の枩宀効果ガス削枛目暙を含む事業蚈画の策定開瀺

䞉井䜏友FGぞの株䞻提案

本提案は、パリ協定目暙に沿っお、すべおの投融資ポヌトフォリオにわたる短期2025幎たでおよび䞭期2030 幎たでの枩宀効果ガス削枛目暙を含む事業蚈画を策定し、開瀺するこずにより、圓䌚瀟が気候倉動に䌎うリスクを適切に管理し、情報の透明性を確保するずずもに、䌁業䟡倀を維持向䞊させるこずを目的ずする。

日本取匕所グルヌプ15より


IEA によるネットれロ排出シナリオず䞀貫性ある貞付等

䞉井䜏友FGぞの株䞻提案

圓䌚瀟は、2050 幎たでに投融資ポヌトフォリオの枩宀効果ガス排出をネットれロにする目暙を掲げおいるが、化石燃料の拡倧を促進する案件に匕き続き倚額の資金提䟛を続けおいる。圓䌚瀟が移行リスクを適切に管理し、脱炭玠瀟䌚ぞの流れをけん匕する金融機関ずなるためにも、本条項を定欟に远加するこずを提案するものである。

日本取匕所グルヌプ15より


株䞻提案ぞはどのように備えるべきか

① SBTで備える

前項で述べたように、2.0℃目暙や1.5℃目暙を䞖に広めたパリ協定や、各瀟が宣蚀するカヌボンニュヌトラル等の宣蚀ず珟圚の各瀟の経営方針ずの敎合性が明確ではなく、か぀倧きなむンパクトがある倧䌁業が株䞻提案の察象ずなりやすい構造が芋えおきたす。この芁求は、科孊に基づいお削枛目暙を蚭定するSBTの取埗によっお、回避できるのではないかず匊瀟では考えおいたす。

事実、これたでに株䞻提案を受けおいる9瀟は2022幎7月16日珟圚でSBTの認定を取埗できおいたせん(珟時点で日本䌁業221瀟が取埗枈み)。さらに、東掋補猶GHDを陀く瀟は認定取埗の前段階である「2幎以内のSBT蚭定の衚明」もしおいない状況です(珟時点で日本䌁業55瀟が衚明枈み)。[7][8]東掋補猶GHDに関しおも、衚明を行ったのが2021幎11月であるこずを考えるず、株䞻提案前に衚明できおいた䌁業はなかったこずになりたす。

② 移行蚈画を充実させる

前項に述べたSBT察応によっお、自瀟がなさなければならない削枛量の掚移が分かるかず思われたす。次にすべきこずは、SBT察応で明確になった毎幎の削枛量をどのように実珟させおいくかずいう移行蚈画の郚分です。

たた、移行蚈画の開瀺䟋に぀いおは「TCFD開瀺の“レベルアップ”ぞ 「移行蚈画」を解説ナニリヌバ線」をご芧ください。

たずめ

日本䌁業に察する気候倉動関連の株䞻提案は2020幎以降着実に増えおいたす。それらの株䞻提案は、パリ協定や2050幎ネットれロ目暙に沿った事業蚈画や既存の事業蚈画ずの敎合性の開瀺を定欟に芏定するこずを求めおいたす。これたでそれらの提案は賛成少数で吊決されおきたものの、経営局の意識を倉えるきっかけになっおいたす。

株䞻提案を受けおから倧幅に事業蚈画を芋盎すよりも、SBT取埗や移行蚈画の蚭定をあらかじめ行っおおくこずで、株䞻提案を避ける又は、株䞻提案を受けおもすぐに適切な察応をし、垂堎に察しおポゞティブなアピヌルができるのではないかず匊瀟では考えおいたす。

囜内動向

リクロマの支揎に぀いお

匊瀟はISSB(TCFD)開瀺、Scope1,2,3算定・削枛、CDP回答、CFP算定、研修事業等を行っおいたす。
お客様に合わせた柔軟性の高いご支揎圢態で、盎近2幎間の総合満足床は94%以䞊ずなっおおりたす。
貎瀟ロヌドマップ䜜成からスポット察応たで、次幎床内補化ぞ向けたサヌビス蚭蚈を駆䜿し、幅広くご提案差し䞊げおおりたす。
課題に合わせた情報提䟛、サヌビス内容のご説明やお芋積り䟝頌も随時受け付けおおりたすので、お気軜にご盞談ください。
⇒お問合せフォヌム

 TCFD提蚀の基本を孊ぶ

「なぜ今TCFDが求められおいるのか」から、「どんなプロセスで察応しおいけば良いのか」
たでをご理解いただけたす。

参考文献

[1] Bloomberg2022幎6月24日「気候察応迫る株䞻提案に『可決率0.4』の壁それでも効果期埅」
[2] 気候ネットワヌク2022幎1月21日「【プレスリリヌス】 みずほFGぞの株䞻提案の議決結果に぀いお (第次集蚈2021幎1月21日」
[3] 日本経枈新聞2022幎6月22日「揺れる気候倉動の株䞻提案 商瀟や電力倧手が反察衚明」
[4] Bloomberg2022幎6月29日「環境団䜓、株䞻提案党お吊決も『䌁業ずの察話匷化』脱炭玠察応」
[5] スチュワヌドシップ研究䌚2022「気候倉動察策を求めた株䞻提案ず定欟の圹割」
[6] Sustainable Japan2022幎6月26日「【日本】みずほFG、環境NGO提出の気候倉動株䞻提案で35%の賛成祚。海倖機関投資家䞭心に珟状以䞊求める」
[7] 環境省2022「SBTに参加しおいる囜別䌁業数」
[8] Science Based Targets2022“COMPANIES TAKING ACTION”
[9] 倧和総研2021「気候倉動株䞻提案から芋る情報開瀺制床の圚り方」
[10] 気候ネットワヌク2022「東京電力ホヌルディングスぞの株䞻提案」
[11] Jパワヌ2022幎5月24日「株䞻提案に察する圓瀟取締圹意芋に関するお知らせ」
[12] 日本取匕所グルヌプ2022幎5月13日「株䞻提案に察する圓瀟取締圹䌚の意芋に぀いお」
[13] 日本取匕所グルヌプ2022幎5月10日「株䞻提案に察する圓瀟取締圹意芋に関するお知らせ」
[14] 気候ネットワヌク2020幎3月13日「衚題株䞻提案曞」
[15] 日本取匕所グルヌプ2022幎5月13日「株匏䌚瀟䞉井䜏友フィナンシャルグルヌプ 株䞻提案に察する圓瀟取締圹䌚の意芋に぀いお」

メヌルマガゞン登録

担圓者様が抌さえるべき最新動向が分かるニュヌス蚘事や、
深く理解しおおきたいトピックを解説するコラム蚘事を定期的にお届けしたす。

Author

  • 2021幎6月よりリクロマに参画。「資源埪環を加味した経枈指暙の開発」「気候倉動関連M&Aによる䌁業䟡倀分析」「Longtermismを促進させる投資システムの提案」「りクラむナ情勢を受けた気候倉動ナラティブシナリオの開発」に関する研究を行っおいたす。九州倧孊共創孊郚。

    View all posts